33 / 50
第二章 いにしえの巫女
第二章 第十話
しおりを挟む
目指す廃坑は直ぐに見つかった。この周囲にはこれ以外にも鉱物が枯渇したか、採算が取れなくなったと思われる廃坑の入口が多数あったが、ディエッタの分身とも言える使い魔の案内により、迷う事なく到着することが出来た。
それ以外にもグリフ達はディエッタの置かれている状況を聞き出しており、(正確には質問攻めにして、情報を取り出した)彼女達のパーティーは坑道の物置部屋とされていた空間に立て籠もっていることが判明した。
そして、生き残っているパーティメンバーは三人で、その内ディエッタを含むもう一人が戦闘可能であり、残った一人は深手を負っていて一刻も早い治療が必要とのことだった。
ワイトが待ち受ける坑道に突入するグリフ達だが、無策に飛び込んだわけではなかった。ディエッタ側も中から連動して戦う手筈を整えていたし、グリフ達には切り札となるカーシルがいた。
彼女は精霊を操る祈祷魔法の使い手であり、地中である坑道は大地の精霊が活発な場所だ。カーシルは大地の精霊を操って一時的な土の壁を作ることが出来る。これを活用すれば、ワイトを各個分断することが可能なのだ。
入口から離れた場所に馬を留めたグリフ達は手筈通りに坑道へ侵入する。当然のごとくグリフが先頭に立ち、二番目をタリエラ、そして殿はランタンを持つカーシルが務める。光源を確保しながら魔法によるワイトの分断と、カラスの使い魔を通してディエッタからの指示を伝えるのが彼女の役目だ。
「来たぞ!」
暗闇に浮かぶワイトの双眸が前方に現れるとグリフは告げた。亡者の群れが互いの身体を押すようにグリフ達に殺到する。光の加減で奥まで見通すことは出来なかったが、少なく見ても二十体近くはいる。これだけのワイトを一気に相手をするとなると、熟練の冒険者パーティーでも苦しい戦いとなるだろう。
だが、次の瞬間カーシルの魔法が発現し、前の二体のワイトの背後に〝土壁〟を作った。人間ならば、後続と遮断されたことで取り乱すはずだが、ワイトはそのまま自身の渇望を満たすことだけを願って前進を続ける。グリフはタリエラの弓がその内に一体に突き刺さるのを確認すると、距離を詰めて斬り掛かった。
二体ずつに孤立させたワイトはグリフ達の敵ではなく、同じ戦術で六体目のワイトを倒した段階でグリフ達は予定どおり後退を始める。ある程度の頭数を減らし後はワイトの群れを入口付近に集めて、ディエッタ達が隠れている部屋から出る時間稼ぐのだ。
「準備が出来たって!」
ワイトに対して牽制しながら後退していたグリフは、後ろから発せられたカーシルの警告で身構えた。彼らの計画では入口付近に集めたワイトを、ディエッタが後ろから〝火球〟の魔法で一網打尽にする手筈となっていたからだ。彼女が距離を誤れば魔法に巻き込まれる恐れがあった。だが、カーシルの魔法によりその心配は杞憂に終わる。グリフの前に〝火球〟の余波を防ぐための新たな〝土壁〟が下からせり上がった。
狭い廃坑の壁と空気を震撼させる爆発音がグリフ達にも届いた。それを合図にしてカーシルは〝土壁〟を解除する。密集自体にあるとしてもワイトの数は多数であり、撃ち漏らした敵がディエッタ達を襲うと思われたからだ。ディエッタの能力では〝火球〟を使用するのは一日に一回が限度であるらしく、もう魔力は残されていないのだ。
焼き焦げた死体の山を越えてグリフは、ディエッタ達を襲う生き残りのワイト目掛けて全速力で駆け寄った。彼女達は身体の一部を燃え上がらせている三体のワイトに襲われていて、苦しい防戦を繰り広げている。ディエッタと思われる細身の人影が坑道の地べたに力なくしゃがみ込み、彼女の前に立ってワイトと戦う革鎧を着た仲間を見つめていた。だが、その冒険者は今にもワイト達に組み伏せられようとしている。
「おお!」
