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21話 聖女エミリーの限界②
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感動の再会を終えたわたしたちは、魔王さまの屋敷の中に入っていった。
ちょうどもうすぐお昼ご飯だったから、イージスがご飯を用意してくれた。でも、エミリーは一口も手をつけることなく、膝の上に両手を置いている。
「……ごめんなさい、私……」
「普段から、あまり食べてないの?」
「……なんか、食べ物最近おいしくなくってぇ……」
しゅん、とエミリーは顔を俯かせる。
わたしはエミリーが残したお皿を片そうと厨房に足を運ぶ。
「なんだ、アイツ食べねーの?」
「疲れてるみたい」
「ふーん」
イージスは大きな目をパチパチとさせて、厨房からエミリーの姿を眺めていた。そして、おもむろに鍋に向かって何やらゴソゴソし始めた。
「イージス?」
声をかけるが、イージスはわたしには応答せず、湯気を立てるお皿を持ってエミリーの元に向かっていった。
「おう、食欲ないんだろうけど、水分くらいは摂れよ」
「え、ええと……」
イージスが差し出したのは、透き通った薄い黄金色のスープ。具材は入っていないが、鶏と野菜の優しい薫りが香り立ち、食欲をそそる。これは鶏ガラと野菜くずを煮込んだスープだ。わたしも何度かごちそうになったことがある。今日のお昼には出てこなかったから、本当はコレを使って夕飯を作るつもりだったのだろう。夕飯はシチューかな。まろやかな野菜の旨味がギュッと濃縮されたスープはとても美味しいし、何よりホッとする味がするのだ。
エミリーはしばらくただただお皿を見つめていたけれど、そのうち、カチャリと手元のスプーンをとった。
「……おいしい……」
カチャカチャと、時折音を響かせながら、エミリーはスプーンを動かす。目を真っ赤にして、鼻を啜りながら、けれどもエミリーは手を止めることなく、ひたすらにスープを飲んだ。
「あ、ありがとう……ありがとう、ございます……。おいしい、おいしいです」
「おう、よかった。おかわりいるか?」
「はい……いただきます」
「パン小さく切ったの食べる?」
「た、食べます」
エミリーが頷いたのを確認すると、イージスは厨房の方に引っ込んで、スープのおかわりと一緒に、細切れにしたパンと、それからチーズとキャベツの酢漬けをよそった小鉢を持ってきた。
「まあ、食えるもんだけ食っとけよ。残したらそのまま置いといてくれればいいから」
「……ありがとうございます……!」
イージスは「ん」と言って、手をヒラヒラ振りながら食堂を出て行った。
エミリーはその背中を何か物言いたげに目で追っていたけれど、すぐにまた食事を再開した。
イージスがここに残らなかったのは、良くも悪くも、エミリーの身の上話に興味がないんだろうと思う。でも、それは多分彼なりの気遣いだ。自分にはわざわざ聞くほど興味がない。その上で他人の弱音の告白を聞く人数は少ない方がいいだろう、という。
「……私、あったかい食べ物、久しぶりです」
エミリーはにこ、とはにかんだ。彼女はパンとチーズ、キャベツの酢漬けも一口ずつ食べた。
「……すっごい、忙しくて、大変だったんです。私、寝れないし、ご飯も食べれなくて、でもお仕事は毎日あって」
食べながら、エミリーはポツポツと話し始めた。
いかにも悲しそうだったり、辛そうだったりするでもなく、むしろ感情のない瞳で口元に薄く笑みを作りながら話す姿は、痛々しくてしょうがなかった。
「私がやらなくちゃ、人の命にも関わることだから、頑張らなくっちゃって……。あのバカ王子にメリアさんは本当は聖女じゃないのにとかボロっちゃったのは私だし……」
「ううん、それはエミリーのせいじゃない。まさかそれで独断で追放とかしでかすなんて予想できないわ」
「ごめんなさい……。メリアさんからもお仕事を奪って……」
「あなたのせいじゃないったら」
「ごめん、なさい」
やっぱり、わたしのこともエミリーを気に病ませる原因の一つだった。本当に、彼女には申し訳ない。
「エミリー、ごめんなさい。わたし、王子に追放と言われてカッとなっていた。あなたの話も聞くべきだったのに」
「……えへへ、だって、私、その時国にいませんでしたもん……。しょうがないですよぉ……」
「エミリー……」
エミリーはふにゃ、と口元を緩ませて笑った。
──エミリーは誤解されやすいが、とても真面目で優しい女の子だ。高い位置でツインテールに結ばれたふわふわのピンク色の髪、丸くって大きな瞳、甘ったるい喋り方。砂糖菓子みたいな女の子。彼女について、『ぶりっこ』だ、『ギャルっぽそう』だ、『男を誘っている』だなんだと揶揄する声は私も聞いたことがある。エミリーは、かわいいものが大好きなだけの女の子なのに。あのバカ王子なんて、エミリーを遊び好きだと思い込んでかなりキツいセクハラをしていた。本当に最低である。大方、わたしを追い出してしまえば今度はエミリーと婚約できるぞ! と思って、エミリーから言質を取ったぞとばかりにわたしを婚約破棄、追放したんじゃなかろうか。
