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二百二十七話 植物系を仲間にしよう

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 森の屋敷に戻った俺は、竜人族集落の防備を充実させるべく工房へと籠る。

 門の前にゴーレムは置くとして、集落の中だよな。

 俺がゴーレムの核を造っていると、セブールが提案してくれた。

「トレントを従魔にするのはどうでしょう? 活発に動かない限り餌は必要ありません。普段は、水と光、それと土から栄養を摂りますから」
「トレントか……アリだな」

 深淵の森にも植物系の魔物は棲息しているが、それを眷属にとは考えた事がなかった。

「この森のトレントなら、火にも耐性がありますし、高い再生力で死に難い魔物です。旦那様以外が従魔とするなら、それ程使える魔物ではないでしょうが、旦那様の眷属となれば劇的に変わる筈です。お役に立つ事間違いないかと」
「そうだな。セブール、悪いがクグノチを連れて良さげなトレントを探してくれないか?」
「承知致しました。あの規模の集落でしたら四体も居れば大丈夫でしょう」
「ああ、頼むよ」

 俺はセブールに、クグノチとトレントを探すよう頼んだ。クグノチは、元はウッドゴーレムだったので、植物関係ならお任せだ。きっと良さげなトレントを見付けてくれるだろう。

 俺は東西の門に置くゴーレム用の核をサクッと造り終え、手持ちの石材でストーンゴーレムを作成、眷属化した後、うちのメイドで元はリビングドールのブランとノワールにパワーレベリングを頼んだ。

 これはストーンゴーレムを強くするのが目的ではなく、進化により賢くなり動きも滑らかになるし、場合によっては手加減をしなきゃいけない時に、力加減が出来るようになるからだ。まあ、レベルが上がり進化すれば普通に強くなるんだけどな。まあ、それは二の次だ。




 そうこうしているうちに、セブールとクグノチが戻って来た。

「旦那様、四体ほど見付け、ひと所に集めておきました」
「えっ、集めれるの?」
「ええ、クグノチが居ますから」
『マスターノ、眷属ニ、ナレルト、ヨロコンデ、集マリマシタ』
「そうか。じゃあ、早速会いに行こうか」
「ご案内致します」

 さすがセブールとクグノチ。仕事が早い。セブールとクグノチの案内で森の奥へと向かう。

 やがて森の中の少し開けた空間に着く。多分、大型の魔物が暴れた跡だろう。森の樹々は、非常に頑丈なので外の人間では切り倒せない。それが木が倒れ開けた空間になっているという事は、この森に棲む高ランクで大型の魔物の仕業に違いない。


「えっと、トレントが三体と……草?」

 なんか一体おかしなのが混じっていた。まあ、確かに植物系の魔物だよな。

 六十年代アメリカのB級ホラー、リトル・ショップ・オブ・ホラーズに出てきた植物のバケモノか、日本の国民的RPGに出てきたモ◯ボルにも似ている。

「イモータルトレントとキラープランツです」
「へ、へぇ~」

 イモータルトレントの幹は直径一メートルくらいで、樹高が八メートルくらい。キラープランツは、高さが四メートルくらいか。これは大きいのか? 小さいのか?

「この大きさは、トレントとしては小さな方なのか? 森のトレントはもっと大きな個体が居たと思うが」
「普通のトレントは、長い年月を掛けて大きく硬く強くなります。そして一段目の進化を果たすと、より大きくエルダートレントとなるか、小さくなり移動が容易になると共に、高い再生力を得て、死に難い方向へと進化したイモータルトレントに分かれます」
「なる程、集落なら大き過ぎるエルダートレントよりも、小回りが効くイモータルトレントの方がいいか」

 小回りが効くとは言っても、所詮はトレントなので、素早く歩ける訳じゃない。だが、人間が小走りするくらいのスピードは出せるらしいので、集落の中限定なら何も問題ない。

 しかもトレントやキラープランツは、根っこやつるを伸ばして武器にする。これが意外と攻撃範囲が広く、敵を捕縛するという点を考えても優秀らしい。



 早速、眷属にしたんだが、暫くはクグノチとトムが色々と教育してくれるそうだ。

 俺達の森の拠点なら問題ないが、草原地帯の竜人族の集落では、不特定多数の人間と遭遇する。排除していい奴と、そうでない奴の区別を教えたり、基本的に殺さず捕縛する事を教えないといけない。とはいえ、この辺は根っこやつるを伸ばして獲物を捕獲するのが得意なイモータルトレントやキラープランツだから、俺としては心配していない。


 わさわさわと枝や葉っぱを揺らして喜ぶイモータルトレントA、B、Cとキラープランツ。

「進化したらどうなるのかな」
「イモータルトレントとキラープランツよりも上位の魔物は存在しないと思います。進化に至ると、新種となりますな。因みに、アスラやクグノチも新種ですよ。うちには新種ばかりなので忘れそうになりますが」
「そう言えばそうだったな」

 魔王国や西方諸国の歴史の中で、イモータルトレントやキラープランツが進化した存在は記録にないらしい。とはいえ、アスラやクグノチだけじゃなく、ウッドゴーレムだったトム達や、リビングドールだったブランやノワールも、この世界初の種族に進化済みだったな。

 深淵の森の外に、ここ以上に進化した魔物なんて居ないか。例外があるとすれば、オオ爺サマ達古竜が邪神の封印を守っていた南の竜の大陸くらいか。

 あの大陸は、竜種が棲む地。しかも古竜を筆頭に属性竜や劣化竜が棲んでいるよで、環境は過酷だけど魔力が濃く進化した魔物もいるんだよな。



 イモータルトレント達とキラープランツをトムとクグノチに任せ、俺は屋敷へと戻る。

 俺は睡眠も休憩も必要ないが、だからといって眠れない訳じゃない。ひと仕事終えたし、帰って昼寝でもするか。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。

 2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。


 また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されます。

 あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されます。

 あわせてよろしくお願いします。

 小狐丸



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