気合の雄叫びとともに背後から必殺の一撃を繰り出したグリフは、中央のワイトの頭を脳天から胸元までに真っ二つに割った。そのまま剣を引き抜き、左側のワイトを次の獲物をするために間合いを詰める。対峙する相手が一体となった革鎧の冒険者は、援軍の登場で力を得たように体勢を整えると攻勢に転じた。タリエラの援護もあり、ワイトの残党はやがてただの骸へと戻っていった。
「はぁ・・・まじで助かったぜ!」
息を整えるのも待ちきれないように、金髪を短く刈りこんだ革鎧の冒険者がグリフ達に礼を告げる。荒っぽい言葉使いだが、その冒険者は女性であり、顔にはこれ以上にない笑顔を浮かべていた。グリフはその身体特徴から彼女が、ディエッタのパーティーで盗賊を担当しているミージアだと思い出した。
「怪我はない?」
「ああ、あたしは大丈夫だ!だが、ディエッタと特にナフラルがやばいんだ!早く診てくれないか!」
グリフの後ろから問い掛けるカーシルにミージアは縋りつくように言葉を返す。
「私は大丈夫ですわ!魔力を使い切ってはいますが、怪我はありません!ナフラルを!」
近くに蹲っていたディエッタもそれだけを伝えると、立て籠もっていたと思われる横穴に指を示す。
「わかったよ!」
「頼む!こっちだ、来てくれ!」
頷くカーシルとタリエラを連れてミージアが横穴へと入って行った。グリフもそれを追おうとしたが、その前に地べたに座るディエッタに手を伸ばす。この坑道にいたワイト達は殲滅したはずだが、万が一残っているとも限らない。孤立させるわけにはいかなかった。
「・・・お礼を言いますわ」
差し出されたグリフの手を前にして、一瞬だけ考え込んだディエッタはそう告げると素直に手を取った。プライドの高い彼女ではあるが、変な意地は無意味と思ったのかもしれない。
「でも、よく私の使い魔を見つけてられましたわね・・・。食料が尽きて自力での突破を考えていた矢先でした・・・」
ディエッタはグリフに支えられて立ち上がると溜息とともに呟いた。〝飛竜の涙亭〟で見かける彼女はいつもお洒落で身綺麗な恰好をしていたが、今の彼女はかなり薄汚れた姿だ。精神的にも追いつめられていたに違いない。
「カーシルがカラスの悲鳴を聞き取ったんだ。あいつは見た目こそ若いが、相当な実力者だ。礼なら彼女に告げるんだな!」
グリフはディエッタが以前にカーシルの年齢を気にしていたことを思い出すと、やや皮肉気味に告げる。カーシルが冒険者となっていなければ、彼女達はどうなっていたかは想像に難くない。
「確かに、そのようですわね・・・」
ディエッタがカーシルの実力を認めたことで、グリフもそれ以上は嫌味を口にしなかった。
ディエッタ達の救出と合流に成功すると彼らは速やかに坑道から抜け出した。そのグリフ達を空高い位置にある陽の光が出迎える。ランタンの淡い灯りに慣れていたグリフは、その強烈な光に思わず顔を顰めるが、心地良さと頼もしい力を感じた。
だが、それを堪能する余裕はない。カーシルの証言から他の廃坑にもワイトが潜んでいることが判明したからだ。時刻はまだ正午前後と思われたが、陽が照らしている時間は貴重であり無駄にすることは出来ない。一刻も早くこの地から離れる必要があった。
怪我を負っていたディエッタ達の仲間、男性の戦士のナフラルはカーシルの治療で一命を取り留めたが、精神疲労が激しく意識は取り戻せずにいた。致命傷さえも一瞬で回復させるカーシルの〝癒し〟ではあるが、精神の衰弱までは治すことができないのだ。
そのような理由もあり、グリフ達はやむを得ずナフラルを馬に括りつけて運ぶことにする。残りの二頭は籠城を続けていたディエッタとミージアに貸し出すつもりでいたが、ミージアはそれを辞退して、ナフラルを乗せた馬の引率役を志願した。
ナフラルを治療したカーシルに泣きながら感謝をしていたところを見ると、この二人は特別の関係のようだった。もちろん、それに異を唱える者はおらず、残る二頭の一頭をディエッタに、残った馬はグリフ達で交代に乗ることにして移動を開始した。
