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戦乱編
始まる戦乱、渦巻く瘴気
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等々、パルミナ王国とブランデン帝国が、旧ケディミナス教国へと進軍を開始した。
対する旧ケディミナス教国は静かに、ただ待ち構えていた。
やがて両軍が、ケディミナス領内に侵入して行く。
パルミナ王国とブランデン帝国の軍がケディミナス教国へと深く侵入した時、いきなり目の前に魔人と魔物の混成軍が現れる。
そこからは一進一退の攻防が続いた。
旧ケディミナス教国 教皇執務室
「クックックッ、蜜に蟻が集まって来おったわ」
豪華な椅子に背をもたれさせ、男が楽しそうに笑う。そこには他国からの侵攻を受けている、真っ只中だとは伺えない。
「もうすぐだ、もうすぐ俺がこの大陸になる」
楽しそうに笑う男の目には狂気が宿っていた。
パルミナ王国軍もブランデン帝国軍も、消耗戦の様相を呈して来た侵攻作戦に焦りを感じていた。
この時、旧ケディミナス教国国内で瘴気が溢れ出し、旧聖都に集まり始めているのに、気付いていなかった。
一進一退の攻防が続きながらも、パルミナ王国軍とブランデン帝国軍は、少しずつ聖都に近付いて行った。
それが罠だとは気付かずに……。
長くなって行く補給線に、補給を受けながらも両軍の疲弊は増していく。
それに伴い、死傷者も増えていく。
旧ケディミナス教国内の戦乱のなか、避難民の救助に動いてるのがユキト達だった。
トルースタイン共和国としては、ユキトが整備した山越えの道を、逃げて来る避難民の保護に留まっていたが、ユキト達は少数でもってケディミナス領内での救助に動いていた。
時には聖都近くまで足を伸ばし、避難民の救助を続けた。
「嫌な感じが強くなって来ている気がします」
サティスが不安そうに言う。
「うん、僕にも分かるよ。瘴気が聖都に集まって来ている気がする」
ユキトも旧ケディミナス教国の、目的が全く見えない故の不安は大きかった。
やがて両軍が聖都の防壁までたどり着いた。
聖都の門が破壊され、パルミナ王国軍とブランデン帝国軍が雪崩れ込む。
その時、教皇執務室の豪華な椅子に座っていた男の身体が膨れ上がる。
服が裂け、黒く染まった肉の塊が、爆発的に膨張していく。
旧教会本部の建物にたどり着いたのは、どちらの軍だったかは分からない。
「なっ、なんだあれは!ウギャァーー!!」
教皇が居る筈の大教会から、黒い肉の塊が溢れ出し、兵士を飲み込んだいった。
やがて溢れ出す肉の塊は、触手のようにその数を増やして行く。
大教会の建物は崩壊し、そこには黒い肉の触手蠢くイソギンチャクのような姿を見せた。
『オ、オデガ、ホ、タイリクヲ、ク、クウ、クウ』
僅かに残る男の意識が、もっと喰わせろと訴える。
「!!……これは」
時は少し戻り、ユキトは聖都付近で何かの気配が溢れ出した事を気付いた。
「悪意、呪詛、怨み、あらゆる負の感情の塊です!」
サティスも感じたようだ。
「サティス、フィリッポス先生や爺ちゃん達と一度合流しよう」
「はい!」
ユキト達は、転移でロンバルドに戻った。
パルミナ王国軍もブランデン帝国軍も大混乱に陥っていた。
「「ギャァー!!」」
逃げ遅れた兵士が、黒い触手に絡め取られ、やがてその肉の一部になっていく。
恐怖にかられ逃げ出す兵士を、膨張する黒い肉のイソギンチャクが捕食していく。
絡め取られ捕食された兵士の顔が、肉の触手の表面で呪詛を叫んでいる。
ロンバルドへ帰ったユキトは、フィリッポス達を集めて報告していた。
「……これは酷いね」
「あゝ、人間を取り込んでやがる」
遠見の魔導具に映る現地の状況を観て、バーバラとヴォルフが嫌悪感で顔をしかめる。
「ユキト君が聖域結界(サンクチュアリィフィールド)の魔法具を作ってくれていて助かりましたね」
「ユキトの感に感謝じゃのう」
フィリッポスとノブツナが頷きあう。
「では私達で魔法具を設置すれば良いんだね」
「では儂が飛行船で運ぼうかの」
アイザックが地図を広げ、ドノバンが飛行船の手配をする。
「では時間の余裕もないので早速説明します。この地図のポイントにそれぞれ魔法具を設置します。通信の魔導具で術式の発動に合わせ、魔法具を起動させます」
地図には聖都を囲むように、六芒星が描かれていた。ユキトはその六芒星の頂点を指さし説明する。
「では、輸送船の三隻と、ユキト君の飛行船一隻の四隻で移動、輸送船はその後避難民の救助に、ユキト君の飛行船は、遠距離からの法撃で援護してもらいましょう」
フィリッポスが手早く段取りを決めていく。
「聖域結界(サンクチュアリィフィールド)を発動後は、ノブツナやヴォルフは役立たずだから、下がって救助に回りな」
「チッ、婆あ」
ヴォルフが不満そうにするが、遠距離攻撃がないヴォルフとノブツナは、避難民の救助に回ることになった。
「じゃあ聖域結界起動後、バーバラ、フィリッポス、私で魔法攻撃ですね」
「アイザック、儂も船から法撃するぞい」
