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第4部 理想と現実
5-9性格が正反対の人間同士が上手くやっていけるのだろうか?
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『華麗祭』最終日の夜。私は無事に、三日間の仕事を務め上げた。『準備進行リーダー』は、責任が大きく、とても大変な仕事だ。しかし、皆が思ったよりも、テキパキ動いてくれたおかげで、それほど苦労はなかった。
あと、今回の『華麗祭』の間、皆とのコミュニケーション回数が増え、心なしか、距離が近づいた気がする。今までは、全く交流のなかった子たちも、会うと挨拶したり、声を掛けてくれるようになった。
今まで通り、必要以上に慣れ合う気はない。しかし、今後の業務がやりやすくなるのは、よいことだと思う。
仕事の終了後、私は一旦、部屋に戻り、パーティードレスに着替えた。この赤いドレスは、私が〈ファースト・クラス〉の入社が決まった際に、母が買ってくれたものだ。
オーダーメイドで、私の体形にピッタリ合わせてある。数十万ベルする、ずいぶんと高価なドレスだ。
私は『まだ必要ないし、安い既製品でいいのでは?』と、母に尋ねた。いくら、一流企業に入れたからとはいえ、新人にしては、贅沢すぎると思ったからだ。
しかし『いずれ必要になるから、一着、持っておきなさい』と母に言われ、用意したものだ。おそらく、この『後夜祭』を、見越していたのだろう。
私は鏡の前に立ち、自分の姿を確認すると、少しためらった。赤は嫌いではないが、あまりにも派手で、目立ち過ぎる。できれば、今夜は、あまり目立ちたくはないからだ。
今日の昼間も、沢山のお姉様方から、次々と声を掛けられた。なので、後夜祭に出席すれば、また同じ状況になると思う。
一瞬『参加するのを止めようかしら』などと思ったりもする。誘ってもらえるのは、とてもありがたい。だが、誰にするか、全く決められなかった。やはり、知らない人と姉妹になるのは、気が進まない。
とはいえ、会社の大事な行事に、見習いの私がサボるなど、あってはならないことだ。深呼吸をして気持ちを落ち着けると、私は部屋を出て〈本館〉に向かう。〈本館〉のロビーを通過して、向かう先は〈エミールノルデ館〉だ。
〈本館〉には、パーティードレスで着飾った社員たちが、続々と集まってきていた。『華麗祭』が無事に終わり、ホッとしたせいか、皆、一様に明るい表情をしている。色とりどりのドレスを着て、軽やかな足取りで歩いていた。
なんだか、不思議な光景だ。とても会社の中とは思えない。はるか昔の、王侯貴族たちの、舞踏会でも見ているような気分だ。
実際『後夜祭』は、昔の舞踏会をモデルにしているので、そう見えるのも当然だが。普段の、ピリッとした空気とのギャップが、激し過ぎる。
〈本館〉を抜け、北にある〈エミールノルデ館〉まで来ると、益々人の数が増えてきた。全社員が集まるので、とにかく数が多い。
人が多い場所は好きではないが、むしろ好都合だ。これだけ沢山の人がいれば、あまり目立たずに済むだろう。皆がドレス姿なので、思ったほど、私も目立っていないようだ。
入り口まで行き記帳すると、
「レイアー契約はお済ですか?」
と受付の人に尋ねられた。
「いえ、まだですが」
「では、これを付けてください」
白い薔薇の花飾を渡される。
周囲を見ると、全員、胸に薔薇の飾を付けていた。ほとんどの人が、白い薔薇の花飾だ。どうやら、姉妹がいる人は赤を、いない人は白を付けるらしい。
これでは、完全に姉妹探しのパーティーのようだ。どうりで、昨日から、やたら声を掛けられたわけだ。
まぁ、これだけ沢山フリーの人がいれば、他の人たちも、声を掛けられるでしょう。あと、ある程度、様子を見たら、さっさと退出すればいいわ。早く帰って、勉強もしたいし。
レイアー契約はしたいけど、別に焦って結ぶ必要もないのだから。いずれ、いい人を見つけたら、こちらから声を掛ければ、いいだけの話だ。私は、誰かに選ばれるよりも、自分で選びたい。
私は考えを決めると『後夜祭』の会場の、大ホールに向かって行った……。
******
ホールの中は、とても煌びやかだった。昼間の演奏会の時とは、全く雰囲気が違う。座席を全て取り払い、とても広々としていた。ドレス姿で着飾った子たちが、片手にグラスを持ち、あちこちで、談笑している。
左奥のほうには、三十名ほどの楽団が来ており、音楽を生演奏していた。このためだけに、プロの楽団を呼ぶとは、ずいぶんと凝っている。
お姉さま方の演奏も、素晴らしかったが、やはりプロはレベルが違う。今は、静かな音楽を流しているが、後ほど、ダンス用の音楽に切り替わるようだ。
壁際のテーブルの上には、各種料理や、お酒などが置いてあった。調理器具の前には、白い調理服を着た料理人が立ち、直接、料理を作っている。
タキシード姿の給仕の人たちは、会場内を動きながら、料理や飲み物の補充をしていた。この人たちも、外部から呼んだのだろう。料理関係だけでも、相当な費用が掛かっているはずだ。