「よかったぁ……私、メリアさんにきらわれてなくて……」
「嫌うわけないじゃない!」
「私のせいで、メリアさんが追い出されたんだって……メリアさんにまで、思われてたら、どうしようって……思ってたからぁ……」
エミリーはまた、しゃくり上げだす。
「……私、辛くて、でも……わたし……私、聖女だから……頑張ってたけど……」
エミリーは呂律が回らなくなってきていた。わたしはその小さな丸い肩をぽんぽんと叩いた。
「もう、もう……わたし、無理ですよお!」
赤紫色の丸い瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていく。
エミリーの着ている白い聖女服の胸元に涙の跡がぼたり、ぼたりと増えていった。
「もう、疲れてて。時間があったら少しでも寝て身体休めなくっちゃって、わかってるんですけど、でも、なんかぼうっとずっと枝毛探しちゃったりとかしちゃってえ」
「うん、うん」
「最近は自分の部屋にいると、なんか、涙出てきちゃって」
「辛かったわね、エミリー。頑張ったのね」
「でも、でも、もう、ほんと、無理ですよお……!」
エミリーは子どものようにわんわんと声を上げて泣き出した。二人で激務を乗り越えてきたのだ。一人でなんて、無理に決まっている。
わたしは最低だ。大丈夫かな、とは思ってなんかないで、もっと早く彼女に会いに行くべきだった。いままでどれほど頑張ってきたことだろう。
エミリーの体を抱きしめる。
「エミリー、おやすみをもらいましょう。他国との行き来ができなくなったって、どうってことはないわ。あの国は壁の中になんでもあるんだから」
「でも、でもぉ……お手紙とか、大事な郵便物とかもあるし」
「そんなの届くのに時間かかったっていいじゃない。それはあなたの責任じゃ無くて、あなたの仕事を管理する国の責任よ」
「メリアさぁん……」
ぐすっ、とエミリーは鼻を啜る。
「──……そうだ、聖女。休め」
いままでわたしたちのやりとりを傍らで静かに見守ってくださっていた魔王さまが、初めてエミリーに対して語りかける。
エミリーは泣き腫らして赤くした瞳を丸くして、きょとんと魔王さまを見上げた。
「あの国を覆う結界も取り払ってしまえ」
「え、ええ?」
「そうしたら、俺たちは力を取り戻してしまってもあの壁の中に潜り込める」
つまり、それは。
魔王さまの青い瞳がわたしに向いた。
「……メリア。一緒にあの国へ行こう。諸悪の根源を断ちにいくんだ」
ちょうどもうすぐお昼ご飯だったから、イージスがご飯を用意してくれた。でも、エミリーは一口も手をつけることなく、膝の上に両手を置いている。
「……ごめんなさい、私……」
「普段から、あまり食べてないの?」
「……なんか、食べ物最近おいしくなくってぇ……」
しゅん、とエミリーは顔を俯かせる。
わたしはエミリーが残したお皿を片そうと厨房に足を運ぶ。
「なんだ、アイツ食べねーの?」
「疲れてるみたい」
「ふーん」
イージスは大きな目をパチパチとさせて、厨房からエミリーの姿を眺めていた。そして、おもむろに鍋に向かって何やらゴソゴソし始めた。
「イージス?」
声をかけるが、イージスはわたしには応答せず、湯気を立てるお皿を持ってエミリーの元に向かっていった。
「おう、食欲ないんだろうけど、水分くらいは摂れよ」
「え、ええと……」
イージスが差し出したのは、透き通った薄い黄金色のスープ。具材は入っていないが、鶏と野菜の優しい薫りが香り立ち、食欲をそそる。これは鶏ガラと野菜くずを煮込んだスープだ。わたしも何度かごちそうになったことがある。今日のお昼には出てこなかったから、本当はコレを使って夕飯を作るつもりだったのだろう。夕飯はシチューかな。まろやかな野菜の旨味がギュッと濃縮されたスープはとても美味しいし、何よりホッとする味がするのだ。
エミリーはしばらくただただお皿を見つめていたけれど、そのうち、カチャリと手元のスプーンをとった。
「……おいしい……」
カチャカチャと、時折音を響かせながら、エミリーはスプーンを動かす。目を真っ赤にして、鼻を啜りながら、けれどもエミリーは手を止めることなく、ひたすらにスープを飲んだ。
「あ、ありがとう……ありがとう、ございます……。おいしい、おいしいです」
「おう、よかった。おかわりいるか?」
「はい……いただきます」
「パン小さく切ったの食べる?」
「た、食べます」
エミリーが頷いたのを確認すると、イージスは厨房の方に引っ込んで、スープのおかわりと一緒に、細切れにしたパンと、それからチーズとキャベツの酢漬けをよそった小鉢を持ってきた。
「まあ、食えるもんだけ食っとけよ。残したらそのまま置いといてくれればいいから」
「……ありがとうございます……!」
イージスは「ん」と言って、手をヒラヒラ振りながら食堂を出て行った。
