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二百二十二話 諦めない奴ら
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草原地帯の城塞都市に、合同買取所が建設される事が決まり、実際に建設スペースが決められ、竜人族、冒険者ギルド、薬師ギルド、錬金術師ギルドが建物の設計に入った頃、その動きから締め出されたのが商業ギルドだった。
各ギルドと竜人族、魔王国との話し合いで、思うような成果を得られなかった商業ギルドの本部長モーガンは荒れていた。
「クソッ! 蜥蜴擬きと荒くれ者どもや偏屈者どもめっ!!」
商業ギルド本部の自分の部屋に戻って来たモーガンは、部屋の備品を投げつけ暴れ、それだけで大量の汗をかき肩で息をしている。
そんなモーガンに一人の女が声を掛ける。
「あらあら、随分と荒れていますわね。その様子だと上手く利を持ち帰れなかったみたいね」
「……バーバラか。来ていたのか」
「それはそうよ。上手くすれば大儲けできそうって噂を聴けば、無駄足だとしても運ぶわよ」
そうモーガンにバーバラと呼ばれたこの女は、西方諸国や魔王国をまたに掛けるローズ商会を営む商会長だった。
セクシーなロングのドレスに身を包み、世の男連中を手玉に取る女傑。儲け主義で金に目がなく、金儲けの為なら少々悪どい手法も問わない。
「それで、話は草原地帯に突然現れた城塞都市の件だったんでしょう?」
「バーバラはどこまで掴んでいる?」
「そうねぇ。深淵の森の魔物が近寄らない強固な城塞都市が突然できて、魔王国の第二王子が頻繁に出入りしていると聞いているわ。それに、ジーラッド聖国が痛い目にあったらしいわね」
大陸を股に掛ける女商会長のバーバラだが、この世界の情報伝達ならこの程度で普通だろう。シグムンドもダーヴィッドを窓口にして丸投げなので、個々の商人など興味もない。
「そうだ。概ねワシの認識と一緒だな。ジーラッド聖国が、草原地帯に侵攻しようとして大失敗したのも事実だ。バーバラも知っているだろうが、魔王国の竜人族が草原地帯の城塞都市と定期的に交易したいらしい。それでそこに冒険者ギルドと薬師ギルド、錬金術師ギルドが合同で草原地帯の城塞都市内にマーケットを立ち上げる計画らしい」
バーバラも大商会の会頭だけあり、魔王国や草原地帯、ジーラッド聖国の動きは、ある程度掴んでいた。モーガンは、自分もバーバラの認識と変わらない事を認め、今回の話の内容を説明した。
「あら、いい話じゃない。当然、私たちも一枚噛めるんでしょうね」
「ワシの態度を見て分かるだろう! 相変わらず意地の悪い女だ」
「なんだ。情け無いわね。それでも商業ギルドの本部長なの。どうせ上から目線でマウントを取りにいって失敗したんじゃないの?」
「うるさい!」
バーバラに図星を突かれ、更にイラつくモーガン。バーバラが冷ややかな目で見ているのに気付かない。
モーガンは、竜人族の長老や冒険者ギルドの支部長グランツの態度を思い出しキレる。特に竜人族の長老は、蜥蜴擬きと下に見てバカにしていた相手だけに我慢ならないようだ。
「……ふぅ。いかんいかん、興奮し過ぎてしまったな。先ず、話し合いで合同買取所が建設される事になったのは、竜人族が草原地帯に滞在している古竜詣でが発端なんだ」
「古竜が居るって本当だったのね。鱗や血を狙った馬鹿が居るって噂を聞いたわ」
「ああ、ワシも実際にこの目で古竜を見た訳ではないが、それは竜人族以外にも多くの目撃者が居るから間違いない。その鱗や血を狙った馬鹿も実際居たと聞く。まぁ、勿論、二度と戻って来なかったらしいがな」
