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第7部 才能と現実の壁
2-7ちょっと本気だしたらドリームチームが出来てしまった
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会社が休みの水曜日。時間は、午前九時を、ちょっと回ったところ。私は〈西地区〉にある〈西地区第二球技場〉に来ていた。ここは、野球・サッカー・テニス・バレーボール・バスケットボールなど、様々な球技用のコートが揃っている。
『グリュンノア行政府』が運営しており、この町の住人は、予約を入れれば、格安で利用が可能だ。
滅茶苦茶、大きな敷地に、たくさんのコートが並んでいる。目的の場所に、移動するだけでも、一苦労するぐらいの広さだ。敷地の北には、大きな建物があり、室内用のコートも、しっかり完備されていた。
〈西地区〉は、空いている土地が多いせいか、スポーツ系の公共施設が多い。しかも、最新の設備が整っており、非常に本格的だ。
大きな公式競技会も、頻繁に行われ、最近は『スポーツ都市』としても、注目されていた。観光だけじゃなくて、様々な分野で、お客様の誘致に、力を入れている。町の活性化のための、施設への投資は、糸目をつけないようだ。
シルフィードの活躍も、一役、買ってるけど。お客様の増加は、行政府が、町への投資を、頑張ってるからなんだよね。
なお、今日は、野球の交流試合が行われる。開始は九時半からで、参加メンバーは、すでに全員そろっていた。今は、素振りや準備運動をして、体を温めている最中だ。私も、ユニフォームを着て、軽くキャッチボールをしていた。
相手チームを見ると、全員、男性で、若い人がメイン。しかも、結構、体格のいい人が多く、かなり本気で、強い人を集めている様子だった。
対して、うちのチームは、半分以上が女性で、年配の人たちも混じっていた。明らかに、相手のほうが強そうに見える。
しかし、私も頑張って、強力な助っ人を呼んで来た。といっても、声を掛けたのはシルフィードだから、全員、女性だ。でも、想像以上に、豪華なメンバーがそろっている。
まず、最初に声を掛けたのは、仲良しの二人。ただ、予想通り、ナギサちゃんは、あっさり拒否。やっぱり、運動系はダメみたい。スポーツの話を出すと、ことごとく、スルーされるんだよね。
しかし、フィニーちゃんは『食べ放題』を条件に、引き受けてくれた。意外にも、小さいころは、球技が得意だったんだって。
次に声を掛けたのは、最も期待していた、ツバサさんだ。忙しそうだから、断られるかと思ったけど。『面白そうだから』と、一発返事でOKしてくれた。運動神経が抜群なうえに、野球経験者なので、実に心強い。
そのあと、キラリスちゃんに声を掛けたら、これまた、すんなり引き受けてくれた。事情を話したら『クフフッ、因縁の対決とは燃えるじゃないか』と、何か嬉しそうだった。彼女も、体育会系なので、運動神経は申し分ない。
あと、以前、引越しの手伝いに行った〈シュガー・キャンディー〉の、カナリーゼさんにも、声を掛けてみた。彼女は、学生時代、ソフトボール部のキャプテンだったらしいので。こちらも『借りがあるから』と、あっさり承諾してくれた。
加えて、もう一人。とんでもない、助っ人がやって来た。『金剛の戦乙女』のミラージュさんだ。彼女は、キラリスちゃんが頼んでくれたら『トレーニングの一環』ということで、快く了解してくれた。流石にこれは、私も想定外だった。
そんなこんなで、女性が多いとはいえ、スポーツが得意なメンバーが、勢ぞろいした。しかも、現役の『シルフィード・クイーン』と『スカイ・プリンセス』までいる。実力的にも、見た目的にも、超豪華な、ドリームチームだ。
あと、リリーシャさんとナギサちゃんは、二人で一緒に作ったお弁当を持って、応援に来てくれた。二人はサポーターとして、ベンチに入っている。野球の試合なのに、シルフィードが八人もいるので、妙に華やかだ。
先ほどから、相手チーム選手たちが、チラチラと、視線を送ってきていた。敵意の視線ではなく、むしろ、好意的な感じがする。こんな間近で、上位階級のシルフィードを見れる機会なんて、滅多にないもんね。
そんな中、チームリーダーの二人だけは、険しい視線を送り合っていた。ちなみに〈東地区〉と〈西地区〉の町内会長さんは、若いころから、ライバル関係にあったらしい。学生時代は、同級生だったんだって。
試合開始の直前になると、二人は、ベンチを出て近づいて行く。グランド中央では、二人が仁王立ちになってにらみ合い、早くも険悪な雰囲気になっていた。