天井には、大きなシャンデリアが輝き、まるで、本物の舞踏会のように見えた。たった一夜のためだけに、よくここまで、贅を尽くすものだ。だが、伝統的に、今までも毎年、行われて来たらしい。
私は給仕の人から、シャンパンの入ったグラスを受け取ると、あまり人のいない場所を探す。途中、同期の子たちから、次々と声を掛けられた。
『華麗祭』が無事に成功したことを、お互いにねぎらい合う。お世辞の言い合いは、好きではないが、これも今後の仕事を、円滑にするためだ。私は軽くやり取りをしながら、人のいない壁際に移動した。
やっぱり、人の多い場所は疲れるわね。でも、こういう雰囲気にも、今のうちに慣れておかないと。毎年やるわけだし、昇級すれば、パーティーに参加する機会も増えるだろうから……。
予想はしていたが、人が物凄く多い。しかも、知らない人だらけだ。こういった賑やかな場所は、どうにも好きになれなかった。それでも、一応どんなものか、見ておくだけでも、しなければならない。何事も勉強なのだから。
私は壁際に立ちながら、会場内の観察を始めた。すると、ホールの所々に、人だかりが出来ている。中心にいるのは、胸に白いバラを付けた、お姉様方だ。同期の子たちが、必死に声を掛けている。どうやら、自分をアピールしているようだ。
本当に、よくやるわね。気持ちは、分からなくもないけど。でも、あそこまでして、お姉様を見つけようとは、思わないわ。
私は、砂糖に群がるアリのような光景を、冷めた目で眺めていた。
そもそも、私は普段から、先輩たちとの交流はない。ゴマをすったり、媚びを売るのは、好きではないからだ。それに、そんなことをするために、この会社に入った訳ではない。
でも、そうすると、どうやって理想のお姉様と、出会うのだろうか? いや、別にお姉様じゃなくて、来年、新しく入った子の中から、妹を見つける手もある。
私の場合、人に合わせるのも、指示されるのも、あまり好きではなかった。だったら、年下の子のほうが、合うかもしれない。
私に声を掛けてきたお姉様方も、そういう意図なのではないだろうか? でも、私は素直でも従順でもないので、妹には向いていないと思う。
そういえば、お母様からは、姉妹がいたという話は、一度も聞いたことがない。あれほどの、圧倒的な実力があれば、いなくても平気なのではないだろうか?
会場内で、必死にゴマをすっている同期の子たちを見て、段々冷めて来てしまった。人間関係とは、本当に面倒なものだ。
ミス・ハーネスから、推薦人の約束をもらったし。無理せず、これからも、一人でやっていくのも、手かもしれない。元々、一人で頑張るほうが、性に合っているのだし。
視線を動かすと、とりわけ人だかりの多い場所があった。よく見ると、その中心には、ツバサお姉様がいた。沢山の子に囲まれ、とても楽しそうに談笑している。相変わらず、どこに行っても人気者だ。
流石は、ツバサお姉様ね。でも、あれだけ人気があるのに、なぜ姉妹がいないのかしら?
ツバサお姉様の胸には、白い薔薇が付けられていた。かなり、気ままな人のようだし、一人でいるほうが、好きなのだろうか? もしくは、あまりにも人気があり過ぎて、誰も立候補しないのかもしれない。
しばらく観察していると、少し離れた場所から、拍手が聞こえてきた。拍手の中心には、笑顔で手を取り合っている二人がいる。
どうやら、新しい姉妹が誕生したようだ。そのあとも、別の場所から拍手が聞こえてくる。会場内では、続々と姉妹が誕生していた。
やがて、室内に流れていた音楽が変わった。今までとは違う、快活なダンス用の音楽だ。中央にいた人たちは壁際により、新しくできた姉妹たちが、中央に進み出る。姉妹たちは手を取り、優雅にダンスを始めた。
なるほど、こういう仕組みなわけね――。まぁ、だいたい分かったから、もう退出してもいいかしら。
私は、他人事のように眺めいると、ふと声を掛けられた。
「こんな所にいたのね、ナギサさん。私と踊ってくださらない?」
「あら、ナギサさん。踊るなら、ぜひ私と」
「いいえ、私とよ。昼間のお話、考えてくれたかしら?」
一人また一人と、周囲にお姉様方が集まって来る。私はいつの間にか、囲まれてしまっていた。
「えっ……いえ、私は――」
周囲には、昼間、声を掛けてきたお姉様方たちもいた。
「ちょっと待って。私と踊りましょう」
「踊るなら、私がいいわ」
答に詰まっている内に、どんどん人が増えて行く。
考えてみたら、昨日から声を掛けられっぱなしで、全部で二十人以上いた気がする。ただ、全員、知らない人ばかりで、特に気になった人はいなかった。
「あ、あの……私は今回は、遠慮させていただきます」
賑やかすぎて疲れてしまったので、今は一人でいたい気分だった。それに、私にはまだ、お姉様は早い気がする。
「なぜですの? ここで姉妹になっておいたほうが、絶対にお得よ」
「そうそう、これから先の昇進にも有利ですし」
「一流のシルフィードを目指すなら、必須ですわよ」
お姉様方が詰め寄って来て、一斉に手を差し出した。
「いえ、ですから、その――」
同期だったら『邪魔だからどいてくれる』の一言で済むのだが、流石にお姉様方に、それは言えない。失礼にならないよう、お断りするには、どうすれば……?
