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親子のスキンシップは大切です
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永禄十二年(1569年)一月 伊勢国 桑名城
正月も松の内が終わり、源太郎は久しぶりに家族と一緒にゆっくりとした時間を過ごしていた。
於市が去年、女の子を産み、茶々と名付けられた。
ほぼ同じ時期に、小夜も女の子を産んだ。この子は茜と名付けられた。二人の名付けに何故か源太郎は関われなかった。
小夜の産んだ子は、当然、源太郎の子供だ。
於市と小夜は、現在三人目を懐妊している。今年の冬には、産まれる予定だ。
於市も男の子をもう二人位欲しいらしい。
部屋は赤ちゃんの為に、源太郎が作成した暖房器具で暖められていた。
あったかい部屋の中で、茶々と茜を交互に抱きながら、女の子は可愛いなと源太郎は、デレデレである。
「可愛いな~」
「茶々にも茜にも、旦那様に良い婿を見つけて貰わねばなりませんね」
「えっ!」
於市の言葉に、源太郎が驚いた声をあげる。
「えっ?じゃないですよ旦那様。まだ早いですが、早くから婚姻を決めるのは普通ではありませんか」
「そうですよ殿。まして北畠家は名門中の名門です。茶々や茜の元に、縁を繋ぎたい家は多いと思いますよ」
於市と小夜にそう言われて、泣きそうな顔をする源太郎。
その様子があまりに可笑しかったのか、於市も小夜もクスクスと笑う。
「旦那様、まだまだ先の話ですよ。茶々や茜が幸せになれる方を探して下さいね」
「くっ」
異世界で大往生で亡くなった源太郎には、子供や孫、ひ孫まで居たので、女の子が初めてという訳でもない。だが、女の子を嫁に出す気持ちは、どこの世界のどこの男親でも変わらないのだろう。
「父上~!剣術の稽古をつけて下さい!」
虎松丸が、稽古をつけて欲しいとオネダリして来た。
「よし、後で見てあげよう」
「ありがとうございます父上!」
虎松丸が跳び上がって喜び、それを於市や小夜もニコニコして見守っている。
「エイ!」
カンッ! カンッ! カンッ!
虎松丸が源太郎へ向け木刀を振る。それを源太郎は、丁寧にさばいていく。
相手は子供でも、その理解出来る範囲で技を見せて、見取り稽古をさせる。
一から十まで、手取り足取り教えられたモノより、自分が掴み取ったモノの方が身になるからだ。
「よし!今日はここまでにしよう」
「ちっ父上!はぁ、はぁ、まっ、まだ出来ます」
虎松丸に稽古の終了を告げると、まだまだ出来るとアピールするが、源太郎は首を横に振る。
「虎松丸、身体を休めるのも大事だぞ。まだ身体が出来る前に、激しすぎる鍛錬は毒になる」
源太郎が優しく諭すと、虎松丸も頷く。
「身体が出来るまでは、無理な鍛錬をするよりも、書物を読んだりして知識を身につけると良い」
「はい!父上!」
元気よく返事をする虎松丸に、頷く源太郎。
「さあ、湯殿で汗を流しなさい。風邪をひくぞ」
源太郎も虎松丸と湯殿へ行くと、虎松丸の体や頭を綺麗に洗って、侍女に託す。
「ふぅ~、良い湯だ」
一人残り、広い湯船に浸かっていると、人が二人入って来たのが気配で分かった。
「ご一緒しても良いですか」
入って来たのは当然、於市と小夜だ。
「勿論、ゆっくり温もると良い」
二人は、かけ湯をして湯船に入ると、源太郎を挟むように座り、しなだれ掛かる。
「少しお腹が大きくなって来たか」
源太郎が二人のお腹を触る。
「秋前には産まれるそうです。今度は男の子が産まれれば良いのですが」
「私も男の子を産んでみたいですね」
於市と小夜が男の子が欲しいと言うが、源太郎としてはどちらでも構わなかった。
「於市も小夜もまだまだ若いから、男の子を産む機会はあるさ」
これは北畠領の領民全てに当てはまるのだが、於市も小夜は特に、この時代では考えられない程、栄養事情が良い為、妊娠から出産での体力低下の影響が少ない。これは出産時の、源太郎による回復魔法の力も大きい。
「旦那様、側室を増やした方が良いのではないですか?」
「そうですね、今の北畠家で正妻一人と側室が一人では少ないかもしれません」
「いや、於市と小夜で十分だよ」
「旦那様、珠を忘れては駄目ですよ」
「うっ、まだ十年は先の事だから。その時にどうなってるかは、分からないだろう」
「そんな事を珠の前で言っては駄目ですよ。珠は旦那様に嫁ぐのを夢見ているのですから」
於市に、忘れていたと言うよりも、忘れたかった事を言われて溜息をつく。
その後、於市と小夜の身体を順番に洗ってあげて、もう一度ゆっくりとお湯に浸かり、風呂を出た。
その日の夜、フカフカの布団に於市と寝ながら語らう。
「旦那様、妾達が身重では、辛くはないですか?」
「あゝ、そう言う事か。側室の話もそれで?」
「それだけではないですよ。今の北畠家には必要だと思ったのです」
