15 / 50
第一章 戦士グリフと銀髪の少年
第十五話
しおりを挟む
日暮れを迎えた頃、グリフはカーシルを部屋に残して下に降りると一人で情報収集を開始した。この時間帯ならば多くの冒険者が集まり出すからである。そして、カーシルを残したのは彼の容貌が目立ち過ぎるからだ。
銀髪の美少年を連れて聞き込みをしては彼らこそが、話の種として広まってしまうだろう。夕食も部屋で摂ることにしていた。
しばらくして、グリフはナスラの話の裏取りとセレメとガルドに関する話をそれとなく聞き出した。彼女の話は間違いのない事実であり、ガルドは大商人として、セレメはレスゲンの妻としてローアンに存在しているのは間違いことが知れた。
また、その過程でグリフは〝飛竜の涙亭〟の主人であるロンデルが病によって引退状態であることも知る。十二年前の自分を良く知る彼を避けるために、明日には宿を変えようと思っていたがその必要はなくなった。
「仕事を見つけて来た。明日はガルドのところに行く!」
二人分の食事と麦酒を乗せたお盆を抱えて部屋に戻ったグリフは、カーシルに説明を始める。
「ガルドってグリフの仲間だった人だよね?」
テーブルの上から羊皮紙の端切れと筆、インク壷を片付けるとカーシルは確認するように問い掛ける。彼は留守番の間、西方語の単語の書き取りを命じられていた。
「ああ、そうだ。ガルドはかつての仲間で、今はこの街で成功した商人だ。それで商人なら、冒険者を募集していないかと思って探したら、目論見通り護衛の依頼をここに発注していたんだ。
ガルドはかなり手広く商売をしているらしく、人手不足のようだった。それで、いきなり会いにいくよりは、こうして依頼を請けて近づくことにした。何しろ金も貰えるしな!」
盆をテーブルに乗せると、グリフは椅子に腰を降ろし更に言葉を続ける。ガルドが人手不足なのは報酬が安いからだが、そこまでは彼も説明しなかった。
ガルドが依頼した仕事は、ローアンから近隣の村を行き来する小規模な取引の護衛だ。この程度は駆け出しの冒険者が受けるような仕事なので、報酬が低いのはやむを得ないのだが、ガルドは相場から一割ほど低い額を提示していた。
おそらく商人として成功するには、このようなところで費用を削る必要があるのだろう。また、グリフとしては、かつての恋人だったセレメのことも気に掛かっているのだが、同時に二つのことは出来ないのと、レスゲンの妻となった彼女と再会する心の準備がまだ整っていないので、まずはガルドに集中したのだった。
「一応、お前と俺の二人でローアンから片道三日の距離にあるレーブ村までの護衛を受けた。事後承諾になるが構わないだろう?明日の朝一番で簡単な顔合わせを受けて合格となったら、そのまま出発する手筈だ」
「グリフと一緒なら僕は構わないよ!」
カーシルの屈託のない返事にグリフは微笑むと麦酒の杯を手に取った。
「おし、じゃ夕食を食べたら明日に備えて早めに寝るぞ!」
「うん、じゃ、乾杯だね」
「ああ、ここの麦酒は上手いけど今日は一杯だけだぞ」
グリフは自分に言い聞かせるようにカーシルに宣言すると、喉を鳴らして麦酒を飲んだ。
翌日の早朝、グリフ達は部屋を引き払うとガルドの屋敷に向かった。かつては〝飛竜の涙亭〟の一部屋を長期契約で借りていたグリフだが今はそのような余裕はなく、残り少ない資金でやりくりする必要があるのだ。
ガルドの屋敷はローアン市街地の北部に位置しており、想像以上に大規模だった。これだけを見ても彼が商人として成功しているのは明らかだが、屋敷の敷地内には数多くの倉庫とそれらを流通するための複数の馬車や厩を用意しており、使用人達が既に今日の商いを開始している。ガルドはかなり手広く商材を扱っているに違いなかった。
グリフはその中から監督役と思われる人物に〝飛竜の涙亭〟で依頼を受けたことを伝えると屋敷内の待合室へと通された。
「さすがにお茶は出されないか」
グリフは部屋を眺めながらカーシムに話し掛ける。彼らが通された部屋は地味で質素な部屋だ。応接椅子が置かれてはいるがクッションは薄く、上客を持てなすようなものではない。おそらく仕事相手に会わせて、商談する部屋をいくつか用意しているだろう。駆け出しの冒険者ならこんなものだろうとグリフは納得した。
