ハードボイルドJK

月暈シボ

文字の大きさ
上 下
35 / 42
消えた靴と学園の謎

その35

しおりを挟む
「失礼する」
「失礼します」
 本田と及川の二人は間にユウジを挟む形で彼の部屋に立ち入った。ユウジにとっては学園内で唯一のプライベートな空間だが、元より杜ノ宮学園の寮には月二回の定期的な検査があるので、実は教師を入れるのはこれで三度目である。
 生徒からすれば自分の縄張りに他人を入れるのだから、今回の嫌疑に関わらず教師達の検査を歓迎することはなかったが、学園側としては最低限とはいえユニットバスやキッチンなどの水場と火の元を備えた部屋を未成年者に貸し与えているのである。保護者の代理として見回るのは当然の義務だった。
「ここを開けてみせてほしい」
「・・・はい」
 通常の定期検査では備え付けのタンスの中までは見ないが、今回は靴の窃盗嫌疑が掛けられている。ユウジは隠し場所になりそうな場所の開示を求められ、それに応じた。

「では、ここも」
「ええ」
 タンスに続いて机とベッド下の収納も指摘されるが、元より私物の少ない部屋であるし、嫌疑自体が濡れ衣である。ユウジは淡々と要求に応える。もっとも、日記を保管している抽斗を開けた際はユウジの心も穏やかでいられなかったが、本田達が探しているのは女子生徒の靴である。この時代では紙の日記帳は既に珍しい存在だが、内容を聞かれるようなことはなかった。
「異常はないようだな・・・」
 続いてユニットバスの脱衣所とキッチンの下等、部屋のあらゆるところを調べ回った本田だったが、残念そうに結論を告げる。
 もちろん、ユウジは本田が怪しい動きを示さないか最新の注意を払っている。具体的にはどこかに隠し持った靴を彼の部屋から見つかったように工作することを恐れていた。本田が漏えい事件の黒幕なら、ユウジを靴盗難事件の犯人に仕立てあげれば、彼の信用も地に落ちる。そうなれば、これまでレイと一緒に調べ上げた漏えい事件に関する証拠や推測が学園に取り上げられることはなくなるだろう。
「一応、この中も調べましょうか?」
 本田の反応に対して及川が玄関先に無造作に置かれていた青い袋を指摘する。それは授業中に洗濯が終わって戻ってきたばかりのランドリー袋だった。

「良いかね?」
「ええ、どうぞ」
 下着等の特にプライベートな部分が含まれているため、同性である本田がユウジの許可を得てから袋の口を開ける。他人に洗濯物を見られたくはないが、はっきり白黒つけて早く部屋を出て貰いたかった。
「・・・まさか・・・ここにあったとは・・・」
 直ぐに納得するだろうと思われた本田はそう呟くと、中から靴を取り出して玄関先に並べる。それも一足だけでなく、同サイズと思われる学園指定の革靴を合計三足だ。
「そ、そんな馬鹿な! それこそ自演・・・」
 その事実にユウジは本田が自分を陥れるために靴を持ち込んだのだと指摘しようとするが、途中でその訴えを飲み込んだ。
 本田は長身で痩せ型であり、オーダーメイドと思われる身体に合ったスーツを着ている。そんな体型で隠し持てるのは、せいぜい片足一個分程度だろう。三足分となるとどんなトリックを使ったとしても物理的に不可能だ。三足分の靴は最初から袋の中に存在したと判断するしかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...