私が困惑して固まっていると、別の声が割り込んできた。
「やぁ、美しいお嬢様方、ご機嫌麗しゅう」
爽やかな声の主に、一斉に視線が集中する。
「ツバサお姉様!」
「ツバサさん!」
タキシード姿のツバサお姉様が、笑顔を浮かべながら立っていた。
「少し、通していただいても、いいかな?」
彼女が言った瞬間、人垣が左右に割れた。そのまま、こちらに向かってくる。
私の前に立つと、
「実は、彼女と先約していてね」
言いながら、右手を差し出してきた。
周囲からは驚きの声が上がる。だが、一番、驚いているのは、私自信だ。もちろん、約束など何もしていない。でも、以前も似たような状況があった気が――。
「一曲、踊っていただけますか?」
「……はい」
私は一刻も早く、この状況を抜け出したかったので、思わず返事をしてしまった。だが、見ず知らずの人と踊るよりは、遥かにいいと思う。
私は、ツバサお姉様に手を引かれ、ホールの中央に進んで行った。向かい合うと両手をとり、ゆっくりと踊り始めた。と同時に、周囲がざわざわし始めた。
ナギサお姉様は、物凄く目立つうえに、社内でも大人気だ。その人と踊っていれば、こうなるのは当然だ。先ほどよりも、さらに目立ってしまっている。変に目立つのは、好きではないのに――。
「先日もそうでしたが、特にお約束は、なかったと思いますが?」
私は小さな声で質問する。
「いやー、ただの方便だよ。みんなに囲まれて大変だったから、抜け出したくてさ。君も同じでしょ?」
「確かに、そうですけど。ナギサお姉様は、楽しそうに見えましたが……」
沢山の子に取り囲まれ、皆と話している姿は、とても楽しそうに見えた。私とは正反対で、とても社交的な人だ。
「あれは、ファンサービスだよ。向けられた好意を、無下には出来ないからね。もしかして、君のほうは、声を掛けないほうが良かったのかな?」
「いえ、助かりました……」
何だかんだで、以前、同期と言い合いになっていた時も、さりげなく助けてもらった。しかも、絶妙のタイミングで。
ゆっくり、流れるように移動しながら踊る。一応、ダンスの基本は知っているが、パーティーで踊るのは初めてだ。でも、ナギサお姉様が、上手くリードしてくれているお蔭で、問題なく踊れていた。何をやっても、器用にこなす人だ。
「ところで、提案なんだけど。僕と姉妹にならない?」
「えっ――はっ?! どうして、急にそんな話になるんですか?」
ツバサお姉様は、何の前触れもなく、普通の会話のように切り出して来た。あまりに、唐突な発言だったので、一瞬、何を言っているのか、理解できなかった。
彼女は、いつだって、色々と唐突な人だ。いきなり現れ、風のように去って行き、全くつかみどころがない。それにしたって、姉妹の件は、あまりにも、いきなり過ぎる話だ。
「だって、ナギサちゃん、まだレイアー契約してないんでしょ? それとも、先ほどの中に、意中の人でもいたのかな?」
「いえ、特には……。知らない人と、姉妹にはなれませんので」
相手を知らないのでは、姉妹も何も、あったものではない。
「なら、いいじゃない。僕たち、知らない仲じゃないんだし」
微笑みながら、サラッと言い放つ。
それは、確かにそうだけど、軽すぎない? それに、何度か話したことが有るだけで。『知らない仲』というほど、親しくもないはずだけど――。
「何も知らないから、そんなことを言うんです。私は、かなり面倒な性格ですよ」
「全部、知ってる。ずっと見てたから」
「え……?」
見てたって――掲示板に張り出されていた、成績のこと? 他のお姉様方も、皆それで声を掛けてきたのだと思う。結局、ツバサお姉様も、成績が優秀なら、誰でもいいってこと?