於市も小夜も、北畠家の事を思って話をした事は分かった。
「少し考えてみるよ。今日はもう寝よう」
於市を抱き寄せ眠りについた。
正月も松の内が終わり、源太郎は久しぶりに家族と一緒にゆっくりとした時間を過ごしていた。
於市が去年、女の子を産み、茶々と名付けられた。
ほぼ同じ時期に、小夜も女の子を産んだ。この子は茜と名付けられた。二人の名付けに何故か源太郎は関われなかった。
小夜の産んだ子は、当然、源太郎の子供だ。
於市と小夜は、現在三人目を懐妊している。今年の冬には、産まれる予定だ。
於市も男の子をもう二人位欲しいらしい。
部屋は赤ちゃんの為に、源太郎が作成した暖房器具で暖められていた。
あったかい部屋の中で、茶々と茜を交互に抱きながら、女の子は可愛いなと源太郎は、デレデレである。
「可愛いな~」
「茶々にも茜にも、旦那様に良い婿を見つけて貰わねばなりませんね」
「えっ!」
於市の言葉に、源太郎が驚いた声をあげる。
「えっ?じゃないですよ旦那様。まだ早いですが、早くから婚姻を決めるのは普通ではありませんか」
「そうですよ殿。まして北畠家は名門中の名門です。茶々や茜の元に、縁を繋ぎたい家は多いと思いますよ」
於市と小夜にそう言われて、泣きそうな顔をする源太郎。
その様子があまりに可笑しかったのか、於市も小夜もクスクスと笑う。
「旦那様、まだまだ先の話ですよ。茶々や茜が幸せになれる方を探して下さいね」
「くっ」
異世界で大往生で亡くなった源太郎には、子供や孫、ひ孫まで居たので、女の子が初めてという訳でもない。だが、女の子を嫁に出す気持ちは、どこの世界のどこの男親でも変わらないのだろう。
「父上~!剣術の稽古をつけて下さい!」
虎松丸が、稽古をつけて欲しいとオネダリして来た。
「よし、後で見てあげよう」
「ありがとうございます父上!」
虎松丸が跳び上がって喜び、それを於市や小夜もニコニコして見守っている。
「エイ!」
カンッ! カンッ! カンッ!
虎松丸が源太郎へ向け木刀を振る。それを源太郎は、丁寧にさばいていく。
相手は子供でも、その理解出来る範囲で技を見せて、見取り稽古をさせる。
一から十まで、手取り足取り教えられたモノより、自分が掴み取ったモノの方が身になるからだ。
「よし!今日はここまでにしよう」
「ちっ父上!はぁ、はぁ、まっ、まだ出来ます」
虎松丸に稽古の終了を告げると、まだまだ出来るとアピールするが、源太郎は首を横に振る。
「虎松丸、身体を休めるのも大事だぞ。まだ身体が出来る前に、激しすぎる鍛錬は毒になる」
源太郎が優しく諭すと、虎松丸も頷く。
「身体が出来るまでは、無理な鍛錬をするよりも、書物を読んだりして知識を身につけると良い」
「はい!父上!」
元気よく返事をする虎松丸に、頷く源太郎。
「さあ、湯殿で汗を流しなさい。風邪をひくぞ」
源太郎も虎松丸と湯殿へ行くと、虎松丸の体や頭を綺麗に洗って、侍女に託す。
「ふぅ~、良い湯だ」
一人残り、広い湯船に浸かっていると、人が二人入って来たのが気配で分かった。
「ご一緒しても良いですか」
入って来たのは当然、於市と小夜だ。
「勿論、ゆっくり温もると良い」
二人は、かけ湯をして湯船に入ると、源太郎を挟むように座り、しなだれ掛かる。
「少しお腹が大きくなって来たか」
源太郎が二人のお腹を触る。
「秋前には産まれるそうです。今度は男の子が産まれれば良いのですが」
「私も男の子を産んでみたいですね」
於市と小夜が男の子が欲しいと言うが、源太郎としてはどちらでも構わなかった。
「於市も小夜もまだまだ若いから、男の子を産む機会はあるさ」
これは北畠領の領民全てに当てはまるのだが、於市も小夜は特に、この時代では考えられない程、栄養事情が良い為、妊娠から出産での体力低下の影響が少ない。これは出産時の、源太郎による回復魔法の力も大きい。
「旦那様、側室を増やした方が良いのではないですか?」
「そうですね、今の北畠家で正妻一人と側室が一人では少ないかもしれません」
「いや、於市と小夜で十分だよ」
「旦那様、珠を忘れては駄目ですよ」
「うっ、まだ十年は先の事だから。その時にどうなってるかは、分からないだろう」
「そんな事を珠の前で言っては駄目ですよ。珠は旦那様に嫁ぐのを夢見ているのですから」
於市に、忘れていたと言うよりも、忘れたかった事を言われて溜息をつく。
その後、於市と小夜の身体を順番に洗ってあげて、もう一度ゆっくりとお湯に浸かり、風呂を出た。
その日の夜、フカフカの布団に於市と寝ながら語らう。
「旦那様、妾達が身重では、辛くはないですか?」
「あゝ、そう言う事か。側室の話もそれで?」
「それだけではないですよ。今の北畠家には必要だと思ったのです」
於市も小夜も、北畠家の事を思って話をした事は分かった。
「少し考えてみるよ。今日はもう寝よう」
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