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第4部 理想と現実

5-9性格が正反対の人間同士が上手くやっていけるのだろうか?

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『華麗祭』最終日の夜。私は無事に、三日間の仕事を務め上げた。『準備進行リーダー』は、責任が大きく、とても大変な仕事だ。しかし、皆が思ったよりも、テキパキ動いてくれたおかげで、それほど苦労はなかった。

 あと、今回の『華麗祭』の間、皆とのコミュニケーション回数が増え、心なしか、距離が近づいた気がする。今までは、全く交流のなかった子たちも、会うと挨拶したり、声を掛けてくれるようになった。

 今まで通り、必要以上に慣れ合う気はない。しかし、今後の業務がやりやすくなるのは、よいことだと思う。

 仕事の終了後、私は一旦、部屋に戻り、パーティードレスに着替えた。この赤いドレスは、私が〈ファースト・クラス〉の入社が決まった際に、母が買ってくれたものだ。

 オーダーメイドで、私の体形にピッタリ合わせてある。数十万ベルする、ずいぶんと高価なドレスだ。

 私は『まだ必要ないし、安い既製品でいいのでは?』と、母に尋ねた。いくら、一流企業に入れたからとはいえ、新人にしては、贅沢すぎると思ったからだ。

 しかし『いずれ必要になるから、一着、持っておきなさい』と母に言われ、用意したものだ。おそらく、この『後夜祭』を、見越していたのだろう。

 私は鏡の前に立ち、自分の姿を確認すると、少しためらった。赤は嫌いではないが、あまりにも派手で、目立ち過ぎる。できれば、今夜は、あまり目立ちたくはないからだ。

 今日の昼間も、沢山のお姉様方から、次々と声を掛けられた。なので、後夜祭に出席すれば、また同じ状況になると思う。

 一瞬『参加するのを止めようかしら』などと思ったりもする。誘ってもらえるのは、とてもありがたい。だが、誰にするか、全く決められなかった。やはり、知らない人と姉妹になるのは、気が進まない。

 とはいえ、会社の大事な行事に、見習いの私がサボるなど、あってはならないことだ。深呼吸をして気持ちを落ち着けると、私は部屋を出て〈本館〉に向かう。〈本館〉のロビーを通過して、向かう先は〈エミールノルデ館〉だ。

〈本館〉には、パーティードレスで着飾った社員たちが、続々と集まってきていた。『華麗祭』が無事に終わり、ホッとしたせいか、皆、一様に明るい表情をしている。色とりどりのドレスを着て、軽やかな足取りで歩いていた。

 なんだか、不思議な光景だ。とても会社の中とは思えない。はるか昔の、王侯貴族たちの、舞踏会でも見ているような気分だ。

 実際『後夜祭』は、昔の舞踏会をモデルにしているので、そう見えるのも当然だが。普段の、ピリッとした空気とのギャップが、激し過ぎる。

〈本館〉を抜け、北にある〈エミールノルデ館〉まで来ると、益々人の数が増えてきた。全社員が集まるので、とにかく数が多い。

 人が多い場所は好きではないが、むしろ好都合だ。これだけ沢山の人がいれば、あまり目立たずに済むだろう。皆がドレス姿なので、思ったほど、私も目立っていないようだ。

 入り口まで行き記帳すると、  
「レイアー契約はお済ですか?」
 と受付の人に尋ねられた。

「いえ、まだですが」
「では、これを付けてください」
 白い薔薇の花飾を渡される。

 周囲を見ると、全員、胸に薔薇の飾を付けていた。ほとんどの人が、白い薔薇の花飾だ。どうやら、姉妹がいる人は赤を、いない人は白を付けるらしい。

 これでは、完全に姉妹探しのパーティーのようだ。どうりで、昨日から、やたら声を掛けられたわけだ。

 まぁ、これだけ沢山フリーの人がいれば、他の人たちも、声を掛けられるでしょう。あと、ある程度、様子を見たら、さっさと退出すればいいわ。早く帰って、勉強もしたいし。

 レイアー契約はしたいけど、別に焦って結ぶ必要もないのだから。いずれ、いい人を見つけたら、こちらから声を掛ければ、いいだけの話だ。私は、誰かに選ばれるよりも、自分で選びたい。

