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その51
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「本当に、しつこいな・・・」
何度目かの斬撃をジェダに浴びせたサージは回避行動を取りつつも吐き捨てるように呟く。生身の人間ならこの一撃は内臓にまで到達した致命傷となるダメージだったが、一度死んでいるバンパイアはそんなのはかすり傷とばかりに平然と反撃を繰り出してくる。元々、我慢強くないサージは懲りない敵に呆れはじめていた。
「それはこっちの台詞だ! 下郎!」
もっとも、対するジェダもサージに対して苛立ちを露わにする。実はこの二人、共に目論見が外れていたのである。
サージがミリアに〝墓所〟の在り処を伝えたのは、当初の計画通りバンパイアの力の源を断つためでもあったが、本音は彼女に別行動を取らせてその間に、ジェダと一対一で戦うための方便だった。
そのために挑発を行い、敵をこの場に釘付けにしたのだが、ここまでジェダが粘るとは全くの想定外だった。彼はこれまで戦ったレッサーバンパイアの延長として真祖であるジェダにも〝錬体術〟で強化した武器ならば、多少でもダメージを与えられると楽観視していた。
確かに目論見通りダメージは与えられている。だが、敵はそれを〝混沌の加護〟によって一瞬で回復させてしまうのだ。これは〝錬体術〟を駆使するサージにとっても恐るべき再生能力で、限りなく不死に近いといっても過言ではないだろう。
かといって切り札であるはずの〝閃光砲〟も場所がら連発することは難しいし、既に一度は防がれている。ジェダを倒すには、やはりその源である〝墓所〟を先に破壊するしかないと認める他なかった。
一方、ジェダもサージの実力を見誤っていた。敢えて挑発に乗ったのも〝墓所〟に施している結界をミリア一人では破るのは不可能と見て、サージとミリアを各個撃破するためだ。地上の中庭に向った姉の対応は持久戦でサージを倒した後で良いと判断したのである。
敵は手練れの魔法剣士ではあるが、所詮は人間の身であり魔力には限界があると踏んだのだ。しかし、サージは期待した魔力の枯渇を起こすことなく、執拗に攻め続けて来る。受けたダメージは直ぐに回復させてはいるが、このままではいつまでたっても決着を付けることは出来ないだろう。
「・・・ふふふ、お前のような人間が存在しているとは、本当に驚くことだ・・・だが、勝つのはこの私だ!!せっかく造り上げた拠点を失うことにはなるが・・・お前を道連れに出来るなら・・・割に合う。さらばだ!!」
間合いを維持するサージを睨みつけるジェダだったが、吹っ切れたように笑みを浮かべると、捨て台詞を残して身体を無敵状態である霧へと変化させる。
「逃がすかよ!」
まさしく飛びながら逃げ出した霧を追うため、サージは走りだす。ミリアとの共闘は不本意であるが、地上に戻るのは彼にとってはむしろ好都合である。被害に気にすることなく〝閃光砲〟を射出することが出来るからだ。
しかし、ジェダを追って通路に出たサージは激しい揺れによって立ち止まらなくてはならなかった。
「まさか!!」
目の前で崩落する地下通路を見つめながらサージは吠える。彼は敵の言葉を真面目に聞く様な耳は持っていない。だが、聞き流していた先程のジェダの台詞をここに来て思い出していた。『・・・お前を道連れに・・・』その言葉の意味を、瓦解していくバンパイアの地下宮殿を前にサージは理解する。敵は自分を生き埋めにしようとしているのだと。次の瞬間、彼の頭上めがけて天井を形成していた岩の塊が崩れ落ちた。
何度目かの斬撃をジェダに浴びせたサージは回避行動を取りつつも吐き捨てるように呟く。生身の人間ならこの一撃は内臓にまで到達した致命傷となるダメージだったが、一度死んでいるバンパイアはそんなのはかすり傷とばかりに平然と反撃を繰り出してくる。元々、我慢強くないサージは懲りない敵に呆れはじめていた。
「それはこっちの台詞だ! 下郎!」
もっとも、対するジェダもサージに対して苛立ちを露わにする。実はこの二人、共に目論見が外れていたのである。
サージがミリアに〝墓所〟の在り処を伝えたのは、当初の計画通りバンパイアの力の源を断つためでもあったが、本音は彼女に別行動を取らせてその間に、ジェダと一対一で戦うための方便だった。
そのために挑発を行い、敵をこの場に釘付けにしたのだが、ここまでジェダが粘るとは全くの想定外だった。彼はこれまで戦ったレッサーバンパイアの延長として真祖であるジェダにも〝錬体術〟で強化した武器ならば、多少でもダメージを与えられると楽観視していた。
確かに目論見通りダメージは与えられている。だが、敵はそれを〝混沌の加護〟によって一瞬で回復させてしまうのだ。これは〝錬体術〟を駆使するサージにとっても恐るべき再生能力で、限りなく不死に近いといっても過言ではないだろう。
かといって切り札であるはずの〝閃光砲〟も場所がら連発することは難しいし、既に一度は防がれている。ジェダを倒すには、やはりその源である〝墓所〟を先に破壊するしかないと認める他なかった。
一方、ジェダもサージの実力を見誤っていた。敢えて挑発に乗ったのも〝墓所〟に施している結界をミリア一人では破るのは不可能と見て、サージとミリアを各個撃破するためだ。地上の中庭に向った姉の対応は持久戦でサージを倒した後で良いと判断したのである。
敵は手練れの魔法剣士ではあるが、所詮は人間の身であり魔力には限界があると踏んだのだ。しかし、サージは期待した魔力の枯渇を起こすことなく、執拗に攻め続けて来る。受けたダメージは直ぐに回復させてはいるが、このままではいつまでたっても決着を付けることは出来ないだろう。
「・・・ふふふ、お前のような人間が存在しているとは、本当に驚くことだ・・・だが、勝つのはこの私だ!!せっかく造り上げた拠点を失うことにはなるが・・・お前を道連れに出来るなら・・・割に合う。さらばだ!!」
間合いを維持するサージを睨みつけるジェダだったが、吹っ切れたように笑みを浮かべると、捨て台詞を残して身体を無敵状態である霧へと変化させる。
「逃がすかよ!」
まさしく飛びながら逃げ出した霧を追うため、サージは走りだす。ミリアとの共闘は不本意であるが、地上に戻るのは彼にとってはむしろ好都合である。被害に気にすることなく〝閃光砲〟を射出することが出来るからだ。
しかし、ジェダを追って通路に出たサージは激しい揺れによって立ち止まらなくてはならなかった。
「まさか!!」
目の前で崩落する地下通路を見つめながらサージは吠える。彼は敵の言葉を真面目に聞く様な耳は持っていない。だが、聞き流していた先程のジェダの台詞をここに来て思い出していた。『・・・お前を道連れに・・・』その言葉の意味を、瓦解していくバンパイアの地下宮殿を前にサージは理解する。敵は自分を生き埋めにしようとしているのだと。次の瞬間、彼の頭上めがけて天井を形成していた岩の塊が崩れ落ちた。
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