黄金竜のオオ爺サマが草原地帯に居る事は、流石にあの巨体だったので隠しようがない。ただ、今は人化し城塞都市内にシグムンドが用意した屋敷で暮らしていて、外に出るのは散歩か孤児院の子供達と遊ぶ時くらいなので、逆に護衛で訪れる冒険者など、それを知らない者もいる。
竜人族の長老も、オオ爺サマが身の回りの世話をする眷属を生み出した事までは、話し合いの場でわざわざ言わなかったので、モーガンも現状の古竜事情はそれ程詳しくは知らない。
「本部長、古竜は御伽話に出て来るような存在よ。古竜素材なんて、手に入れば儲けものよ。それよりも大事なのは深淵の森の素材よ。高ランクの魔物素材に、希少な薬草やキノコ類。他にも深淵の森でしか採れない素材は多いのよ。薬師ギルドや錬金術師ギルドに独占させるつもり?」
「分かっておる。しかし竜人族は、深淵の森の素材との交易に例の茶葉を出すと言っているのだ。草原地帯では、金の力は絶対ではないのだ!」
「まぁ! 竜人族の茶葉ですって!! 僅かでも手に入れれば、西方諸国の王族に高値で売れるじゃない! ローズ商会にも卸してくれないかしら」
バーバラのローズ商会としては、手に入るか分からない。手にしたとしても神話級の素材である古竜の鱗や血なんかより、深淵の森からの恵みが重要だった。
とはいえ、そんな事はモーガンも分かっている。モーガンが欲しているのも、シグムンド達がダーヴィッド経由で流している深淵の森の素材類なのだから。
しかもモーガンの口から出たのは竜人族の茶葉というパワーワード。魔王国だけにとどまらず、西方諸国の国々の王侯貴族が欲してやまない超高級茶葉。その希少性は勿論、天上の香りと味わいだと、金に糸目をつけない者は多い。しかし、金を積んだとて手に入れる事が出来ない。そんな高級茶葉を使って、竜人族は草原地帯との交易をするという。
「それとな。ふざけた事に、蜥蜴擬きや魔物混じり達が森神様と呼ぶ輩は、金を必要としていないなどと馬鹿な事をぬかす。なにが森神様だ! ワシを馬鹿にしてタダで済むと思うなよ!」
「落ち着いて本部長。でも、そうね。欲が無くて商売気がない相手は厄介ね」
話し合いの時の事を思い出したのか、だんだんモーガンの口が悪くなっていく。竜人族を蜥蜴擬き、魔族を魔物混じりなどと言い始めている。
それを見るバーバラは、逆に冷静になってゆく。バーバラは、商業ギルドに加入する商人だ。それ以上でも、それ以下でもない。モーガンと一緒に沈むつもりなどさらっさらない。
己の容姿に口先三寸とお金、それがバーバラの商人としての武器であり防具だ。ローズ商会さえ儲かれば、究極商業ギルドがどうなろうと関心はない。
ただ、バーバラもよく知らない存在の話も聞けた。モーガンが魔王国の人間や竜人族の長老から聞いた森神様という存在。深淵の森の外縁部ではなくその更に奥地に暮らし、草原地帯に突如城塞都市を造りだし、森から襲ってくる筈の魔物も抑えているらしい。
住む場所も、成した奇跡も、その後の平穏も、バーバラからすればにわかに信じられない。が、事実なのだろう。実際に草原地帯に城塞都市が在り、その外には農地が拡がっていながら、森からの魔物の被害もないというのだから。
まあ、最近はシグムンドの気配に加え、古竜達の気配が加わったので、森から魔物が出て来る事はほぼないと言える。
「竜人族の長老に何時もの手を使わんのか?」
「無茶言わないでよ。魔族や竜人族を相手に、そんなの通用する訳ないじゃない」
「流石のバーバラの色気も、魔物混じりと蜥蜴擬きには通用せんか」
「当たり前でしょう。美醜の基準が違うんだもの」
モーガンがバーバラに言った何時もの手とは、自身の美しさを活かした色仕掛けだ。バーバラは、その恵まれた容姿で貴族や取引相手を籠絡する。バーバラのお陰で、その色香に迷い身を持ち崩した者は多い。
