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中等部・合宿編

40話 シオン、その男に敗北は許されない。

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左肩から、何かが、はじけ飛ぶ様な感覚

それは、左の肩から胸にかけて、服が切り裂かれ、一瞬ではあるが血が噴き出した!

完全に躱したはずであった攻撃が、当たっていたのだ

紫音は、切られた木刀を捨て

傷を右手で抑え致命傷でないことを確認しながら・・・。

 本気 (マジ)か?
攻撃食らったのはいいとしてだ
木刀もそうだが、このロングコートにしろ、俺自体にも
超振動の物理防御魔法や、刻印がかかってんだぞ?
いや、まて、この超振動
ある程度以上の衝撃に対して発動する様に調整してるから
それ以下だと発動しない・・・
そうか、日本刀・・・・
刀特有の切れ味、切り裂かれたのか
達人クラスの侍か。


 武器にも刻印してある、超振動だが
 防御にも使っている、コートもそうだが、身体にも刻印していた
 この防御用に改良された魔法、生活基準であるため
 普通に殴られたり、蹴られたりでは、発動はしないが
 剣で切られたり、拳銃の弾丸等、一定以上の衝撃が皮膚上に貼られた魔法膜にかかると
 超振動が発動し、粉砕するというものであるが
 達人級の刀術の前では意味を成さなかったと言うことである。 


 そう考えを、まとめながら
スキだらけの自分を攻撃してこない、アメリカかぶれの侍に視線を向ける。


 高峰は、対峙した、ひょっとこ面の男を、殺す気はなかった
すでに、ユーリから念話にて

『知り合いの、知り合いだから、殺さないで』

と話はできていた

 立場上、高峰サイドにも死人が出た
だからこそ、殺した張本人には
死なない程普度の怪我を与え戦闘不能にして
あとはユーリが、どうにかするだろうと踏んで攻撃に移ったが

切れたのは、薄皮一枚であった
肉体加速で、頭は躱しきる事を想定しての攻撃であったのだが
予想以上の速さに、内心びっくりしているのである
そして、今こちらを見すえる、ひょっとこ男を見て

 今の刀撃を躱した速さは、すごいが
でも、気が付くまでの、反応は遅い状況判断、先読みの力が弱い
あの木刀の魔法は、今ので理解できた、対応はできる
しかし、意思加速と、スピードに頼り切った戦い方
これでは・・・・
やはり、この時代では・・と

好敵手を望む高峰は、目の前の存在はソレではなかった

そう、まるで、大人と赤子ほどの実力差がそこに存在した。


高峰は、おもむろに、自分と、ひょっとこ男を分断するように
足で地面に線を引き、そして

「越《こ》えるな」

言葉を残し、鞘に刀を収め、元いた位置にもどりながら

 自分より、遥かに格下の男と戦う事に興味は失せ
ユーリ来るまで気長に待つ事にするのだった。

 そう高峰は何事も無かったのごとく
初めから戦闘など無かったの用に
柱を背にし、沈黙をきめ、ひょっとこ男を見つめるのだった。

 紫音は、呼吸を整え
捨てた木刀を、一度見確認し
左手を背に回し、念話で

『リル、そこから、武器転送できるよな?』

『はい、可能です、ですが・・・すでに躰が』

『今はいい、背に木刀出してくれ』

『出します、そしてその男とモブを
 この地を、その全てを消滅させます。』

 あら怖い、消滅・・・って

『アホか! 俺の楽しみを取るな!!
 お前は、そこで見てろ!
 それと、ナンバー使うぞ、タイミングみするなよ』

『わかりました、どうか、、、、いえ、楽しんで下さい』

『ああ、やられっぱなしは、性に合わないし、奴の驚く顔もみたいしな』

 軽く身体全体を動かして、筋肉を動かす
すでに限界を超えた筋肉は悲鳴を上げ
動くたび激痛が流れていた
激痛の感覚を頭に叩き込む
現状の筋肉の壊れ具合をだ
仮面の下では、眉一つ動かさない
仮面の隙間からでも、表情を読まれないためでもある
そんな物、見えるはず無い・・・・
だが、紫音は知っている
微かな隙間だろうと
そこから瞳が晒されてる以上
その瞳から行動を予測し動く
アノ化物から教えを受ける、幼馴染のリーゼントの男を・・・
だからこそ、念には念をいれ
精神を統一していく
まるでその姿は、準備運動しているようでも
死地に向かう戦人のようでもあった。

