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第七章
第78話 絶対聖域
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クラウディアさんの魔力を探して、見つけた場所は戦場だった。
取り敢えずクラウディアさんは無事のようだ。そんな彼女の居る場所だが、ブリンテルト王国軍と邪神軍が相打つ大規模な戦場のようだ。
クラウディアさんの側には、アンネマリーさんやリーゼさんの魔力も感じられる。どうやら彼女達も無事のようだ。3人とも無事で本当に良かった。
更に、状況を確認する為、視覚を飛ばし見てみたのだが――
「これ…… 結構ヤバくないか……」
今、彼女達は戦場のど真ん中に居る。しかも戦況は芳しくなく、ブリンテルト王国軍は撤退と言うより敗走状態に陥っているようだ。
クラウディアさん達はそんな中、味方を逃がす為、殿を務めているように見える。
クラウディアさん達は以前とは比べものにならない程強くなっているようだが、それでも多勢に無勢。状況は時間を追う毎に悪くなっていっている。
「みんな、下界に飛ぶよ。転移後はすぐに戦闘になりそうだから、そのように心積もりしておいて」
それだけ言うと、みんなからの返事を待たず、クラウディア達の下に向け転移魔法を発動した。
初めて使う転移魔法だったが、何故か使い方が手に取るように分かる。今の僕なら狙った場所に一ミリのずれもなく転移する事が出来るだろう。
転移場所はクラウディアさんの真上。
魔法が発動すると、周りの光景は白い神殿から血なまぐさい戦場へと移り変わる。
初めて使用する転移魔法だったどうやら無事成功したようだ。
すぐさまクラウディアさんに視線を移すといきなりピンチ状態、クラウディアさんの眼前には、ハンマーを振りかざし今にも襲い掛からんとしているオーガロードの姿が――
――不味い!!
「絶対聖域!!」
咄嗟に新たに使用できようになった神威魔法の絶対聖域を発動する。
魔法が発動すると、一瞬で上空に200メートル程の青白い光を放つ魔法陣が現れ、それと同時に魔法陣に覆われた範囲は一気に真っ白な光に包まれた。
視界を奪わんばかりの眩い光の中、その光の包まれた魔物達は次々にその身を崩壊させていく。勿論、クラウディアさんを襲おうとしていたオーガロードも例外なくその体を崩壊させる。それとは反対に、ブリンテルト王国軍の兵士達は、負っていた傷が次々に癒え、力を取り戻して行く。
うん、初めて使った魔法だったけど、これは中々凄いね……
絶対聖域。神のみが使う事を許された神威魔法の1つで、魔法陣の範囲下において使用者が敵と判断した相手には死を与え、味方と判断した者には癒しを与える。まさに神の御業そのモノのような魔法である。ちなみに敵と判断された者で生き残るには、魔法をレジストする必要があるのだが、300レベル以下の者にはまず不可能だろう。まさに反則的な魔法だ。
よし、何とかクラウディアさん達も無事のようだ。
一つ胸をなで下ろし、クラウディアさんの側に着地する。
彼女は状況が飲み込めず動揺しているのか、僕には全く気が付かず呆けたように周りを眺めている。
このまま気が付くまで、クラウディアの様子を見ているのも面白そうだと思ったが、流石に悪趣味かと思い声を掛ける事にした。
「ギリギリ何とか間に合ったみたいですね」
咄嗟にいい言葉が浮かんでこず、我ながら何とも気が利かない声の掛けをしてしまった。
そんな気の利かない言葉に、クラウディアさんは勢いよく反応して振り向くと、まるで幽霊でも見たかのように両目を見開き固まってしまう。
『下界では、クラウド様は邪神との戦い破れ死亡した事になっておりましたので、恐らくクラウディア様もクラウド様はお亡くなりになられていたと思っておられたのでしょう』
死亡って…… どうやら、本当に幽霊を見たと思っているのかもしれない……
セバスさんの一言と、クラウディアさんの表情を見て、思わず苦笑いをしてしまう。
なんだか締まらないな……
「クラウド様!!」
そんな事を考えていると、ようやく立ち直ったクラウディアさんが、両目に一杯の涙を溜めながら僕の胸に飛び込んで来た。
そんな彼女を思わず受け止めた時、僕は居るべき所に返ってこられたんだと、ようやく実感したのかもしれない。
「ただいま。クラウディアさん」
しばらくそうしてクラウディアさんと抱き合っていると――
『クラウド、感動の再会中申し訳ないんだけど、そろそろ邪神軍をどうにかしようよ』
『そうよね。このままだとブリンテルト王国軍の被害が大きくなる一方だわ』
レヴィとアキーレさんに急かされてしまった。周りを見るとアンネマリーさんやリーゼさんが苦笑いをしている。
確かにこんな事をしている場合じゃないな。戦場全体を見たら、ブリンテルト王国軍が危機な状況である事は間違い無いのだから……。
「クラウディアさん。邪神軍を倒して来るんで少し待って下さい」
「えっ…… あっ、私とした事が…… 申し訳ありません。……クラウド様、……お気を付けて」
クラウディアさんは、まだ少し何か言いたそうだったが、状況を見て自重してくれたようだ。
さてと、殲滅するのは当然としてどうしようか……
以前のようにゴリ押ししてもいいんだけど、今回の邪神軍の数は五万を超えている。倒せない数ではないが、少々時間が掛かりそうだな。
「んー、折角だし、アレを試してみるか……」
早速前方に右手を突き出すと魔力を込める。いや、半神人になったんだから、この場合は魔力じゃなくて神気になるのかな。
しばらくすると、充分に魔力が右手に集まったように思える。
「んー、こんなもんかな……」
『問題無いかと』
独り言だったんだけど……
まあ、セバスさんが良いと言うなら問題無いだろう。では――
「顕現せよ!!」
僕の力強い言葉に呼応するように、赤、青、緑、黄の四つに魔法陣が地面に浮き上がる。
魔法陣に描かれた模様は、常に変化しその姿を変え続けている。
「い、いったいなにが……」
「どうなるんだ……」
クラウディアさんの驚きの声を始め、周りからも戸惑いの声が聞こえてくる。
そんな中、絶え間なく模様を変えていた魔法陣は突如その動きを止る。
そして一際強く輝きを増すと、魔法陣の中から四つの影が浮かび上がって来た。
その者達は三対六枚の翼を持ち、強烈なまでに神聖な魔力を放っている。その姿はまさにヴァルハラの神殿で見た天使の像そのモノ。そう、ヴァルハラの神殿で四方を護っていた4柱の熾天使が、新たな肉体を持ってここに降臨したのだった。
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クラウディアさんの魔力を探して、見つけた場所は戦場だった。
取り敢えずクラウディアさんは無事のようだ。そんな彼女の居る場所だが、ブリンテルト王国軍と邪神軍が相打つ大規模な戦場のようだ。
クラウディアさんの側には、アンネマリーさんやリーゼさんの魔力も感じられる。どうやら彼女達も無事のようだ。3人とも無事で本当に良かった。
更に、状況を確認する為、視覚を飛ばし見てみたのだが――
「これ…… 結構ヤバくないか……」
今、彼女達は戦場のど真ん中に居る。しかも戦況は芳しくなく、ブリンテルト王国軍は撤退と言うより敗走状態に陥っているようだ。
クラウディアさん達はそんな中、味方を逃がす為、殿を務めているように見える。
クラウディアさん達は以前とは比べものにならない程強くなっているようだが、それでも多勢に無勢。状況は時間を追う毎に悪くなっていっている。
「みんな、下界に飛ぶよ。転移後はすぐに戦闘になりそうだから、そのように心積もりしておいて」
それだけ言うと、みんなからの返事を待たず、クラウディア達の下に向け転移魔法を発動した。
初めて使う転移魔法だったが、何故か使い方が手に取るように分かる。今の僕なら狙った場所に一ミリのずれもなく転移する事が出来るだろう。
転移場所はクラウディアさんの真上。
魔法が発動すると、周りの光景は白い神殿から血なまぐさい戦場へと移り変わる。
初めて使用する転移魔法だったどうやら無事成功したようだ。
すぐさまクラウディアさんに視線を移すといきなりピンチ状態、クラウディアさんの眼前には、ハンマーを振りかざし今にも襲い掛からんとしているオーガロードの姿が――
――不味い!!
「絶対聖域!!」
咄嗟に新たに使用できようになった神威魔法の絶対聖域を発動する。
魔法が発動すると、一瞬で上空に200メートル程の青白い光を放つ魔法陣が現れ、それと同時に魔法陣に覆われた範囲は一気に真っ白な光に包まれた。
視界を奪わんばかりの眩い光の中、その光の包まれた魔物達は次々にその身を崩壊させていく。勿論、クラウディアさんを襲おうとしていたオーガロードも例外なくその体を崩壊させる。それとは反対に、ブリンテルト王国軍の兵士達は、負っていた傷が次々に癒え、力を取り戻して行く。
うん、初めて使った魔法だったけど、これは中々凄いね……
絶対聖域。神のみが使う事を許された神威魔法の1つで、魔法陣の範囲下において使用者が敵と判断した相手には死を与え、味方と判断した者には癒しを与える。まさに神の御業そのモノのような魔法である。ちなみに敵と判断された者で生き残るには、魔法をレジストする必要があるのだが、300レベル以下の者にはまず不可能だろう。まさに反則的な魔法だ。
よし、何とかクラウディアさん達も無事のようだ。
一つ胸をなで下ろし、クラウディアさんの側に着地する。
彼女は状況が飲み込めず動揺しているのか、僕には全く気が付かず呆けたように周りを眺めている。
このまま気が付くまで、クラウディアの様子を見ているのも面白そうだと思ったが、流石に悪趣味かと思い声を掛ける事にした。
「ギリギリ何とか間に合ったみたいですね」
咄嗟にいい言葉が浮かんでこず、我ながら何とも気が利かない声の掛けをしてしまった。
そんな気の利かない言葉に、クラウディアさんは勢いよく反応して振り向くと、まるで幽霊でも見たかのように両目を見開き固まってしまう。
『下界では、クラウド様は邪神との戦い破れ死亡した事になっておりましたので、恐らくクラウディア様もクラウド様はお亡くなりになられていたと思っておられたのでしょう』
死亡って…… どうやら、本当に幽霊を見たと思っているのかもしれない……
セバスさんの一言と、クラウディアさんの表情を見て、思わず苦笑いをしてしまう。
なんだか締まらないな……
「クラウド様!!」
そんな事を考えていると、ようやく立ち直ったクラウディアさんが、両目に一杯の涙を溜めながら僕の胸に飛び込んで来た。
そんな彼女を思わず受け止めた時、僕は居るべき所に返ってこられたんだと、ようやく実感したのかもしれない。
「ただいま。クラウディアさん」
しばらくそうしてクラウディアさんと抱き合っていると――
『クラウド、感動の再会中申し訳ないんだけど、そろそろ邪神軍をどうにかしようよ』
『そうよね。このままだとブリンテルト王国軍の被害が大きくなる一方だわ』
レヴィとアキーレさんに急かされてしまった。周りを見るとアンネマリーさんやリーゼさんが苦笑いをしている。
確かにこんな事をしている場合じゃないな。戦場全体を見たら、ブリンテルト王国軍が危機な状況である事は間違い無いのだから……。
「クラウディアさん。邪神軍を倒して来るんで少し待って下さい」
「えっ…… あっ、私とした事が…… 申し訳ありません。……クラウド様、……お気を付けて」
クラウディアさんは、まだ少し何か言いたそうだったが、状況を見て自重してくれたようだ。
さてと、殲滅するのは当然としてどうしようか……
以前のようにゴリ押ししてもいいんだけど、今回の邪神軍の数は五万を超えている。倒せない数ではないが、少々時間が掛かりそうだな。
「んー、折角だし、アレを試してみるか……」
早速前方に右手を突き出すと魔力を込める。いや、半神人になったんだから、この場合は魔力じゃなくて神気になるのかな。
しばらくすると、充分に魔力が右手に集まったように思える。
「んー、こんなもんかな……」
『問題無いかと』
独り言だったんだけど……
まあ、セバスさんが良いと言うなら問題無いだろう。では――
「顕現せよ!!」
僕の力強い言葉に呼応するように、赤、青、緑、黄の四つに魔法陣が地面に浮き上がる。
魔法陣に描かれた模様は、常に変化しその姿を変え続けている。
「い、いったいなにが……」
「どうなるんだ……」
クラウディアさんの驚きの声を始め、周りからも戸惑いの声が聞こえてくる。
そんな中、絶え間なく模様を変えていた魔法陣は突如その動きを止る。
そして一際強く輝きを増すと、魔法陣の中から四つの影が浮かび上がって来た。
その者達は三対六枚の翼を持ち、強烈なまでに神聖な魔力を放っている。その姿はまさにヴァルハラの神殿で見た天使の像そのモノ。そう、ヴァルハラの神殿で四方を護っていた4柱の熾天使が、新たな肉体を持ってここに降臨したのだった。
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