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四話 普通科は平和
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エトワール視点
試験の結果は、文句なしに合格したみたい。点数なんかが非公開なのは、王族や高位貴族よりも平民が上回るのを誰の目にも分かる形にしないため。特に、今年はバーキラ王国の第三王女が入学するので尚更だ。
バーキラ王国の国王陛下なら、その辺り気にしないでしょうけどね。
「お嬢様方。お時間ですよ」
「うん。マーベル、じゃあ行ってくるね!」
「行ってきます」
「行ってきまーす!」
マーベルに見送られ、王都の屋敷を出る私たち。フローラが元気よくマーベルに手を振り、私と春香も行ってきますの声を掛けて門を出る。
天真爛漫で明るいフローラだけど、貴族派や他国の人間からの蔑む視線や声を向けられた時が少しだけ心配ね。
色々な差別とは無縁の聖域で育った私たちは、悪意ある視線を向けられた事がない。勿論、魔物から向けられる殺気は何度も受けた事があるけど、相手が人間となるとそういう経験はないから。
でもフローラなら、絡んできた有象無象をボコボコにしそうね。あの子、誰に似たのか、姉妹の中で一番脳筋だもの。
それにマーニママも、私たちに暗器の扱いまで仕込んでいるから、あの子キレたら不味いかもしれないわね。
「ガタガタ振動の激しそうな馬車があるね」
「春香、あれは多分、トリアリア王国の貴族の馬車よ」
「フローラ知ってるよ! バーキラ王国と同盟国は、パパの造った馬車なんでしょ!」
「そうよ。私たちが生まれる前の話だって聞いてるわ」
馬車もそうだけど、バーキラ王国にはパパが発明したり、改良した物が沢山ある。それは魔導具だけじゃなく、技術さえあれば誰でも作れるものも含めてね。
特にパパが開発して大ヒットしたのは、浄化の魔導具が付いた便器。これ凄く大事。私たちは生まれた時には有った物だから、ママたちが話してくれるパパ製のトイレが無かった時代なんて耐えられないと思う。
バーキラ王国は魔導具が普及している方だけど、それでも私たちの屋敷と比べると……だからね。
「あっ、そう言えば、カエデちゃんが時々隠れて護衛してくれるみたいだよ」
「ウソ。カエデちゃんって、王都で姿を見せたらパニックになるんじゃないの?」
「大丈夫よ、春香、フローラ。カエデちゃんのハイドを見破れるのなんて、パパくらいのものだから」
カエデちゃんは、パパが初めて従魔にしたアラクネの特異種。アラクネってだけで、もう厄災種らしいのだけど、カエデちゃんはその更に特異個体らしく、とても強い。私たち姉妹が束になっても勝てないくらいに。
ただ、ボルトンならまだしも、王都の街をカエデちゃんが一人で出歩くのは流石に不味い。でも、カエデちゃんが気配を隠匿すれば、私たちでも見付けられない。主人であるパパ以外には無理ね。
王都に屋敷が在るのは、ある程度高位の貴族か、男爵辺りでも家業が順調で裕福な家くらい。そうでない貴族は、学園内に専用の寮がある。
ここは本来なら貴族や平民と分け隔てなくする為、同じ広さの部屋を用意するべきなんだろうけど、流石に貴族は従者も居るし、それは学園にも認められている。だから平民は2人部屋が基本なのに対して、貴族は従者部屋の付いた個室なのは仕方ないと思う。
まあ、内装や家具なんかも、貴族仕様とそれ以外とは全然違うらしいんだけどね。
特に、貴族派の人間は学園の規則で、校内では身分を振りかざさないという決まりも守る気もないだろうしね。平民と違い貴族は学園に寄付もしているから、扱いを変える事自体に文句はないのだけどね。
パパやママたちから、バーキラ王国の貴族でも国王派や中立派はまだしも、貴族派に属している家の人間には気を付けるよう言われている。
王都の学園は、貴族の屋敷のある貴族区と平民の住む居住区の中間くらいにある商業区にあるので、貴族街の端っこに家のある私たちは、徒歩でもそれ程時間も掛からず着いた。