「ふんっ、逃げずに、よく来たな。まぁ、やる前から、結果は分かってるが」
「ずいぶん余裕だな? あまり舐めていると、痛い目を見るぞ」
「あんな、女子供と老人のチームで、何ができるんだ? フッ、どれだけ人材不足なんだ〈東地区〉は?」
「くっ、デカい口を叩けるのも、今の内だけだ。覚悟しておけ」
二人は、ひとしきり言葉を交わしたあと、さっと踵を返し、自分のチームのベンチ戻っていく。想像していた以上に、こじれているようだ。
そんな重苦しい空気の中、東西対抗の交流試合が、始まるのだった……。
******
私たちは、守備からのスタートだった。ピッチャーは、ツバサさん。ファーストは、カナリーゼさん。二人とも、学生時代にやっていたポジションなので、ベストな配置だ。
セカンドは、キラリスちゃん。私は、ショート。俊足の二人で、内野を守る作戦だ。フィニーちゃんは、あまり動かないので、サードに立っている。
センターは、ミラージュさん。ライトが、牛乳屋のドナさん。レフトは、肉屋のハリスさん。三人とも、がっちりした体つきで剛腕なので、外野にはうってつけだ。特に、MMA世界チャンピオンの、ミラージュさんのパワーは、言うまでもない。
最後に、キャッチャーは、町内会長さん。最年長だけど、一番、野球経験が長く、うちのチームの司令塔だ。監督も兼ねており、作戦立案は、全て彼が行っている。
試合が始まると、ツバサさんの投げた球が『スパーン!』と、気持ちのいい音を立て、キャッチャーミットに収まった。かなりの球威で、何より、コントロールが素晴らしい。
ギリギリのコースを狙い、一人目は、見逃がしの三振。二人目は、空振りの三振。相手チームの打者は、全くスピードについて行けていない感じだ。
三人目は、かろうじてバットに当てるが、ショートに転がって来た玉を、私がサッと拾って、ファーストに送球。カナリーゼさんが、しっかりキャッチしてアウト。三者凡退で、あっさりチェンジになった。
もっと、荒れるかと思ってたけど、ツバサさんがいる限り、そうそう、打たれることは無さそうだ。それに、守備陣も、みんな結構レベルが高い。
攻守が変わって、一人目。私たちのチームの、トップバッターは、フィニーちゃんだ。彼女は、パワーはないけど、何と言っても、目がいいので、選球力がある。しかも、とても小さいので、ストライクゾーンが狭い。
なお、打順は、町内会長さんが決めたものだ。相手のピッチャーは、立ち上がりが苦手らしいので、四球を狙う作戦だ。案の定、玉は外れまくり、ファーボール。フィニーちゃんは、ゆっくり走って一塁に向かう。
二番手は、キラリスちゃん。バッターボックスに立った瞬間、物凄く真剣な表情になった。ピッチャーから放たれた、初球。彼女は、外角の玉を上手く引っ掛けた。ライナーになり、一二塁間を見事に打ち抜き、綺麗なヒットに。これで、一二塁。
流石に、格闘技をやっているだけあって、優れた動体視力と、反射神経を持っている。まぁ、ミラージュさんに『打たないとぶっ飛ばす』と、喝を入れられてたのも、あるかもだけど――。
三番手は、私だ。足には自信があるので、会長さんの指示通りに、セイフティーバントを狙う。初級、普通に構えたところから、バントの構えに切り替えた。三塁側に軽く転がしてから、全力疾走で駆け抜ける。
ファーストベースを踏むと同時に、ボールが飛んできたが、判定はセーフ。その間、二人とも塁を進め、ノーアウト満塁の状態に。ここまでは、物凄くいい流れだ。
この大チャンスの場面で出てきたのが、四番のミラージュさん。バッターボックス立った姿の、威風堂々さが凄い。流石は、シルフィード・クイーン&世界王者の貫禄。何より、眼力が半端ない。
彼女に睨みつけられたせいか、ピッチャーも、物凄く投げ辛そうだった。二球外して、ツーボール。完全に、委縮している様子だ。相手は、とんでもない大物なので、やっぱ緊張するよね。
続く三球目の、ど真ん中低めの球を、彼女は見逃さなかった。『スコーン!』と、気持ちのいい音を立て、ボールは大きく打ち上げられた。その後、グイグイ伸びて、観客スタンドをも越え、まさかの場外ホームラン。
私は、ボールの飛んでいった方向を眺めながら、ゆっくり走って、ホームーベースに向かう。横に視線を向けると、打たれたピッチャーも、相手のベンチも、皆、唖然とした表情で沈黙していた。
そりゃ、そうだよね。いきなり、あんな豪快なホームランを、打たれちゃったら。しかも、こっちは女性メンバーばかりで、格下に見ていただろうから……。