全員が席を立ち動き始める。
やがてロンバルドから四隻の飛空船が、ケディミナスの聖都へ向け飛び立つ。
対する旧ケディミナス教国は静かに、ただ待ち構えていた。
やがて両軍が、ケディミナス領内に侵入して行く。
パルミナ王国とブランデン帝国の軍がケディミナス教国へと深く侵入した時、いきなり目の前に魔人と魔物の混成軍が現れる。
そこからは一進一退の攻防が続いた。
旧ケディミナス教国 教皇執務室
「クックックッ、蜜に蟻が集まって来おったわ」
豪華な椅子に背をもたれさせ、男が楽しそうに笑う。そこには他国からの侵攻を受けている、真っ只中だとは伺えない。
「もうすぐだ、もうすぐ俺がこの大陸になる」
楽しそうに笑う男の目には狂気が宿っていた。
パルミナ王国軍もブランデン帝国軍も、消耗戦の様相を呈して来た侵攻作戦に焦りを感じていた。
この時、旧ケディミナス教国国内で瘴気が溢れ出し、旧聖都に集まり始めているのに、気付いていなかった。
一進一退の攻防が続きながらも、パルミナ王国軍とブランデン帝国軍は、少しずつ聖都に近付いて行った。
それが罠だとは気付かずに……。
長くなって行く補給線に、補給を受けながらも両軍の疲弊は増していく。
それに伴い、死傷者も増えていく。
旧ケディミナス教国内の戦乱のなか、避難民の救助に動いてるのがユキト達だった。
トルースタイン共和国としては、ユキトが整備した山越えの道を、逃げて来る避難民の保護に留まっていたが、ユキト達は少数でもってケディミナス領内での救助に動いていた。
時には聖都近くまで足を伸ばし、避難民の救助を続けた。
「嫌な感じが強くなって来ている気がします」
サティスが不安そうに言う。
「うん、僕にも分かるよ。瘴気が聖都に集まって来ている気がする」
ユキトも旧ケディミナス教国の、目的が全く見えない故の不安は大きかった。
やがて両軍が聖都の防壁までたどり着いた。
聖都の門が破壊され、パルミナ王国軍とブランデン帝国軍が雪崩れ込む。
その時、教皇執務室の豪華な椅子に座っていた男の身体が膨れ上がる。
服が裂け、黒く染まった肉の塊が、爆発的に膨張していく。
旧教会本部の建物にたどり着いたのは、どちらの軍だったかは分からない。
「なっ、なんだあれは!ウギャァーー!!」
教皇が居る筈の大教会から、黒い肉の塊が溢れ出し、兵士を飲み込んだいった。
やがて溢れ出す肉の塊は、触手のようにその数を増やして行く。
大教会の建物は崩壊し、そこには黒い肉の触手蠢くイソギンチャクのような姿を見せた。
『オ、オデガ、ホ、タイリクヲ、ク、クウ、クウ』
僅かに残る男の意識が、もっと喰わせろと訴える。
「!!……これは」
時は少し戻り、ユキトは聖都付近で何かの気配が溢れ出した事を気付いた。
「悪意、呪詛、怨み、あらゆる負の感情の塊です!」
サティスも感じたようだ。
「サティス、フィリッポス先生や爺ちゃん達と一度合流しよう」
「はい!」
ユキト達は、転移でロンバルドに戻った。
パルミナ王国軍もブランデン帝国軍も大混乱に陥っていた。
「「ギャァー!!」」
逃げ遅れた兵士が、黒い触手に絡め取られ、やがてその肉の一部になっていく。
恐怖にかられ逃げ出す兵士を、膨張する黒い肉のイソギンチャクが捕食していく。
絡め取られ捕食された兵士の顔が、肉の触手の表面で呪詛を叫んでいる。
ロンバルドへ帰ったユキトは、フィリッポス達を集めて報告していた。
「……これは酷いね」
「あゝ、人間を取り込んでやがる」
遠見の魔導具に映る現地の状況を観て、バーバラとヴォルフが嫌悪感で顔をしかめる。
「ユキト君が聖域結界(サンクチュアリィフィールド)の魔法具を作ってくれていて助かりましたね」
「ユキトの感に感謝じゃのう」
フィリッポスとノブツナが頷きあう。
「では私達で魔法具を設置すれば良いんだね」
「では儂が飛行船で運ぼうかの」
アイザックが地図を広げ、ドノバンが飛行船の手配をする。
「では時間の余裕もないので早速説明します。この地図のポイントにそれぞれ魔法具を設置します。通信の魔導具で術式の発動に合わせ、魔法具を起動させます」
地図には聖都を囲むように、六芒星が描かれていた。ユキトはその六芒星の頂点を指さし説明する。
「では、輸送船の三隻と、ユキト君の飛行船一隻の四隻で移動、輸送船はその後避難民の救助に、ユキト君の飛行船は、遠距離からの法撃で援護してもらいましょう」
フィリッポスが手早く段取りを決めていく。
「聖域結界(サンクチュアリィフィールド)を発動後は、ノブツナやヴォルフは役立たずだから、下がって救助に回りな」
「チッ、婆あ」
ヴォルフが不満そうにするが、遠距離攻撃がないヴォルフとノブツナは、避難民の救助に回ることになった。
「じゃあ聖域結界起動後、バーバラ、フィリッポス、私で魔法攻撃ですね」
「アイザック、儂も船から法撃するぞい」
全員が席を立ち動き始める。
やがてロンバルドから四隻の飛空船が、ケディミナスの聖都へ向け飛び立つ。
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