「あっ、エトワールお姉ちゃん、あそこじゃない?」
「本当ね。見に行きましょう」
フローラがクラス分けが貼り出されているだろう場所を指差す。
貼り出された掲示板に集まるのは、ほとんど普通科の平民だ。教養科の貴族連中は、従者が代わりに確認している。まあ、貴族はほぼ100パーセント合格するから、それぞれ三つある教養科と騎士科のどのクラスになったかを確認しているだけなんだけどね。
その辺、普通科の掲示板の前は、合否に一喜一憂する子供や親たちの姿が見れる。
「あっ、あったよお姉ちゃん!」
「まあ、当たり前ね。三人ともAクラスだわ」
「みんな一緒でよかったね!」
姉妹で一番目の良いフローラがいち早く私たちの名前を見つける。
学力的にも実技でも私たち姉妹が落ちる訳がない。春香は素直に三人が一緒のクラスで喜んでいる。
そんな私達に近付く気配があった。
「ねえ、君達、イルマ様のお嬢さんだろ?」
「ええ、そうよ。そう言うあなたは?」
「やっぱり! 僕はユークス。僕のお祖父様が君達のお父さんに凄くお世話になっているって言ってたから、そうだと思ったよ。あ、ああ、僕のお祖父様はパペック商会の会頭のパペックだよ」
少しテンションが高くて私達は引き気味だけど、このユークスという少年は、パペックさんの孫らしい。そう言えば、何となく面影があるわね。
「パペックさんの孫なら、私達を知ってても不思議じゃないわね」
「パペックのおじさん? この前会ったよね」
「そうね。聖域に来てたよね」
「お祖父様は、今も聖域から王都を行き来しているからね。それより、さすがイルマ様の娘だね。上位を独占じゃないか」
「あら、これって成績順だったのね」
ハイテンションのユークス君が、張り出されたAクラスのボードを指差す。確かに、私、春香、フローラの順だけど、成績順とは思わなかったわね。
その後、クラス毎に分かれオリエンテーションがある。
私達は普通科だからあまり関係ないのよね。
普通科は基本の教科以外では、武術系の実技と魔法系の学科と実技の授業を選択できるのだけど、騎士科のように武術系は必須ではないし、貴族の子息子女や豪商の子供が入る教養科のようにマナーの授業もない。
正直な話、受けたい授業はあまりないの。
魔法理論の授業なんて、大精霊様達やエルフの国の王妃のルーミア様や王女のミーミル様、そしてソフィアママとパパから教わってるんだから、今さら受けるだけ無駄だしね。
そして試験で手を抜かないとダメな魔法実技なんて、もっと私達には必要ない。
そして武術実技は、教える側が私達よりも弱くて、何を教わるのかって話よね。
そして基本教科も試験を受けたら飛び級が可能。本当、私達、何しに来たんだろう。
そんな気分の滅入った私に、隣の席の女の子が話し掛けてきた。
席順は、私の左隣りがフローラ、その後ろが春香、私の後ろも大人しそうな女の子、そして右隣りが、声を掛けてきた活発そうな女の子だった。
「私の名前はサティ・ロットン。よろしくね」
「私はエトワール・イルマ。隣が妹のフローラ。その後ろがもう一人の妹の春香よ」
「えっと、三人姉妹なのかな」
「ああ、勿論、母親は別々よ」
「そ、そうよね。ごめんなさい」
「気にしないから大丈夫よ」
同じ歳で三姉妹、しかも全員種族が違うんだもの。知らないと困惑するわよね。
「あ、あの、私も自己紹介してもいいですか?」
「勿論、私はエトワールって聞いてたわよね」
「は、はい。私はシャルルです。みなさんと違い平民なので苗字はありません」
私の後ろの席で、春香の隣の大人しそうな女の子が自己紹介してきた。
「シャルルね。私はサティでいいわ。一応男爵家だけど、貧乏男爵家の四女は平民と変わらないから、呼び捨てで構わないわよ」
「私たちも一応イルマって姓はあるけど、貴族って訳じゃないから呼び捨てでいいわ」
「うん。私もフローラでいいよ」
「私は春香で」
「じゃあ、私たちの中ではお互い名前呼びでいいわね」
サティがそう言って私たち五人は、お互い名前を呼び捨てで呼び合う事になった。
あれ? もしかして、聖域以外で初の友達ゲット?