 私は考えを決めると『後夜祭』の会場の、大ホールに向かって行った……。


 ******


 ホールの中は、とても煌びやかだった。昼間の演奏会の時とは、全く雰囲気が違う。座席を全て取り払い、とても広々としていた。ドレス姿で着飾った子たちが、片手にグラスを持ち、あちこちで、談笑している。

 左奥のほうには、三十名ほどの楽団が来ており、音楽を生演奏していた。このためだけに、プロの楽団を呼ぶとは、ずいぶんと凝っている。

 お姉さま方の演奏も、素晴らしかったが、やはりプロはレベルが違う。今は、静かな音楽を流しているが、後ほど、ダンス用の音楽に切り替わるようだ。

 壁際のテーブルの上には、各種料理や、お酒などが置いてあった。調理器具の前には、白い調理服を着た料理人が立ち、直接、料理を作っている。

 タキシード姿の給仕の人たちは、会場内を動きながら、料理や飲み物の補充をしていた。この人たちも、外部から呼んだのだろう。料理関係だけでも、相当な費用が掛かっているはずだ。

 天井には、大きなシャンデリアが輝き、まるで、本物の舞踏会のように見えた。たった一夜のためだけに、よくここまで、贅を尽くすものだ。だが、伝統的に、今までも毎年、行われて来たらしい。

 私は給仕の人から、シャンパンの入ったグラスを受け取ると、あまり人のいない場所を探す。途中、同期の子たちから、次々と声を掛けられた。

『華麗祭』が無事に成功したことを、お互いにねぎらい合う。お世辞の言い合いは、好きではないが、これも今後の仕事を、円滑にするためだ。私は軽くやり取りをしながら、人のいない壁際に移動した。

 やっぱり、人の多い場所は疲れるわね。でも、こういう雰囲気にも、今のうちに慣れておかないと。毎年やるわけだし、昇級すれば、パーティーに参加する機会も増えるだろうから……。

 予想はしていたが、人が物凄く多い。しかも、知らない人だらけだ。こういった賑やかな場所は、どうにも好きになれなかった。それでも、一応どんなものか、見ておくだけでも、しなければならない。何事も勉強なのだから。

 私は壁際に立ちながら、会場内の観察を始めた。すると、ホールの所々に、人だかりが出来ている。中心にいるのは、胸に白いバラを付けた、お姉様方だ。同期の子たちが、必死に声を掛けている。どうやら、自分をアピールしているようだ。

 本当に、よくやるわね。気持ちは、分からなくもないけど。でも、あそこまでして、お姉様を見つけようとは、思わないわ。

 私は、砂糖に群がるアリのような光景を、冷めた目で眺めていた。

 そもそも、私は普段から、先輩たちとの交流はない。ゴマをすったり、媚びを売るのは、好きではないからだ。それに、そんなことをするために、この会社に入った訳ではない。

 でも、そうすると、どうやって理想のお姉様と、出会うのだろうか? いや、別にお姉様じゃなくて、来年、新しく入った子の中から、妹を見つける手もある。

 私の場合、人に合わせるのも、指示されるのも、あまり好きではなかった。だったら、年下の子のほうが、合うかもしれない。

 私に声を掛けてきたお姉様方も、そういう意図なのではないだろうか? でも、私は素直でも従順でもないので、妹には向いていないと思う。

 そういえば、お母様からは、姉妹がいたという話は、一度も聞いたことがない。あれほどの、圧倒的な実力があれば、いなくても平気なのではないだろうか?

