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覚醒編

14話 鈴、散る・・・。

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 虎亜が、男の持っていた、マシンガンの1丁を奪い取り
その銃口を、やまさんに向けた

「やぁーまぁーー てめえは、ゆるさねぇーーーーーーー」


それを見た、蘭は、鈴を守るため、その体で包み込む

井門は、虎亜に振り向き、身を屈めた

やまさんは、虎亜に向けて構えを取り、驚いたように

「虎亜、お前・・・・・・・その身体は、なんだ?」

それは、虎亜の身体を見た、全員の意見でもあっただろう

怒りと殺意に、飲み込まれた虎亜は、その敵意をむき出しに、やまさんに答えた

「ハッハッハ 解らんのか、硬化魔法だ、全身火傷で死にそうだったからな
 全身に硬化魔法を使ったんだ、これなら、火傷した皮膚を固定化できて
 痛みも少ない、そして、てめえの得意魔法の爆炎も、効かない
 覚悟しろ、てめえには、地獄の苦しみを与えて殺してやる」

鋼の硬度まで硬化された、その全身は
光沢が無く、暗く薄い、くすんだ青緑になっていた
そう、例えるなら薄鉄色(うすくろがねいろ)であるだろう
そして、焼け落ちたボロボロの服を、申し訳なさそうに着ていた


そして、今まで以上に苛立つ、やまさんと呼ばれた男・・・・・
虎亜を見下すように、上から目線で

「チッ・・・・きっちり殺しとくべきだったか
 先に言っておくが、炎系が得意と言う訳ではない
 ブタ相手なら、焼くのが手っ取り早かっただけだ
 今度はきっちり、殺してやる」

「まて、お前達、何を    」
       「うるさい、井門、こうなったら、先にこいつを処理する」

井門の言葉を遮るように、やまさんは、口をはさむ
その言葉に、井門も、納得するしかなかった

殺意をむき出しに、敵対した男、その手には、マシンガンがあるのだ
井門もマシンガンを肩から下げてはいるが、状況的に不利であった

井門は、やまから聞いていたのだ、この西神虎亜の魔法の事を
特出すべきは、硬化魔法、手足を鉄の硬度まで固くさせ、そのまま戦えると
硬化させたその手足は、もしかしたら拳銃も効かないかもと
だが、全身を硬化できるとは聞いていなかった
いや、やまさんも知り得なかったのだ

そう、井門の待つマシンガンが効果無い可能性もありあるのだ
下手に、自分が西神を刺激して、自分や、他の仲間や
最悪、三千風蘭が撃たれる事があれば、作戦がどうのこうのと言う事態では無くなるのだ
なら、ここは、やまに任せるのが一番良いと判断した

