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覚醒編

20話 魔核

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覇気を纏ったシオン

その体は今、呆然と立ちつくす

(なんで、それが、そこにある・・・・・・・)

自分の目を疑うが、事実それは、そこに有ったのだ

いや、実際には見えはしない、シオンの魂だからこそ、ソレが感じ取れたのだ


口を開き、大きく息を吸い、おおきくため息を吐く・・・・

そして、それを確かめる為、シオンはその歩みを進める

その先に居るのは、地面に倒れこむ少女と女性
そして、その2人を助けようと近寄った男性がいた

しかし、すでに動きを止めた、その男は、シオンの眼中には無い

シオンは、静かに一歩一歩、家族の側に近づく
それは、シオンと、しおんの魂が同化するように
魂と、その身体を馴染ませるように、すりあわせてゆく
【ひ弱】であった、その身体も多少ではあるが、強化されてゆく
筋力・魔力がではない、その強固であるシオンに魂に導かれ
世界の違う次元での強化が行われてゆく
だがそれも、10歳の体では微々たる物でったし
その事に、シオンすら、気づくことはなかった
シオンの身体に芽吹いた、その力が花開くのはいつの事であるだろう・・・

そして、全てが1つに重なる頃には
シオンは、母(蘭)と、妹(鈴)の側までたどり着き
その歩みを止めていた

太腿を撃たれ、腹部には銃弾が貫通した穴が空き
大量の血を流し、意識を失った母親
その隣には、腹部に銃弾を受け、大量の血を失い、意識を失った妹

そして、アスファルトに、拡がる大量の赤い血を見れば
誰しもが、2人が死んだと確信するだろう

だが、シオンには届いていた、2人の心音が
それは弱々しいが、確実に力強くシオンの耳に届いていた
だが、大量の血液を失い、その肌と顔は青白くなっていて
危ない状況には間違いがなかった



2人の側まで来て、シオンは確信する

いや、すでに確信していた、分かっていたのだ

それに・・・・・

そう、この異常とも言える現状の原因が、ここに有る

元々は俺様のアレ・・・・・だ・・・・と・・。


そう異常なる状況


ここ一帯に充満しているだろう、魔素
それは、この世界で言う魔力|(MP)ではない
その元となる力、異世界での魔力の根源であり
この世界で例えるなら、不純物を含まない魔力であり
新しい元素とも言っても良いだろう物が、魔素である
普段、大気中の魔力を吸収し体内で変換し蓄積する事で魔力量|(MP)とするが
これには、人にもよるが、幾ばくかの時間が掛かるのだが
それが、魔素であるなら、その所要時間は少なくなるだろう
そして、その魔素を使って行われる魔法は、威力を上げるだろう

そんな魔素が、信じられない濃度で、この一帯に充満していた
それも、高濃度に圧縮された、魔素がである

そして、この場にいる人間なら、その魔素によって
魔力は膨れ上がり、魔力量は、湯水の用に溢れている事だろう
そして、普通の人間であるなら
高濃度に圧縮された魔素を吸収したその身体は
その魔素によって、徐々に破壊されていたかもしれない
必要以上の高濃度の酸素は、毒でしかない
それと同じ用に、高濃度の魔素は毒でもあったが


それをも回復してしまう、力も充満していた


壊れていたはずの俺の脳
覇気の開放で、傷ついた俺の肉体
全身大火傷で、その肌は爛れていただろう、チビでデブな男
そして、銃弾を受けた、母と鈴の傷
そう、その全てが治っている、回復しているのだ
そして、多分、この井門と言う男の脳神経も
すぐに回復するだろう


その原因もシオンには理解できていた


時間と共に、大きくなる目の前の力の根源
それは、魔力を感知できぬ、井門、シオンにも分かるほど
その体からオーラを放っていた
それは、シオンの目の前で横たわる、一人の少女【三千風鈴】である

その小さな少女から感じる、それは・・・
強大であり、懐かしくも有り、約千年の時を共に過ごした戦友であった魔核

(俺の魔核・・・・どうして、ソレが、そこに・・・・・)

2度3度、頭をかき、言い捨てる

「あぁぁ・・・・・・・、まぁ・・・・いっか」

そう、あれこれ考えてみたが、どうしようも無いのだ
鈴の中に、ソレを感じる事が出来ても、今のシオンでは
ソレを取り出すことも、触ることも出来ないのであるのだ
もう諦めるしかないのだ、こうなれば、決断は早いシオン

シオンの魔核
それは以前の世界では魔王すら凌駕し
神すら殺した力の根源でもある
その膨大までに成長した魔力、神すら超える力

だが、まるで、そんな、神をも超える力を
地面に落とした、食べかけのアイスの用に諦める
きっとそれは、ソレを受け取ったのが鈴だったからに違いなかった

事実それどころではない、鈴の共に有る、魔核が起動し始めているのだ
それは、未だ余震のようなものだが、その力の1%であっても
この地一帯を吹き飛ばすには十分なパワーを有しているのだ
どう考えても、鈴の体が、魂が、その1%ですら耐えれるとは思わない
そう、封印も制御すらされていない、その魔核
少しずつだが、確実に、その力を解放しようとしていた



魔核、シオンの魂と共にあった、ソレは
シオンと共に成長し来た
限界を知らないソレは
いつしか、魔王や神にも匹敵する力まで、成長した
その頃からか、シオンはその魔核に封印を施した
そう、シオンの魂と共にあったならば、その封印は機能していただろう

だが、その魔核も今は、鈴と共に有った
ソレは先ほどまで、まるで冬眠していたかの用に
静かに、佇む様に、誰にも気ずかれず
鈴の魂の側に、ただ存在していた

元の主である、シオンの生命の危機に、ソレは反応した
シオンの元で封印されたままあったなら
ソレは起動する事は無かっただろう
ソレは、小さな鼓動と共に、徐々に覚醒していったのだ

魔核、そう、ソレの今の主人は、鈴である
鈴の中で、徐々に覚醒する魔核
その鼓動は徐々に大きくなってゆく
その存在を、知りもしない鈴
その鼓動を紫音の鼓動と勘違いすることになったのだ

そう、すでに屍と化していた
双子の兄の心臓の鼓動だと
だからこそ、兄は生きていると
すぐにでも私と蘭さんを助けてくれると、信じていた
いや、きっと死んでいても紫音は
私達を家族を助けてくれると
信じていた
そこに何の確証もない

自分の双子の兄、それはもうすぐ10歳を迎える、小さな少年
だが、その兄は鈴にとって、この世界で一番信頼置ける人物
そして何でも出来ると、全ての事をこなせると信じていた
たとえそれが、銃火器を持ち自分たちを攫おうとする集団でも
母が十士族と対峙しようと、一個師団の軍隊であろうと
それが、どんな理不尽である出来事であっても
紫音なら、兄ならその全てから助けてくれると信じている

紫音にとっては迷惑極まりない話でもあるが
当の紫音は知る由もない


 
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