 会場内で、必死にゴマをすっている同期の子たちを見て、段々冷めて来てしまった。人間関係とは、本当に面倒なものだ。

 ミス・ハーネスから、推薦人の約束をもらったし。無理せず、これからも、一人でやっていくのも、手かもしれない。元々、一人で頑張るほうが、性に合っているのだし。

 視線を動かすと、とりわけ人だかりの多い場所があった。よく見ると、その中心には、ツバサお姉様がいた。沢山の子に囲まれ、とても楽しそうに談笑している。相変わらず、どこに行っても人気者だ。

 流石は、ツバサお姉様ね。でも、あれだけ人気があるのに、なぜ姉妹がいないのかしら?

 ツバサお姉様の胸には、白い薔薇が付けられていた。かなり、気ままな人のようだし、一人でいるほうが、好きなのだろうか? もしくは、あまりにも人気があり過ぎて、誰も立候補しないのかもしれない。

 しばらく観察していると、少し離れた場所から、拍手が聞こえてきた。拍手の中心には、笑顔で手を取り合っている二人がいる。

 どうやら、新しい姉妹が誕生したようだ。そのあとも、別の場所から拍手が聞こえてくる。会場内では、続々と姉妹が誕生していた。

 やがて、室内に流れていた音楽が変わった。今までとは違う、快活なダンス用の音楽だ。中央にいた人たちは壁際により、新しくできた姉妹たちが、中央に進み出る。姉妹たちは手を取り、優雅にダンスを始めた。 

 なるほど、こういう仕組みなわけね――。まぁ、だいたい分かったから、もう退出してもいいかしら。

 私は、他人事のように眺めいると、ふと声を掛けられた。

「こんな所にいたのね、ナギサさん。私と踊ってくださらない?」  
「あら、ナギサさん。踊るなら、ぜひ私と」
「いいえ、私とよ。昼間のお話、考えてくれたかしら?」

 一人また一人と、周囲にお姉様方が集まって来る。私はいつの間にか、囲まれてしまっていた。

「えっ……いえ、私は――」
 周囲には、昼間、声を掛けてきたお姉様方たちもいた。

「ちょっと待って。私と踊りましょう」
「踊るなら、私がいいわ」
 答に詰まっている内に、どんどん人が増えて行く。

 考えてみたら、昨日から声を掛けられっぱなしで、全部で二十人以上いた気がする。ただ、全員、知らない人ばかりで、特に気になった人はいなかった。

「あ、あの……私は今回は、遠慮させていただきます」
 賑やかすぎて疲れてしまったので、今は一人でいたい気分だった。それに、私にはまだ、お姉様は早い気がする。

「なぜですの? ここで姉妹になっておいたほうが、絶対にお得よ」
「そうそう、これから先の昇進にも有利ですし」
「一流のシルフィードを目指すなら、必須ですわよ」

 お姉様方が詰め寄って来て、一斉に手を差し出した。

「いえ、ですから、その――」
 同期だったら『邪魔だからどいてくれる』の一言で済むのだが、流石にお姉様方に、それは言えない。失礼にならないよう、お断りするには、どうすれば……?

 私が困惑して固まっていると、別の声が割り込んできた。

「やぁ、美しいお嬢様方、ご機嫌麗しゅう」
 爽やかな声の主に、一斉に視線が集中する。

「ツバサお姉様!」
「ツバサさん!」
 タキシード姿のツバサお姉様が、笑顔を浮かべながら立っていた。

「少し、通していただいても、いいかな?」
 彼女が言った瞬間、人垣が左右に割れた。そのまま、こちらに向かってくる。

 私の前に立つと、
「実は、彼女と先約していてね」
 言いながら、右手を差し出してきた。

 周囲からは驚きの声が上がる。だが、一番、驚いているのは、私自信だ。もちろん、約束など何もしていない。でも、以前も似たような状況があった気が――。

「一曲、踊っていただけますか?」 
「……はい」

 私は一刻も早く、この状況を抜け出したかったので、思わず返事をしてしまった。だが、見ず知らずの人と踊るよりは、遥かにいいと思う。

 私は、ツバサお姉様に手を引かれ、ホールの中央に進んで行った。向かい合うと両手をとり、ゆっくりと踊り始めた。と同時に、周囲がざわざわし始めた。

 ナギサお姉様は、物凄く目立つうえに、社内でも大人気だ。その人と踊っていれば、こうなるのは当然だ。先ほどよりも、さらに目立ってしまっている。変に目立つのは、好きではないのに――。