「几帳面で、ルール順守で、何事も自分の力でやりたくて。一度、決めたら絶対に曲げなくて、何事も正攻法で。ちょっと頑固で、気が強くて。なんか、僕とは色々反対だよね」
ツバサお姉様は、流れるように言葉を紡いでいく。
だが、言われたことは、ことごとく当たっていた。ほとんど話したことも無いのに、何でそこまで? というか、ツバサお姉様とは、全てにおいて、正反対な性格だと思う。
「そこまで知っていて、なぜ、私と姉妹になろうと思うんですか? ツバサお姉様なら、他にいくらでも選べるではないですか? もっと、素直で従順な子も、沢山いますし」
自分の性格と、合う相手を選ぶのが普通だ。特に、妹を選ぶなら、素直な子のほうがいいだろう。相手がいないならまだしも、あれだけ人気があれば、誰でも選び放題だ。よりによって、これほど正反対な私を、なぜ……?
「僕はね、君みたいな尖った子、結構、好きだよ。それに、他の子たちは、やたらお世辞を言ったり、甘えて来たりするからさ。そういうの、実は、あまり好きじゃないんだ。君なら、そんなことしないでしょ?」
「何があっても、絶対にしませんね」
私は即答する。
私はゴマをすることはしない。甘えたりなんてことも、絶対にあり得ない。でも『尖った子』って? そこまで酷いつもりは、ないんだけれど――。
「それに、お互い姉妹ができれば、面倒事が減ると思わない?」
ツバサお姉様は、私たちを興味津々に見つめている人たちに、視線を向けた。確かに、今後、今日のような面倒事は、二度と起こらないだろう。
「あー、あと、僕は束縛するのも、されるのも好きじゃないから。ナギサちゃんも、そうでしょ?」
「……そうですね。どちらかというと、個人行動が基本ですし」
何事も、自分のペースで動きたい。他人と合わせると、自分のスケジュールが狂ってしまうからだ。
「なら、いいじゃない。お互い、今まで通りに、行動すればいいから。もちろん、何かあった時は、ちゃんと協力するよ」
自分で自由に行動できるうえに、お姉様まで出来るのは、物凄くありがたい。しかも、大人気の『スカイ・プリンセス』と、レイアー契約できるのは、願ってもないことだ。でも、そんなのが、姉妹関係と言えるのだろうか?
「そんな、あっさりした関係で、いいんですか? それでは、単に利害の一致だけの関係じゃありませんか?」
「それだけじゃないよ。もし、利害関係だけ求めたら、とっくに、他の子と契約してるから。君を選んだのには、ちゃんと理由があるんだ」
理由って、さっき言ってた、尖ってるから? 気難しいのは自覚してるけど、全く嬉しくない褒め言葉だ。
「前にも、言ったじゃない。新しく入った子の中で、一番カワイイって。やっぱ、妹にするなら、カワイイ子がいいからね」
「――って、そんなくだらない理由ですか?!」
相変わらず、本気で言ってるのか、ふざけているのか、さっぱり分からない。
「くだらなくなんか無いよ。ナギサちゃんだって、妹にするなら、絶対にカワイイ子を選ぶでしょ?」
「私は、絶対にそんな選び方はしませんよ」
私はムキになって否定する。そんな、ふざけたことをする訳がない。
「そういうところが、カワイイんだよなぁ」
「なっ、茶化さないでください!」
ツバサお姉様が凄いのは、私もよく分かっている。でも、話し方も考え方も、少し軽薄じゃないだろうか? 言葉も態度も、フワフワした感じがする。もっとも、性格が正反対なのは、お互いに理解しているけど。
「それで、受けてくれるかな? 僕と姉妹になる話」
「……。あとで面倒臭くなって、後悔しても知りませんよ」
「大丈夫、大丈夫。面倒な性格なのは、お互い様だから」
ツバサお姉様は、爽やかな笑顔を浮かべ、気軽に答える。
まったく、本当に軽いわね。物凄く大事な話をしているのに。まぁ、悪い人ではないんだけど。
ツバサお姉様は、ピタリと止まると、私の手を引きながら、見ていた人たちのほうに向きなおった。
すると、私の手を持ち上げながら、
「みんな、僕の妹を紹介するよ。今後とも、僕と同様に、可愛がってあげてね」
高らかに宣言した。
「ちょっ、ツバサお姉様?!」
私は目立ちたくないし、まだ、話の途中なのに――。
しばしの沈黙のあと、会場内から、盛大な拍手が巻き起こった。今日の中で、最も大きな拍手だった。
全てにおいて、軽いノリで目立ち語り屋の姉。逆に、全てにおいて重くて、目立つのが嫌いな妹。素敵な姉を得たのは事実だけど。嬉しさよりも、不安のほうが、はるかに大きかった。
はたして、ここまで世反対で、上手く行くのだろうか……?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回 第4部・最終話――
『えっ……私の人生ってここで終わりなの……?』
人生の不条理は、終わりではあり得ず、始まりでしかない
