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しおりを挟む「すごい! 綺麗だね!」
「俺のお気に入りの場所なんだ」
「……紫苑くんのお家はこの辺りだったの?」
「うん」
お気に入りの場所、か。
そんな特別なところを私に教えてくれるって、なんか自分も特別な存在だって思ってもらえてる気がして……嬉しい。
私の思い込みだろうけど。
「……さん。お姉さーん」
「ど、どうしたの?」
「お姉さんこそ、ぼーっとしちゃって…大丈夫?」
「大丈夫だよ」
今日は紫苑くんに心配ばかりかけてるような……
「お姉さん、手だして」
言われた通りに紫苑くんのほうに手を出すと、指を絡めて恋人繋ぎをしてきた。
驚いて彼の顔を見る。
「ほら、あったかいでしょ?」
「う、うん」
全身が熱くなる。
なんだか恥ずかしくて、私は下を向いた。
「顔を上げてよ」
ドキドキしすぎて、そんなの無理だって。
彼はめげずに「お願い!」「明日はお姉さんの好きなもの作ってあげるから!」と、私を説得し続けた。
モノで釣ろうなんて、私は子どもじゃないからね!!
でも……
「……侑李ちゃん」
初めて名前を呼ばれた衝撃で、あんなに拒んでいたのに思わず顔を上げてしまった。
「やっとこっち向いてくれた!」
「い、今…名前、」
「侑李ちゃん」
もう一度名前を呼んで、私をそっと抱きしめた。
「紫苑、くん?」
「俺、侑李ちゃんのことが好きだよ。今の不思議な関係じゃなくて、侑李ちゃんの彼氏になりたい」
「……私、27歳だよ? 紫苑くんにはもっと素敵な人がいると思う」
「年齢差なんて関係ない。俺は侑李ちゃんが好き。この気持ちだけじゃ、ダメ?」
そんなこと言われたら……自分の気持ちに気づかないフリをしてきたのに、我慢できなくなるよ。
紫苑くんと一緒に暮らし始めてから、毎日が楽しくて……
いつの間にか、2人で過ごす時間がずっと続けばいいなって思うようになってた。
本当はずっと伝えたかったんだ。
「ダメじゃない。だって、私も…好きだから」
そう言って彼の背中に手を回した。
「ありがとう。侑李ちゃん」
夜の静寂の中に2人の鼓動だけが響いていた。
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