エミリーはその背中を何か物言いたげに目で追っていたけれど、すぐにまた食事を再開した。
イージスがここに残らなかったのは、良くも悪くも、エミリーの身の上話に興味がないんだろうと思う。でも、それは多分彼なりの気遣いだ。自分にはわざわざ聞くほど興味がない。その上で他人の弱音の告白を聞く人数は少ない方がいいだろう、という。
「……私、あったかい食べ物、久しぶりです」
エミリーはにこ、とはにかんだ。彼女はパンとチーズ、キャベツの酢漬けも一口ずつ食べた。
「……すっごい、忙しくて、大変だったんです。私、寝れないし、ご飯も食べれなくて、でもお仕事は毎日あって」
食べながら、エミリーはポツポツと話し始めた。
いかにも悲しそうだったり、辛そうだったりするでもなく、むしろ感情のない瞳で口元に薄く笑みを作りながら話す姿は、痛々しくてしょうがなかった。
「私がやらなくちゃ、人の命にも関わることだから、頑張らなくっちゃって……。あのバカ王子にメリアさんは本当は聖女じゃないのにとかボロっちゃったのは私だし……」
「ううん、それはエミリーのせいじゃない。まさかそれで独断で追放とかしでかすなんて予想できないわ」
「ごめんなさい……。メリアさんからもお仕事を奪って……」
「あなたのせいじゃないったら」
「ごめん、なさい」
やっぱり、わたしのこともエミリーを気に病ませる原因の一つだった。本当に、彼女には申し訳ない。
「エミリー、ごめんなさい。わたし、王子に追放と言われてカッとなっていた。あなたの話も聞くべきだったのに」
「……えへへ、だって、私、その時国にいませんでしたもん……。しょうがないですよぉ……」
「エミリー……」
エミリーはふにゃ、と口元を緩ませて笑った。
──エミリーは誤解されやすいが、とても真面目で優しい女の子だ。高い位置でツインテールに結ばれたふわふわのピンク色の髪、丸くって大きな瞳、甘ったるい喋り方。砂糖菓子みたいな女の子。彼女について、『ぶりっこ』だ、『ギャルっぽそう』だ、『男を誘っている』だなんだと揶揄する声は私も聞いたことがある。エミリーは、かわいいものが大好きなだけの女の子なのに。あのバカ王子なんて、エミリーを遊び好きだと思い込んでかなりキツいセクハラをしていた。本当に最低である。大方、わたしを追い出してしまえば今度はエミリーと婚約できるぞ! と思って、エミリーから言質を取ったぞとばかりにわたしを婚約破棄、追放したんじゃなかろうか。
「よかったぁ……私、メリアさんにきらわれてなくて……」
「嫌うわけないじゃない!」
「私のせいで、メリアさんが追い出されたんだって……メリアさんにまで、思われてたら、どうしようって……思ってたからぁ……」
エミリーはまた、しゃくり上げだす。
「……私、辛くて、でも……わたし……私、聖女だから……頑張ってたけど……」
エミリーは呂律が回らなくなってきていた。わたしはその小さな丸い肩をぽんぽんと叩いた。
「もう、もう……わたし、無理ですよお!」
赤紫色の丸い瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていく。
エミリーの着ている白い聖女服の胸元に涙の跡がぼたり、ぼたりと増えていった。
「もう、疲れてて。時間があったら少しでも寝て身体休めなくっちゃって、わかってるんですけど、でも、なんかぼうっとずっと枝毛探しちゃったりとかしちゃってえ」
「うん、うん」
「最近は自分の部屋にいると、なんか、涙出てきちゃって」
「辛かったわね、エミリー。頑張ったのね」
「でも、でも、もう、ほんと、無理ですよお……!」
エミリーは子どものようにわんわんと声を上げて泣き出した。二人で激務を乗り越えてきたのだ。一人でなんて、無理に決まっている。
わたしは最低だ。大丈夫かな、とは思ってなんかないで、もっと早く彼女に会いに行くべきだった。いままでどれほど頑張ってきたことだろう。
エミリーの体を抱きしめる。
「エミリー、おやすみをもらいましょう。他国との行き来ができなくなったって、どうってことはないわ。あの国は壁の中になんでもあるんだから」
「でも、でもぉ……お手紙とか、大事な郵便物とかもあるし」
「そんなの届くのに時間かかったっていいじゃない。それはあなたの責任じゃ無くて、あなたの仕事を管理する国の責任よ」
「メリアさぁん……」
ぐすっ、とエミリーは鼻を啜る。
「──……そうだ、聖女。休め」
いままでわたしたちのやりとりを傍らで静かに見守ってくださっていた魔王さまが、初めてエミリーに対して語りかける。
エミリーは泣き腫らして赤くした瞳を丸くして、きょとんと魔王さまを見上げた。
「あの国を覆う結界も取り払ってしまえ」
「え、ええ?」
「そうしたら、俺たちは力を取り戻してしまってもあの壁の中に潜り込める」
つまり、それは。
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