ハードボイルドJK

月暈シボ

文字の大きさ
上 下
29 / 42
消えた靴と学園の謎

その29

しおりを挟む
 夜の帳が降りる頃に学園に戻った二人は再び正門の検査所で、立てた棺のような音波検査機の中に入り、禁止物を持ち込もうとしていないかチェックを受ける。認可されていない電子機器はもちろんだが、生き物もその対象である。杜ノ宮学園はペット不可なのだ。
「はい、協力ありがとう。どうぞ。おかえりなさい!」
「ありがとうございました!」
 異常なしを宣告されたレイはあざとい笑顔を浮かべながら警備員に告げる。既に先程のやり取りで目的は達していたが、急に素に戻ってはそれこそ警備員達の注意を引くことになるだろう。彼女はやるからには一切の手抜きをしない信条なのだ。

「お疲れ様。とりあえず、今日の捜査はここまでとして夕飯にしようか?」
「うむ。事件の裏は取れたし、最重要容疑者を12人まで絞ったが、これ以上は明日に回すか・・・。あまり一気にやると、犯人にこちらの動きを悟られて反撃を食らう可能性もあるし、学園側を刺激するだろう。まあ、それはそれで利用出来るのだが・・・。明日からはもっと慎重にやろう!」
 正門を抜けて学園内に戻ったユウジの提案にレイは頷きながらも警告を告げる。確実に犯人へと迫りつつある二人だったが、それは危険に近づくのと同義でもある。
「ああ、その通りだね」
「・・・抜けるなら、ここが最終ラインだが?」
 一歩先を進んでいたレイは足を止めるとユウジに向き直って問い掛ける。外灯の僅かな明かりでは、その表情を完全に捉えることは出来なかったが、昼休みの時のような冗談ではないことをユウジは一瞬で悟った。
「ここまで来て抜けろ! なんて、本当にレイは意地悪だな。俺はとことん付き合うよ!」
「ふふふ・・・そうこなくてはな!」
 ユウジの決意を聞いたレイは彼の胸に右手の拳を軽くぶつけると、再び向きを変えて寮のある居住区に向って歩き出した。

「ユウジ! 君のところにも来たかい?」
「ああ、来た! 俺達二人に揃って呼び出しってことは・・・そういうことなんだろうな!」
 翌日の木曜日、放課後となって再び捜査を開始しようと人気のない廊下でレイと合流したユウジは、開口一番に生徒手帳に届いた学園側からのメッセージについて言及する。ほんの数分前、彼ら二人の元に生活指導部からの呼び出しが掛かったのである。
「うむ。昨日は中等部を含む全てのクラスを対象に聞き込みを行ったし、学園外にも出掛けたからな・・・さすがに、私たちがことに感づいたのかもしれない」
「・・・どうする?」
 学園側の動きに対してユウジはレイに対応を乞う。靴の盗難事件を通じて学園に起ったデータ漏えい事件を嗅ぎつけたユウジ達は学園の上位層にとっては厄介な存在となるはずだ。おそらくは、二人がどこまで知っているのか確認をし、捜査の停止と箝口令かんこうれいを要求してくると思われた。
「まあ、立場的に行くしかないよ。釘を刺されるのは間違いないが、答え合わせも出来るし、直接交渉して情報を引き出せるかもしれない!」
 ユウジの問いにレイはむしろ望むところ! とばかりに告げる。確かに見方を変えれば、生徒の立場からは知ることの出来ない情報を引き出すチャンスでもあった。
「・・・おお!」
「では、生活指導室に乗り込むとするか!」
 胆の据わったレイの返答にユウジは感嘆の声を上げ、彼女も頷くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...