上 下
156 / 226
運命の鐘を鳴らしましょう

今までの話をしました

しおりを挟む
アンティーブ国の国王陛下の私室・・・ではないけど、ごく親しい人たちと語らう応接室みたいな部屋に通されました。
いや・・・普通の屋敷の応接室の3倍ぐらい広いけど・・・ね。

参加者は、アンティーブ国からは国王陛下と王弟クリストフさんと宰相さん。
宰相さんは、鼻眼鏡をちょこんと乗せたネズミ系?うーんと・・・、あ・・・モグラの獣人だわ。
あとは護衛の近衛騎士が数名。

トゥーロン王国からはヴィクトル兄様と兄様の従者のユーグ。
彼は狼獣人らしいけど、神狼族のリュシアンが気になるみたいで、チラチラと盗み見てます。

私たちは全員参加で、カミーユさんも。
みんなの前には、温かい紅茶と一口ケーキ、プチフールが各種。
ルネとリオネルは、いただきますした後すぐに手を伸ばし、あぐあぐと堪能してますな。

「ふむ。トゥーロン王国では、そのようなことが起きていたのか」

流石にトゥーロン王国の広間で起きた惨状を、当事者のヴィクトル兄様に説明させるのは非道かなぁと思い、アルベールに頼みました。
いや、従者のユーグ君に頼んでもよかったんだけど、彼もあのときあの場所に居たらしいから、でもねぇ。

「すみません!自分はそのとき・・・あのぅ・・・気になる気配つーか匂いを追って、殿下のお側を離れていまして・・・何がなんだかわかりませんでした!」

と元気よく告白してくれました。
役立たずめ!
ちなみに、その気配?匂い?って神狼族のリュシアンのことかな?
こっそりリュシアンを指差してみせると、ユーグ君はちょっと青い顔でコクコクと頷いた。

「そして、ザンマルタンたちの目を搔い潜り、私たちは王宮にあった奴隷魔法陣を壊して逃走しました」

あー、話し疲れたとアルベールはグビグビ紅茶を飲む。
でも、その言葉の破壊力は凄まじく、みんなが、「えっ!?」と驚いた顔でフリーズしてますよ?

「そうよ。トゥーロン王国の王族が所有していた亜人奴隷は全員解放されたわ。あとは貴族や金持ちが個人所有している亜人だけよ。ちなみにリシュリュー辺境伯の奴隷兵団は辺境伯と奴隷契約を結んでいない自由な亜人たちよ」

主に獣人騎士団だが、オルタンス様の話だと魔法が得意なエルフ族を中心にした魔法兵団や、武器を作ったりメンテナンスをするドワーフ族の鍛冶集団もあるらしい。

「それと、王都の冒険者ギルドには複数の亜人たちが匿われていて、そこのギルドマスターロドルフを中心に亜人奴隷解放軍は動いているぜ」

「・・・・・・」

トゥーロン王国の王族のほとんどが亡くなっている状態も想像できなかったんでしょうけど、まさか亜人奴隷の実質的解放がされているなんて思わなかったんでしょうね。

「ただ・・・、王宮で解放された亜人の中には逃げるより反撃に出た奴もいた。そいつらは・・・たぶん。あとは、状況が分からずにミュールズ国へと逃げていたら、まあ・・・最悪ビーストの素材になってるな」

またまた、ビクンと反応する私たち以外の人。
アルベールがプチフールに舌鼓をうつのを止めて、またまた説明をし出す。
今度は、トゥーロン王国とミュールズ国の関係と、帝国に売りさばいていた亜人奴隷のシステムについて。
いやぁ、話が長くなっちゃうね!










「待て!待て待て!え?何がどうなっているんだ!」

バァーン!とテーブルを両手で叩いて、思わず立ち上がってしまうクリストフさん。
陛下も頭を抱えて唸っている。

正直、ルネとリオネルと何故か兄様の従者のユーグ君だけが、美味しそうにプチフールを呑気に食べて続けている。
あ、私もか!

「・・・やっぱり、ミュールズ国は、我が国を利用していたのか・・・」

ヴィクトル兄様の苦し気な声・・・でも呟いた内容は無視できませんよ?

