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人助けをしましょう

畑と果樹園を作りました

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ふうっ。
息を吐いて気分を切り替えよう。

もし帝国内に不穏な動きがあって、こちらの国々に災いを振りまこうとしているとしても、ただの冒険者の子供である私にできることは、ない。
もちろん、仲間に危害を加えられようとするなら、徹底抗戦するけれども!

今は、この国のお偉い人や冒険者ギルドの人たちに任せよう。
アルベールもリュシアンも気にはなっているみたいだけど、気持ちの切り替えはできているようだし・・・て、アルベールの奴、今度は桃のパフェ食べてやがるわね?

「アルベール、食べすぎよ!ルネとリオネルにも毎日食べたり、一気に何個も食べることを禁じているのに!」

あんた、横に座っているふたりの顔を見てみなさい!
もの凄い凶悪な顔で睨んでいるわよっ。

「まあ、味見ですよ。ルネやリオネルと違って、私は味の違いがわかりますからね」

ふふーんと鼻を鳴らして得意げにスプーンを口に運ぶ。
そして、にんまり。

「・・・で、どうよ」

「美味しいですよ。見た目も綺麗に飾られていますし。確かに商人や貴族の女性に人気がでるでしょうね。あとは・・・生クリームの固さにバラつきがあるので、作り手にはもう少し頑張ってもらわないと」

パフェグラスを目の高さまで掲げて、偉そうにそう言うと、ローズさんがやや眉を下げて「頑張るよ」と苦笑い。

冒険者が少しずつリュイエの町に戻ってきて、もうしばらくすれば商人たちも王都への旅路にゴダール男爵領地を通るようになるだろう。
・・・ここまで、よくやったわ、私・・・というか・・・ゴーレムが。

芋料理を作って人を呼び込むと決めたのはいいが、やっぱり痩せた土地で芋が安定供給できるのか?が問題だった。
もう、使ってない土地や、ナタンたちの悪行のせいで町を出て行った人たちの畑も使って、大きな芋畑を作ることにした。

多少、町民の方たちには移転をお願いしたが、みなさん快く移動してくれた。
まあ、この芋畑が稼働すれば、畑で芋を育てる農家と屋台で芋料理を作って売る人と雇用が増えるし、そうなれば自分たちの生活も少しは楽になるからだろうけど。
男爵夫人のブリジット様が、一軒一軒町民さんの家を訪ねて説得してくれたことも大きいと思う。

そして、芋を二期作で作ることにもチャレンジする。
・・・というかもともと放っておいても二期作だったらしいんだけど、今後は売り物としていくから品質は揃えないとね!
じゃがいもの他にも薩摩芋や山芋とかも栽培する予定だ。
いや、これも放っておいても実るらしいんだけど・・・安定供給を目指すのよ!

んで、私が何をしたかというと、類まれなる魔法使いである私の土魔法で土地を耕してあっという間に畑に変身させる・・・つもりでした。
これを、頼んでもいないのにゴーレムたちがやりました。

しかも土に魔力をたんまりと含ませて耕したせいか、種イモを植えて見る見る間に収穫できるまで育ちました。
なんでや。

しかし、ここで長生きエルフのアルベールが言うには、魔法で植物を急成長させるのはあまりお勧めしないということ。
最初の一回は、普通に育てたものより良い物が育つらしいが、回数を重ねるごとに劣化していき、最終的には土地が死ぬらしい。
私とゴーレムたちはその教えを聞いて、残りは地道に育てることにしたのだ。
まあ、ゴーレムが土に潜って耕しているけども・・・。

とりあえず、今回は魔法で育てた芋がめちゃくちゃ収穫できたので、なんとか次の芋の収穫までは不足することはないだろう。

そしてゴーレムを何体か芋畑に残し、次に着手するのは果樹である。
ここで誤算がひとつ、ゴダール男爵領地に生えている果樹の種類と本数はゴダール男爵領地の誰も把握していなかった。
つまり、誰も果実を気にしていなかったのだ・・・。
たまに果実が生っているのを捥いで食べているぐらいで、意識してなかったらしい。
・・・そんなものなのかな?

なので、私たちは手分けして果樹の種類と本数を調べてまとめて、痩せた土地でありながらも果樹に適した所へ植え替えた。
その中で野苺とかもあったから植え替えて、ついでに前世で食べ慣れた苺の苗もアラスの町で買ってきた。
果樹園と苺畑を作り・・・。

うん、ごめん。
これもゴーレムがボゴッと大木だろうが低木だろうが根っこから引っこ抜いて、グサッと土に差して植え替えた。
しかもゴダール男爵領地内の果樹だけでなく、例のゴブリンの巣があった森まで出張して果樹を運び、グサッと差した。

それを見たときは、目が飛び出るほど驚いたわよ!
私はそんな命令していないし、一体で一本ずつ運んでくるって、どんだけ力が強いのよっ!
しかも木の周りをゴーレムたちが手を繋いで囲んで、クルクル回りながら踊ると、季節を無視して果樹に果実が実り始めて。

「ああ・・・また魔力で・・・」

と、アルベールががっくりしていたけど、最初に作った物は良い物ができるなんて教えちゃうからだよ。
だからゴーレムたちは最初は魔法で栄養を与えて作ろうと知恵が付いたと思う・・・けど、そもそもゴーレムに知能ってあるの?

そんなこんなで、芋とフルーツは準備万端!

ブリジット様のご実家の牧場も拡張して、バターも生クリームも牛乳もチーズも作りまくれるよう工場も突貫工事で完成させました!

それらを作るために必要な冷却装置だとか、撹拌装置だとかは、私の天才的魔道具作りが唸り最高品質を最短時間で作れるようにし、ガストンさんたち鍛冶師が樽とか保存庫だとかなんかいろいろと涙目になって作ってた。

当然、職を失くした町民や親がいない孤児とかをたんまり雇い入れ、みんな死んだ目になって働いてました。

意外とブリジット様はご実家に厳しくて、金銭的援助は他の方たちと同レベルのままなのに、目指す生産量は最大値ギリギリを提示していた。

かわいい愛娘から、にっこり笑顔で無理を言われたお父様は、シクシク泣きながら牛の乳を搾っていたとか。

不思議なのはゴーレムたちはこちらの牧場にはノータッチ!
結果、芋畑に3体、果樹園に5体、ゴダール男爵邸に1体の配置になっている。
なんで、エミール君の子守りにゴーレムが付くのか、そのときはわからなかったのよねぇ。

「お嬢、そろそろガストンさんの親父のところに行こう」

「ああ、うん。そうしましょうか」

私たちはローズさんに別れを告げて、ちゃんとスイーツのお金は支払ったわよ?ガストンさんにリュシアンたちの武器を作るのに必要な鉱石と採れる鉱山の情報を聞きに訪ねて行くのだ。

このゴダール男爵領地には、順調に人が戻ってくるはず。
その頃には、私たちは新しい町へと旅立つだろう。

ちょっとワクワクして、ちょっと寂しい・・・そんな気持ち。


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