そこに男の子が二人近付いて来た。一人は、クラス分けのボード前で会ったパペックおじさんの孫、ユークス。
「やあ、エトワールさん達選択する授業決まった?」
「ちょっと待てよユークス。先に自己紹介させろ。俺はルディ。王都で商会を営む家の次男さ」
「私はエトワールよ」
「春香、よろしくね」
「フローラだよ」
「私はサティよ」
「シャルルです」
ユークスと一緒に来た男の子はルディ。ユークスとは商人繋がりかしら。
「王都で商会を営んでいるなら、ユークス君の家とは商売敵じゃないの?」
「パペック商会と一緒にしないでくれ。家はもっとこじんまりと営んでいる零細だよ」
「ルディ、王都に店があって零細はないよ」
「パペック商会みたいに、王国中に展開しているのとは違うだろう」
商売敵という訳じゃなさそうね。
そう言えば、パペックおじさんの商会って、バーキラ王国だけじゃなく、聖域やウェッジフォートにもお店がある大商会だったのね。
「お祖父様は運が良かっただけだって、何時も言ってるよ。全てはエトワールさん達のお父さんのお陰だってね」
「うん? エトワールさん達の父親が関係あるのか?」
「えっ!? ルディ、君、商人の息子なのに知らないのかい!」
「えっ、どういう事だよ」
ユークス君は、ルディがパパの事知らないと知って本気で驚いている。でも、仕方ないんじゃないかしら。パパって、物を造る事には夢中になるけど、あとはパペックおじさんに任せてお終いだもの。表に出てこないから、知る人ぞ知るって感じだもの。
「本当に知らないのかい。エトワールさん達のお父さんが発明した物の数々」
「「「えっ!?」」」
ほら、ルディ君だけじゃなくサティやシャルルまで驚いてる。
「代表的なところで言うと、浄化の魔導具付き便器、井戸のポンプ、乗り心地抜群の馬車もそうだね。ミシンやグライドバイク、騎士団が運用している陸戦艇サラマンダーもそうだね。他にも色々とあるよ」
「「「なっ!?」」」
ユークス君の説明にルディ君達は更に驚きの表情となる。
でも、これでもパペックおじさんに売ってるヤツだけなのよね。聖域には、表に出せないウラノスとかガルーダとか色々あるもの。
色々と驚かれたけど、この普通科のクラスは悪くなさそうね。学園自体は微妙だけど、友達を作ると考えれば、アリなのかな。
試験の結果は、文句なしに合格したみたい。点数なんかが非公開なのは、王族や高位貴族よりも平民が上回るのを誰の目にも分かる形にしないため。特に、今年はバーキラ王国の第三王女が入学するので尚更だ。
バーキラ王国の国王陛下なら、その辺り気にしないでしょうけどね。
「お嬢様方。お時間ですよ」
「うん。マーベル、じゃあ行ってくるね!」
「行ってきます」
「行ってきまーす!」
マーベルに見送られ、王都の屋敷を出る私たち。フローラが元気よくマーベルに手を振り、私と春香も行ってきますの声を掛けて門を出る。
天真爛漫で明るいフローラだけど、貴族派や他国の人間からの蔑む視線や声を向けられた時が少しだけ心配ね。
色々な差別とは無縁の聖域で育った私たちは、悪意ある視線を向けられた事がない。勿論、魔物から向けられる殺気は何度も受けた事があるけど、相手が人間となるとそういう経験はないから。
でもフローラなら、絡んできた有象無象をボコボコにしそうね。あの子、誰に似たのか、姉妹の中で一番脳筋だもの。
それにマーニママも、私たちに暗器の扱いまで仕込んでいるから、あの子キレたら不味いかもしれないわね。
「ガタガタ振動の激しそうな馬車があるね」
「春香、あれは多分、トリアリア王国の貴族の馬車よ」
「フローラ知ってるよ! バーキラ王国と同盟国は、パパの造った馬車なんでしょ!」
「そうよ。私たちが生まれる前の話だって聞いてるわ」
馬車もそうだけど、バーキラ王国にはパパが発明したり、改良した物が沢山ある。それは魔導具だけじゃなく、技術さえあれば誰でも作れるものも含めてね。
特にパパが開発して大ヒットしたのは、浄化の魔導具が付いた便器。これ凄く大事。私たちは生まれた時には有った物だから、ママたちが話してくれるパパ製のトイレが無かった時代なんて耐えられないと思う。
