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第十話 二人で魔法の考察

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 魔法を習い始めてから、ホクトとサクヤは色々な魔法を試行錯誤を繰り返していた。

 毎日の日課である、魔力操作と魔力量増大の為の瞑想は勿論続けている。

 ホクトはサクヤに対しても気の練り方と、気と魔力の同時運用を教えた。これによりサクヤの身体能力の強化率を向上させる事が出来るだろう。



 ホクトとサクヤがフローラやエヴァに内緒で取り組んだ魔法は主に無属性魔法の数々だ。その中でも時空間魔法に取り組んだ。
 サクヤが言うには、ライトノベルというジャンルの小説では、アイテムボックスとか空間収納と呼ばれるモノが出て来ると言う。その内容を聞いたホクトも、そんな便利な魔法なら是非使える様になりたいと意欲的だった。



 収納魔法はサクヤが最初に成功させた。別の空間という概念をイメージするのだが、そこは分け御霊とは言え神の一柱だっただけあり、その辺りのイメージがし易かったようだ。サクヤに遅れること十日程でホクトも空間収納アイテムボックスの魔法を成功させる。

 空間収納の魔法名はどうするか二人で相談したが、そのまま空間収納アイテムボックスとした。

 魔法に名前を付ける事は意外と大事だとフローラに教えられた。名前を付けることによりイメージがより固まるのだと言う。

 空間収納を成功させてからは、時空間魔法の理解が一気に進み、転移魔法は比較的短時間で成功させる事が出来た。ただこの転移魔法は、魔力がかなり必要なので、ホクトとサクヤ以外は気軽に使えないだろう。


 他には、重力魔法を開発した。
 これは物の重量軽減や、逆に戦闘時に対象の指定エリアの重力を増加させる魔法。これは物に重量軽減の付与が出来る様に成りたかったからだ。


 あとロマンとして空飛びたいよね。と言う事でチャレンジした飛翔魔法は、無属性魔法と風属性魔法を使った複合魔法で実現した。
 身体を浮かせるのは念動魔法で、そこからの飛翔は念動と風魔法の複合魔法で自在な飛行を実現できた。飛行中に風の防壁を纏う事で低温や風圧から身体を守る様にした。


 光属性魔法の中に、アンデッドや呪いを浄化するピュリフィケーションと言う魔法があるが、ホクトとサクヤはこれを汚れを落としたり、バイ菌や細菌を消毒する魔法に改良した魔法を創った。

 これはこの世界が地球で言う中世程度なので、衛生環境に対する意識が低い。千二百年前の酒呑童子だった頃ならいざ知らず、現代日本の生活を経験している二人にとって、この【浄化】の魔法は最優先で開発したかった魔法だった。

 この浄化魔法はそれ以外にも、怪我の治療にも使われた。必要のない細菌をイメージして浄化魔法をかけ、その後治癒魔法を行使する。これだけで治癒魔法の効果が上昇する事になる。





「属性魔法と無属性魔法はイメージ次第で自由度が高いな」

「そうね、精霊魔法は威力と効果が高いし、燃費も良いんだけど、自由度で言えば少し落ちるものね」



 魔力を纏う身体能力の強化では、全身に魔力を纏って強化した状態から、さらに部分的により強化する事で、剣術や体術に有効的な使用方法模索した。
 実際、武術での体捌きにおいて、腰から下を強めに強化した方が動きが安定する。



 魔法の開発においてはサクヤはその知識と能力を発揮した。二人で試行錯誤を繰り返す魔法の開発と研鑽は、ホクトとサクヤにとって愛情を確かめ合う時間でもあった。



 二人に魔法を教えるフローラとエヴァも、乾いたスポンジが水を吸い込む様に、教えた事を吸収する二人の子供に、自重を忘れて次々と魔法を教えていく。お陰でフローラとエヴァからの魔法の修行は、二年を過ぎた頃から自習となった。

 逆にホクトとサクヤの発想から開発された魔法を、フローラとエヴァが逆に教わる時間が増えていった。




 そんな順調な日々を過ごしていたホクトとサクヤだが、一つだけ叶わなかった事があった。

「ごめんなさいね、ホクト。お母さん魔導具の事は専門外なのよ」

「ごめんねホクト君。私もフローラと一緒で魔導具は造った事がないの」

 そう、屋敷にある灯りの魔導具や水を出す魔導具など、この世界には電気やガスが無い替わりに魔導具が有った。それにホクトやサクヤが興味を持たない筈がなかった。特に現代人だったホクトとサクヤは、トイレ事情を改善したかった。汚れや綺麗にし殺菌する浄化魔法を開発した事で、よりその思いは強くなった。

「魔導具の本なら手に入れれるかもしれないけど、本格的に学ぶには王都の学園に入ってからになるんじゃないかしら」

「わかりました母上。でも魔導具の本は欲しいです」

「そう、じゃあお父様に頼まないとね」

 そう言ってホクトを抱きしめ頭を撫でるフローラ。息子とのスキンシップ大好きな母親を、恥ずかしい気持ちもあるが、嬉しくもあるホクト。何度も輪廻転生して来た中で、ここまで親からの愛情を無条件に信じられる事などなかった。

 この両親のもとに転生させてくれた神に、心から感謝したホクトだった。


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