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「「かんぱーい!!」」


グラスがぶつかる音が響いてあたしも一口だけビールを口に流し込んだ。

「いやぁ、今日の合コンは当たりだな~」

「ほんとだよ!こんなに可愛い子達に出会えるなんてなぁ」

そう言って満面の笑みを浮かべる40代の男二人組。

「あたしも嬉しいですっ」

「今日は楽しみましょ!」

そう言って作り笑いをするあたしことナナミと友達のサチ。
久しぶりの合コンって聞いたから気合い入れて来たのにまたオッサンか。

「ナナミちゃん俺すっごいタイプなんだよなぁ~」

「…実はあたしもそう思ってましたっ」

「えー!まじ?ちょー嬉しいんだけど!」

腕を組んでニヤける彼の薬指には高そうな結婚指輪。

堂々と指輪つけて合コンに来るこの男は、かの有名な大学病院の医者らしい。
サチがどこで引っ掛けて来たのか分からないけど相手は超ノリノリだ。

チラッとサチに視線を送ると彼女はニヤニヤと笑みを浮かべている。

『金持ちだから媚び売っとけ』

多分、そういうこと。

終盤になって会話も盛り上がり、お酒もどんどん消えていく。

「ちょっとお手洗いに」

スリットのスカートを押さえて立ち上がり女子トイレに向かう。

扉が閉まったと同時に深いため息が漏れた。

「あーー!疲れたぁ…」

疲れたけど、うまくいきそう。
相手もかなり酔っ払ってあたしのこと何度か口説いて来てた。

大学病院の医者が20代の女の子引っ掛けて不倫してるなんて知れたら特大ネタ間違いなし。

しかも奥様は弁護士らしいし、こんなこと世間に絶対バレたくないだろうなぁ~。
そうなると、お金が絡んでくるんだよね~。

あたしもサチも今回の会はそれ狙い。

可笑しくて緩む唇にリップを塗り直す。

トイレの前で出待ちしてくれてないかな、そしたら話早くて楽なんだけど。

サチにラインをしてトイレを出た。

「あっ」

「おっ、ナナミちゃん~体調は平気?」

ラッキー。

「ここ二人で抜け出そうよ。すぐ近くのホテル予約したから」

耳元で囁く低い声。
腰に置かれた生暖かい手の感触が気持ち悪い。

「えぇ~?どうしようかなぁ」

上目遣いで彼を見つめて胸に手を当てた。

ホテルなんて行くかバーカ。
証拠作りなんてここで十分。

「やばっ…可愛すぎ」

彼の視線があたしの唇に移る。
まぁ、顔が多少イケメンってのが唯一の救いか。

「んっ…」

もう、興奮してるの丸わかり。

こんなところでキスしてきて
誰かに見られても知らないからね♡


パシャ。


「!?」

シャッターの音に男は驚き振り向くとサチがにっこりと笑ってスマホの画面を見せた。

「浮気現場ゲッチュ」

「なっ!お前何してんだよ!」

「そんな大声出したらもっと注目浴びちゃうけど大丈夫ですか?」

男の大きな声に周りの客がザワザワと騒めき始めた。

男が悔しそうに黙るとサチがあたしの顔を見てぷっと吹き出したからあたしもにっこり笑った。

「これSNSにあげたらすぐ拡散されちゃいますね。おじ様顔広いですもの、奥様にもすぐバレちゃうかも」

「…何が望みだ」

あたしとサチは目を合わせておっさんの耳元で囁いた。



「ふぅ~!あいつの顔最高だったね!」

「ほんと金持ちってチョロいよね~」

そう言って札束で顔を仰いだ。



ある男に言われたことがある。
こんなの詐欺だ、卑怯だろって。

確かに世間ではそうかもしれない。

でも、若くて綺麗な女に目が眩んで不倫しちゃうおっさん達も同罪じゃないの?


「次はどんな人見つけようかなぁ~」

「若社長待ってまーす」

23歳、未だにニートしてます。
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