この会心の一撃で、相手のピッチャーは崩れたのか、その後の投球は、外しまくった。ドナさんとハリスさんは、二連続のファーボールで出塁。
次に登場したのが、七番のカナリーゼさんだ。数回、素振りしたあと、ゆっくりとバッターボックスに立った。
初球は、外にそれてボール。その後は、二球、続けてストライク。相手のピッチャーも、落ち着きを取り戻して来たのか、上手く決まるようになって来た。だが、そのあとは、二球続けてボールで、フルカウントになる。
カナリーゼさんは、じっとピッチャーを見つめたまま、全く動かなかった。まだ、一度もバットを振っていない。『久しぶりだから不安だなぁ』なんて言ってたけど、大丈夫だろうか? でも、見た感じ、とても落ちついている様子だ。
ピッチャーが振りかぶり、弾が放たれた直後『カーン!』と、甲高い音が鳴り響く。と同時に、弾が大きく飛び上って行っていった。ぐんぐん伸びて、外野の頭を越え、フェンスの少し手前に落下する。
外野が玉を追い掛けている間に、ドナさんとハリスさんが、ホームイン。ようやく拾った玉が、中継されて戻って来たころには、カナリーゼさんは、すでに三塁に到達していた。実に豪快な、スリーベースヒットだった。
「凄い! 流石は学生時代、ソフトボール部のキャプテンやってただけ有るよね」
「ふむ。なかなか、いい眼を持ってるようだな」
ベンチの隣にいたキラリスちゃんが、腕を組みながら答える。
「やっぱり、あれって、ちゃんと選球してたのかな?」
「彼女は、カウンター・タイプだな。思い切り粘って、相手の甘い球を叩く。フルカウントのプレッシャーは、ピッチャーだって同じだからな」
「なるほどねぇ。そんなやり方も、あるんだ」
「粘り強さや、強い精神力が必要だけどな」
私は、待つのが苦手なので、基本、初球から、バンバン攻めていく。なので、全く逆のタイプと言える。
その後も、一点を追加し、結局、一回の裏だけで、七点を獲得。想像以上に、いい滑り出しだった。そのお蔭で、私たちのチームは、一気に士気が上がった。
攻守の交代後も、ツバサさんの切れのある投球で、打者を完全に押さえ込む。守備の連携も抜群で、打たれても、すぐにキャッチからの、素早い送球。
途中、フィニーちゃんが、相手の強烈なサードライナーを、横跳びでダイレクトキャッチして、ダブルプレーが炸裂。普段は、のんびりしてるけど、本気を出すと、物凄く瞬発力が高い。何より、いい眼を持ってるからね。
その後、二回の裏で、二点を追加。三回の表は、ツバサさんの好投で、きっちり三人で押さえた。完全に、こちらのペースで試合が進む。
9-0で迎えた、三回の裏。勢い付いた私たちは、次々と打球を飛ばす。しかし、相手側も、いい選手を集めただけあって、なかなかに守備が堅い。士気は低そうだけど、ギリギリのラインで、踏みとどまっている。
二死満塁で、迎えたバッターは、先ほど満塁ホームランを打った、ミラージュさん。でも、満塁のこの状況では、嫌遠できない。それに、十点差がついた時点で、コールドゲームで即終了だ。
相手チームはタイムをとって、ピッチャーを交代。数球の投球練習が終わったあと、ミラージュさんが、バッターボックスに立つ。バットを構えると、鋭い目で、相手チームのピッチャーを睨みつける。相変わらず、物凄い威圧感だ。
ピッチャーは大きく振りかぶると、勢いよく玉を放つ。球威はあるが、狙いが外れたのか、かなり外目の球だった。完全にボール球なので、普通は見送るところだ。しかし、ミラージュさんは、豪快にバットを振り抜いた。
次の瞬間『カーン!!』と痛快な音と共に、球が吹っ飛んで行く。ぐんぐん伸び続け、観客スタンドも軽々と超えて、見えなくなった。本日、二度目の、満塁ホームラン。しかも、二回連続の、場外だ。
「ええっ?! 凄過ぎでしょっ!!」
一塁にいた私は、ボールが飛んでいった方向を、呆然と眺めながら、ゆっくりベースを回って行く。あまりに凄すぎて、鳥肌が立ってしまった。
打たれたピッチャーは、マウンドにくずおれ、相手のベンチでは、みんな、あんぐりと口を開けていた。
そりゃ、驚くよね。二打席、連続で満塁ホームランとか、普通は、あり得ないもん。何というかもう、反則的な強さだ。凄いとは思っていたけど、ここまでとは――。
とんでもない人を、呼んで来たことに、いまさらながら、気がついた。本来なら、町内の草野球なんかに、来るような人じゃないもんね。
私たちは、ベンチに戻ると、みんなで歓声を上げ、勝利の喜びを分かち合う。特に、勝利の立役者となったミラージュさんは、みんなから、称賛を浴びていた。
