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運命の鐘を鳴らしましょう

クリストフさんと仲良くなりました

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それから、ターバン男改めクリストフさんは私たちと勝手にすっかり馴染み、3日と空けずに一緒にご飯を食べお酒を酌み交わす仲になっている。

え?なんで?
特にリュシアンと馬が合うらしく、お酒が進むとふたりで肩を組んでガハガハと笑ってやがるわ。
どうやらクリストフさんは高ランク冒険者らしく、アルベールとは顔見知りだったみたい。

「そんなには知りませんよ?同じ依頼を受けたこともありませんし。あちらが目立つ方なので知っていただけです」

とか言ってたけど・・・。
しかも、しばらくはお店で食べて飲んでいたのに、リオネルが「ヴィーのごはん・・・」とか呟くから興味を持ったクリストフさんが「食べたい!」となって、宿屋の部屋で酒盛りになったわよ!
ぐぬぬぬ、リオネルのおバカ!

ちゃんとお仕置きしましたよ?
「クリストフさんが食べる分のお肉は、リオネルの分を分けてあげてね~」と言ってやったわ。
ガァーンとわかりやすくショックを受けていましたが、知りません。

「あ?お嬢。部屋が酒臭くなるってクリーン魔法かけりゃいいじゃねぇか。いつもあちこち無駄にかけてんだから」

「・・・・・・」

リュシアンの奴め~、部屋の臭いは取れても、アンタの体から溢れる酒臭さはクリーン魔法じゃ取れないのよ!
え?怒ってませんよ?にクリーン魔法をかけていると思われていたことに、怒ってはいませんよ?
ただ、ちょっとリュシアンお兄さんが臭かったのでお風呂場に閉じ込めましたが?
熱湯風呂からもうもうと蒸気が立ち込めて汗をびっしょりかいて、どこの貧相な犬かと思うほど濡れそぼったリュシアンが出てきて、大笑いしましたが?
その後、リュシアンとリオネルが土下座してきたから、溜飲はさがりました。
ま、クリストフさんも悪い人じゃないし、しょうがないよね。

と、クリストフさんは今日も酒瓶担いで私たちの部屋を訪ねてきました。

「あ?なんで東ギルドを利用しているかって?」

「うん。カミーユさんが高ランク冒険者はお金持ちだから王都ギルドを利用するって言ってたよ?それに・・・」

東ギルドの依頼は、あまり実入りが良くない依頼ばかりと聞きましたが?

「あー、確かにゴロツキもどきが日雇いでやる仕事とスラムのガキのお遣い程度の仕事が多いなぁ。でもな、厄介な仕事も多いんだ。それは・・・金になる」

指でお金のポーズを取ってニンマリと笑って見せるクリストフさん。
ああ・・・なんか・・・そんな・・・ヤバい仕事ねぇ・・・。
ちょっと、遠い目をしてしまいました。

「王都の裏も知っているクリストフさんにお聞きしたいんですが、王都の治安とかどうでしょうか?リオネルたち子供が住むにはどうですか?」

定住場所を探している私たちが必要とする情報を収集しようとする素面なセヴラン、偉いわ!

「うーん、場所によるわな。つーかリオネルに危ない場所なんてあんのか?むしろこっちが危ないわ」

「・・・拠点になる所を探しているんですよ。あちこちフラフラするのもいいですが、住む所を決めて旅をするのもオツでしょう?」

「そうだな。高ランク冒険者の半数はそんな感じだ。所帯を持つ奴もいるしな。物価と税は高いが王都はなかなかお勧めだぜ」

そしてセヴランとクリストフさんで始まる質疑応答が、どこかの市役所の窓口みたいで面白い。
ふと、見回すと、お酒を飲んで上機嫌だったリュシアンも、静かに端っこで飲んでいたアルベールも、みんな興味津々でふたりの話を聞いている。
うーん、王都に家を買うかぁ・・・、便利そうだけどなぁ・・・。










「よおっ!久しぶりじゃねぇか、エルフの旦那」

「誰が旦那ですか・・・貴方の方が年上でしょうに」

「ああん?そんなに変わんねぇだろう」

執務机から立ち上がり、私を部屋に迎え入れて、ソファに座らせると・・・昼間からお酒ですか?
この男、「王都東ギルド」のギルドマスターを勤める私の昔馴染みの獣人は・・・ここアンティーブ国ではそれなりの地位にいる。

「乾杯しようぜ」

「なにに、ですか?」

「そんなん決まってらー、エルフの旦那の冒険者復活祝いだよ!アラスのヴァネッサ姐さんから伝達は来てたが、やっぱりこの眼で確認しないとな!いやぁ、目出度い!」

私の座った真横に奴も腰を下ろし、馬鹿力で肩を抱きドボドボとコップに酒を注ぐ。
この琥珀色のお水は、かなりアルコール度数が高そうですけど?
躊躇する私を無視して、自分のコップにもたっぷりと注ぎ、カツンとコップ同士を合わせた後、ごきゅごきゅと一気に飲み干した。

「ぷはぁっ、旨い!んで、どうすんだ?火竜でも倒しに行くか?それとも氷山に生息すると噂のフェンリルでも探しに行くか?」

ワクワクと子供のような顔で尋ねてくるが・・・。

「行ってもいいですけど、貴方も付いてくる気ですか?」

「当ったり前だろう。そうなったらこんなつまんない役職は放り出して行くわ!Sランク冒険者に戻ってお前と。あ、ヴァネッサたちにも声をかけようか?」

・・・呆れた。

「行きませんよ。あと、ヴァネッサたちを巻き込むのも止めなさい」

私はちょっと彼から距離を取って座り直し、コップの中の酒をひと口だけ含む。
・・・キツイですね。

「なんか他に面白いことでもあんのか?あぁ、そういえば、アンタ、弟を探しに行ってたんだっけ?」

「そうですね。今は目が離せない子がいるので、貴方の遊びには付き合えません」

私は彼たちと離れた後に起きたことを説明した。
弟の死とトゥーロン王国に侵入したこと、弟の子供を庇護していること。

「なんつーか・・・大変だったんだな」

ゴクッと何杯目かの酒を呷る彼の眼には、トゥーロン王国に対する憎しみが見える。

「んで、どーすんだよ。そのちびっこの面倒をずっと見るのか?それとも俺のツテで養子先でも探して欲しいのか?」

そうですね。
貴方たちの知っているエルフのソロ冒険者アルベールなら、そんな世話のかかる姪っ子などすぐに手放すでしょうね。
私は緩く頭を振り、自分でも気づかない柔らかい表情で告げる。

「いいえ。私が育てます。一緒に育ててくれる者、育てなければならない者が居て・・・そう、家族になったので」

「は・・・はあああぁぁっ?ア・・・アンタが・・・家族って・・・」

ちょっと、そんなに驚かなくてもいいですし、人の事を指差さないでください。
えいっ。
ボキッ。

「いてーっ!いてててて・・・。おまっ、指を変な方向に曲げようとすんなっ!」

指を押さえて涙目で何か言っているが、知りません。
そうそう、ここに来た目的を忘れるところでした。
流石の私も昔馴染みに会って、心が浮き立っていたようです。

「ところで、探している方がいるのですが・・・内密に」

「あん?なんだよ、依頼か?」

「いいえ・・・貴方も知りたいはずですよ。私が探しているのは・・・貴族に客分として王都に招かれている獣人です」

「・・・そんなのいっぱいいるだろうよ。種族は?」

私は彼と目を合わせヴィーが「黒い」と評する笑顔を浮かべ。

「獅子族です。貴方、王弟クリストフと・・・ね」



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