「先日もそうでしたが、特にお約束は、なかったと思いますが?」
 私は小さな声で質問する。

「いやー、ただの方便だよ。みんなに囲まれて大変だったから、抜け出したくてさ。君も同じでしょ?」 
「確かに、そうですけど。ナギサお姉様は、楽しそうに見えましたが……」

 沢山の子に取り囲まれ、皆と話している姿は、とても楽しそうに見えた。私とは正反対で、とても社交的な人だ。

「あれは、ファンサービスだよ。向けられた好意を、無下には出来ないからね。もしかして、君のほうは、声を掛けないほうが良かったのかな?」
「いえ、助かりました……」

 何だかんだで、以前、同期と言い合いになっていた時も、さりげなく助けてもらった。しかも、絶妙のタイミングで。

 ゆっくり、流れるように移動しながら踊る。一応、ダンスの基本は知っているが、パーティーで踊るのは初めてだ。でも、ナギサお姉様が、上手くリードしてくれているお蔭で、問題なく踊れていた。何をやっても、器用にこなす人だ。

「ところで、提案なんだけど。僕と姉妹にならない?」
「えっ――はっ?! どうして、急にそんな話になるんですか?」

 ツバサお姉様は、何の前触れもなく、普通の会話のように切り出して来た。あまりに、唐突な発言だったので、一瞬、何を言っているのか、理解できなかった。

 彼女は、いつだって、色々と唐突な人だ。いきなり現れ、風のように去って行き、全くつかみどころがない。それにしたって、姉妹の件は、あまりにも、いきなり過ぎる話だ。

「だって、ナギサちゃん、まだレイアー契約してないんでしょ? それとも、先ほどの中に、意中の人でもいたのかな?」
「いえ、特には……。知らない人と、姉妹にはなれませんので」

 相手を知らないのでは、姉妹も何も、あったものではない。

「なら、いいじゃない。僕たち、知らない仲じゃないんだし」
 微笑みながら、サラッと言い放つ。

 それは、確かにそうだけど、軽すぎない? それに、何度か話したことが有るだけで。『知らない仲』というほど、親しくもないはずだけど――。

「何も知らないから、そんなことを言うんです。私は、かなり面倒な性格ですよ」
「全部、知ってる。ずっと見てたから」
「え……?」

 見てたって――掲示板に張り出されていた、成績のこと? 他のお姉様方も、皆それで声を掛けてきたのだと思う。結局、ツバサお姉様も、成績が優秀なら、誰でもいいってこと?

「几帳面で、ルール順守で、何事も自分の力でやりたくて。一度、決めたら絶対に曲げなくて、何事も正攻法で。ちょっと頑固で、気が強くて。なんか、僕とは色々反対だよね」

 ツバサお姉様は、流れるように言葉を紡いでいく。

 だが、言われたことは、ことごとく当たっていた。ほとんど話したことも無いのに、何でそこまで? というか、ツバサお姉様とは、全てにおいて、正反対な性格だと思う。

「そこまで知っていて、なぜ、私と姉妹になろうと思うんですか? ツバサお姉様なら、他にいくらでも選べるではないですか? もっと、素直で従順な子も、沢山いますし」

 自分の性格と、合う相手を選ぶのが普通だ。特に、妹を選ぶなら、素直な子のほうがいいだろう。相手がいないならまだしも、あれだけ人気があれば、誰でも選び放題だ。よりによって、これほど正反対な私を、なぜ……?
 