ただ、今回はその手が使えない。魔族と言ってもセブールやリーファのようなアルケニー種やヴァンダードのような魔人種、巨人や鬼人、竜人族などなど様々な種族がいる。
人の基準で美形と言われるバーバラが、全ての魔族からそう見えるという訳じゃない。
同じく男女とも種族的に美形が多い、エルフにもバーバラの色仕掛けは効きにくい。
「薬師ギルドや錬金術師ギルドはともかく、冒険者ギルドが敵に回ったのは痛いな」
「魔物素材やポーション用の素材も、冒険者ギルドで捌く事も出来るものね」
西方諸国では、魔物素材の買い取りは主に冒険者ギルドの領分だ。商業ギルドが直接冒険者へ依頼をだす事は、当然ルール違反とされている。
勿論、商業ギルドが専属の冒険者を雇い、魔物素材を獲るのはOKだが、腕のいい高ランクの冒険者を専属で雇うなどコストに合わない。
しかも冒険者ギルドを経由せず、商業ギルドの仕事をしても、冒険者のランクは上がらないので冒険者側にもメリットは少ない。
そんな訳で、魔物素材が欲しい場合、商業ギルドも冒険者ギルドに依頼を出す。その冒険者ギルドと対立してしまっては、成り立たない商会も多いのだ。
話していくうちに、どんどん重苦しくなる空気を変えようと、バーバラが一つ提案する。
「本部長、西方諸国の国を纏めて抗議するってどう?」
「……もう動いているわ。だが、返事は芳しくない。特に、魔王国と草原地帯を繋ぐ交易路に在る国は話も聞いてくれん」
「もう、どうするのよ。うちだって深淵の森の素材は欲しいんだから」
「分かっておる」
バーバラが西方諸国連合を動かせないかモーガンに問うも、一つに纏まるなどなさそうだ。それを聞いてバーバラも焦れてくる。ローズ商会としても深淵の森の素材は是非とも欲しいのだ。
「ダーヴィッド殿下って、まだ若いわよね。会えないかしら」
「草原地帯まで行くのか?」
「魔王国に行くよりは可能性がありそうだもの」
「ふん。せいぜい頑張るんだな」
魔族の中でもヴァンダードやダーヴィッドの容姿は、角や肌の色は違えど人族に近い。美醜の価値観もそれ程外れてはいない。なら私なら何とかなるんじゃないかとバーバラは草原地帯へ行く事を決める。
仮にダーヴィッドを誘惑出来なかったとしても、城塞都市を調査する事が出来るので無駄にはならない。
そこでモーガンも西方諸国の中で、煽れば動いてくれそうな国を思い出す。
「そうだ。ジーラッド聖国なら話に乗ってくるかもしれん」
「……ありそうね。いえ、間違いなく乗ってくると私も思うわ」
モーガンが思い出したのは、いまだに魔王国を攻め滅ぼせと西方諸国連合の国々に訴えているとても迷惑な国。
それどころか、最近は草原地帯を我が物にしようと出兵し、高ランクの魔物に襲われ逃げ帰り、大打撃を受けたにもかかわらず、いまだに草原地帯を諦めていない困った国。
ただ、モーガンやバーバラからすれば、大量に物資や贅沢品を買ってくれるカモ……いや、お得意様だ。
「聖王バキャル、あの頭の軽い男ならコントロールしやすいからな」
「まぁ、そっちは本部長に任せるわ」
「なんだ。バーバラはジーラッド聖国には行かんのか? 確かローズ商会も進出していた筈だろう」
「あそこは王様も宰相も下品なだけのスケベジジイだもの。普通に商売するのはいいけれど、私が近付き過ぎると面倒が多いのよ」
「確かに、バキャル王もジムラン宰相も、女好きで有名だな。バーバラなら妾に求められても不思議はない」
「色仕掛けは私の武器でもあるんだけど、バキャル王とジムラン宰相の二人は、私の身に危険を感じるくらいだもの」
モーガンは、ジーラッド聖国を動かし何かを企んでいるようだ。逆にバーバラは、ジーラッド聖国には近付きたくない理由があった。その美貌で男を手玉に取ってきたバーバラだが、それも下心の度が過ぎる相手は苦手だと言う。