そんな、やり取りを、見ていた蘭、そして井門の仲間たちも
ここは、やまさんと呼ばれた男に任せるしかないと
西神虎亜を、刺激しないよう、身を潜める



「俺様を処理するだと、天才と言われた俺様をか!
 やま、てめえも多少強いと言っても、凡人風情が、己を知れ、バカが!」

「お前が、天才だと?
 あぁ 分かるぞブタが、言葉を喋ってるんだ
 天才なんだろうよ、ブタの世界ではな」

「さっきから、何度も、俺様の事を、ブタブタと!」

鋼の硬度まで硬くなった身体、そして、その目を見開き、怒り叫ぶ虎亜

怒りとは、人間の感情の中で一番激しく持続する感情であるであろう
そして、その感情から、吹き出すパワーは計り知れない物である
だが、その感情は冷静な判断力を奪う

そう、全身に力を込めて、叫ぶ虎亜に、少しの隙ができる

その隙を付き、やまさんは、圧縮された炎の塊を発動させ、すかさず虎亜に撃った

「きかんわーーー」

それを、左手を前に出し、炎の塊を受け止める
そう、今の虎亜にとって、この魔法は恐るに足りないのである

だが、受け止められた炎の塊は、虎亜の手のひらで、破裂し一瞬大きな炎とかした
それは、3秒、いや1秒、虎亜の視界を塞いだ

だが、やまさんにとって、それは十分な時間であった

爆炎に隠れて、虎亜の胸に掌底を打つ

胸に衝撃を、感じた虎亜、その衝撃で一瞬、視界がクリアになり
胸に攻撃を繰り出した、やまさんの姿が見えた

「そんなものが、このか・・・ら・・・だ・・・グフ・・・なぜ・・・・」

やまさんは、その場から、右斜め後ろに飛びのく
それは、同じ射線上に他の人物を入れないためである

「フッ、発勁の一種だ、表面が鋼鉄であろうと、その内部は所詮内蔵だ
 人間の体の90%以上が水分である以上、この打撃は有効だ」

そう足先から、貯めた力を全身を使って掌底に乗せ打ち出した、その発勁
だが、この一撃で仕留めるつもりだった、やまさん
思いのほか打点がズレ、威力が伝わらなかった
だが、確実に今の一撃で動きを止めた、なら次の一撃で倒すと

やまさんであろうと、そうそう発勁を使える訳でもない
虎亜相手の対策として、昔の武術の師匠に頭を下げ教えを受け
最近どうにか形になったきた技である
威力は師匠の、10分の1にも至ってはいないが
この、ブタ相手なら、それで十分でもあった

そして、動きの鈍くなった虎亜に、追い打ちをかけるべく
やまさんはダッシュする

右手の掌底から始まり、右廻し蹴り、左掌底と、10発ほどラッシュするが
その実、発勁が乗った打撃は最初の右掌底だけである

そして、ひと呼吸取るため、一度距離をとる

「さすがに、硬いなやはり焼くか・・・」

かろうじて、立っている虎亜、今にも倒れそうにふらついていた
先程まで全身火傷で死にかけていたのだ
その脳内には、激しくドーパミンが発生していた
それにより、火傷の痛みや、打撃による痛みは中和されている
それでも、発勁の威力だけはその身体に蓄積され、内蔵と足に来ていた

「ハァ ハァ、、、、、クソが、、、、、、、、
 クソが、クソガ、クソが、クソクソクソクソ
 やまぁーてめえだけは殺す、ぜってぇコロス!
 コロスコロスコロスコロス
 コロスウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウゥゥゥゥウウ」


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

虎亜は右手に持っていた、マシンガンを乱射する

その銃口は、やまさんに、向けて引き金を引かれたのだが

やまさんは、それに気づくと、とっさに右に飛び込むように地面に伏せた

それによって、マシンガンは空を切るのだが
虎亜にとって初めて撃つマシンガン
その扱い方も分からず右手だけで持っていたのだ
その銃撃の反動で右手が持っていかれる
そう、その銃口は、徐々に右に流れていったのだ
そして、その先には
蘭・鈴・井門が居るのだった・・・・・


その射線上に先に入ったのは、井門である


「くそ、何考えてんだ、西神のやつ・・」

そんな事を口ずさみながら、頭を抑え地面に伏せる井門
そんな井門は左肩に1発喰らい、その弾は、貫通した

「グァァァァァァ・・・・いてぇ・・・・」

左肩を抑えもがき苦しむが、その視界に入った人物を見ると
その痛みも頭から消え、言葉を失った



蘭は鈴を包み込むように、庇いながら地面に伏せていた
そして、虎亜がマシンガンを乱射すだすと、鈴を抱くその腕に一層力が入った
母親として、我が身を呈してでも、我が子を守りきると

鈴は、その瞳に涙を浮かべながら、そんな蘭にしがみついていた
怖いのではない、マシンガンを乱射する男が恐ろしいのでもない

自分に力が無いせいで母|(蘭)も紫音も救えなかった事が辛いのだ
自分を守る母親、蘭、違うのだ、私が母を守らないと、と
そうしなければ、私は又、私の性で蘭を死なせてしまうかもしれないと
今でもはっきりと記憶に焼き付けているあの事を
そして今でも夢で見る母親の死に魘される
あの全てを失ったかのような、喪失感・・・・
そう、泥団子の事件、一生消えないだろう、鈴のトラウマである

だが、兄が居た、紫音が居た
私の悲しみも不安も全て笑い飛ばしてくれた紫音が
料理を始めたのも、紫音が勧めたからだ
私が成長し知識を得、世間を知れば知るほど
紫音と言う人間が、そのスゴさ、異様さがわかってくる

