44 / 46
第二章
四十四話 人手が増やしたい
しおりを挟む
「修二様、少しご相談があるのですが」
「ああ、ジェスタさん。どうしたんですか?」
朝の日課の訓練を終えたところで、ジェスタさんに声をかけられた。
僕やお義父さん、サミティアさん、フェルミアちゃんとミルティアちゃんは、毎日朝に訓練をしている。佐那は勿論、ヘティスちゃんもまだ小さいから不参加だ。
そこにハイド族のジェスタさん達が加わった。
その日も皆んなの訓練を指導し終え、そろそろ起き出しただろう佐那と遊ぼうと家に戻ろうとした時、ジェスタさんから相談事があると話しかけられたんだ。
ジェスタさんを家のリビングに招き、皐月がお茶を淹れてくれたところで話を聞く。
「それで相談とは?」
「はい。実は、ハイド族の同胞の事でご相談がありまして……」
ジェスタさんの相談とは、ハイド族の同胞に関してだった。
その諜報に特化した様な種族特性から、各国の諜報機関として働く事が多いハイド族だけど、決して良い扱いではないらしい。
「我等ハイド族は、最低限の安い賃金で危険な仕事をさせられています。それはハンザ王国だけではなく、他の国でも同じようなものです」
「ふむ、素破(すっぱ)や乱破(らっぱ)と同じような扱いか」
「素破、乱破ですか?」
お義父さんはお茶を手にソファーの隣に座って、ハイド族が戦国時代の日本で素破や乱破と呼ばれていた忍者と同じような扱いなんだろうと言う。
素破や乱破と呼ばれる人たちは、足軽や雑兵にも蔑まれていたらしい。
貧しさから僅かなお金で命をかけて仕事をしているにも関わらず、その地位は低かったのだとか。
なる程、ハイド族の現状と重なる部分が多いかもしれない。
お義父さんのハイド族への認識は正しいようで、ジェスタさんのように諜報組織から逃げ出す者も居るのだとか。
「諜報組織などに身を置く者を、為政者は便利使いするだけで、信を置く事はないのです」
「勝手な話ですね」
その種族特性が諜報に向くからと諜報組織に身を置き、その組織で働く人間を信頼しないなんて、勝手な話だと思う。
確かに、諜報組織は為政者からの指示で、汚れ仕事もするだろう。だけど、汚い裏の仕事を命じておきながら、人をモノ扱いするにも程がある。
「それでジェスタ殿は、同胞を此処に呼びたいと?」
「はい。栄三郎様方のお許しがあれば、この地へと誘いたいと……」
「ふむ、修二君はどう思う?」
「……そうですね。家には小さな佐那やヘティスちゃんが居ますから、最低限悪人は側に置きたくないのが本音です」
ジェスタさんたちを受け入れたものの、誰彼なしに受け入れるのは不安がある。
『主人、不埒な輩は私が誅しますからご安心ください』
「修二様の不安も分かります。我が同胞たちが皆さま方に牙を剥くような事があれば、この命をかけて責任を持って始末致します」
僕が不安を言うと、フーガが守ってくれると言ってくれた。ジェスタさんも同胞が不始末をすれば、自分が責任を持って始末するとまで言う。
「修二君、どちらにせよ、人手が足りないのは事実なんだ。ジェスタ殿が命をかけると言うのだ。フーガも居るし大丈夫だろう」
「……そうですね。ジェスタさんの同胞を助けたい気持ちも分かります。分かりました」
実は、人手が欲しかったのは僕もお義父さんと同じ気持ちだ。
この地の守護だけじゃなく、農作業や狩りに日用品などを作る職人も欲しい。
農作業から鍛冶から大工に猟師まで、僕一人がするのがおかしいんだから。
「そうと決まれば、ジェスタ殿たちを鍛える必要があるな」
「鍛える……ですか?」
ハイド族の受け入れが決まったなら、ジェスタさんたちを鍛える必要があるとお義父さんが言いだし、ジェスタさんが戸惑っている。
確かにパワーレベリングと並行して最低限身を守れる技を鍛える必要はあるだろう。
ジェスタさんも諜報組織に居ただけあり、戦えない事はないが、それは戦士や騎士、侍とは別の方向性の技だ。暗殺や不意打ちは種族特性上得意だろうが、それが通用するのは一部の者達だけだと思う。
「修二君は、ジェスタ殿たちの装備を頼む。隠密性に優れたのを頼むぞ。森の中を自力で抜けれるようでないとな」
「了解しました。最低限ハイド族の同胞を護りながら森を抜けれないとダメですもんね」
僕が自力で森を抜けれるようにと言うと、ジェスタさんの顔が青くなった気がするけど、そこは頑張ってもらわないとね。
僕やお義父さんの厳しい訓練と、森でのパワーレベリングを経て、僕が作った忍者のような隠密装備に身を包んだジェスタさん達が旅立つのに三ヶ月かかった。
ジェスタさん達には、同胞の探索とは別に、周辺国の情報収集と必要な物の買い出しをお願いしている。
森のパトロールは引き続き僕とお義父さんがフーガを連れてしているので、ジェスタさん達が戻って来ればすぐ分かるだろう。
人が増えて、僕の仕事が少しでも減れば嬉しいんだけどな。
「ああ、ジェスタさん。どうしたんですか?」
朝の日課の訓練を終えたところで、ジェスタさんに声をかけられた。
僕やお義父さん、サミティアさん、フェルミアちゃんとミルティアちゃんは、毎日朝に訓練をしている。佐那は勿論、ヘティスちゃんもまだ小さいから不参加だ。
そこにハイド族のジェスタさん達が加わった。