「僕達はもてなす価値がないってこと?」
「そうだ。・・・だが、ちょっと直接的過ぎる表現だな。カーシル、お前はまだ西方語に慣れていないから、俺以外と話す時は少し柔らかい表現に変えた方が良い。誤解を招くかもしれない」
「・・・僕達は、ガルドさんと、それほど親しくないしね」
「それでいい」
グリフが苦笑しながらカーシルを褒めたところで部屋にノックの音が響く、屋敷の人間がやって来たのだ。
現れたのはグリフより三つか四つ程年上と思われる女性だ。やはり、これほどの規模の商会となると、代表のガルド本人が出て来ることはないようだ。もしかしたらと、思っていたグリフは一先ず安堵した。
「初めまして。私は今回のレーブ村までの買い付けで責任者となるタリエラと申します。ええっと〝飛竜の涙亭〟から斡旋された。クリスさんとカーシルさんですね?契約の前に簡単に素性等を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
タリエラは女性にしては背が高めで、長い黒髪を無造作に束ねている。顔付きはちょっとした美人だが、切れ長の目とやや太い眉は意志の強さを感じさせた。
身体には使い古された革鎧を覆っており、腰には細身の剣を下げている。商人というよりは彼女自身も冒険者のようだ。時間を無駄にしたくない性格なのだろう。グリフ達との握手を終えると直ぐに要件に入った。
「イアデルの郊外から、仕事を求めてローアンにやって来たのですね?」
「ええ。俺が前にいたパーティーが解散したんで、甥のカーシルと組んで再出発を目論んでローアンに出て来たんです。こっちには仕事が多いって聞いていたんでね」
「なるほど」
頷きながらタリエラはグリフ達を値踏みするように見つめる。グリフよりもカーシルに費やす視線の方が多いようだが、それは仕方がない。何しろ彼は場違いなほどの美少年だからだ。
カーシルには前以って、自分との関係は叔父と甥であると言い含めている。当初は兄弟としようとしたグリフだが、自分がカーシルほどの美形でないのと、髪も黒に近い茶色であることを考慮して泣く泣く叔父で妥協したのだ。
「クリスさんは経験のある冒険者のようですが、カーシルさんはこのような仕事をするには、いささか若いのでは?こちらとしても報酬を支払う以上、戦力として期待できる方を雇いたいのです」
やはりそう来たか。とグリフは胸の中で舌打ちする。カーシルの見た目は十代前半でせいぜい十二、三歳といった具合だ。着ている革鎧もほぼ新品で整った顔付きもあり、どうみても強そうには見えない。ある意味タリエラの指摘は当然でグリフも予期していた。
「こいつはこう見えても、先月十四になったばかりですし、祈祷魔法が使えるんです。なんならここでお見せしましょうか?」
グリフは用意していた台詞を述べる。カーシルの年齢については水増ししたハッタリだが、この手のことは口で説明するよりも実際に見せた方が早い。グリフはこのような事態に備えて、祈祷魔法の使い手であるカーシルから可能な魔法を聞き出しており、もっとも劇的な効果を表す技を指定していた。
「・・・その若さで魔術士?いや祈祷魔法なら不思議ではないか・・・」
自身に満ちたグリフの反論にタリエラにやや面食らったように呟く。半信半疑と言った様子だ。
「よし、カーシル見せてやれ!」
「うん、わかった!」
カーシルは魔女の森でグリフを助ける時に使った、あの独特の囁くような詩を唱えると、その場から溶けるように姿を消した。まさに忽然と見えなくなったのだ。
「・・・そっそれは!凄い、本当に魔法を?!・・・いや、失礼しました。カーシルさんが貴重な魔術士であることは理解しました。あなた方に協力して頂けるなら心強いと思います。報酬について説明してよろしいでしょうか?」
姿を隠したカーシルに驚くタリエラだが、しばらくすると自分を取り戻したのか、先のことを詫びると、契約の詰めに入り出した。
「ええ、お願いします。カーシルもういいぞ!」
グリフの声でカーシルが姿を現す。いきなり具現化したようにも見えるが、カーシル自身が変化したわけではない。これは観測者の視覚に働き掛けて認識を誤魔化したに過ぎず、カーシル自身はどのような変化もせずに座り続けていた。
