革命の夜は二度来ない

白藤結

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一章(8)

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 その言葉に、アデライドは思わず周囲を見渡した。多くの人々が行き交い、笑っていて、賑やかな広場。ここもかつては戦場だったらしい。

(つまり、たくさん人が死んだってことよね?)

 そう思うとどうしてか寒気を感じてぶるりと身を震わせた。
 しかしエリクはどこか遠くを見つめており、アデライドの様子には気づかない。滔々と語りを続ける。

「当時革命軍は革命成功まであと一歩というところまで来ていて、ここで勝ったら革命は成功したも同然。だから多くの兵を出してきていて、対する王国軍もそれをわかっていたからかなりの勢力を投入してきた。……それで最終的に革命軍が勝った」
「ああ、だから〝革命広場〟なのね。革命軍が勝って、革命が成功したも同然だったから」

 アデライドの言葉に、彼はくすりと笑う。

「それもあるし、王族が処刑された場所――つまり長い長い革命が終わった地だからっていうのもあるな」
「……そうなのね」

 アデライドは少しもやもやしながら周囲を眺める。王族の処刑された地。それはつまり、アデライドの親族が殺された場所でもあるのだ。顔も声も、なにもかもを覚えていない親族ではあるが、それでも複雑な気分にはなる。
 そんな内心を悟られまいと意識して笑顔を浮かべていると、エリクは「そうなんだよ!」とどこか興奮したように言う。

「だからこの場所はこんなふうにいつも人がすごいんだ。たとえばあそこの銅像。見える?」
「え、ええ、見えるわ」

 突然テンションの高くなったエリクに、戸惑いながらもそう答える。いったいどうしたのだろうと思うが、止める暇もない。彼は若干早口になりながら説明をしてくる。

「ああいう銅像がこの広場のあちこちにあって、それは全部、革命の途中で命を落とした指導者のものなんだよ。志半ばで亡くなってしまったから、せめて銅像の彼らに今のこの国の様子を見せようと、みんなこの広場に集まるんだ」

 そう言うエリクの瞳はキラキラと輝いていて、革命の指導者に憧れているということが見ているだけでも伝わってきた。
 だけど。
 アデライドはそっと首を傾げる。

「……随分と慕われているのね」

 そのことが不思議だった。アデライドはずっと、革命の指導者は人々を騙し、欺き、利用した、残虐な人たちだと教えられてきた。そんな人たちが人々に慕われているなんて、疑問を抱かずにはいられない。
 しかしエリクは革命の指導者をそう思っていないのだろうか、「それはそうだよ」と溌剌とした様子で言う。

「なにせ俺たちのヒーローだからな! 男なら誰もが彼らのようになりたいって思うもんだよ」
「そう……」

 今まで教えられてきたこととエリクの言葉の違いに、アデライドは大混乱に陥っていた。
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