それ以外にもグリフ達はディエッタの置かれている状況を聞き出しており、(正確には質問攻めにして、情報を取り出した)彼女達のパーティーは坑道の物置部屋とされていた空間に立て籠もっていることが判明した。
そして、生き残っているパーティメンバーは三人で、その内ディエッタを含むもう一人が戦闘可能であり、残った一人は深手を負っていて一刻も早い治療が必要とのことだった。
ワイトが待ち受ける坑道に突入するグリフ達だが、無策に飛び込んだわけではなかった。ディエッタ側も中から連動して戦う手筈を整えていたし、グリフ達には切り札となるカーシルがいた。
彼女は精霊を操る祈祷魔法の使い手であり、地中である坑道は大地の精霊が活発な場所だ。カーシルは大地の精霊を操って一時的な土の壁を作ることが出来る。これを活用すれば、ワイトを各個分断することが可能なのだ。
入口から離れた場所に馬を留めたグリフ達は手筈通りに坑道へ侵入する。当然のごとくグリフが先頭に立ち、二番目をタリエラ、そして殿はランタンを持つカーシルが務める。光源を確保しながら魔法によるワイトの分断と、カラスの使い魔を通してディエッタからの指示を伝えるのが彼女の役目だ。
「来たぞ!」
暗闇に浮かぶワイトの双眸が前方に現れるとグリフは告げた。亡者の群れが互いの身体を押すようにグリフ達に殺到する。光の加減で奥まで見通すことは出来なかったが、少なく見ても二十体近くはいる。これだけのワイトを一気に相手をするとなると、熟練の冒険者パーティーでも苦しい戦いとなるだろう。
だが、次の瞬間カーシルの魔法が発現し、前の二体のワイトの背後に〝土壁〟を作った。人間ならば、後続と遮断されたことで取り乱すはずだが、ワイトはそのまま自身の渇望を満たすことだけを願って前進を続ける。グリフはタリエラの弓がその内に一体に突き刺さるのを確認すると、距離を詰めて斬り掛かった。
二体ずつに孤立させたワイトはグリフ達の敵ではなく、同じ戦術で六体目のワイトを倒した段階でグリフ達は予定どおり後退を始める。ある程度の頭数を減らし後はワイトの群れを入口付近に集めて、ディエッタ達が隠れている部屋から出る時間稼ぐのだ。
「準備が出来たって!」
ワイトに対して牽制しながら後退していたグリフは、後ろから発せられたカーシルの警告で身構えた。彼らの計画では入口付近に集めたワイトを、ディエッタが後ろから〝火球〟の魔法で一網打尽にする手筈となっていたからだ。彼女が距離を誤れば魔法に巻き込まれる恐れがあった。だが、カーシルの魔法によりその心配は杞憂に終わる。グリフの前に〝火球〟の余波を防ぐための新たな〝土壁〟が下からせり上がった。
狭い廃坑の壁と空気を震撼させる爆発音がグリフ達にも届いた。それを合図にしてカーシルは〝土壁〟を解除する。密集自体にあるとしてもワイトの数は多数であり、撃ち漏らした敵がディエッタ達を襲うと思われたからだ。ディエッタの能力では〝火球〟を使用するのは一日に一回が限度であるらしく、もう魔力は残されていないのだ。
焼き焦げた死体の山を越えてグリフは、ディエッタ達を襲う生き残りのワイト目掛けて全速力で駆け寄った。彼女達は身体の一部を燃え上がらせている三体のワイトに襲われていて、苦しい防戦を繰り広げている。ディエッタと思われる細身の人影が坑道の地べたに力なくしゃがみ込み、彼女の前に立ってワイトと戦う革鎧を着た仲間を見つめていた。だが、その冒険者は今にもワイト達に組み伏せられようとしている。
「おお!」
気合の雄叫びとともに背後から必殺の一撃を繰り出したグリフは、中央のワイトの頭を脳天から胸元までに真っ二つに割った。そのまま剣を引き抜き、左側のワイトを次の獲物をするために間合いを詰める。対峙する相手が一体となった革鎧の冒険者は、援軍の登場で力を得たように体勢を整えると攻勢に転じた。タリエラの援護もあり、ワイトの残党はやがてただの骸へと戻っていった。
