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中等部・合宿編

25話 ちょっとしたお遊び。

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 その建物は、ある国道から少し入った所
平屋の大きな一軒家である
外見は築数50年は超えると思えるほどの、ボロ屋である
そして、家の前の道は舗装されておらず
この家に用事が無ければ、誰も通る事はないだろう。
 周りは山と森に囲まれ
その建物以外の家は見て取れない
まずその家を知らない限り
誰も踏み入れない
忘れられた場所である。

 そんな家に一歩入れば
そこは外見と相反する最先端の内装となっている
1年ほど前から、ここに出入りする人物達の趣味の、たわものであるとしか言い様がない
そして各部屋は、その部屋の主人の感性と言うか趣味全開の作りになっている。

 この家の中心にある8畳2間
ソレをぶち抜いて作った、16畳のリビングで
大きなソファーに座ってパソコンを、いじっている180cm程の男が居る
桜の兄・蓮 (レン)である
まだ、15歳、中等部3年ではあるが
鍛え抜かれた肉体に
赤い髪をワックスで立たせた攻撃的な髪型の
一見【漢】と思わせるほどの迫力を持つ。

 同じく蓮の横で
ソファーに寝転がって、テレビを見ながら、お菓子を食べている女性が居る
レンの2人居る配下の1人・ミカである
明るい茶髪、ボサボサのショートカットである
もう1人の配下、ミーティアと、容姿ダケは似てはいるが
その性格は、まったく異なる。

 ミーティアが、出来るお姉さんなら
ミカは自由気ままな妹である
普段は、そんなミカだが
レンの忠実な配下であり、やる時は、殺る性格でもある。

 基本この家は、ミカと、ミーティア、2人が暮らしているが
2人の主人であるレンは、かなりの頻度でこの家に居座っていた。

 紫音は、よく蓮に呼び出され
この家に来ることが多いい隠れ家というか、たまり場である
ちなみに、紫音は、紫音で三千風家以外に、隠れ家がある。


 そんな、リビングに空間の歪みが起き
転移してくる人物の姿があった。


「よ!すまん、ちと遅れた」

「おう!電話したの、何時だっけか?」

紫音の挨拶に、笑いながら答える蓮であった
その紫音の横で、警戒態勢に入り魔力を貯めるフォーの姿がある

「まて、友達 (ツレ)だ」

 そう言って、フォーの頭に右手を添える。
(ん?髪まだ濡れてるな・・・。)
フォーは俺の顔を確認すると
魔力をとくが、警戒はおこたらない
とりあえず、1人用ソファーに、フォーを座らせ
リルに、タオルとドライヤーを持ってこさせ。

さて、挨拶は大切だ!
それも初対面ならなおさらだ!
第一印象で、コレからの関係性が決まると言うもの
だからこそ、俺はフォーに大切な仲間を紹介しよう!!

紫「さて紹介しようか
 あの飛んでるのが【チビ】
 こっちの赤頭が【脳筋】
 そこの菓子貪ってるのが【アホ】
 そして俺が【変態】だ!」

 そう言いながら
フォーの髪をタオルで拭く、リルが羨ましそうに、見つめているが無視だ!

蓮「おう、脳筋だ!」と

ソファーに、もたれて、適当に右手を振り挨拶する、蓮

ミ「アホどぇーーーす」と

両手を振る、ミカ

 そして、ふわふわ飛んでるリルは

リ「そんなモブに紹介されても・・・
 どうせ、今回だけのポット出!
 記憶に残すだけムダ!ですね。」

紫「うん、チビは無視だな!
 次はフォー、自己紹介して」

 未だ警戒している、フォーが話始める

フ「先んせ、その攻撃的なオーラをどうにかして欲しいのじゃが」

蓮「やはり、見えるか
 やっぱり、本物のダークエルフか!ハッハッハ」

 そう言うと、蓮は部屋を覆っていた攻撃的なオーラを押さえ込む
それを感じてか、フォーも警戒を、少しだが緩めた。




 ソレは、約50分前



 蓮は先程、リルがここへ来たとき
森での出来事の大体の説明を聞いていた
ティアから送られてきた映像も見てはいたが
それだけでは、全部は把握はできていなかったからだ。