バーキラ王国は魔導具が普及している方だけど、それでも私たちの屋敷と比べると……だからね。
「あっ、そう言えば、カエデちゃんが時々隠れて護衛してくれるみたいだよ」
「ウソ。カエデちゃんって、王都で姿を見せたらパニックになるんじゃないの?」
「大丈夫よ、春香、フローラ。カエデちゃんのハイドを見破れるのなんて、パパくらいのものだから」
カエデちゃんは、パパが初めて従魔にしたアラクネの特異種。アラクネってだけで、もう厄災種らしいのだけど、カエデちゃんはその更に特異個体らしく、とても強い。私たち姉妹が束になっても勝てないくらいに。
ただ、ボルトンならまだしも、王都の街をカエデちゃんが一人で出歩くのは流石に不味い。でも、カエデちゃんが気配を隠匿すれば、私たちでも見付けられない。主人であるパパ以外には無理ね。
王都に屋敷が在るのは、ある程度高位の貴族か、男爵辺りでも家業が順調で裕福な家くらい。そうでない貴族は、学園内に専用の寮がある。
ここは本来なら貴族や平民と分け隔てなくする為、同じ広さの部屋を用意するべきなんだろうけど、流石に貴族は従者も居るし、それは学園にも認められている。だから平民は2人部屋が基本なのに対して、貴族は従者部屋の付いた個室なのは仕方ないと思う。
まあ、内装や家具なんかも、貴族仕様とそれ以外とは全然違うらしいんだけどね。
特に、貴族派の人間は学園の規則で、校内では身分を振りかざさないという決まりも守る気もないだろうしね。平民と違い貴族は学園に寄付もしているから、扱いを変える事自体に文句はないのだけどね。
パパやママたちから、バーキラ王国の貴族でも国王派や中立派はまだしも、貴族派に属している家の人間には気を付けるよう言われている。
王都の学園は、貴族の屋敷のある貴族区と平民の住む居住区の中間くらいにある商業区にあるので、貴族街の端っこに家のある私たちは、徒歩でもそれ程時間も掛からず着いた。
「あっ、エトワールお姉ちゃん、あそこじゃない?」
「本当ね。見に行きましょう」
フローラがクラス分けが貼り出されているだろう場所を指差す。
貼り出された掲示板に集まるのは、ほとんど普通科の平民だ。教養科の貴族連中は、従者が代わりに確認している。まあ、貴族はほぼ100パーセント合格するから、それぞれ三つある教養科と騎士科のどのクラスになったかを確認しているだけなんだけどね。
その辺、普通科の掲示板の前は、合否に一喜一憂する子供や親たちの姿が見れる。
「あっ、あったよお姉ちゃん!」
「まあ、当たり前ね。三人ともAクラスだわ」
「みんな一緒でよかったね!」
姉妹で一番目の良いフローラがいち早く私たちの名前を見つける。
学力的にも実技でも私たち姉妹が落ちる訳がない。春香は素直に三人が一緒のクラスで喜んでいる。
そんな私達に近付く気配があった。
「ねえ、君達、イルマ様のお嬢さんだろ?」
「ええ、そうよ。そう言うあなたは?」
「やっぱり! 僕はユークス。僕のお祖父様が君達のお父さんに凄くお世話になっているって言ってたから、そうだと思ったよ。あ、ああ、僕のお祖父様はパペック商会の会頭のパペックだよ」
少しテンションが高くて私達は引き気味だけど、このユークスという少年は、パペックさんの孫らしい。そう言えば、何となく面影があるわね。
「パペックさんの孫なら、私達を知ってても不思議じゃないわね」
「パペックのおじさん? この前会ったよね」
「そうね。聖域に来てたよね」
「お祖父様は、今も聖域から王都を行き来しているからね。それより、さすがイルマ様の娘だね。上位を独占じゃないか」
「あら、これって成績順だったのね」
ハイテンションのユークス君が、張り出されたAクラスのボードを指差す。確かに、私、春香、フローラの順だけど、成績順とは思わなかったわね。
その後、クラス毎に分かれオリエンテーションがある。
私達は普通科だからあまり関係ないのよね。
普通科は基本の教科以外では、武術系の実技と魔法系の学科と実技の授業を選択できるのだけど、騎士科のように武術系は必須ではないし、貴族の子息子女や豪商の子供が入る教養科のようにマナーの授業もない。
正直な話、受けたい授業はあまりないの。