あと、今回の『華麗祭』の間、皆とのコミュニケーション回数が増え、心なしか、距離が近づいた気がする。今までは、全く交流のなかった子たちも、会うと挨拶したり、声を掛けてくれるようになった。
今まで通り、必要以上に慣れ合う気はない。しかし、今後の業務がやりやすくなるのは、よいことだと思う。
仕事の終了後、私は一旦、部屋に戻り、パーティードレスに着替えた。この赤いドレスは、私が〈ファースト・クラス〉の入社が決まった際に、母が買ってくれたものだ。
オーダーメイドで、私の体形にピッタリ合わせてある。数十万ベルする、ずいぶんと高価なドレスだ。
私は『まだ必要ないし、安い既製品でいいのでは?』と、母に尋ねた。いくら、一流企業に入れたからとはいえ、新人にしては、贅沢すぎると思ったからだ。
しかし『いずれ必要になるから、一着、持っておきなさい』と母に言われ、用意したものだ。おそらく、この『後夜祭』を、見越していたのだろう。
私は鏡の前に立ち、自分の姿を確認すると、少しためらった。赤は嫌いではないが、あまりにも派手で、目立ち過ぎる。できれば、今夜は、あまり目立ちたくはないからだ。
今日の昼間も、沢山のお姉様方から、次々と声を掛けられた。なので、後夜祭に出席すれば、また同じ状況になると思う。
一瞬『参加するのを止めようかしら』などと思ったりもする。誘ってもらえるのは、とてもありがたい。だが、誰にするか、全く決められなかった。やはり、知らない人と姉妹になるのは、気が進まない。
とはいえ、会社の大事な行事に、見習いの私がサボるなど、あってはならないことだ。深呼吸をして気持ちを落ち着けると、私は部屋を出て〈本館〉に向かう。〈本館〉のロビーを通過して、向かう先は〈エミールノルデ館〉だ。
〈本館〉には、パーティードレスで着飾った社員たちが、続々と集まってきていた。『華麗祭』が無事に終わり、ホッとしたせいか、皆、一様に明るい表情をしている。色とりどりのドレスを着て、軽やかな足取りで歩いていた。
なんだか、不思議な光景だ。とても会社の中とは思えない。はるか昔の、王侯貴族たちの、舞踏会でも見ているような気分だ。
実際『後夜祭』は、昔の舞踏会をモデルにしているので、そう見えるのも当然だが。普段の、ピリッとした空気とのギャップが、激し過ぎる。
〈本館〉を抜け、北にある〈エミールノルデ館〉まで来ると、益々人の数が増えてきた。全社員が集まるので、とにかく数が多い。
人が多い場所は好きではないが、むしろ好都合だ。これだけ沢山の人がいれば、あまり目立たずに済むだろう。皆がドレス姿なので、思ったほど、私も目立っていないようだ。
入り口まで行き記帳すると、
「レイアー契約はお済ですか?」
と受付の人に尋ねられた。
「いえ、まだですが」
「では、これを付けてください」
白い薔薇の花飾を渡される。
周囲を見ると、全員、胸に薔薇の飾を付けていた。ほとんどの人が、白い薔薇の花飾だ。どうやら、姉妹がいる人は赤を、いない人は白を付けるらしい。
これでは、完全に姉妹探しのパーティーのようだ。どうりで、昨日から、やたら声を掛けられたわけだ。
まぁ、これだけ沢山フリーの人がいれば、他の人たちも、声を掛けられるでしょう。あと、ある程度、様子を見たら、さっさと退出すればいいわ。早く帰って、勉強もしたいし。
レイアー契約はしたいけど、別に焦って結ぶ必要もないのだから。いずれ、いい人を見つけたら、こちらから声を掛ければ、いいだけの話だ。私は、誰かに選ばれるよりも、自分で選びたい。
私は考えを決めると『後夜祭』の会場の、大ホールに向かって行った……。
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ホールの中は、とても煌びやかだった。昼間の演奏会の時とは、全く雰囲気が違う。座席を全て取り払い、とても広々としていた。ドレス姿で着飾った子たちが、片手にグラスを持ち、あちこちで、談笑している。
左奥のほうには、三十名ほどの楽団が来ており、音楽を生演奏していた。このためだけに、プロの楽団を呼ぶとは、ずいぶんと凝っている。
お姉さま方の演奏も、素晴らしかったが、やはりプロはレベルが違う。今は、静かな音楽を流しているが、後ほど、ダンス用の音楽に切り替わるようだ。
壁際のテーブルの上には、各種料理や、お酒などが置いてあった。調理器具の前には、白い調理服を着た料理人が立ち、直接、料理を作っている。
タキシード姿の給仕の人たちは、会場内を動きながら、料理や飲み物の補充をしていた。この人たちも、外部から呼んだのだろう。料理関係だけでも、相当な費用が掛かっているはずだ。
天井には、大きなシャンデリアが輝き、まるで、本物の舞踏会のように見えた。たった一夜のためだけに、よくここまで、贅を尽くすものだ。だが、伝統的に、今までも毎年、行われて来たらしい。
私は給仕の人から、シャンパンの入ったグラスを受け取ると、あまり人のいない場所を探す。途中、同期の子たちから、次々と声を掛けられた。