「はぁ・・・まじで助かったぜ!」
息を整えるのも待ちきれないように、金髪を短く刈りこんだ革鎧の冒険者がグリフ達に礼を告げる。荒っぽい言葉使いだが、その冒険者は女性であり、顔にはこれ以上にない笑顔を浮かべていた。グリフはその身体特徴から彼女が、ディエッタのパーティーで盗賊を担当しているミージアだと思い出した。
「怪我はない?」
「ああ、あたしは大丈夫だ!だが、ディエッタと特にナフラルがやばいんだ!早く診てくれないか!」
グリフの後ろから問い掛けるカーシルにミージアは縋りつくように言葉を返す。
「私は大丈夫ですわ!魔力を使い切ってはいますが、怪我はありません!ナフラルを!」
近くに蹲っていたディエッタもそれだけを伝えると、立て籠もっていたと思われる横穴に指を示す。
「わかったよ!」
「頼む!こっちだ、来てくれ!」
頷くカーシルとタリエラを連れてミージアが横穴へと入って行った。グリフもそれを追おうとしたが、その前に地べたに座るディエッタに手を伸ばす。この坑道にいたワイト達は殲滅したはずだが、万が一残っているとも限らない。孤立させるわけにはいかなかった。
「・・・お礼を言いますわ」
差し出されたグリフの手を前にして、一瞬だけ考え込んだディエッタはそう告げると素直に手を取った。プライドの高い彼女ではあるが、変な意地は無意味と思ったのかもしれない。
「でも、よく私の使い魔を見つけてられましたわね・・・。食料が尽きて自力での突破を考えていた矢先でした・・・」
ディエッタはグリフに支えられて立ち上がると溜息とともに呟いた。〝飛竜の涙亭〟で見かける彼女はいつもお洒落で身綺麗な恰好をしていたが、今の彼女はかなり薄汚れた姿だ。精神的にも追いつめられていたに違いない。
「カーシルがカラスの悲鳴を聞き取ったんだ。あいつは見た目こそ若いが、相当な実力者だ。礼なら彼女に告げるんだな!」
グリフはディエッタが以前にカーシルの年齢を気にしていたことを思い出すと、やや皮肉気味に告げる。カーシルが冒険者となっていなければ、彼女達はどうなっていたかは想像に難くない。
「確かに、そのようですわね・・・」
ディエッタがカーシルの実力を認めたことで、グリフもそれ以上は嫌味を口にしなかった。
ディエッタ達の救出と合流に成功すると彼らは速やかに坑道から抜け出した。そのグリフ達を空高い位置にある陽の光が出迎える。ランタンの淡い灯りに慣れていたグリフは、その強烈な光に思わず顔を顰めるが、心地良さと頼もしい力を感じた。
だが、それを堪能する余裕はない。カーシルの証言から他の廃坑にもワイトが潜んでいることが判明したからだ。時刻はまだ正午前後と思われたが、陽が照らしている時間は貴重であり無駄にすることは出来ない。一刻も早くこの地から離れる必要があった。
怪我を負っていたディエッタ達の仲間、男性の戦士のナフラルはカーシルの治療で一命を取り留めたが、精神疲労が激しく意識は取り戻せずにいた。致命傷さえも一瞬で回復させるカーシルの〝癒し〟ではあるが、精神の衰弱までは治すことができないのだ。
そのような理由もあり、グリフ達はやむを得ずナフラルを馬に括りつけて運ぶことにする。残りの二頭は籠城を続けていたディエッタとミージアに貸し出すつもりでいたが、ミージアはそれを辞退して、ナフラルを乗せた馬の引率役を志願した。
ナフラルを治療したカーシルに泣きながら感謝をしていたところを見ると、この二人は特別の関係のようだった。もちろん、それに異を唱える者はおらず、残る二頭の一頭をディエッタに、残った馬はグリフ達で交代に乗ることにして移動を開始した。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる