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第一章
田中とつるんでいる理由
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「はーい、B組の青のリボンを付けている生徒は私に付いてきてくれー。先生の顔に見とれている女子だけじゃなくて、男子もちゃんと付いてくるんだぞー」
少し茶色がかった髪のチャラ男がそう言って、生徒たちの苦笑やら笑いをとる。絵に描いたようなチャラ男だが、顔が良すぎて嫌味に見えない。
本当にこの学校はイケメンが多いな。さっきの受付の面々もそうだし、生徒会長もそうだ。
どうなっているんだ?
いっくんはさっさと席を立って、チャラ男の後について行く。
俺はやっと緊迫した空気から解放され、力が抜けてパイプ椅子から立ち上がることができなかった。
「本当に大丈夫か、鈴木。立てるか?」
心配してくれるのはいいが、田中。お前も俺の精神をゴリゴリと削ってくれた人物なんだからな。
「最後のほうが人がいなくて楽だから、もう少し座っとくわ」
体育館の入口を確認すると、まだチャラ男の引率について行こうとする生徒でごった返している。
「立てないのか?」
「もう少し休んだら動ける」
「教室よりやっぱり保健室の方がいいじゃないか? 顔色がさっきより悪くなっているぞ」
田中。お前が言うな、お前が。
お前といっくんの冷戦が原因だからな。お前たちの間に挟まれた人間がどんなに居心地が悪いか気付いていなかっただろ?
あんな胃の痛くなるような空気を作り出しておいて何で気付かないんだよ。
その前に俺がいっくんの言葉でショックを受けたのは知っているだろ?
って、いっくんの発言は田中に聞こえていなかったようだが、俺の顔色を気にしていてくれていただろ?
忘れるなよ、そこを。
気遣ってくれるのは嬉しいが、嬉しいんだが・・・素直に受け取れない。
「初日から保健室は勘弁。そんなんで覚えられたくない」
「どうせ、小学校か中学が一緒だった奴がほとんどだろう? このあたりは中学校といえばウチしかなかったし、高校もここしかないし、一々別の高校に行くのも遠いし」
田中の言う通り、このあたりに住んでいる人間はだいたい中学は北中に通って、普通科に通う奴は高校は北高に通う。工業高校やらそういった専門のある学校に通う奴以外はこの流れだ。
「だけどなあ・・・」
「深見の言うことを気にしているのか?」
「いや、いっくんの言葉は気にしていないよ。いっくんの中では俺は幼稚園の時のままみたいだから。そんなのは気にしていない」
当てこすりは気にしていない。
だが、別の言葉は思いっきり気にしている。
田中には聞こえていなかったが、いっくんはどういう意図であんな発言をしたんだろう?
中学校の時にいっくんには彼女がいたし、今になってどうしてあんなことを言ってきたんだか・・・。
本当に俺を抱きたいのか?
それともあれは遠回しの拒絶なんだろうか?
二人の間で身を竦めている間、考えてみたがわからない。
当てこすりの意味を田中が気付いていなければいいんだが・・・。
ふと、体育館の入口をもう一度窺うと人も減ってきたようだ。これならスムーズに体育館を出ていけるかもしれない。
立とうと足に力を入れてみる。
ふにゃりとした感覚があるが気力で立つとどうにか歩けそうだ。違和感は最初だけらしい。
「無理すんなよ」
「無理をしたらお姫様抱っこで運んでくれたらいい」
ニヤリと笑いながら俺は自分へのペナルティーをかける。
意地でも保健室には行きたくない。
いっくんと同じクラスになってしまったからには俺の行動は見られていると考えたほうがいい。これまでは無視されていたから良かったが、無視されていないとなるとこれはこれで大変だ。
「やめろよ。冗談でも気持ち悪い。想像しただけで鳥肌が立ってくる」
自分の腕をさする田中を見ながら、俺は笑って体育館の入口に向かう。
俺がどうして田中とつるんでいることが多いのか不意に思い至った。
シスコンの田中は貴子姉ちゃん以外に興味を持たない。それでも友達思いで面倒見も良い、いい奴だ。
この二つは矛盾しているかもしれないが、それは田中の性格や処世術というかそういうものなんだろう。
田中はシスコンであって、俺に興味が無いから脅威にならない。
だから、俺は田中とつるむことが多い。
田中はアイツと違う。
アイツのようにはならないから。
だが、いっくんは・・・?
