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その3
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「・・・なるほど。では、とりあえずその条件を聞こうか」
「ああ・・・条件とは君にも私達の仲間に・・・組織に加入してもらう。何しろ、見ず知らずの者に情報は渡せない!」
「・・・話はここまでにしようか!」
女の提案に興味を持った男だったが、否と即答する。彼からすれば何かしらの組織に属することを強いられる時点で乗り気が失せたのである。男にとって自分の主は自分だけなのだ。
「ま、待って! 話は最後まで聞いてくれ! 君は〝混沌の僕〟達と戦いのだろう? やつらの多くは、このグレイバックとは違い目立つことなく巧妙に隠れて暗躍している。個人では居場所どころか、その存在すら感知するのも難しい。もっと大物を狙いたいなら私達の仲間になるのが最善だ。それに私達の組織・・・〝スレイヤー・ギルド〟での義務は二つしかない。一つは〝混沌の僕〟を倒すこと、二つ目は組織の秘密を守ること。君にからすれば、実質一つだろう。それで個人では得難い情報と衣食住の協力を受けられる。悪い話ではないはずだ!」
いくらなんでも、早すぎる交渉打ち切りに女は舌を酷使させて早口に仲間に加わる利点を述べる。最終的に拒否されたとしても、男の戦意を削ぐ時間だけはなんとしても稼ぐ必要があった。
「なるほど・・・それが本当なら確かに悪い話ではないな。しかし、その〝スレイヤー・ギルド〟とやらはなぜ存在を隠す? またその運用資金はどこから出ている? 秘密組織なら金を集めるのは難しいと思われるが?」
粗野と思われた男だが、組織の利点を認めつつも幾つかの核心を突いた疑問点を指摘した。
「繰り返すが〝混沌と僕〟の中には人間から変化した者もいる。そして、そのような者は表向きの立場を持っている。恐ろしいことに、一つの街を支配する領主がそれであることもある。このような社会的を地位持っている敵を狩るには秘密組織の方が・・・都合が良い。資金については混沌の勢力と敵対する国を越えた勢力があるとだけ言っておこう」
組織の根底を問う質問に女は可能な限り率直に答える。明言はしていないが、説明からすると〝スレイヤー・ギルド〟をバックアップしているのは混沌と敵対関係にある光の神々を信仰する教団であるらしい。そして討伐対象の中に表向きの立場を持った人間が存在しているとなると、確かに公に出来るはずがないと思われた。
「そういうことか・・・ところで、仮にギルドに加わったとして光の神々への信仰や忠誠は強要されないのだろうな?」
「ああ、個人で信仰しているメンバーはいると思うが、組織としての強要はない。それに脱退も禁止されていない。何しろ〝混沌の僕〟との戦いは過酷だからな、志願制だ。嫌々参加されても迷惑だし士気も下がる。・・・どうだ? 君と私達は協力し合えると思えるが?」
「そうだな・・・忠誠を強要されず、いつでも辞められるなら、異存はないな・・・」
「良かった! 私の名はミリアだ。これからよろしく!! 君は?」
男が反対しなかったことで女は既成事実を作り上げようと、歩み寄りながら右手を差し出す。
「俺は・・・サージだ。ところでお前、良く見たら凄い美人だな。殺さなくて良かった!」
「・・・それは、ありがとう・・・」
交渉が成立し長剣の戦士サージと握手を交わしたミリアだったが、その整った顔に苦笑が浮かぶのは隠せなかった。
「ああ・・・条件とは君にも私達の仲間に・・・組織に加入してもらう。何しろ、見ず知らずの者に情報は渡せない!」
「・・・話はここまでにしようか!」
女の提案に興味を持った男だったが、否と即答する。彼からすれば何かしらの組織に属することを強いられる時点で乗り気が失せたのである。男にとって自分の主は自分だけなのだ。
「ま、待って! 話は最後まで聞いてくれ! 君は〝混沌の僕〟達と戦いのだろう? やつらの多くは、このグレイバックとは違い目立つことなく巧妙に隠れて暗躍している。個人では居場所どころか、その存在すら感知するのも難しい。もっと大物を狙いたいなら私達の仲間になるのが最善だ。それに私達の組織・・・〝スレイヤー・ギルド〟での義務は二つしかない。一つは〝混沌の僕〟を倒すこと、二つ目は組織の秘密を守ること。君にからすれば、実質一つだろう。それで個人では得難い情報と衣食住の協力を受けられる。悪い話ではないはずだ!」
いくらなんでも、早すぎる交渉打ち切りに女は舌を酷使させて早口に仲間に加わる利点を述べる。最終的に拒否されたとしても、男の戦意を削ぐ時間だけはなんとしても稼ぐ必要があった。
「なるほど・・・それが本当なら確かに悪い話ではないな。しかし、その〝スレイヤー・ギルド〟とやらはなぜ存在を隠す? またその運用資金はどこから出ている? 秘密組織なら金を集めるのは難しいと思われるが?」
粗野と思われた男だが、組織の利点を認めつつも幾つかの核心を突いた疑問点を指摘した。
「繰り返すが〝混沌と僕〟の中には人間から変化した者もいる。そして、そのような者は表向きの立場を持っている。恐ろしいことに、一つの街を支配する領主がそれであることもある。このような社会的を地位持っている敵を狩るには秘密組織の方が・・・都合が良い。資金については混沌の勢力と敵対する国を越えた勢力があるとだけ言っておこう」
組織の根底を問う質問に女は可能な限り率直に答える。明言はしていないが、説明からすると〝スレイヤー・ギルド〟をバックアップしているのは混沌と敵対関係にある光の神々を信仰する教団であるらしい。そして討伐対象の中に表向きの立場を持った人間が存在しているとなると、確かに公に出来るはずがないと思われた。
「そういうことか・・・ところで、仮にギルドに加わったとして光の神々への信仰や忠誠は強要されないのだろうな?」
「ああ、個人で信仰しているメンバーはいると思うが、組織としての強要はない。それに脱退も禁止されていない。何しろ〝混沌の僕〟との戦いは過酷だからな、志願制だ。嫌々参加されても迷惑だし士気も下がる。・・・どうだ? 君と私達は協力し合えると思えるが?」
「そうだな・・・忠誠を強要されず、いつでも辞められるなら、異存はないな・・・」
「良かった! 私の名はミリアだ。これからよろしく!! 君は?」
男が反対しなかったことで女は既成事実を作り上げようと、歩み寄りながら右手を差し出す。
「俺は・・・サージだ。ところでお前、良く見たら凄い美人だな。殺さなくて良かった!」
「・・・それは、ありがとう・・・」
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