『華麗祭』が無事に成功したことを、お互いにねぎらい合う。お世辞の言い合いは、好きではないが、これも今後の仕事を、円滑にするためだ。私は軽くやり取りをしながら、人のいない壁際に移動した。
やっぱり、人の多い場所は疲れるわね。でも、こういう雰囲気にも、今のうちに慣れておかないと。毎年やるわけだし、昇級すれば、パーティーに参加する機会も増えるだろうから……。
予想はしていたが、人が物凄く多い。しかも、知らない人だらけだ。こういった賑やかな場所は、どうにも好きになれなかった。それでも、一応どんなものか、見ておくだけでも、しなければならない。何事も勉強なのだから。
私は壁際に立ちながら、会場内の観察を始めた。すると、ホールの所々に、人だかりが出来ている。中心にいるのは、胸に白いバラを付けた、お姉様方だ。同期の子たちが、必死に声を掛けている。どうやら、自分をアピールしているようだ。
本当に、よくやるわね。気持ちは、分からなくもないけど。でも、あそこまでして、お姉様を見つけようとは、思わないわ。
私は、砂糖に群がるアリのような光景を、冷めた目で眺めていた。
そもそも、私は普段から、先輩たちとの交流はない。ゴマをすったり、媚びを売るのは、好きではないからだ。それに、そんなことをするために、この会社に入った訳ではない。
でも、そうすると、どうやって理想のお姉様と、出会うのだろうか? いや、別にお姉様じゃなくて、来年、新しく入った子の中から、妹を見つける手もある。
私の場合、人に合わせるのも、指示されるのも、あまり好きではなかった。だったら、年下の子のほうが、合うかもしれない。
私に声を掛けてきたお姉様方も、そういう意図なのではないだろうか? でも、私は素直でも従順でもないので、妹には向いていないと思う。
そういえば、お母様からは、姉妹がいたという話は、一度も聞いたことがない。あれほどの、圧倒的な実力があれば、いなくても平気なのではないだろうか?
会場内で、必死にゴマをすっている同期の子たちを見て、段々冷めて来てしまった。人間関係とは、本当に面倒なものだ。
ミス・ハーネスから、推薦人の約束をもらったし。無理せず、これからも、一人でやっていくのも、手かもしれない。元々、一人で頑張るほうが、性に合っているのだし。
視線を動かすと、とりわけ人だかりの多い場所があった。よく見ると、その中心には、ツバサお姉様がいた。沢山の子に囲まれ、とても楽しそうに談笑している。相変わらず、どこに行っても人気者だ。
流石は、ツバサお姉様ね。でも、あれだけ人気があるのに、なぜ姉妹がいないのかしら?
ツバサお姉様の胸には、白い薔薇が付けられていた。かなり、気ままな人のようだし、一人でいるほうが、好きなのだろうか? もしくは、あまりにも人気があり過ぎて、誰も立候補しないのかもしれない。
しばらく観察していると、少し離れた場所から、拍手が聞こえてきた。拍手の中心には、笑顔で手を取り合っている二人がいる。
どうやら、新しい姉妹が誕生したようだ。そのあとも、別の場所から拍手が聞こえてくる。会場内では、続々と姉妹が誕生していた。
やがて、室内に流れていた音楽が変わった。今までとは違う、快活なダンス用の音楽だ。中央にいた人たちは壁際により、新しくできた姉妹たちが、中央に進み出る。姉妹たちは手を取り、優雅にダンスを始めた。
なるほど、こういう仕組みなわけね――。まぁ、だいたい分かったから、もう退出してもいいかしら。
私は、他人事のように眺めいると、ふと声を掛けられた。
「こんな所にいたのね、ナギサさん。私と踊ってくださらない?」
「あら、ナギサさん。踊るなら、ぜひ私と」
「いいえ、私とよ。昼間のお話、考えてくれたかしら?」
一人また一人と、周囲にお姉様方が集まって来る。私はいつの間にか、囲まれてしまっていた。
「えっ……いえ、私は――」
周囲には、昼間、声を掛けてきたお姉様方たちもいた。
「ちょっと待って。私と踊りましょう」
「踊るなら、私がいいわ」
答に詰まっている内に、どんどん人が増えて行く。
考えてみたら、昨日から声を掛けられっぱなしで、全部で二十人以上いた気がする。ただ、全員、知らない人ばかりで、特に気になった人はいなかった。
「あ、あの……私は今回は、遠慮させていただきます」
賑やかすぎて疲れてしまったので、今は一人でいたい気分だった。それに、私にはまだ、お姉様は早い気がする。
「なぜですの? ここで姉妹になっておいたほうが、絶対にお得よ」
「そうそう、これから先の昇進にも有利ですし」
「一流のシルフィードを目指すなら、必須ですわよ」
お姉様方が詰め寄って来て、一斉に手を差し出した。
「いえ、ですから、その――」
同期だったら『邪魔だからどいてくれる』の一言で済むのだが、流石にお姉様方に、それは言えない。失礼にならないよう、お断りするには、どうすれば……?
私が困惑して固まっていると、別の声が割り込んできた。
「やぁ、美しいお嬢様方、ご機嫌麗しゅう」
爽やかな声の主に、一斉に視線が集中する。
「ツバサお姉様!」
「ツバサさん!」
タキシード姿のツバサお姉様が、笑顔を浮かべながら立っていた。
「少し、通していただいても、いいかな?」
彼女が言った瞬間、人垣が左右に割れた。そのまま、こちらに向かってくる。
私の前に立つと、
「実は、彼女と先約していてね」
言いながら、右手を差し出してきた。
周囲からは驚きの声が上がる。だが、一番、驚いているのは、私自信だ。もちろん、約束など何もしていない。でも、以前も似たような状況があった気が――。
「一曲、踊っていただけますか?」
「……はい」
私は一刻も早く、この状況を抜け出したかったので、思わず返事をしてしまった。だが、見ず知らずの人と踊るよりは、遥かにいいと思う。
私は、ツバサお姉様に手を引かれ、ホールの中央に進んで行った。向かい合うと両手をとり、ゆっくりと踊り始めた。と同時に、周囲がざわざわし始めた。
ナギサお姉様は、物凄く目立つうえに、社内でも大人気だ。その人と踊っていれば、こうなるのは当然だ。先ほどよりも、さらに目立ってしまっている。変に目立つのは、好きではないのに――。
「先日もそうでしたが、特にお約束は、なかったと思いますが?」
私は小さな声で質問する。
「いやー、ただの方便だよ。みんなに囲まれて大変だったから、抜け出したくてさ。君も同じでしょ?」
「確かに、そうですけど。ナギサお姉様は、楽しそうに見えましたが……」
沢山の子に取り囲まれ、皆と話している姿は、とても楽しそうに見えた。私とは正反対で、とても社交的な人だ。
「あれは、ファンサービスだよ。向けられた好意を、無下には出来ないからね。もしかして、君のほうは、声を掛けないほうが良かったのかな?」
「いえ、助かりました……」
何だかんだで、以前、同期と言い合いになっていた時も、さりげなく助けてもらった。しかも、絶妙のタイミングで。
ゆっくり、流れるように移動しながら踊る。一応、ダンスの基本は知っているが、パーティーで踊るのは初めてだ。でも、ナギサお姉様が、上手くリードしてくれているお蔭で、問題なく踊れていた。何をやっても、器用にこなす人だ。
「ところで、提案なんだけど。僕と姉妹にならない?」
「えっ――はっ?! どうして、急にそんな話になるんですか?」
ツバサお姉様は、何の前触れもなく、普通の会話のように切り出して来た。あまりに、唐突な発言だったので、一瞬、何を言っているのか、理解できなかった。
彼女は、いつだって、色々と唐突な人だ。いきなり現れ、風のように去って行き、全くつかみどころがない。それにしたって、姉妹の件は、あまりにも、いきなり過ぎる話だ。
「だって、ナギサちゃん、まだレイアー契約してないんでしょ? それとも、先ほどの中に、意中の人でもいたのかな?」
「いえ、特には……。知らない人と、姉妹にはなれませんので」
相手を知らないのでは、姉妹も何も、あったものではない。
「なら、いいじゃない。僕たち、知らない仲じゃないんだし」
微笑みながら、サラッと言い放つ。
それは、確かにそうだけど、軽すぎない? それに、何度か話したことが有るだけで。『知らない仲』というほど、親しくもないはずだけど――。
「何も知らないから、そんなことを言うんです。私は、かなり面倒な性格ですよ」
「全部、知ってる。ずっと見てたから」
「え……?」
見てたって――掲示板に張り出されていた、成績のこと? 他のお姉様方も、皆それで声を掛けてきたのだと思う。結局、ツバサお姉様も、成績が優秀なら、誰でもいいってこと?