 その姿を、寡黙に見守っている女性・フォーである
接近戦は専門外であるがため、加勢もできないし
動きに付いて行けれないもの事実でもあったし
それに、主人と決めた
シオンの戦いを邪魔しないため動けないでもいた。

 そして、ダークエルフ族は性質が闇に傾いているため
回復魔法が苦手てでもある
使え無いわけではない
光精霊の加護が無いため効果範囲は狭く効果も薄い
だから、ダークエルフにとって
回復魔法とは、気休め程度しかでない
回復する位なら、攻撃しろと言うことである
そしてフォーも、スキあらばと
いつでも魔法が撃てる用に魔力を貯めてはいる
長距離からの範囲魔法なら勝てる自信はあるが
この20メートル程度からの単体魔法で
接近戦に長けた相手に出来ることは少ない
それも、魔法耐性のわからない相手に
どんな魔法が利くのか頭の中で模索する。

 それに、数百年生きているフォーではあるが
未だに、人間(人・エルフ・ドワーフ等)を殺したことが無いのだ
魔力を込める手は、微妙に震えていた

激痛の中、体の動きを確認した紫音は
左手に新しく持った木刀で、エセアメリカ侍をさす

「いくぞ、エセ侍モドキ」

挑発するも、沈黙を決める高峰、刀を抜こうともしない
紫音は、気にしないで、高峰の引いた線を超え襲いかかった。

 線を超えた、ひょっとこ男を見た高峰は
刀を抜きながら2メートル程前に出て応戦する
紫音の攻撃を、正面から受けず、躱せる攻撃は躱し・・・
いや、紫音の攻撃など当たる事など皆無
肉体加速で人ならざるスピードで動く紫音に対して
流れるように躱していく高峰、対照的な2人である
息が乱れ、動きが散漫になる紫音
高峰は、それを感じるやいなや
紫音の右脇腹を皮一枚切り裂き
紫音を線の外まで蹴り飛ばす
そして、また何事も無かったのごとく元の位置に戻っていった。

 線から押し出され無様に転がる紫音
膝を付き右脇腹を抑え傷を確認する

 ワザと致命傷にしてないのがわかるが
そんな事はどうでもいい
蓮に、笑われる・・・くそ!

 同じ広間に、レンが入ってきて
こっちを視認したことは解っている
それも、こっち向かってきてるし

そんな中

「おい、そこの男、お前の相手は、こいつらだ、あれを出せ」

倉庫のスピーカーから声が流れ
蓮の意識が他に向く

 紫音も呼吸を整えながら、蓮の方を確認する
コンテナから、出てきたのは3匹の魔物であったが
紫音の敵は、エセアメ侍である。

 紫音は、倉庫全体をチラチラと確認し見渡しながら
ボロボロになった、ロングコートを脱ぐ
ついでに黒いシャツも脱ぐ
先ほどからの高峰の攻撃で
ロングコートはボロボロに切り裂かれていた

ひょっとこ仮面、上半身裸にGパン、変質者の出来上がりであった

そんな中、レンから念話がくる

『シオン、そっちは勝てそうか?』
『すでにやばいな、相性悪い上に、格上すぎる、剣だけなら、レンより強いな』
『うわ、そっちが当たりか、まぁこっちも、やばそうだ』
『ハハ、意気込んできて、二人して死んだら、シャレにならんな』
『最悪、リルがいるから、ミカとフォーと、上で捕まっている子は大丈夫だろう』
『だな、さてそろそろ本気 (マジ)で死にそうなんで、またな』
『ああ』


念話も終わり、3度目の戦いに挑むも
今度は右肩から左脇腹に向けて皮一枚切られ
線の外側に蹴り出されるのだった。

だが、未だ、右手しか使っいない、エセアメ侍を見据え
一撃は食らわすと
そう決めて、4度目の戦いに挑む。


 そう、そろそろ、色んな意味で限界であった
俺がではない、この地を一帯を焼土にしようと
俺の目の前の侍に対し、怒りを燃やすリルを宥めるのにだ

そう、俺が負ければ、この地は消滅する
俺は負けられない
目の前の侍を、友である蓮を殺させないために
最後の力と使ってでも・・・。



てか、なんで俺がリルの暴走を心配しなくちゃいけないんだ?


 
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