ただバーバラの考えは正しい。バキャルもジムランも、大商会を営むとはいえ平民の女など、どうとでも出来ると考えているのだから。機会があれば妾になれと申し付ける気満々だ。
そもそもあの国は、草原地帯や城塞都市に関しても、いまだに聖国が所有するべきだと本気で思っているのだ。平民の女一人、路傍の雑草と同じ扱いをしても不思議ない。
「はぁ、しかし、また馬車に揺られにゃならんのか。腰が痛くてかなわん」
「本部長は、もう少し痩せたらいいんじゃない。それに、草原地帯へ行く私の方が遠いのよ」
「ワシの体重の事はともかく、草原地帯までのルートは街道も整備され、高ランクの冒険者や魔王国の精鋭兵士が頻繁に行き来するから治安もいい。女旅とはいえ、それ程苦労はなかろうよ」
「だといいんだけどね」
商業ギルドの本部長であるモーガン自身が、フットワーク軽く動くのは珍しい。だいたいは通信の魔道具で各国の支部と連絡すれば済む事が多いのだから。
ただ、流石にバキャル王へは先ぶれを出し、モーガン自身が直接足を運ぶ必要がある。面倒だが、深淵の森の素材を優先的に得て、商業ギルドが主体となった取引をする為だ。その為なら、多少の苦労は我慢する。
バーバラの方はと言うと、彼女が言うように、草原地帯は大陸の南西端。大陸の中央寄りに本拠地を置くローズ商会本店からだと、草原地帯はかなりの距離になる。だがモーガンも言ったように、魔王国と草原地帯の交易が始まってから、その交易路の国々も積極的に街道を整備、それを魔王国も支援している。
実はシグムンドもこっそりと街道の整備を手伝っていたりする。それは、シグムンドの用意した馬車がいくら高性能だとはいえ、スピードを出すには整った道は必須だったからなのだが、結果的に交易路がこの世界でもあり得ないくらい整っているのは事実だ。
そんな理由もあり、ローズ商会の馬車は普通のこの世界基準のものなので、多少時間は掛かるがそれ程過酷な道程にはならないだろう。
「城塞都市で売れる物って分かる?」
「確か農地は広く実りは豊かだとの噂だ。魔王国も木材や石材などの建材と調味料や酒などの嗜好品が交易の中心だと言ってたな」
「ありがとう。その線で考えてみるわ」
「話し合いのついでに商売か。抜け目がないな」
「当然じゃない。最低でも経費分は儲けるわよ」
「逞しいことで」
バーバラがせっかく草原地帯に行くのだからと、城塞都市で何が売れるのかモーガンに聞く。モーガンも、自分が直接城塞都市へ行った訳ではないが、ダーヴィッドが厳選しているものので少数だが商人も出入りしている。その線から情報は得ているようだ。腐っても商業ギルドの本部長だ。情報の収集は怠らない。
「……そうだわ。砂糖と蜂蜜にしましょう」
「ああ、普通なら高価で手が出ぬが、竜人族の高級茶葉に対抗するなら、最低でもそのくらいの品物は必要だろうな」
「どっちにしろ竜人族の茶葉になんて対抗できないわよ。それでも現地で作っていない物を売るのは常識でしょう。それに輸送のコストを考えれば、相応の値を付けれるわ」
普通、砂糖や蜂蜜など、王侯貴族や豪商でないと口に入らないシロモノなのだが、そもそも竜人族は、草原地帯を治める者に高級茶葉を交易の目玉にしようとしている。なら高価でも砂糖や蜂蜜くらい、幾らでも買ってくれるだろう。その程度で深淵の森の素材を優先的に買えるとは思っていないが、少しくらい融通してくれるかもと淡い期待を寄せるバーバラ。
「じゃあ、私は草原地帯に向かう準備があるからお暇するわね」
「ああ、ワシも面倒だがジーラッド聖国へ行かねばならんからな。何かあれば通信の魔道具か、伝書従魔を飛ばしてくれ」
「分かったわ。じゃ、本部長も頑張ってね」
手をヒラヒラさせて部屋を出て行くバーバラ。モーガンも出掛ける準備をするかと、よっこらせと重い体を持ち上げる。