「几帳面で、ルール順守で、何事も自分の力でやりたくて。一度、決めたら絶対に曲げなくて、何事も正攻法で。ちょっと頑固で、気が強くて。なんか、僕とは色々反対だよね」
ツバサお姉様は、流れるように言葉を紡いでいく。
だが、言われたことは、ことごとく当たっていた。ほとんど話したことも無いのに、何でそこまで? というか、ツバサお姉様とは、全てにおいて、正反対な性格だと思う。
「そこまで知っていて、なぜ、私と姉妹になろうと思うんですか? ツバサお姉様なら、他にいくらでも選べるではないですか? もっと、素直で従順な子も、沢山いますし」
自分の性格と、合う相手を選ぶのが普通だ。特に、妹を選ぶなら、素直な子のほうがいいだろう。相手がいないならまだしも、あれだけ人気があれば、誰でも選び放題だ。よりによって、これほど正反対な私を、なぜ……?
「僕はね、君みたいな尖った子、結構、好きだよ。それに、他の子たちは、やたらお世辞を言ったり、甘えて来たりするからさ。そういうの、実は、あまり好きじゃないんだ。君なら、そんなことしないでしょ?」
「何があっても、絶対にしませんね」
私は即答する。
私はゴマをすることはしない。甘えたりなんてことも、絶対にあり得ない。でも『尖った子』って? そこまで酷いつもりは、ないんだけれど――。
「それに、お互い姉妹ができれば、面倒事が減ると思わない?」
ツバサお姉様は、私たちを興味津々に見つめている人たちに、視線を向けた。確かに、今後、今日のような面倒事は、二度と起こらないだろう。
「あー、あと、僕は束縛するのも、されるのも好きじゃないから。ナギサちゃんも、そうでしょ?」
「……そうですね。どちらかというと、個人行動が基本ですし」
何事も、自分のペースで動きたい。他人と合わせると、自分のスケジュールが狂ってしまうからだ。
「なら、いいじゃない。お互い、今まで通りに、行動すればいいから。もちろん、何かあった時は、ちゃんと協力するよ」
自分で自由に行動できるうえに、お姉様まで出来るのは、物凄くありがたい。しかも、大人気の『スカイ・プリンセス』と、レイアー契約できるのは、願ってもないことだ。でも、そんなのが、姉妹関係と言えるのだろうか?
「そんな、あっさりした関係で、いいんですか? それでは、単に利害の一致だけの関係じゃありませんか?」
「それだけじゃないよ。もし、利害関係だけ求めたら、とっくに、他の子と契約してるから。君を選んだのには、ちゃんと理由があるんだ」
理由って、さっき言ってた、尖ってるから? 気難しいのは自覚してるけど、全く嬉しくない褒め言葉だ。
「前にも、言ったじゃない。新しく入った子の中で、一番カワイイって。やっぱ、妹にするなら、カワイイ子がいいからね」
「――って、そんなくだらない理由ですか?!」
相変わらず、本気で言ってるのか、ふざけているのか、さっぱり分からない。
「くだらなくなんか無いよ。ナギサちゃんだって、妹にするなら、絶対にカワイイ子を選ぶでしょ?」
「私は、絶対にそんな選び方はしませんよ」
私はムキになって否定する。そんな、ふざけたことをする訳がない。
「そういうところが、カワイイんだよなぁ」
「なっ、茶化さないでください!」
ツバサお姉様が凄いのは、私もよく分かっている。でも、話し方も考え方も、少し軽薄じゃないだろうか? 言葉も態度も、フワフワした感じがする。もっとも、性格が正反対なのは、お互いに理解しているけど。
「それで、受けてくれるかな? 僕と姉妹になる話」
「……。あとで面倒臭くなって、後悔しても知りませんよ」
「大丈夫、大丈夫。面倒な性格なのは、お互い様だから」
ツバサお姉様は、爽やかな笑顔を浮かべ、気軽に答える。
まったく、本当に軽いわね。物凄く大事な話をしているのに。まぁ、悪い人ではないんだけど。
ツバサお姉様は、ピタリと止まると、私の手を引きながら、見ていた人たちのほうに向きなおった。
すると、私の手を持ち上げながら、
「みんな、僕の妹を紹介するよ。今後とも、僕と同様に、可愛がってあげてね」
高らかに宣言した。
「ちょっ、ツバサお姉様?!」
私は目立ちたくないし、まだ、話の途中なのに――。
しばしの沈黙のあと、会場内から、盛大な拍手が巻き起こった。今日の中で、最も大きな拍手だった。
全てにおいて、軽いノリで目立ち語り屋の姉。逆に、全てにおいて重くて、目立つのが嫌いな妹。素敵な姉を得たのは事実だけど。嬉しさよりも、不安のほうが、はるかに大きかった。
はたして、ここまで世反対で、上手く行くのだろうか……?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回 第4部・最終話――
『えっ……私の人生ってここで終わりなの……?』
人生の不条理は、終わりではあり得ず、始まりでしかない
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