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覚醒編

33話 星型8面体封印術式(ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー)

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シオンは大きく跳躍し
リルの魔法の完成と共に、その封印結界の上に降り立った


 『見とけ、魔術だけが魔法出ないことを見せてやる
 呪力圧縮・・・・・』

天に掲げた右手を前に差出し、手のひらを下に向ける

「呪玉、排出」

シオンの右手から
黒色と深い紫色の混ざる、どす黒い玉が4個放出され宙に浮く

「呪玉操作、展開」

その4つの玉は黒い糸を引きながら飛んで行き
1つは鈴の真上に、あと3つは鈴の下に等間隔で位置する

「発動、呪式4点封印結界」

4つの玉は、それぞれに対し、黒い帯を伸ばしていく
そして、ソレは繋がり、黒い帯で囲まれた正三角形を作り
その面を黒く薄い膜で覆う
底辺を三角形とする、正4面体を作り出したのだ

リルの作り出した【ウルズ術式4面封印結界 (改)】
頂点を下にする、正4面体

シオンが作り出した【呪式4点封印結界】
頂点を上にする【ウルズ術式4面封印結界 (改)】と同じ大きさの正4面体

その2つが合わさることで、作り上げた
複合多面体、またの名は、星型8面体


シオンは、その上に立ち、叫ぶ

「来い【北狐亜種 (シルバーフォックス)】」

その言葉に反応し、【北狐亜種 (シルバーフォックス)】は、シオンの側に飛んで来て

「コーーーーーーン」と、1度鳴く

その鳴き声は、本来、呼ばれた嬉しさに、高く響くはずだった・・・・・が
何故か物悲しさに、低く響いた

「気にするな、ソレより、力を貸せ」

「コン」

静かに鳴くと、シオンの左腕を軽く舐め、シオンの後ろに並び立つ

その星型8面体の上に立つシオンと【北狐亜種(シルバーフォックス)】
そして、その中心に、魔核を抱える鈴の姿があった

「さて仕上げだ、リルは、そのまま待機
 後の調整は俺がする、魔術回路接続【北狐亜種(シルバーフォックス)】力を借りるぞ
 さあ行くぞ魔核」

シオンの呼びかけに、リルと【北狐亜種 (シルバーフォックス)】は返事をする


そしてシオンは、魔核を封印するために、右手を前方にかざし
【北狐亜種(シルバーフォックス)】の魔力を使い
【ウルズ術式4面封印結界 (改)】を操作する

そして左腕を前方にだし、呪詛を使い【呪術式4点封印結界】を操作する


その姿を確認したリルは、シオンに対して大声で叫ぶ

「シオン様!左手は、その左手は、どうなされました!」

「うるさい、さっき魔核を押さえ込んだ時に、持ってかれただけだ」

シオンの左手は、手首から先が存在していなかった
魔核を押さえ込んだ時、左手に何重にも掛けた魔法であっても
その魔核のパワーに耐えられず、焼け落ちていた
いや、それだけではない【西表山猫 (ヤマピカリャー)】の力を借り
強化したその力に、左手が耐えられなかった
そして今まで、巧みに、リルの視界から、左手を隠していたが
とうとう見つかってしまったのだ

「シオン様、わかっていらっしゃいますか?
 私の力では、失った肉体は回復できないんですよ
 この世界では、肉体再生を行える人間はいないんですよ
 もう少し、自身の身体を気遣ってください」

「うるさいなぁ、リル、お前は、あの2人を見習え
 奴らは、分ってても何一つ言わないぞ」

【西表山猫(ヤマピカリャー)】と【北狐亜種(シルバーフォックス)】
2匹の使い魔は、シオンの左手が徐々に焼け崩れていく様を見ていたが
何も言わなかった、主であり神である、シオンの行動に口を出すことはない
それは使い魔として許されない事であり、あってはならない事であった
本来、魔法生物として生み出された2匹の使い魔には、意志は無かったはずである
それが意志を持ったと言っても、シオンに逆らうことは有り得ないのだ

リルも、シオンに、そう言われると、その後の言葉が出ない
だが、言わなければならない、それが、リルの役目
絶対服従の使い魔ではない、部下と言う立場でもなく
シオンの家族として

「わかりました、ただ、ムチャだけはしないでください」

「はっはっは、イヤだ、断る」

「わかっています・・・けどね・・・」

リルは、ため息をこぼす
それを感じ、シオンは、軽く鼻で笑う

そんな、やりとりの中、シオンは2つの封印結界を融合させる

「完成だ、俺式・即興オリジナル魔法
 
【魔・呪・混縁、星型8面体封印術式(ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー)】

 魔核、てめえも、意思があるなら、鈴を助けたいなら、共に有ろうと願うなら
 おとなしく封印されろ!」


そうして、右手から魔力を
左腕から呪力を、封印術式にながしこみ


その魔法【ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー】星型8面体を徐々に小さくしていく
この魔法、魔導法則を無視して、その内にある、魔を圧縮封印するのである

シオンのオリジナル魔法であるが
その魔術の根本は、シオンの魔法の師である、ウルズの魔術理論

そして、シオンの前の世界、リルとマリアと共に居た世界
その世界で【ある呪い】を解くため、あらゆる呪法を研究し得た、呪術理論

そして、紫音の無駄知識が合わさった、唯一無二の魔法である

その魔法は、数秒で手のひらサイズまで、小さくなる

シオンは、宙に浮かぶ鈴と対峙するように
【北狐亜種(シルバーフォックス)】の背に乗り
その今は無き、その両手に【ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー】を包み込む




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