だから、タリエラが腕を伸ばせば触覚として彼を捕えることは可能だった。いずれにしてもカーシルはその実力をタリエラに認めさせた。
銀髪の美少年を連れて聞き込みをしては彼らこそが、話の種として広まってしまうだろう。夕食も部屋で摂ることにしていた。
しばらくして、グリフはナスラの話の裏取りとセレメとガルドに関する話をそれとなく聞き出した。彼女の話は間違いのない事実であり、ガルドは大商人として、セレメはレスゲンの妻としてローアンに存在しているのは間違いことが知れた。
また、その過程でグリフは〝飛竜の涙亭〟の主人であるロンデルが病によって引退状態であることも知る。十二年前の自分を良く知る彼を避けるために、明日には宿を変えようと思っていたがその必要はなくなった。
「仕事を見つけて来た。明日はガルドのところに行く!」
二人分の食事と麦酒を乗せたお盆を抱えて部屋に戻ったグリフは、カーシルに説明を始める。
「ガルドってグリフの仲間だった人だよね?」
テーブルの上から羊皮紙の端切れと筆、インク壷を片付けるとカーシルは確認するように問い掛ける。彼は留守番の間、西方語の単語の書き取りを命じられていた。
「ああ、そうだ。ガルドはかつての仲間で、今はこの街で成功した商人だ。それで商人なら、冒険者を募集していないかと思って探したら、目論見通り護衛の依頼をここに発注していたんだ。
ガルドはかなり手広く商売をしているらしく、人手不足のようだった。それで、いきなり会いにいくよりは、こうして依頼を請けて近づくことにした。何しろ金も貰えるしな!」
盆をテーブルに乗せると、グリフは椅子に腰を降ろし更に言葉を続ける。ガルドが人手不足なのは報酬が安いからだが、そこまでは彼も説明しなかった。
ガルドが依頼した仕事は、ローアンから近隣の村を行き来する小規模な取引の護衛だ。この程度は駆け出しの冒険者が受けるような仕事なので、報酬が低いのはやむを得ないのだが、ガルドは相場から一割ほど低い額を提示していた。
おそらく商人として成功するには、このようなところで費用を削る必要があるのだろう。また、グリフとしては、かつての恋人だったセレメのことも気に掛かっているのだが、同時に二つのことは出来ないのと、レスゲンの妻となった彼女と再会する心の準備がまだ整っていないので、まずはガルドに集中したのだった。
「一応、お前と俺の二人でローアンから片道三日の距離にあるレーブ村までの護衛を受けた。事後承諾になるが構わないだろう?明日の朝一番で簡単な顔合わせを受けて合格となったら、そのまま出発する手筈だ」
「グリフと一緒なら僕は構わないよ!」
カーシルの屈託のない返事にグリフは微笑むと麦酒の杯を手に取った。
「おし、じゃ夕食を食べたら明日に備えて早めに寝るぞ!」
「うん、じゃ、乾杯だね」
「ああ、ここの麦酒は上手いけど今日は一杯だけだぞ」
グリフは自分に言い聞かせるようにカーシルに宣言すると、喉を鳴らして麦酒を飲んだ。
翌日の早朝、グリフ達は部屋を引き払うとガルドの屋敷に向かった。かつては〝飛竜の涙亭〟の一部屋を長期契約で借りていたグリフだが今はそのような余裕はなく、残り少ない資金でやりくりする必要があるのだ。
ガルドの屋敷はローアン市街地の北部に位置しており、想像以上に大規模だった。これだけを見ても彼が商人として成功しているのは明らかだが、屋敷の敷地内には数多くの倉庫とそれらを流通するための複数の馬車や厩を用意しており、使用人達が既に今日の商いを開始している。ガルドはかなり手広く商材を扱っているに違いなかった。
グリフはその中から監督役と思われる人物に〝飛竜の涙亭〟で依頼を受けたことを伝えると屋敷内の待合室へと通された。
「さすがにお茶は出されないか」
グリフは部屋を眺めながらカーシムに話し掛ける。彼らが通された部屋は地味で質素な部屋だ。応接椅子が置かれてはいるがクッションは薄く、上客を持てなすようなものではない。おそらく仕事相手に会わせて、商談する部屋をいくつか用意しているだろう。駆け出しの冒険者ならこんなものだろうとグリフは納得した。
「僕達はもてなす価値がないってこと?」
「そうだ。・・・だが、ちょっと直接的過ぎる表現だな。カーシル、お前はまだ西方語に慣れていないから、俺以外と話す時は少し柔らかい表現に変えた方が良い。誤解を招くかもしれない」