いいメンバーをそろえたので、ある程度、自信はあったけど。まさか、ここまで圧倒的だとは、正直、思っていなかった。
やっぱり、ツバサさんや、ミラージュさんが凄すぎた。シルフィードの能力だけじゃなく、それ以外でも、これほど凄いなんて。上位階級の人たちは、色々と格が違い過ぎる……。
みんなに、健闘をたたえる声を掛けられている、ミラージュさんのすぐ隣では、なぜか、キラリスちゃんが、どや顔で立っていた。尊敬する先輩が、大活躍したんだから、嬉しいのは分かるけどね。
私たちが、楽しく盛り上がっている中。マウンド上では、再び、二人の町内会長さんたちが、顔を付き合わせていた。
「フッ、どうだ?〈東地区商店街〉の底力を、思い知ったか?」
「ぐっ、貴様、卑怯だぞ! そもそも〈東地区〉の人間じゃないだろ?」
「そっちだって、色んな地区から、強いメンバーを集めてるじゃないか?」
「だが、MMAの世界チャンピオンを連れて来るのは、反則だろ!」
「最初は、女子供と馬鹿にしていたくせに!」
「お前が、そこまで、えげつない事するとは、思わなかったんだよ!」
「そもそも、最初に、他地区から助っ人を呼んだのは、そっちだろ?」
「ルールに、助っ人禁止はないから、いいんだよ!」
「だったら、私も、文句を言われる筋合いはないな!!」
「だから、やり過ぎだって、言ってるんだよ!!」
二人は、すっかり熱くなって、完全に口喧嘩になっていた。毎回、こんな感じだとしたら、溝が深まるのも、仕方がない。
これって、親交を深めるのが目的の『交流会』だよね? 私は〈東地区〉が大好きだけど〈西地区〉だって好きだし。どうにか、ならないものかなぁ――?
「やれやれ、二人とも、まだまだ、お若いねぇ」
「フンッ。あれは、若いんじゃなくて、単に子供なんだよ」
ツバサさんの言葉に、ミラージュさんが、不機嫌そうに答えた。
「まったく、子供の喧嘩だな、あれじゃ」
「あははっ、だねぇー」
呆れて見ていたキラリスちゃんの言葉に、私も同意する。
この町の人は、地元愛が強いから、自分の地区が一番だと思う気持ちは、よく分かる。でも、どの地区にも、いいところは有るんだから。同じ町の住人として、もっと仲良くすればいいのに……。
延々と言い合いを続けている二人に、ミラージュさんが、ゆっくり近づいて行った。
「おい、お前ら、いい加減にしろ! 試合で大事なのは、勝敗じゃない。勝っても負けても、相手を尊重し、健闘を称える。それが、スポーツマンシップだろうが?」
その言葉に、二人とも、ピタッと黙り込み、気まずそうな顔をする。
流石に、世界チャンピオンが言うと、言葉の重みが違う。それに、強いだけじゃなくて、スポーツマンシップの塊としても、有名な人だ。何事も正面から、常に正々堂々と。それが、彼女のポリシーだった。
「ほら、さっさと行くぞ」
彼女は、二人の背中を、バシッと力強く叩いた。
「行くって、どこに――?」
「決まってんだろ。交流試合なんだから、終わったら、親睦を深めるための、打ち上げだ」
二人の会長さんは、物凄く微妙な表情を浮かべる。
「おーい、みんな。これから、打ち上げに行くぞ!! お二人の会長さんたちが、おごってくれるそうだ。好きなだけ、飲んで、食って、騒げ!」
ミラージュさんの言葉を聴いて、両チームのメンバーから、大きな歓声が上がる。特に、フィニーちゃんは『食べ放題!』と、目をキラキラさせて、大喜びだった。
「って、何でワシらが?!」
「みみっちいこと、言うなよ、町内会長なんだから。それに、自分らの痴話げんかに、みんなを巻き込んだんだ。それぐらい、当然だろ? ほらっ、行くぞ」
二人は、何も言い返せずに、すっかり黙り込んでしまった。流石に、シルフィード・クイーン兼、世界チャンピオンには、反論できないよね。そもそも、滅茶苦茶、正論だし。
私たちは、着替えて荷物をまとめると、みんなでワラワラと、ピザ屋に向かうのだった。先ほどまでのピリピリした空気はなく、東西両チームとも、仲良く肩を並べて歩いて行く。
その中心には、ミラージュさんと、ツバサさんがいた。みんなから、健闘を称えられたり、質問攻めにあっている。
やっぱ、二人ともカッコイイから、目立つんだよねぇ。女性なのに、兄貴分って感じだし。早くも、ミラージュ姐さん、ツバサ姐さん、なんて呼ばれている。
そんなこんなで、交流試合は、無事に終了。十年以上、続いた因縁も、これで、終わるんじゃないかな。雨降って地固まるとは、このことだよね。
私も、いずれ、あんな風になれたらいいなぁ。後ろを歩きながら、二人の偉大なシルフィードの背中を、じっと見つめ続けるのだった……。
