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弱虫くんと騎士さま
弱虫くんと過去
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*
物心ついた頃、僕は施設にいた。
そこでの生活が普通だと思っていた。
小学校に入学して、それは普通ではないんだって初めて知った。
クラスメイトの心無い言葉によって……
『アイツ、犯罪者の子どもなんだって』
みんなからの視線。
あの時のことは、今でも覚えている。
すごくすごく怖かった。
足が震えて、息ができない。
今まで友達だと思っていた人たちは全員、僕から離れていった。
その日から僕は無視されるようになった。
大人の前では我慢して笑っていた。
その生活も、彼が現れてから一変した。
「菊地 隼人です。よろしくお願いします」
ふわふわした髪の綺麗な男の子。
転入してきた彼は、僕の隣の席になった。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
「え、えっと…」
「そいつは犯罪者の子どもなんだぜ?」
「だからなに?」
「な、なにって…怖くないのかよ」
「なんで? だってなにもしてないんでしょ? 全然怖くないよ」
「……変なやつ」
クラスメイトに変な目で見られても、彼は僕に話しかけることをやめなかった。
「名前、教えて」
「大和田 優那」
「よろしくね! 優那」
嫌われ者の僕にしっかり向き合ってくれたのは、彼だけだった。
*
僕と隼人はどんどん仲良しになっていった。
隼人と過ごす時間は、すごく楽しくて幸せだった。
「あのさ、優那」
「なに?」
ある日、ジャングルジムの頂上で隼人は僕に言った。
「俺、優那の騎士になるよ」
「騎士?」
「優那を守るかっこいい騎士」
「急にどうしたの?」
「俺は優那とこれからもずっと一緒にいたいんだ。ダメか?」
「……ううん。ダメなんかじゃないよ。僕だって隼人と一緒にいたいもん。これからもよろしくね! 騎士さまっ!」
それから隼人は僕の騎士になった。
困っている時に必ず助けてくれる騎士。
たとえ、自分の身が危険にさらされようと……
はじめはかっこいいと思っていた。
でも、だんだんと嫌になってきたんだ。
自分の身を守ることができない弱い僕に対して。
物心ついた頃、僕は施設にいた。
そこでの生活が普通だと思っていた。
小学校に入学して、それは普通ではないんだって初めて知った。
クラスメイトの心無い言葉によって……
『アイツ、犯罪者の子どもなんだって』
みんなからの視線。
あの時のことは、今でも覚えている。
すごくすごく怖かった。
足が震えて、息ができない。
今まで友達だと思っていた人たちは全員、僕から離れていった。
その日から僕は無視されるようになった。
大人の前では我慢して笑っていた。
その生活も、彼が現れてから一変した。
「菊地 隼人です。よろしくお願いします」
ふわふわした髪の綺麗な男の子。
転入してきた彼は、僕の隣の席になった。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
「え、えっと…」
「そいつは犯罪者の子どもなんだぜ?」
「だからなに?」
「な、なにって…怖くないのかよ」
「なんで? だってなにもしてないんでしょ? 全然怖くないよ」
「……変なやつ」
クラスメイトに変な目で見られても、彼は僕に話しかけることをやめなかった。
「名前、教えて」
「大和田 優那」
「よろしくね! 優那」
嫌われ者の僕にしっかり向き合ってくれたのは、彼だけだった。
*
僕と隼人はどんどん仲良しになっていった。
隼人と過ごす時間は、すごく楽しくて幸せだった。
「あのさ、優那」
「なに?」
ある日、ジャングルジムの頂上で隼人は僕に言った。
「俺、優那の騎士になるよ」
「騎士?」
「優那を守るかっこいい騎士」
「急にどうしたの?」
「俺は優那とこれからもずっと一緒にいたいんだ。ダメか?」
「……ううん。ダメなんかじゃないよ。僕だって隼人と一緒にいたいもん。これからもよろしくね! 騎士さまっ!」
それから隼人は僕の騎士になった。
困っている時に必ず助けてくれる騎士。
たとえ、自分の身が危険にさらされようと……
はじめはかっこいいと思っていた。
でも、だんだんと嫌になってきたんだ。
自分の身を守ることができない弱い僕に対して。
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