友達の定義

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第一章

入学式の朝

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「よう、鈴木。お前も北高だろ?」

小学校から友達だった田中だ。母親似の柔和な顔立ちをしている田中は女に非常にモテる。男にも一部では人気があるが、内面は顔とは大違いの鬼畜野郎である。そんな奴に変な気を起こす命知らずはいない、と思う。

「田中! お前も北高なのか?」

「家から一番近いからな」

「家から一番近いって言うより、貴子姉ちゃんの働いている場所に近いからだろ?」

「鈴木、お前、マゾなのか?」

黒い微笑みを浮かべる田中。
ヤバイ。
シスコンの田中を貴子姉ちゃんのことでからかうんじゃなかった。
後悔すると共に全力で走って田中から逃げる。

「鈴木、待てー!!」

「殺る気の田中を誰が待つか!」

そのまま走っていると、入学式のために高校に向かうにつれて見知った顔を見かけるようになった。
そのほとんどは小中で一緒だった友達たち。幼稚園からの友達もいる。だが、その中に親友だったいっくんはいない。
受験の時には確かにいっくんがいた。
高校も俺と同じところになると気付いて、別の学校に行ったのだろうか?
あの出来事以降、小中と俺を無視し続けたいっくんをどうしてそこまで気にしているのか、俺自身よくわからない。
俺はいっくんに何を求めているのだろう?
助けを求めた俺を見捨てたいっくんに。
俺をいないものと扱ったいっくんに。
あんなに簡単に俺を切り捨てたいっくんのことをどうして気にかけるんだろう?
自問自答するがその答えはいつも出てこない。
かつてのように一緒にいて、笑いあい、ふざけあう関係に戻りたいだけなのだろうか?
謝罪が欲しいのだろうか? あの時、見捨てて悪かったと。
それとも・・・?

考えても仕方がない。

「おはっ! 朝から元気だな」

いつの間にか佐藤を追い越していたらしい。
佐藤は相変わらず眠そうにしている。足取りものんびりだ。

「入学式ぐらい元気出せよ、佐藤」

「それは無理な相談だな。生きているだけでダルい」

「捕まえたぞ、鈴木!」

佐藤と話している間に田中に捕まった。
服に隠れる場所を田中に何度か殴られたあと、俺たちは友達と合流しながら入学式の行われる体育館へと向かう。
そこにもいっくんの姿はない。
ホッとする反面、落胆している自分がいる。
高校でこそ、いっくんとの関係をまともに戻そうと思っていた。それが俺の高校デビューだ。
そんなものは入学式の時点で予定変更になってしまう。
ここで会えないならどこで会えばいい?
アイツのところ、とか?
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