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次回――
『やっぱり年下は手が掛かるから苦手』
それはいけないわ。苦手ならなおさら ぶつかっていかなくちゃ
『グリュンノア行政府』が運営しており、この町の住人は、予約を入れれば、格安で利用が可能だ。
滅茶苦茶、大きな敷地に、たくさんのコートが並んでいる。目的の場所に、移動するだけでも、一苦労するぐらいの広さだ。敷地の北には、大きな建物があり、室内用のコートも、しっかり完備されていた。
〈西地区〉は、空いている土地が多いせいか、スポーツ系の公共施設が多い。しかも、最新の設備が整っており、非常に本格的だ。
大きな公式競技会も、頻繁に行われ、最近は『スポーツ都市』としても、注目されていた。観光だけじゃなくて、様々な分野で、お客様の誘致に、力を入れている。町の活性化のための、施設への投資は、糸目をつけないようだ。
シルフィードの活躍も、一役、買ってるけど。お客様の増加は、行政府が、町への投資を、頑張ってるからなんだよね。
なお、今日は、野球の交流試合が行われる。開始は九時半からで、参加メンバーは、すでに全員そろっていた。今は、素振りや準備運動をして、体を温めている最中だ。私も、ユニフォームを着て、軽くキャッチボールをしていた。
相手チームを見ると、全員、男性で、若い人がメイン。しかも、結構、体格のいい人が多く、かなり本気で、強い人を集めている様子だった。
対して、うちのチームは、半分以上が女性で、年配の人たちも混じっていた。明らかに、相手のほうが強そうに見える。
しかし、私も頑張って、強力な助っ人を呼んで来た。といっても、声を掛けたのはシルフィードだから、全員、女性だ。でも、想像以上に、豪華なメンバーがそろっている。
まず、最初に声を掛けたのは、仲良しの二人。ただ、予想通り、ナギサちゃんは、あっさり拒否。やっぱり、運動系はダメみたい。スポーツの話を出すと、ことごとく、スルーされるんだよね。
しかし、フィニーちゃんは『食べ放題』を条件に、引き受けてくれた。意外にも、小さいころは、球技が得意だったんだって。
次に声を掛けたのは、最も期待していた、ツバサさんだ。忙しそうだから、断られるかと思ったけど。『面白そうだから』と、一発返事でOKしてくれた。運動神経が抜群なうえに、野球経験者なので、実に心強い。
そのあと、キラリスちゃんに声を掛けたら、これまた、すんなり引き受けてくれた。事情を話したら『クフフッ、因縁の対決とは燃えるじゃないか』と、何か嬉しそうだった。彼女も、体育会系なので、運動神経は申し分ない。
あと、以前、引越しの手伝いに行った〈シュガー・キャンディー〉の、カナリーゼさんにも、声を掛けてみた。彼女は、学生時代、ソフトボール部のキャプテンだったらしいので。こちらも『借りがあるから』と、あっさり承諾してくれた。
加えて、もう一人。とんでもない、助っ人がやって来た。『金剛の戦乙女』のミラージュさんだ。彼女は、キラリスちゃんが頼んでくれたら『トレーニングの一環』ということで、快く了解してくれた。流石にこれは、私も想定外だった。
そんなこんなで、女性が多いとはいえ、スポーツが得意なメンバーが、勢ぞろいした。しかも、現役の『シルフィード・クイーン』と『スカイ・プリンセス』までいる。実力的にも、見た目的にも、超豪華な、ドリームチームだ。
あと、リリーシャさんとナギサちゃんは、二人で一緒に作ったお弁当を持って、応援に来てくれた。二人はサポーターとして、ベンチに入っている。野球の試合なのに、シルフィードが八人もいるので、妙に華やかだ。
先ほどから、相手チーム選手たちが、チラチラと、視線を送ってきていた。敵意の視線ではなく、むしろ、好意的な感じがする。こんな間近で、上位階級のシルフィードを見れる機会なんて、滅多にないもんね。
そんな中、チームリーダーの二人だけは、険しい視線を送り合っていた。ちなみに〈東地区〉と〈西地区〉の町内会長さんは、若いころから、ライバル関係にあったらしい。学生時代は、同級生だったんだって。
試合開始の直前になると、二人は、ベンチを出て近づいて行く。グランド中央では、二人が仁王立ちになってにらみ合い、早くも険悪な雰囲気になっていた。
「ふんっ、逃げずに、よく来たな。まぁ、やる前から、結果は分かってるが」
「ずいぶん余裕だな? あまり舐めていると、痛い目を見るぞ」
「あんな、女子供と老人のチームで、何ができるんだ? フッ、どれだけ人材不足なんだ〈東地区〉は?」
「くっ、デカい口を叩けるのも、今の内だけだ。覚悟しておけ」
二人は、ひとしきり言葉を交わしたあと、さっと踵を返し、自分のチームのベンチ戻っていく。想像していた以上に、こじれているようだ。
そんな重苦しい空気の中、東西対抗の交流試合が、始まるのだった……。
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私たちは、守備からのスタートだった。ピッチャーは、ツバサさん。ファーストは、カナリーゼさん。二人とも、学生時代にやっていたポジションなので、ベストな配置だ。
セカンドは、キラリスちゃん。私は、ショート。俊足の二人で、内野を守る作戦だ。フィニーちゃんは、あまり動かないので、サードに立っている。
センターは、ミラージュさん。ライトが、牛乳屋のドナさん。レフトは、肉屋のハリスさん。三人とも、がっちりした体つきで剛腕なので、外野にはうってつけだ。特に、MMA世界チャンピオンの、ミラージュさんのパワーは、言うまでもない。
最後に、キャッチャーは、町内会長さん。最年長だけど、一番、野球経験が長く、うちのチームの司令塔だ。監督も兼ねており、作戦立案は、全て彼が行っている。
試合が始まると、ツバサさんの投げた球が『スパーン!』と、気持ちのいい音を立て、キャッチャーミットに収まった。かなりの球威で、何より、コントロールが素晴らしい。
ギリギリのコースを狙い、一人目は、見逃がしの三振。二人目は、空振りの三振。相手チームの打者は、全くスピードについて行けていない感じだ。
三人目は、かろうじてバットに当てるが、ショートに転がって来た玉を、私がサッと拾って、ファーストに送球。カナリーゼさんが、しっかりキャッチしてアウト。三者凡退で、あっさりチェンジになった。
もっと、荒れるかと思ってたけど、ツバサさんがいる限り、そうそう、打たれることは無さそうだ。それに、守備陣も、みんな結構レベルが高い。
攻守が変わって、一人目。私たちのチームの、トップバッターは、フィニーちゃんだ。彼女は、パワーはないけど、何と言っても、目がいいので、選球力がある。しかも、とても小さいので、ストライクゾーンが狭い。
なお、打順は、町内会長さんが決めたものだ。相手のピッチャーは、立ち上がりが苦手らしいので、四球を狙う作戦だ。案の定、玉は外れまくり、ファーボール。フィニーちゃんは、ゆっくり走って一塁に向かう。
二番手は、キラリスちゃん。バッターボックスに立った瞬間、物凄く真剣な表情になった。ピッチャーから放たれた、初球。彼女は、外角の玉を上手く引っ掛けた。ライナーになり、一二塁間を見事に打ち抜き、綺麗なヒットに。これで、一二塁。
流石に、格闘技をやっているだけあって、優れた動体視力と、反射神経を持っている。まぁ、ミラージュさんに『打たないとぶっ飛ばす』と、喝を入れられてたのも、あるかもだけど――。
三番手は、私だ。足には自信があるので、会長さんの指示通りに、セイフティーバントを狙う。初級、普通に構えたところから、バントの構えに切り替えた。三塁側に軽く転がしてから、全力疾走で駆け抜ける。
ファーストベースを踏むと同時に、ボールが飛んできたが、判定はセーフ。その間、二人とも塁を進め、ノーアウト満塁の状態に。ここまでは、物凄くいい流れだ。
この大チャンスの場面で出てきたのが、四番のミラージュさん。バッターボックス立った姿の、威風堂々さが凄い。流石は、シルフィード・クイーン&世界王者の貫禄。何より、眼力が半端ない。
彼女に睨みつけられたせいか、ピッチャーも、物凄く投げ辛そうだった。二球外して、ツーボール。完全に、委縮している様子だ。相手は、とんでもない大物なので、やっぱ緊張するよね。
続く三球目の、ど真ん中低めの球を、彼女は見逃さなかった。『スコーン!』と、気持ちのいい音を立て、ボールは大きく打ち上げられた。その後、グイグイ伸びて、観客スタンドをも越え、まさかの場外ホームラン。
私は、ボールの飛んでいった方向を眺めながら、ゆっくり走って、ホームーベースに向かう。横に視線を向けると、打たれたピッチャーも、相手のベンチも、皆、唖然とした表情で沈黙していた。
そりゃ、そうだよね。いきなり、あんな豪快なホームランを、打たれちゃったら。しかも、こっちは女性メンバーばかりで、格下に見ていただろうから……。
この会心の一撃で、相手のピッチャーは崩れたのか、その後の投球は、外しまくった。ドナさんとハリスさんは、二連続のファーボールで出塁。
次に登場したのが、七番のカナリーゼさんだ。数回、素振りしたあと、ゆっくりとバッターボックスに立った。
初球は、外にそれてボール。その後は、二球、続けてストライク。相手のピッチャーも、落ち着きを取り戻して来たのか、上手く決まるようになって来た。だが、そのあとは、二球続けてボールで、フルカウントになる。
カナリーゼさんは、じっとピッチャーを見つめたまま、全く動かなかった。まだ、一度もバットを振っていない。『久しぶりだから不安だなぁ』なんて言ってたけど、大丈夫だろうか? でも、見た感じ、とても落ちついている様子だ。
ピッチャーが振りかぶり、弾が放たれた直後『カーン!』と、甲高い音が鳴り響く。と同時に、弾が大きく飛び上って行っていった。ぐんぐん伸びて、外野の頭を越え、フェンスの少し手前に落下する。
外野が玉を追い掛けている間に、ドナさんとハリスさんが、ホームイン。ようやく拾った玉が、中継されて戻って来たころには、カナリーゼさんは、すでに三塁に到達していた。実に豪快な、スリーベースヒットだった。
「凄い! 流石は学生時代、ソフトボール部のキャプテンやってただけ有るよね」
「ふむ。なかなか、いい眼を持ってるようだな」
ベンチの隣にいたキラリスちゃんが、腕を組みながら答える。
「やっぱり、あれって、ちゃんと選球してたのかな?」
「彼女は、カウンター・タイプだな。思い切り粘って、相手の甘い球を叩く。フルカウントのプレッシャーは、ピッチャーだって同じだからな」
「なるほどねぇ。そんなやり方も、あるんだ」
「粘り強さや、強い精神力が必要だけどな」
私は、待つのが苦手なので、基本、初球から、バンバン攻めていく。なので、全く逆のタイプと言える。
その後も、一点を追加し、結局、一回の裏だけで、七点を獲得。想像以上に、いい滑り出しだった。そのお蔭で、私たちのチームは、一気に士気が上がった。
攻守の交代後も、ツバサさんの切れのある投球で、打者を完全に押さえ込む。守備の連携も抜群で、打たれても、すぐにキャッチからの、素早い送球。
途中、フィニーちゃんが、相手の強烈なサードライナーを、横跳びでダイレクトキャッチして、ダブルプレーが炸裂。普段は、のんびりしてるけど、本気を出すと、物凄く瞬発力が高い。何より、いい眼を持ってるからね。
その後、二回の裏で、二点を追加。三回の表は、ツバサさんの好投で、きっちり三人で押さえた。完全に、こちらのペースで試合が進む。
9-0で迎えた、三回の裏。勢い付いた私たちは、次々と打球を飛ばす。しかし、相手側も、いい選手を集めただけあって、なかなかに守備が堅い。士気は低そうだけど、ギリギリのラインで、踏みとどまっている。
二死満塁で、迎えたバッターは、先ほど満塁ホームランを打った、ミラージュさん。でも、満塁のこの状況では、嫌遠できない。それに、十点差がついた時点で、コールドゲームで即終了だ。
相手チームはタイムをとって、ピッチャーを交代。数球の投球練習が終わったあと、ミラージュさんが、バッターボックスに立つ。バットを構えると、鋭い目で、相手チームのピッチャーを睨みつける。相変わらず、物凄い威圧感だ。
ピッチャーは大きく振りかぶると、勢いよく玉を放つ。球威はあるが、狙いが外れたのか、かなり外目の球だった。完全にボール球なので、普通は見送るところだ。しかし、ミラージュさんは、豪快にバットを振り抜いた。
次の瞬間『カーン!!』と痛快な音と共に、球が吹っ飛んで行く。ぐんぐん伸び続け、観客スタンドも軽々と超えて、見えなくなった。本日、二度目の、満塁ホームラン。しかも、二回連続の、場外だ。
「ええっ?! 凄過ぎでしょっ!!」
一塁にいた私は、ボールが飛んでいった方向を、呆然と眺めながら、ゆっくりベースを回って行く。あまりに凄すぎて、鳥肌が立ってしまった。
打たれたピッチャーは、マウンドにくずおれ、相手のベンチでは、みんな、あんぐりと口を開けていた。
そりゃ、驚くよね。二打席、連続で満塁ホームランとか、普通は、あり得ないもん。何というかもう、反則的な強さだ。凄いとは思っていたけど、ここまでとは――。
とんでもない人を、呼んで来たことに、いまさらながら、気がついた。本来なら、町内の草野球なんかに、来るような人じゃないもんね。
私たちは、ベンチに戻ると、みんなで歓声を上げ、勝利の喜びを分かち合う。特に、勝利の立役者となったミラージュさんは、みんなから、称賛を浴びていた。
いいメンバーをそろえたので、ある程度、自信はあったけど。まさか、ここまで圧倒的だとは、正直、思っていなかった。
やっぱり、ツバサさんや、ミラージュさんが凄すぎた。シルフィードの能力だけじゃなく、それ以外でも、これほど凄いなんて。上位階級の人たちは、色々と格が違い過ぎる……。