少し茶色がかった髪のチャラ男がそう言って、生徒たちの苦笑やら笑いをとる。絵に描いたようなチャラ男だが、顔が良すぎて嫌味に見えない。
本当にこの学校はイケメンが多いな。さっきの受付の面々もそうだし、生徒会長もそうだ。
どうなっているんだ?
いっくんはさっさと席を立って、チャラ男の後について行く。
俺はやっと緊迫した空気から解放され、力が抜けてパイプ椅子から立ち上がることができなかった。
「本当に大丈夫か、鈴木。立てるか?」
心配してくれるのはいいが、田中。お前も俺の精神をゴリゴリと削ってくれた人物なんだからな。
「最後のほうが人がいなくて楽だから、もう少し座っとくわ」
体育館の入口を確認すると、まだチャラ男の引率について行こうとする生徒でごった返している。
「立てないのか?」
「もう少し休んだら動ける」
「教室よりやっぱり保健室の方がいいじゃないか? 顔色がさっきより悪くなっているぞ」
田中。お前が言うな、お前が。
お前といっくんの冷戦が原因だからな。お前たちの間に挟まれた人間がどんなに居心地が悪いか気付いていなかっただろ?
あんな胃の痛くなるような空気を作り出しておいて何で気付かないんだよ。
その前に俺がいっくんの言葉でショックを受けたのは知っているだろ?
って、いっくんの発言は田中に聞こえていなかったようだが、俺の顔色を気にしていてくれていただろ?
忘れるなよ、そこを。
気遣ってくれるのは嬉しいが、嬉しいんだが・・・素直に受け取れない。
「初日から保健室は勘弁。そんなんで覚えられたくない」
「どうせ、小学校か中学が一緒だった奴がほとんどだろう? このあたりは中学校といえばウチしかなかったし、高校もここしかないし、一々別の高校に行くのも遠いし」
田中の言う通り、このあたりに住んでいる人間はだいたい中学は北中に通って、普通科に通う奴は高校は北高に通う。工業高校やらそういった専門のある学校に通う奴以外はこの流れだ。
「だけどなあ・・・」
「深見の言うことを気にしているのか?」
「いや、いっくんの言葉は気にしていないよ。いっくんの中では俺は幼稚園の時のままみたいだから。そんなのは気にしていない」
当てこすりは気にしていない。
だが、別の言葉は思いっきり気にしている。
田中には聞こえていなかったが、いっくんはどういう意図であんな発言をしたんだろう?
中学校の時にいっくんには彼女がいたし、今になってどうしてあんなことを言ってきたんだか・・・。
本当に俺を抱きたいのか?
それともあれは遠回しの拒絶なんだろうか?
二人の間で身を竦めている間、考えてみたがわからない。
当てこすりの意味を田中が気付いていなければいいんだが・・・。
ふと、体育館の入口をもう一度窺うと人も減ってきたようだ。これならスムーズに体育館を出ていけるかもしれない。
立とうと足に力を入れてみる。
ふにゃりとした感覚があるが気力で立つとどうにか歩けそうだ。違和感は最初だけらしい。
「無理すんなよ」
「無理をしたらお姫様抱っこで運んでくれたらいい」
ニヤリと笑いながら俺は自分へのペナルティーをかける。
意地でも保健室には行きたくない。
いっくんと同じクラスになってしまったからには俺の行動は見られていると考えたほうがいい。これまでは無視されていたから良かったが、無視されていないとなるとこれはこれで大変だ。
「やめろよ。冗談でも気持ち悪い。想像しただけで鳥肌が立ってくる」
自分の腕をさする田中を見ながら、俺は笑って体育館の入口に向かう。
俺がどうして田中とつるんでいることが多いのか不意に思い至った。
シスコンの田中は貴子姉ちゃん以外に興味を持たない。それでも友達思いで面倒見も良い、いい奴だ。
この二つは矛盾しているかもしれないが、それは田中の性格や処世術というかそういうものなんだろう。
田中はシスコンであって、俺に興味が無いから脅威にならない。
だから、俺は田中とつるむことが多い。
田中はアイツと違う。
アイツのようにはならないから。
だが、いっくんは・・・?
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