私と7人の龍たち

桜井 ミケ

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第9話 旅立ち

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宿を後にし、私たちはファンタジー王国というところに向かい始めた




「…でも、なんで最初にファンタジー王国に行くんですか?」

「…地図を見せますね。……ここが今いる街です。そして、この場所から少しずれた場所にほら、ファンタジー王国はあるんです。近いでしょう?」

「はい…」

「それに、伝説通りに、ちゃんと力を持った人がいるのなら、多分他の普通の街より、こういう妖精の類いも暮らしているというところに行った方がいいと思いまして。」

「ファンタジー王国には、妖精がいるんですか!?」

「私も噂で聞いただけですが、存在しているらしいですよ」

「へぇ!楽しみです!」

「えぇ、私もです」

「おい、お前たちは何でそんなところで道草をくっているんだ。早く出発しないと、日が暮れるだろ!」  

私とユリエルさんが地図を囲みながら話していると、クラウスさんが地図を取り上げて、叫んだ


「…王子、そんなに怒ってばかりいると、血管きれちゃいますよ?」

「誰のせいだと思ってる!」

「えー?誰ですかね」

「…お前だ!…行くぞっ!」


クラウスさんはそう言うと、歩きだした

「王子ー!そっちじゃないです。道はこっちですよー?」

「うるさい!こっちの景色が綺麗だからちょっと見に行っただけだ」

「はいはい。そうですか。では、リナさん、行きましょう」

「はい!」










あれから丸三日

地図だとすごく近く見えたのに、歩いてみるとかなり遠かった


「…ユリエルさん、後どれくらいで着きますかね」

「…一日もすれば着けるかと。…馬がいれば少しは楽になると思うんですけど、馬、見当たりたせんしね」

「ありがとうございます…」


この距離から、普通車でしょ…なんて。この世界にはないんだよね。…今まで、すっごく便利な生活してたんだな。私って

ご飯だって。ここに来て、固いパンとかしか食べれていない。…白いご飯食べたいなぁ

「どうしました?リナさん。…疲れました?」

「あ、いえ!大丈夫です!何もないです!ちょっと考え事してただけで」

「そうでしたか」

「どうせ、食べ物の事でも考えてたんだろ」

「え…?」

なんで…バレたの?

「お、図星か」

「ち、違います!」


ユリエルさんの向こう側を歩いているクラウスさんはゲラゲラ笑っている

全く…本当にこの人、本当に王子なの?気品が感じられない。…失礼だし

「こら、王子!女の子をからかってはいけません」

「こいつがからかってほしそうな顔をするから」

「してません!」

「……それにしても、お二人、とても仲良くなりましたね。」

「「なってない!」」


「すごい、息もぴったりです!」


「「…………。」」


「ユリエル、後どれくらいだ?」

「それ、さっき言ったばかりです」

「もう一回くらい言ったっていいだろ!」

「無駄な労力は使いたくないので」

「はぁ!?」

いつものように仲良く言い争いをしている二人を見て、フフっと笑ってしまう

この人たちと出会えてよかった

「お前っ!何笑ってんだよ!」

「王子が面白い顔をしているからじゃないですか」

「してねぇよ!」


きっとこの世界から戻れる日が来るはずだ。その時まで、この二人への恩を忘れずに、尽くそう

わたしはそっと胸に誓った



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