魔法理論の授業なんて、大精霊様達やエルフの国の王妃のルーミア様や王女のミーミル様、そしてソフィアママとパパから教わってるんだから、今さら受けるだけ無駄だしね。
そして試験で手を抜かないとダメな魔法実技なんて、もっと私達には必要ない。
そして武術実技は、教える側が私達よりも弱くて、何を教わるのかって話よね。
そして基本教科も試験を受けたら飛び級が可能。本当、私達、何しに来たんだろう。
そんな気分の滅入った私に、隣の席の女の子が話し掛けてきた。
席順は、私の左隣りがフローラ、その後ろが春香、私の後ろも大人しそうな女の子、そして右隣りが、声を掛けてきた活発そうな女の子だった。
「私の名前はサティ・ロットン。よろしくね」
「私はエトワール・イルマ。隣が妹のフローラ。その後ろがもう一人の妹の春香よ」
「えっと、三人姉妹なのかな」
「ああ、勿論、母親は別々よ」
「そ、そうよね。ごめんなさい」
「気にしないから大丈夫よ」
同じ歳で三姉妹、しかも全員種族が違うんだもの。知らないと困惑するわよね。
「あ、あの、私も自己紹介してもいいですか?」
「勿論、私はエトワールって聞いてたわよね」
「は、はい。私はシャルルです。みなさんと違い平民なので苗字はありません」
私の後ろの席で、春香の隣の大人しそうな女の子が自己紹介してきた。
「シャルルね。私はサティでいいわ。一応男爵家だけど、貧乏男爵家の四女は平民と変わらないから、呼び捨てで構わないわよ」
「私たちも一応イルマって姓はあるけど、貴族って訳じゃないから呼び捨てでいいわ」
「うん。私もフローラでいいよ」
「私は春香で」
「じゃあ、私たちの中ではお互い名前呼びでいいわね」
サティがそう言って私たち五人は、お互い名前を呼び捨てで呼び合う事になった。
あれ? もしかして、聖域以外で初の友達ゲット?
そこに男の子が二人近付いて来た。一人は、クラス分けのボード前で会ったパペックおじさんの孫、ユークス。
「やあ、エトワールさん達選択する授業決まった?」
「ちょっと待てよユークス。先に自己紹介させろ。俺はルディ。王都で商会を営む家の次男さ」
「私はエトワールよ」
「春香、よろしくね」
「フローラだよ」
「私はサティよ」
「シャルルです」
ユークスと一緒に来た男の子はルディ。ユークスとは商人繋がりかしら。
「王都で商会を営んでいるなら、ユークス君の家とは商売敵じゃないの?」
「パペック商会と一緒にしないでくれ。家はもっとこじんまりと営んでいる零細だよ」
「ルディ、王都に店があって零細はないよ」
「パペック商会みたいに、王国中に展開しているのとは違うだろう」
商売敵という訳じゃなさそうね。
そう言えば、パペックおじさんの商会って、バーキラ王国だけじゃなく、聖域やウェッジフォートにもお店がある大商会だったのね。
「お祖父様は運が良かっただけだって、何時も言ってるよ。全てはエトワールさん達のお父さんのお陰だってね」
「うん? エトワールさん達の父親が関係あるのか?」
「えっ!? ルディ、君、商人の息子なのに知らないのかい!」
「えっ、どういう事だよ」
ユークス君は、ルディがパパの事知らないと知って本気で驚いている。でも、仕方ないんじゃないかしら。パパって、物を造る事には夢中になるけど、あとはパペックおじさんに任せてお終いだもの。表に出てこないから、知る人ぞ知るって感じだもの。
「本当に知らないのかい。エトワールさん達のお父さんが発明した物の数々」
「「「えっ!?」」」
ほら、ルディ君だけじゃなくサティやシャルルまで驚いてる。
「代表的なところで言うと、浄化の魔導具付き便器、井戸のポンプ、乗り心地抜群の馬車もそうだね。ミシンやグライドバイク、騎士団が運用している陸戦艇サラマンダーもそうだね。他にも色々とあるよ」
「「「なっ!?」」」
ユークス君の説明にルディ君達は更に驚きの表情となる。
でも、これでもパペックおじさんに売ってるヤツだけなのよね。聖域には、表に出せないウラノスとかガルーダとか色々あるもの。
色々と驚かれたけど、この普通科のクラスは悪くなさそうね。学園自体は微妙だけど、友達を作ると考えれば、アリなのかな。
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