 その中に、この魔術師のダークエルフの事があった
そのダークエルフは盟約に縛られて
四条優美 (しじょうゆみ)を襲ったと
そして鈴は巻き込まれ
桜は進んで割り込んだ・・・。

 最終的に、そのダークエルフは盟約に抗い、死にそうな所を
リルは、シオンの命令で虚数空間に隔離し助け
盟約の解除を受けたが
それは、盟約と名ばかりの拘束具であった。

 魔術師が着ていた、ローブの下に
首・腰・両手・両足に拘束具と言う、デバイスが付けられていた
実際それは、刑務所で使う囚人の拘束具である
命令一つで、拘束具が全身に激痛を与えたり
両手、両足の拘束具が魔力で引合い動けなくしたりというものである
一度つけてしまうと
解除キーと、管理者権限が無い限り外れないと言うものだ
オマケに、発信機、小型の爆弾着きと、至れり尽くせりであるが
空間転移が使えるリルにとって
ダークエルフから、この拘束具だけを外すのは
1秒もかからない作業ともいえる。

 ただ、この世界の人間なら
それは見ただけで拘束具とわかるものだが
異世界の人間には、まったく未知の装備品である
だからこそ、異世界人は、疑いもなく、それを付ける
あとは、盟約と嘘を付き
その人物を縛り付ける事ができたのである。

 そして、リルは、こちらに来る前に
その魔術師を風呂場に連れて行った
その理由は、数日風呂に入ってないのか
とても汚く、そして臭かったから、と
レンに告げた。


 一通りの報告を済ませたリルは
自分が、こちらに来た最大の要件を、レンに告げる。


リ「レンさん、ティアにお願いしたのですが
 先ほどの、シオン様の映像のコピーをお願いできますか?」

蓮「まかせろ、今編集している所だ
 ティアに感謝しろよ、完璧なアングルで録画してあるぞ」

リ「なんと、これは・・・・・すばらしい」

蓮「ここなんかどうよ? わらえるだろ?」

リ「いいですね、そこのカットは、ヨリでお願いします」

蓮「ハッハッハ!
 リルお前わかってるじゃないか!!」

リ「いえ、ティア様様です
 まったくティアのカメラワークは洗礼された物がありますね」

蓮「なら、ここなんかはロングからヨリまで
 スローで1分くらいもたしてみるか?」

リ「おおおお!
 斬新です!
 レン様!!」

 そんな編集作業で盛り上がっていた、蓮とリル
ただ、時間だけは過ぎて行き
30分後に連絡を入れると言った、紫音からの連絡が来ないので
リルは約束の時間も、風呂場に置いてきた、ダークエルフの事も忘れ
蓮と共に編集作業に励んでいた。

 ただ、変態映像に興味がなかった、ミカ・・・
いやこれが、レンの変態映像なら食いついてきただろう、ミカが

「リルちゃん、時間いいの?」

と、聞かなかったら
早くても後30分は、レンと一緒に編集作業を行なっていただろう
多少遅れたが、連絡が無いことは
シオンも急いでないと考えるも
リルは急ぎ戻る準備をして、蓮に

「シオン様と魔術師のダークエルフも連れてきます」

と、告げて、消えていった。

 そんな、リルを、軽く右手を振って答えた蓮は
引き続き、パソコンで録画の編集を続けながら、考えをまとめる。

 ダークエルフの魔術師
あの骨を見る限り、ある程度の、力があると見ていい・・・
手っ取り早く実力がみたいな
昔よくやった、オーラ垂れ流しでもするか!
これに反応示さなかったら、ただの魔術師
多少の魔力感知が出来るなら
警戒か、心が弱ければ失神するだろう・・・と考える

蓮が昔よくやった、初対面の相手にして驚かしていた、軽いお遊びの一つである

 結果、この、ダークエルフは反応してみせた
紫音が止めはしたが
瞬間的に跳ね上がった、魔力は相当なものであった
それを感じ取った、蓮は、ニヤリと笑みをこぼすのだった。


 
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