そう、紫音なら、どんな事からも助けてくれる
双子である私には分かる、紫音は死んでいない
肉体を分けた、その半身の鼓動が、手に取るようにわかる
きっと、いつもの用に、遅れてきた悪役の用に
笑いながら、助けてくれると・・・



そんな蘭と鈴にも、確実に虎亜のマシンガンの銃口が向く

その弾丸の一発が鈴に覆いかかる蘭の背中に襲いかかった
その弾丸は蘭の左脇腹を貫通する

「ああああああああああああああああああああ」

その痛みで叫びをあげ、鈴を抱きしめるその手の力が抜け
鈴の手からすり抜けるように、仰向けに地面に転がった

「ら、、、ん、、、、、さ、、、、、、ん、、、、、、」

苦しみながらも、声の主、鈴に視線を向ける

その両手は、蘭の脇腹に向けられ、回復魔法をかけようとしていた

「いま、、、、た、、、、すけ、、、る、、、か、、、、、」

蘭は、痛みの中、鈴の異変に気づく
血で真っ赤に染まった鈴の服は、蘭自身の血だと、勘違いしていた
だが違ったのだ、鈴が言葉を発すると同時に
鈴の腹部から、血が噴き出していた
そして蘭は、理解する
蘭の脇腹を貫通したその弾丸は、そのまま鈴の腹部に穴を穿ったのだと

「鈴、おまえは、、」

すでに、左足を撃たれ、かなりの血を失い、今脇腹を撃たれ
多くの血をうしなって、体に力が入らなくなった蘭
その瞳に涙を浮かべ、最後の力を振り絞り、鈴の頭を撫でる

そこには、すでに顔から血の気が無くなった鈴の姿があった
腹部に銃弾を喰らい、息をするたび、声を発するたび
その穴の空いた腹部から大量の血が吹き出てくていた
その痛みは、どれほどであろうか?
どれほどの苦痛であろうか?
そんな事を、おくびにもださず、叫び声もあげず
意識の薄れる中、その両手は蘭の腹部にかざされていた
だが、薄れる意識、傷の痛み、集中力は欠け魔法は発動することはない

瞳に溜まった、涙は、、、、頬をツタイ流れる

「らん、、さん、、、、、、、、、、
 お、、おかあ、、、さん、、、、ごめ、、、ん、、、、なさい、、、、、、
  もう、、、、ち、、、から、、、、が」

蘭の瞳にも涙があふれる・・・・

「鈴、守ってやれなくて、ごめんな、いつまでも、これからも、愛してる」

2人は、両目から大量の涙をながしながら・・・・





「ぉか、、、ぁ、、さん、、、、、、、、



      おか、、、、、あ、、、、



                さ、、、ん」






母を呼ぶ声も、だんだん小さくなってゆく
その小さい体から、噴き出していた血の勢いが無くなってくる
それは、すでに、その小さい体に巡る血液が残り少ない事を意味した

そして、鈴は、そのまま蘭に、覆いかぶさるように倒れ込んだ

そして、すでに力のない、蘭は力を振り絞り鈴をだきしめる

そして、鈴は最後の力を振り絞り
とてもとてもとても小さな声で

「しおん、、、いるから、、、だい、、じょ、、、、う、、、、ぶ」

そして、小さな少女は、意識をうしなった

地面に倒れ、意識さえも無いであろう双子の兄、紫音に母を託して

だが、その言葉は蘭には届かない・・・

そして、蘭の脳裏に、鈴の死、蘭自身の死が浮かぶ・・・
もしも神がいるなら、鈴を救ってくれと・・・
悪魔でも何でもいい、、鈴を最愛の娘を・・・・・・・と

すでに蘭も、その意識は消えかけていた




そんな中・・・・・・・一人笑う虎亜



「ハハハ ハッハッハッハッハ ヒャハハハ ハハッハッハッハッハッハハハッハハハハッハハハッハハハッハハッハハッハハ ウヒャヒャハハッハッハ フフフ ハッハッハッハ ウワッハッハハハハッハハハハ」


すでに全弾吐き出した、マシンガンを、未だ左右に振りながら・・・。


 
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