「兄様は知ってたの?ミュールズ国が亜人奴隷売買の元締めだって?」

俯けていた顔を少し上げて、話すかどうか僅かな時間、逡巡する。

「そうだね。もう全て話してしまおうか・・・。情報以外にアンティーブ国に差し出せる物が無いし、ベルナールからの援護は期待できないし」

そうして、ミュールズ国の内情を、私たちも知らなかった内情を話し出した。
ミュールズ国の最大権力者は退位した元王様で次が息子であり現王様のふたり。
このふたりは、どうも悪人面らしくあまり国民に人気がないそうだ。

でも、ミュールズ国は貧困国に援助したり、少数民族の保護を申し出たり、孤児院なんかも国営で多く運営していると、周辺国からはとても評価の高い国だ。
連合国や他の小国とも同盟を結び、大国としての責務を十二分に果たしている・・・と思われている。

実際、国力では拮抗しているアンティーブ国は、ミュールズ国に対して尊敬の念は持っていたっぽい。
ただ、かの国の高位貴族や王族からは度々「人族第一主義」の言動が見られ、警戒はしていたらしい。
まさしく、その対応で大正解!野性の勘かしら?

「私の意見ではないが、前国王は金満家で贅沢に塗れ、現国王は吝嗇化で陰険陰湿の質らしい。見かけもそれらしく、前国王は肥満で現国王は痩身とタイプが違う。共通しているのは・・・人族第一主義だ」

「そう言われれば、ミュールズ国の王族と高位貴族は人族しかいねぇな」

顎を摩りながらクリストフさんが、陛下に同意を求めると、陛下は重々しく頷く。

このアンティーブ国は獣人が人口の7割以上を占めるのに、獣人の貴族は半数もいないんだって。
高位貴族には、人族もエルフ族もドワーフ族もいるし、騎士団には鬼人族もいるってあとで教えてもらったわ。
クリストフさんが「獣人は面倒を嫌がるからな、貴族なんてやる奴は滅多にいないんだよ」と肩を落としていたけど、貴方も王族嫌って冒険者してましたよね?

「ヴィクトル殿下は、随分とミュールズ国にお詳しいのですね?ザンマルタン家との癒着は知っていましたが・・・なぜ?」

「・・・。異母姉のエロイーズがミュールズ国との縁談を断り、私の妹であるリリアーヌがミュールズ国の第2王子と婚約することになりました。その縁で王子ふたりと交流を持つようになりました」

ミュールズ国からの婚約打診を断るって、エロイーズってバカなの?
ユベールの姉はバカなの?バカ王子の姉はバカ王女なの?
ミュールズ国の傀儡であるトゥーロン王国の王族が、「断る」って・・・できるわけないじゃん。

「いや、エロイーズは結婚する第2王子が臣籍降下するのが気に入らなくてね。王族でいたいって我儘を言ってミュールズ国の王太子と婚約させろって騒いだんだよ。だから、ミュールズ国からリリアーヌに変更するよう命じられてね」

おぉう、悪逆非道なミュールズ国もバカ王女はいらないって?そりゃそうだ。

「じゃあ・・・そのミュールズ国の王子ふたりって言うのが、ヴィクトル兄様の切り札なのね?」

核心には、ズバーッと切り込ませていただきますよ!
まだまだ、密談は続くんだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

第五皇女の成り上がり! 捨てられ皇女、皇帝になります

清家未森
ファンタジー
後宮でくらす見捨てられた第五皇女・ユーゼリカは弟を養うため、趣味と実益を兼ねた節約貧乏生活を送っていた。幼い時に母を亡くし、後ろ盾のないユーゼリカたちは他の皇子皇女にも嘲笑われる立場。そんな中、父である現皇帝は、後宮中の皇子皇女を集め、『これから三年の後、もっとも財を築き、皇宮を豊かにした者』を次期皇帝にすると宣言。戸惑う彼らの中でまっさきに手を挙げたのはユーゼリカだった。しかもその方法は――人材育成!? 次代の天才を育成し、彼らにがっぽり稼いでもらうため、おんぼろ屋敷を買い上げ、寮経営を始めたユーゼリカだったが、集まったのは奇人変人ついでに美形の曲者ぞろいで……!?

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。