強欲なモーガンと、傲慢不遜なバキャル王。このどうしようもない取り合わせを知れば、ダーヴィッドは、これから起こるであろう厄介事を思い頭を抱えるだろう。
各ギルドと竜人族、魔王国との話し合いで、思うような成果を得られなかった商業ギルドの本部長モーガンは荒れていた。
「クソッ! 蜥蜴擬きと荒くれ者どもや偏屈者どもめっ!!」
商業ギルド本部の自分の部屋に戻って来たモーガンは、部屋の備品を投げつけ暴れ、それだけで大量の汗をかき肩で息をしている。
そんなモーガンに一人の女が声を掛ける。
「あらあら、随分と荒れていますわね。その様子だと上手く利を持ち帰れなかったみたいね」
「……バーバラか。来ていたのか」
「それはそうよ。上手くすれば大儲けできそうって噂を聴けば、無駄足だとしても運ぶわよ」
そうモーガンにバーバラと呼ばれたこの女は、西方諸国や魔王国をまたに掛けるローズ商会を営む商会長だった。
セクシーなロングのドレスに身を包み、世の男連中を手玉に取る女傑。儲け主義で金に目がなく、金儲けの為なら少々悪どい手法も問わない。
「それで、話は草原地帯に突然現れた城塞都市の件だったんでしょう?」
「バーバラはどこまで掴んでいる?」
「そうねぇ。深淵の森の魔物が近寄らない強固な城塞都市が突然できて、魔王国の第二王子が頻繁に出入りしていると聞いているわ。それに、ジーラッド聖国が痛い目にあったらしいわね」
大陸を股に掛ける女商会長のバーバラだが、この世界の情報伝達ならこの程度で普通だろう。シグムンドもダーヴィッドを窓口にして丸投げなので、個々の商人など興味もない。
「そうだ。概ねワシの認識と一緒だな。ジーラッド聖国が、草原地帯に侵攻しようとして大失敗したのも事実だ。バーバラも知っているだろうが、魔王国の竜人族が草原地帯の城塞都市と定期的に交易したいらしい。それでそこに冒険者ギルドと薬師ギルド、錬金術師ギルドが合同で草原地帯の城塞都市内にマーケットを立ち上げる計画らしい」
バーバラも大商会の会頭だけあり、魔王国や草原地帯、ジーラッド聖国の動きは、ある程度掴んでいた。モーガンは、自分もバーバラの認識と変わらない事を認め、今回の話の内容を説明した。
「あら、いい話じゃない。当然、私たちも一枚噛めるんでしょうね」
「ワシの態度を見て分かるだろう! 相変わらず意地の悪い女だ」
「なんだ。情け無いわね。それでも商業ギルドの本部長なの。どうせ上から目線でマウントを取りにいって失敗したんじゃないの?」
「うるさい!」
バーバラに図星を突かれ、更にイラつくモーガン。バーバラが冷ややかな目で見ているのに気付かない。
モーガンは、竜人族の長老や冒険者ギルドの支部長グランツの態度を思い出しキレる。特に竜人族の長老は、蜥蜴擬きと下に見てバカにしていた相手だけに我慢ならないようだ。
「……ふぅ。いかんいかん、興奮し過ぎてしまったな。先ず、話し合いで合同買取所が建設される事になったのは、竜人族が草原地帯に滞在している古竜詣でが発端なんだ」
「古竜が居るって本当だったのね。鱗や血を狙った馬鹿が居るって噂を聞いたわ」
「ああ、ワシも実際にこの目で古竜を見た訳ではないが、それは竜人族以外にも多くの目撃者が居るから間違いない。その鱗や血を狙った馬鹿も実際居たと聞く。まぁ、勿論、二度と戻って来なかったらしいがな」
黄金竜のオオ爺サマが草原地帯に居る事は、流石にあの巨体だったので隠しようがない。ただ、今は人化し城塞都市内にシグムンドが用意した屋敷で暮らしていて、外に出るのは散歩か孤児院の子供達と遊ぶ時くらいなので、逆に護衛で訪れる冒険者など、それを知らない者もいる。
竜人族の長老も、オオ爺サマが身の回りの世話をする眷属を生み出した事までは、話し合いの場でわざわざ言わなかったので、モーガンも現状の古竜事情はそれ程詳しくは知らない。
「本部長、古竜は御伽話に出て来るような存在よ。古竜素材なんて、手に入れば儲けものよ。それよりも大事なのは深淵の森の素材よ。高ランクの魔物素材に、希少な薬草やキノコ類。他にも深淵の森でしか採れない素材は多いのよ。薬師ギルドや錬金術師ギルドに独占させるつもり?」
「分かっておる。しかし竜人族は、深淵の森の素材との交易に例の茶葉を出すと言っているのだ。草原地帯では、金の力は絶対ではないのだ!」
「まぁ! 竜人族の茶葉ですって!! 僅かでも手に入れれば、西方諸国の王族に高値で売れるじゃない! ローズ商会にも卸してくれないかしら」
バーバラのローズ商会としては、手に入るか分からない。手にしたとしても神話級の素材である古竜の鱗や血なんかより、深淵の森からの恵みが重要だった。
とはいえ、そんな事はモーガンも分かっている。モーガンが欲しているのも、シグムンド達がダーヴィッド経由で流している深淵の森の素材類なのだから。
しかもモーガンの口から出たのは竜人族の茶葉というパワーワード。魔王国だけにとどまらず、西方諸国の国々の王侯貴族が欲してやまない超高級茶葉。その希少性は勿論、天上の香りと味わいだと、金に糸目をつけない者は多い。しかし、金を積んだとて手に入れる事が出来ない。そんな高級茶葉を使って、竜人族は草原地帯との交易をするという。
「それとな。ふざけた事に、蜥蜴擬きや魔物混じり達が森神様と呼ぶ輩は、金を必要としていないなどと馬鹿な事をぬかす。なにが森神様だ! ワシを馬鹿にしてタダで済むと思うなよ!」
「落ち着いて本部長。でも、そうね。欲が無くて商売気がない相手は厄介ね」
話し合いの時の事を思い出したのか、だんだんモーガンの口が悪くなっていく。竜人族を蜥蜴擬き、魔族を魔物混じりなどと言い始めている。
それを見るバーバラは、逆に冷静になってゆく。バーバラは、商業ギルドに加入する商人だ。それ以上でも、それ以下でもない。モーガンと一緒に沈むつもりなどさらっさらない。
己の容姿に口先三寸とお金、それがバーバラの商人としての武器であり防具だ。ローズ商会さえ儲かれば、究極商業ギルドがどうなろうと関心はない。
ただ、バーバラもよく知らない存在の話も聞けた。モーガンが魔王国の人間や竜人族の長老から聞いた森神様という存在。深淵の森の外縁部ではなくその更に奥地に暮らし、草原地帯に突如城塞都市を造りだし、森から襲ってくる筈の魔物も抑えているらしい。
住む場所も、成した奇跡も、その後の平穏も、バーバラからすればにわかに信じられない。が、事実なのだろう。実際に草原地帯に城塞都市が在り、その外には農地が拡がっていながら、森からの魔物の被害もないというのだから。
まあ、最近はシグムンドの気配に加え、古竜達の気配が加わったので、森から魔物が出て来る事はほぼないと言える。
「竜人族の長老に何時もの手を使わんのか?」
「無茶言わないでよ。魔族や竜人族を相手に、そんなの通用する訳ないじゃない」
「流石のバーバラの色気も、魔物混じりと蜥蜴擬きには通用せんか」
「当たり前でしょう。美醜の基準が違うんだもの」
モーガンがバーバラに言った何時もの手とは、自身の美しさを活かした色仕掛けだ。バーバラは、その恵まれた容姿で貴族や取引相手を籠絡する。バーバラのお陰で、その色香に迷い身を持ち崩した者は多い。
ただ、今回はその手が使えない。魔族と言ってもセブールやリーファのようなアルケニー種やヴァンダードのような魔人種、巨人や鬼人、竜人族などなど様々な種族がいる。
人の基準で美形と言われるバーバラが、全ての魔族からそう見えるという訳じゃない。
同じく男女とも種族的に美形が多い、エルフにもバーバラの色仕掛けは効きにくい。
「薬師ギルドや錬金術師ギルドはともかく、冒険者ギルドが敵に回ったのは痛いな」
「魔物素材やポーション用の素材も、冒険者ギルドで捌く事も出来るものね」
西方諸国では、魔物素材の買い取りは主に冒険者ギルドの領分だ。商業ギルドが直接冒険者へ依頼をだす事は、当然ルール違反とされている。
勿論、商業ギルドが専属の冒険者を雇い、魔物素材を獲るのはOKだが、腕のいい高ランクの冒険者を専属で雇うなどコストに合わない。
しかも冒険者ギルドを経由せず、商業ギルドの仕事をしても、冒険者のランクは上がらないので冒険者側にもメリットは少ない。
そんな訳で、魔物素材が欲しい場合、商業ギルドも冒険者ギルドに依頼を出す。その冒険者ギルドと対立してしまっては、成り立たない商会も多いのだ。
話していくうちに、どんどん重苦しくなる空気を変えようと、バーバラが一つ提案する。
「本部長、西方諸国の国を纏めて抗議するってどう?」
「……もう動いているわ。だが、返事は芳しくない。特に、魔王国と草原地帯を繋ぐ交易路に在る国は話も聞いてくれん」
「もう、どうするのよ。うちだって深淵の森の素材は欲しいんだから」
「分かっておる」
バーバラが西方諸国連合を動かせないかモーガンに問うも、一つに纏まるなどなさそうだ。それを聞いてバーバラも焦れてくる。ローズ商会としても深淵の森の素材は是非とも欲しいのだ。
「ダーヴィッド殿下って、まだ若いわよね。会えないかしら」
「草原地帯まで行くのか?」
「魔王国に行くよりは可能性がありそうだもの」
「ふん。せいぜい頑張るんだな」
魔族の中でもヴァンダードやダーヴィッドの容姿は、角や肌の色は違えど人族に近い。美醜の価値観もそれ程外れてはいない。なら私なら何とかなるんじゃないかとバーバラは草原地帯へ行く事を決める。
仮にダーヴィッドを誘惑出来なかったとしても、城塞都市を調査する事が出来るので無駄にはならない。
そこでモーガンも西方諸国の中で、煽れば動いてくれそうな国を思い出す。
「そうだ。ジーラッド聖国なら話に乗ってくるかもしれん」
「……ありそうね。いえ、間違いなく乗ってくると私も思うわ」
モーガンが思い出したのは、いまだに魔王国を攻め滅ぼせと西方諸国連合の国々に訴えているとても迷惑な国。
それどころか、最近は草原地帯を我が物にしようと出兵し、高ランクの魔物に襲われ逃げ帰り、大打撃を受けたにもかかわらず、いまだに草原地帯を諦めていない困った国。
ただ、モーガンやバーバラからすれば、大量に物資や贅沢品を買ってくれるカモ……いや、お得意様だ。
「聖王バキャル、あの頭の軽い男ならコントロールしやすいからな」
「まぁ、そっちは本部長に任せるわ」
「なんだ。バーバラはジーラッド聖国には行かんのか? 確かローズ商会も進出していた筈だろう」
「あそこは王様も宰相も下品なだけのスケベジジイだもの。普通に商売するのはいいけれど、私が近付き過ぎると面倒が多いのよ」
「確かに、バキャル王もジムラン宰相も、女好きで有名だな。バーバラなら妾に求められても不思議はない」
「色仕掛けは私の武器でもあるんだけど、バキャル王とジムラン宰相の二人は、私の身に危険を感じるくらいだもの」
モーガンは、ジーラッド聖国を動かし何かを企んでいるようだ。逆にバーバラは、ジーラッド聖国には近付きたくない理由があった。その美貌で男を手玉に取ってきたバーバラだが、それも下心の度が過ぎる相手は苦手だと言う。
ただバーバラの考えは正しい。バキャルもジムランも、大商会を営むとはいえ平民の女など、どうとでも出来ると考えているのだから。機会があれば妾になれと申し付ける気満々だ。
そもそもあの国は、草原地帯や城塞都市に関しても、いまだに聖国が所有するべきだと本気で思っているのだ。平民の女一人、路傍の雑草と同じ扱いをしても不思議ない。