「・・・僕達は、ガルドさんと、それほど親しくないしね」
「それでいい」
グリフが苦笑しながらカーシルを褒めたところで部屋にノックの音が響く、屋敷の人間がやって来たのだ。
現れたのはグリフより三つか四つ程年上と思われる女性だ。やはり、これほどの規模の商会となると、代表のガルド本人が出て来ることはないようだ。もしかしたらと、思っていたグリフは一先ず安堵した。
「初めまして。私は今回のレーブ村までの買い付けで責任者となるタリエラと申します。ええっと〝飛竜の涙亭〟から斡旋された。クリスさんとカーシルさんですね?契約の前に簡単に素性等を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
タリエラは女性にしては背が高めで、長い黒髪を無造作に束ねている。顔付きはちょっとした美人だが、切れ長の目とやや太い眉は意志の強さを感じさせた。
身体には使い古された革鎧を覆っており、腰には細身の剣を下げている。商人というよりは彼女自身も冒険者のようだ。時間を無駄にしたくない性格なのだろう。グリフ達との握手を終えると直ぐに要件に入った。
「イアデルの郊外から、仕事を求めてローアンにやって来たのですね?」
「ええ。俺が前にいたパーティーが解散したんで、甥のカーシルと組んで再出発を目論んでローアンに出て来たんです。こっちには仕事が多いって聞いていたんでね」
「なるほど」
頷きながらタリエラはグリフ達を値踏みするように見つめる。グリフよりもカーシルに費やす視線の方が多いようだが、それは仕方がない。何しろ彼は場違いなほどの美少年だからだ。
カーシルには前以って、自分との関係は叔父と甥であると言い含めている。当初は兄弟としようとしたグリフだが、自分がカーシルほどの美形でないのと、髪も黒に近い茶色であることを考慮して泣く泣く叔父で妥協したのだ。
「クリスさんは経験のある冒険者のようですが、カーシルさんはこのような仕事をするには、いささか若いのでは?こちらとしても報酬を支払う以上、戦力として期待できる方を雇いたいのです」
やはりそう来たか。とグリフは胸の中で舌打ちする。カーシルの見た目は十代前半でせいぜい十二、三歳といった具合だ。着ている革鎧もほぼ新品で整った顔付きもあり、どうみても強そうには見えない。ある意味タリエラの指摘は当然でグリフも予期していた。
「こいつはこう見えても、先月十四になったばかりですし、祈祷魔法が使えるんです。なんならここでお見せしましょうか?」
グリフは用意していた台詞を述べる。カーシルの年齢については水増ししたハッタリだが、この手のことは口で説明するよりも実際に見せた方が早い。グリフはこのような事態に備えて、祈祷魔法の使い手であるカーシルから可能な魔法を聞き出しており、もっとも劇的な効果を表す技を指定していた。
「・・・その若さで魔術士?いや祈祷魔法なら不思議ではないか・・・」
自身に満ちたグリフの反論にタリエラにやや面食らったように呟く。半信半疑と言った様子だ。
「よし、カーシル見せてやれ!」
「うん、わかった!」
カーシルは魔女の森でグリフを助ける時に使った、あの独特の囁くような詩を唱えると、その場から溶けるように姿を消した。まさに忽然と見えなくなったのだ。
「・・・そっそれは!凄い、本当に魔法を?!・・・いや、失礼しました。カーシルさんが貴重な魔術士であることは理解しました。あなた方に協力して頂けるなら心強いと思います。報酬について説明してよろしいでしょうか?」
姿を隠したカーシルに驚くタリエラだが、しばらくすると自分を取り戻したのか、先のことを詫びると、契約の詰めに入り出した。
「ええ、お願いします。カーシルもういいぞ!」
グリフの声でカーシルが姿を現す。いきなり具現化したようにも見えるが、カーシル自身が変化したわけではない。これは観測者の視覚に働き掛けて認識を誤魔化したに過ぎず、カーシル自身はどのような変化もせずに座り続けていた。
だから、タリエラが腕を伸ばせば触覚として彼を捕えることは可能だった。いずれにしてもカーシルはその実力をタリエラに認めさせた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる