上 下
1 / 69
第二章

第20話 特訓が終わりました

しおりを挟む
 ブックマーク&ポイントありがとう御座います。
********************************************

 訓練(というかあれは修行だな)を始めて1ヵ月が過ぎた。

 訓練の内容? そんな恐ろしい事、思い出したくもないです。

 兎に角僕はこの1ヵ月、鬼仕様の訓練を乗り切ったのだ。

 おかげで今では、レヴィに本気で打ち合ってもらえる程度には剣術を習得し(まだ一本も取った事は有りません)、全属性の魔法も実践レベルで使用出来るまでに習得した(セバスさん曰く、初心者から脱した程度らしい)。

 もちろん、イジスさんの盾術やクイの弓術も、何とか合格点をもらえる程度には、習得する事が出来た。

 4人からそれぞれ合格点をもらえたという事で、取りあえず山籠もりが本日で終了する事となったのだ。

 「やったー!! これでようやく旅に出られぞ!!」

 僕は大きく背伸びをして目一杯叫んだ。

 「おつかれ~。思ったよりも時間かかったし、まだまだ弱いけど。まあ、いいんじゃない」

 くっ! 人が気持ちよく喜んでいるのに、レヴィめ……。

 「おめでとう御座います。クラウド様はハンターとして立派に成長なされました」

 う、セバスさんは嬉しい事を言ってくれる。レヴィとはえらい違いだ。

 「主と拙者の力があれば、いかなる敵も打ち倒せるでしょう」

 イジスさん。その自信を得るまでには、僕はまだ到達できていません。

 「ご主人様、そんな事より早くノーステールに戻って大猪の串焼きをいただきましょう」

 クイはいつも通りだな。


 取り敢えず、これで一応は地獄の特訓ループから解放された。まあ、これからも毎日、朝と夜に訓練は続けるらしいけど。

 そんな訳でノーステールのハンターギルドに、倒した魔物の素材の売却兼、旅立ちの報告をしに行く事にした。

 
 ◇ ◇ ◇


 ノーステールに着くと、クイが串、串うるさいので先に大猪の串焼きを買いに行く。

 「おっちゃん。6本ちょうだい」

 「はいよ、6本な」

 少し恰幅のいい店のおっちゃんは、当然のように串を僕に1本、レヴィに2本、クイに3本渡した。

 実は山籠もりをしていたとは言え、休みとして週に一度、ギルドに倒した魔物の素材を売りに来ており、その度にここで串焼きを買っていたのだ。

 「坊主。いつもありがとな」

 このおっちゃん、いい人感が、にじみ出ているよな。

 「そうだ、おっちゃん。実はそろそろノーステールを出ようと思うんだ。だからここに来るのも、もう最後かも」

 「そうか、寂しくなるな。お前ら、無理しないで元気でやれよ」

 「うん、ありがとう。おっちゃんも元気でな」

 「おじさん。バイバイ」とレヴィも続く。

 クイは3本目の串を食べ終え。って、もう食べ終わったのか。

 「この味は二度と忘れません。いずれまた必ず戻ってまいります」

 なんて言っている。よっぽど、ここの味が気に入ったようだ。

 そんな感じで屋台のおっちゃんに別れを告げ、僕達はハンターギルドに向かった。


 ◇ ◇ ◇


 ハンターギルドに入る時、いつものように、レヴィとクイは人化を解き装備品に戻っている。

 いつもはここで、イジスさんが護衛として僕の後ろに立って付いてきてくれるのだが、レヴィから「もう、特訓終わったんだから、護衛はいいんじゃない」の一言で今回は一人でギルドに入っていく事になった。