「はぁ、しかし、また馬車に揺られにゃならんのか。腰が痛くてかなわん」
「本部長は、もう少し痩せたらいいんじゃない。それに、草原地帯へ行く私の方が遠いのよ」
「ワシの体重の事はともかく、草原地帯までのルートは街道も整備され、高ランクの冒険者や魔王国の精鋭兵士が頻繁に行き来するから治安もいい。女旅とはいえ、それ程苦労はなかろうよ」
「だといいんだけどね」
商業ギルドの本部長であるモーガン自身が、フットワーク軽く動くのは珍しい。だいたいは通信の魔道具で各国の支部と連絡すれば済む事が多いのだから。
ただ、流石にバキャル王へは先ぶれを出し、モーガン自身が直接足を運ぶ必要がある。面倒だが、深淵の森の素材を優先的に得て、商業ギルドが主体となった取引をする為だ。その為なら、多少の苦労は我慢する。
バーバラの方はと言うと、彼女が言うように、草原地帯は大陸の南西端。大陸の中央寄りに本拠地を置くローズ商会本店からだと、草原地帯はかなりの距離になる。だがモーガンも言ったように、魔王国と草原地帯の交易が始まってから、その交易路の国々も積極的に街道を整備、それを魔王国も支援している。
実はシグムンドもこっそりと街道の整備を手伝っていたりする。それは、シグムンドの用意した馬車がいくら高性能だとはいえ、スピードを出すには整った道は必須だったからなのだが、結果的に交易路がこの世界でもあり得ないくらい整っているのは事実だ。
そんな理由もあり、ローズ商会の馬車は普通のこの世界基準のものなので、多少時間は掛かるがそれ程過酷な道程にはならないだろう。
「城塞都市で売れる物って分かる?」
「確か農地は広く実りは豊かだとの噂だ。魔王国も木材や石材などの建材と調味料や酒などの嗜好品が交易の中心だと言ってたな」
「ありがとう。その線で考えてみるわ」
「話し合いのついでに商売か。抜け目がないな」
「当然じゃない。最低でも経費分は儲けるわよ」
「逞しいことで」
バーバラがせっかく草原地帯に行くのだからと、城塞都市で何が売れるのかモーガンに聞く。モーガンも、自分が直接城塞都市へ行った訳ではないが、ダーヴィッドが厳選しているものので少数だが商人も出入りしている。その線から情報は得ているようだ。腐っても商業ギルドの本部長だ。情報の収集は怠らない。
「……そうだわ。砂糖と蜂蜜にしましょう」
「ああ、普通なら高価で手が出ぬが、竜人族の高級茶葉に対抗するなら、最低でもそのくらいの品物は必要だろうな」
「どっちにしろ竜人族の茶葉になんて対抗できないわよ。それでも現地で作っていない物を売るのは常識でしょう。それに輸送のコストを考えれば、相応の値を付けれるわ」
普通、砂糖や蜂蜜など、王侯貴族や豪商でないと口に入らないシロモノなのだが、そもそも竜人族は、草原地帯を治める者に高級茶葉を交易の目玉にしようとしている。なら高価でも砂糖や蜂蜜くらい、幾らでも買ってくれるだろう。その程度で深淵の森の素材を優先的に買えるとは思っていないが、少しくらい融通してくれるかもと淡い期待を寄せるバーバラ。
「じゃあ、私は草原地帯に向かう準備があるからお暇するわね」
「ああ、ワシも面倒だがジーラッド聖国へ行かねばならんからな。何かあれば通信の魔道具か、伝書従魔を飛ばしてくれ」
「分かったわ。じゃ、本部長も頑張ってね」
手をヒラヒラさせて部屋を出て行くバーバラ。モーガンも出掛ける準備をするかと、よっこらせと重い体を持ち上げる。
強欲なモーガンと、傲慢不遜なバキャル王。このどうしようもない取り合わせを知れば、ダーヴィッドは、これから起こるであろう厄介事を思い頭を抱えるだろう。
4,491
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