「僕はね、君みたいな尖った子、結構、好きだよ。それに、他の子たちは、やたらお世辞を言ったり、甘えて来たりするからさ。そういうの、実は、あまり好きじゃないんだ。君なら、そんなことしないでしょ?」 

「何があっても、絶対にしませんね」
 私は即答する。

 私はゴマをすることはしない。甘えたりなんてことも、絶対にあり得ない。でも『尖った子』って? そこまで酷いつもりは、ないんだけれど――。 

「それに、お互い姉妹ができれば、面倒事が減ると思わない?」
 ツバサお姉様は、私たちを興味津々に見つめている人たちに、視線を向けた。確かに、今後、今日のような面倒事は、二度と起こらないだろう。

「あー、あと、僕は束縛するのも、されるのも好きじゃないから。ナギサちゃんも、そうでしょ?」 
「……そうですね。どちらかというと、個人行動が基本ですし」

 何事も、自分のペースで動きたい。他人と合わせると、自分のスケジュールが狂ってしまうからだ。

「なら、いいじゃない。お互い、今まで通りに、行動すればいいから。もちろん、何かあった時は、ちゃんと協力するよ」

 自分で自由に行動できるうえに、お姉様まで出来るのは、物凄くありがたい。しかも、大人気の『スカイ・プリンセス』と、レイアー契約できるのは、願ってもないことだ。でも、そんなのが、姉妹関係と言えるのだろうか?

「そんな、あっさりした関係で、いいんですか? それでは、単に利害の一致だけの関係じゃありませんか?」

「それだけじゃないよ。もし、利害関係だけ求めたら、とっくに、他の子と契約してるから。君を選んだのには、ちゃんと理由があるんだ」

 理由って、さっき言ってた、尖ってるから? 気難しいのは自覚してるけど、全く嬉しくない褒め言葉だ。

「前にも、言ったじゃない。新しく入った子の中で、一番カワイイって。やっぱ、妹にするなら、カワイイ子がいいからね」
「――って、そんなくだらない理由ですか?!」

 相変わらず、本気で言ってるのか、ふざけているのか、さっぱり分からない。

「くだらなくなんか無いよ。ナギサちゃんだって、妹にするなら、絶対にカワイイ子を選ぶでしょ?」
「私は、絶対にそんな選び方はしませんよ」

 私はムキになって否定する。そんな、ふざけたことをする訳がない。

「そういうところが、カワイイんだよなぁ」
「なっ、茶化さないでください!」

 ツバサお姉様が凄いのは、私もよく分かっている。でも、話し方も考え方も、少し軽薄じゃないだろうか? 言葉も態度も、フワフワした感じがする。もっとも、性格が正反対なのは、お互いに理解しているけど。

「それで、受けてくれるかな? 僕と姉妹になる話」 
「……。あとで面倒臭くなって、後悔しても知りませんよ」
「大丈夫、大丈夫。面倒な性格なのは、お互い様だから」

 ツバサお姉様は、爽やかな笑顔を浮かべ、気軽に答える。

 まったく、本当に軽いわね。物凄く大事な話をしているのに。まぁ、悪い人ではないんだけど。

 ツバサお姉様は、ピタリと止まると、私の手を引きながら、見ていた人たちのほうに向きなおった。

 すると、私の手を持ち上げながら、
「みんな、僕の妹を紹介するよ。今後とも、僕と同様に、可愛がってあげてね」
 高らかに宣言した。

「ちょっ、ツバサお姉様?!」
 私は目立ちたくないし、まだ、話の途中なのに――。

 しばしの沈黙のあと、会場内から、盛大な拍手が巻き起こった。今日の中で、最も大きな拍手だった。

 全てにおいて、軽いノリで目立ち語り屋の姉。逆に、全てにおいて重くて、目立つのが嫌いな妹。素敵な姉を得たのは事実だけど。嬉しさよりも、不安のほうが、はるかに大きかった。

 はたして、ここまで世反対で、上手く行くのだろうか……? 


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次回 第4部・最終話――
『えっ……私の人生ってここで終わりなの……?』

 人生の不条理は、終わりではあり得ず、始まりでしかない
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