 ハンターギルドに入ると一斉に僕に視線が集まる。

 いつもの事だが、なんでここの人たちは、僕が入ってくると一斉にこちらを見るんだろう。


 視線を無視して買い取りカウンターに向かう。

 買い取りカウンターにはいつもの受付嬢さん、ラムさんが僕を迎えてくれた。

 「よう、久しぶり。今日もいつもの素材の売却か?」

 「はい、これです。査定お願いします」

 今日は、いつものゴブリンの魔石に加え、グレーウルフの毛皮と魔石、オークの肉と魔石、フォレストリザードの皮や爪などの素材一式といった大量の素材を持ち込んだ。

 数は多いがすべてレベル30以下の魔物で、普通のハンターなら一人で充分倒せる魔物だ。


 ちなみに、レベル50以上の魔物も多く持っているけど、今のところ出さないようにしている。出すとラムさんがビックリしちゃうしね。


 「おっ! 今回は大漁だね。少しは実力が付いてきたみたいだな。だけどまだまだ弱っちいから、無理はするんじゃねぇぞ」

 ラムさん、相変わらず口は悪いけど、やっぱり優しいな。

 「はい、これからも頑張ります。後1つ、報告というか、実はこの街を離れようかと考えています。お世話になっていたラムさんには、お知らせしておこうと思いまして」

 ラムさんから素材の売却代を貰いながら話す。ちなみに今回の収入は金貨1枚と銀貨6枚だった。

 ラムさんは僕の言葉にかなり驚いた様子で固まっている。

 「あのラムさん?」

 「あ、あ、ああ、すまん。ちょっと驚いてな」

 とても、ちょっとどころじゃなかった気がするけど。

 「それでいつ出ていくんだ?」

 「えっと、明日には出発するつもりです」

 「そ、そんなに早く……」

 どうかしたのかな?

 「わ、分かった。無理しないで、元気でやれよ。またいつでもノーステールに寄ってくれ」

 「ありがとうございます。しばらく会う事はないと思いますが、ラムさんもお元気で」


 寂しそうにしているラムさんに最後の別れを告げて僕はギルドを後にした。

 と言いつつ、この後すぐにラムさんと再会する事になるのだが。
************************************************
 最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 ブックマークや評価ポイントを頂けると、とても励みになります。

 第21話を本日12時に投稿します。

アルファポリス様でランキング参加する事にしました。下のバナーからよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~

ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」  騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。 その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。  この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。

異世界営生物語

田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。 ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。 目覚めた先の森から始まる異世界生活。 戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。 出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。

ドグラマ3

小松菜
ファンタジー
悪の秘密結社『ヤゴス』の三幹部は改造人間である。とある目的の為、冷凍睡眠により荒廃した未来の日本で目覚める事となる。 異世界と化した魔境日本で組織再興の為に活動を再開した三人は、今日もモンスターや勇者様一行と悲願達成の為に戦いを繰り広げるのだった。 *前作ドグラマ2の続編です。 毎日更新を目指しています。 ご指摘やご質問があればお気軽にどうぞ。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

10044年の時間跳躍(タイムリープ)

ハル
ファンタジー
【目が覚めるとそこは1万年後の世界だった】 亜空間物理学者リョウは、翌日にプロポーズするはずだった恋人カレンに見守られながら、12時間の予定で冷凍睡眠カプセルに入る。しかし、目が覚めると、そこは科学を捨て、思わぬ方向に進化していた1万年後の世界だった。 全てを失い孤独に苛まれながらも、彼は発掘隊の考古学者アリシアに支えられ、この時代に目覚めた原因を調べ始める。そして、千年前の伝説に手がかりを見出したとき、彼は恐るべき野望を持つ輩との戦いに巻き込まれる。 果たして、リョウの運命は。そして、アリシアとの恋の行方は?

常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸
ファンタジー
 かつて大切な人を失った青年――。  全てはそれを取り戻すために、全てを捨てて放浪の旅へ。  長い、長い旅で心も体も擦り減らし、もはやかつてとは別人のように成り果ててもなお、自らの願いのためにその身を捧げた。  そして、もはやその旅路が終わりに差し掛かった、その時。……青年が決断する事とは。 ——  本編最終話には創音さんから頂いた、イラストを掲載しました!

「黒炎の隼」

蛙鮫
ファンタジー
人々を襲う怪物。忌獣を一人で討伐し続ける青年。松阪隼人。そんな彼がとあるきっかけで忌獣を討伐する組織『忌獣対策本部』の戦闘員を育成する学園『金剛杵学園』に入学する事になる。

彼は世界最強の側近です。

ヒデト
ファンタジー
昔から同盟関係にある大和国とフォルニア王国。古くからの掟により、大和の武人、真田影丸がフォルニアの王女のシャルロット・ブリュンヒルデの側近となる。 影丸は全てを捨て、あらゆる敵から彼女を守っていく。

処理中です...