みんなに、健闘をたたえる声を掛けられている、ミラージュさんのすぐ隣では、なぜか、キラリスちゃんが、どや顔で立っていた。尊敬する先輩が、大活躍したんだから、嬉しいのは分かるけどね。
私たちが、楽しく盛り上がっている中。マウンド上では、再び、二人の町内会長さんたちが、顔を付き合わせていた。
「フッ、どうだ?〈東地区商店街〉の底力を、思い知ったか?」
「ぐっ、貴様、卑怯だぞ! そもそも〈東地区〉の人間じゃないだろ?」
「そっちだって、色んな地区から、強いメンバーを集めてるじゃないか?」
「だが、MMAの世界チャンピオンを連れて来るのは、反則だろ!」
「最初は、女子供と馬鹿にしていたくせに!」
「お前が、そこまで、えげつない事するとは、思わなかったんだよ!」
「そもそも、最初に、他地区から助っ人を呼んだのは、そっちだろ?」
「ルールに、助っ人禁止はないから、いいんだよ!」
「だったら、私も、文句を言われる筋合いはないな!!」
「だから、やり過ぎだって、言ってるんだよ!!」
二人は、すっかり熱くなって、完全に口喧嘩になっていた。毎回、こんな感じだとしたら、溝が深まるのも、仕方がない。
これって、親交を深めるのが目的の『交流会』だよね? 私は〈東地区〉が大好きだけど〈西地区〉だって好きだし。どうにか、ならないものかなぁ――?
「やれやれ、二人とも、まだまだ、お若いねぇ」
「フンッ。あれは、若いんじゃなくて、単に子供なんだよ」
ツバサさんの言葉に、ミラージュさんが、不機嫌そうに答えた。
「まったく、子供の喧嘩だな、あれじゃ」
「あははっ、だねぇー」
呆れて見ていたキラリスちゃんの言葉に、私も同意する。
この町の人は、地元愛が強いから、自分の地区が一番だと思う気持ちは、よく分かる。でも、どの地区にも、いいところは有るんだから。同じ町の住人として、もっと仲良くすればいいのに……。
延々と言い合いを続けている二人に、ミラージュさんが、ゆっくり近づいて行った。
「おい、お前ら、いい加減にしろ! 試合で大事なのは、勝敗じゃない。勝っても負けても、相手を尊重し、健闘を称える。それが、スポーツマンシップだろうが?」
その言葉に、二人とも、ピタッと黙り込み、気まずそうな顔をする。
流石に、世界チャンピオンが言うと、言葉の重みが違う。それに、強いだけじゃなくて、スポーツマンシップの塊としても、有名な人だ。何事も正面から、常に正々堂々と。それが、彼女のポリシーだった。
「ほら、さっさと行くぞ」
彼女は、二人の背中を、バシッと力強く叩いた。
「行くって、どこに――?」
「決まってんだろ。交流試合なんだから、終わったら、親睦を深めるための、打ち上げだ」
二人の会長さんは、物凄く微妙な表情を浮かべる。
「おーい、みんな。これから、打ち上げに行くぞ!! お二人の会長さんたちが、おごってくれるそうだ。好きなだけ、飲んで、食って、騒げ!」
ミラージュさんの言葉を聴いて、両チームのメンバーから、大きな歓声が上がる。特に、フィニーちゃんは『食べ放題!』と、目をキラキラさせて、大喜びだった。
「って、何でワシらが?!」
「みみっちいこと、言うなよ、町内会長なんだから。それに、自分らの痴話げんかに、みんなを巻き込んだんだ。それぐらい、当然だろ? ほらっ、行くぞ」
二人は、何も言い返せずに、すっかり黙り込んでしまった。流石に、シルフィード・クイーン兼、世界チャンピオンには、反論できないよね。そもそも、滅茶苦茶、正論だし。
私たちは、着替えて荷物をまとめると、みんなでワラワラと、ピザ屋に向かうのだった。先ほどまでのピリピリした空気はなく、東西両チームとも、仲良く肩を並べて歩いて行く。
その中心には、ミラージュさんと、ツバサさんがいた。みんなから、健闘を称えられたり、質問攻めにあっている。
やっぱ、二人ともカッコイイから、目立つんだよねぇ。女性なのに、兄貴分って感じだし。早くも、ミラージュ姐さん、ツバサ姐さん、なんて呼ばれている。
そんなこんなで、交流試合は、無事に終了。十年以上、続いた因縁も、これで、終わるんじゃないかな。雨降って地固まるとは、このことだよね。
私も、いずれ、あんな風になれたらいいなぁ。後ろを歩きながら、二人の偉大なシルフィードの背中を、じっと見つめ続けるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『やっぱり年下は手が掛かるから苦手』
それはいけないわ。苦手ならなおさら ぶつかっていかなくちゃ
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