その日も皆んなの訓練を指導し終え、そろそろ起き出しただろう佐那と遊ぼうと家に戻ろうとした時、ジェスタさんから相談事があると話しかけられたんだ。
ジェスタさんを家のリビングに招き、皐月がお茶を淹れてくれたところで話を聞く。
「それで相談とは?」
「はい。実は、ハイド族の同胞の事でご相談がありまして……」
ジェスタさんの相談とは、ハイド族の同胞に関してだった。
その諜報に特化した様な種族特性から、各国の諜報機関として働く事が多いハイド族だけど、決して良い扱いではないらしい。
「我等ハイド族は、最低限の安い賃金で危険な仕事をさせられています。それはハンザ王国だけではなく、他の国でも同じようなものです」
「ふむ、素破(すっぱ)や乱破(らっぱ)と同じような扱いか」
「素破、乱破ですか?」
お義父さんはお茶を手にソファーの隣に座って、ハイド族が戦国時代の日本で素破や乱破と呼ばれていた忍者と同じような扱いなんだろうと言う。
素破や乱破と呼ばれる人たちは、足軽や雑兵にも蔑まれていたらしい。
貧しさから僅かなお金で命をかけて仕事をしているにも関わらず、その地位は低かったのだとか。
なる程、ハイド族の現状と重なる部分が多いかもしれない。
お義父さんのハイド族への認識は正しいようで、ジェスタさんのように諜報組織から逃げ出す者も居るのだとか。
「諜報組織などに身を置く者を、為政者は便利使いするだけで、信を置く事はないのです」
「勝手な話ですね」
その種族特性が諜報に向くからと諜報組織に身を置き、その組織で働く人間を信頼しないなんて、勝手な話だと思う。
確かに、諜報組織は為政者からの指示で、汚れ仕事もするだろう。だけど、汚い裏の仕事を命じておきながら、人をモノ扱いするにも程がある。
「それでジェスタ殿は、同胞を此処に呼びたいと?」
「はい。栄三郎様方のお許しがあれば、この地へと誘いたいと……」
「ふむ、修二君はどう思う?」
「……そうですね。家には小さな佐那やヘティスちゃんが居ますから、最低限悪人は側に置きたくないのが本音です」
ジェスタさんたちを受け入れたものの、誰彼なしに受け入れるのは不安がある。
『主人、不埒な輩は私が誅しますからご安心ください』
「修二様の不安も分かります。我が同胞たちが皆さま方に牙を剥くような事があれば、この命をかけて責任を持って始末致します」
僕が不安を言うと、フーガが守ってくれると言ってくれた。ジェスタさんも同胞が不始末をすれば、自分が責任を持って始末するとまで言う。
「修二君、どちらにせよ、人手が足りないのは事実なんだ。ジェスタ殿が命をかけると言うのだ。フーガも居るし大丈夫だろう」
「……そうですね。ジェスタさんの同胞を助けたい気持ちも分かります。分かりました」
実は、人手が欲しかったのは僕もお義父さんと同じ気持ちだ。
この地の守護だけじゃなく、農作業や狩りに日用品などを作る職人も欲しい。
農作業から鍛冶から大工に猟師まで、僕一人がするのがおかしいんだから。
「そうと決まれば、ジェスタ殿たちを鍛える必要があるな」
「鍛える……ですか?」
ハイド族の受け入れが決まったなら、ジェスタさんたちを鍛える必要があるとお義父さんが言いだし、ジェスタさんが戸惑っている。
確かにパワーレベリングと並行して最低限身を守れる技を鍛える必要はあるだろう。
ジェスタさんも諜報組織に居ただけあり、戦えない事はないが、それは戦士や騎士、侍とは別の方向性の技だ。暗殺や不意打ちは種族特性上得意だろうが、それが通用するのは一部の者達だけだと思う。
「修二君は、ジェスタ殿たちの装備を頼む。隠密性に優れたのを頼むぞ。森の中を自力で抜けれるようでないとな」
「了解しました。最低限ハイド族の同胞を護りながら森を抜けれないとダメですもんね」
僕が自力で森を抜けれるようにと言うと、ジェスタさんの顔が青くなった気がするけど、そこは頑張ってもらわないとね。
僕やお義父さんの厳しい訓練と、森でのパワーレベリングを経て、僕が作った忍者のような隠密装備に身を包んだジェスタさん達が旅立つのに三ヶ月かかった。
ジェスタさん達には、同胞の探索とは別に、周辺国の情報収集と必要な物の買い出しをお願いしている。
森のパトロールは引き続き僕とお義父さんがフーガを連れてしているので、ジェスタさん達が戻って来ればすぐ分かるだろう。
人が増えて、僕の仕事が少しでも減れば嬉しいんだけどな。
25
お気に入りに追加
2,169
あなたにおすすめの小説
ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!
ミドリノミコト
ファンタジー
魔獣のスケッチは楽しい。小さい頃から魔獣をスケッチすることが好きだったリッカは、生まれた頃から見守ってくれていた神獣、黄龍から4体の小さな赤ちゃん神獣を任せられることになった。数多くの有能なテイマーを輩出しているリッカの家は8歳で最初の契約を結ぶのだが、そこでまた一波乱。神獣と共に成長したリッカはアカデミーへ入学することになり、その非凡性を発揮していくことになる。そして、小さな仲間たちと共に、さまざまな魔獣との出会いの旅が始まるのだった。
☆第12回ファンタジー小説大賞に参加してます!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる