10 / 70
1話 まりあの恋慕
魔法、少女……?
しおりを挟む「何それ、変な名前……。今つけたでしょう?」
「僕ら魔法生物はみんながみんな、生まれつき固有の名を持って生きるわけじゃないんだ。必要に応じて適当に名乗っているだけ」
「ふうん?」
「だから好きに呼べばいい。綿あめでも白饅頭でも、何でも構わないよ」
冗談か、それとも自虐か。
何となく理解したつもりで、まりあは小首を傾げつつ、よく分からないことについてはひとまず後に回した。
かがみんがひと心地ついた頃合いを見計らって、床に降ろしていた腰を上げ、ぐっと身を乗り出す。
「で? で? あなた、さっきなんて言ったけ。私のお願いを叶えてくれるー、とかなんとか」
「そうだよ」
至極明快な肯定。
まりあは、見開いた瞳にお星さまを輝かせた。
「うわあー、本当に? 本当に、私お兄ちゃんを悩殺できるくらいナイスバディになれる?」
「なれるよ」
「やったー!」
両手を天に、嬉々としたはしゃぎ声を上げ、一通り喜びを爆発させる。
素早くかがみんを掴み上げ、間近に迫って、目を爛々と輝かせる。
「どうやって? どうやればいい? 何をすればいいのか教えて!」
「まずは落ち着こうか。君は大らかな上に喰いつきがいいね。まあ、嫌いじゃないよ」
柔らかい肉球で額を小突かれ、まりあはようやく振り回していたかがみんを床に降ろしてやった。
かがみんは「やれやれだ」と肩をすくめて、乱れた体毛を簡単に毛づくろい。
ブルブルと頭を振って意識を切り替え、声色を改めて本題を切り出す。
「さて。待ちきれない様子だし、さっさと君の疑問に答えるとしようか、まりあ」
そう前置きするかがみんの前で、まりあは居住まいを正して拝聴の姿勢。
ただし、顔は盛大ににやけている。
「どうやって君の願望を叶えるのか。答えは魔法の力を使うのさ」
「魔法?」
まりあは、途端に眉根を潜めた。
「魔法って、あれでしょう? アニメとかで女の子が空飛んだり、ビーム打って町ひとつ壊滅させるやつ」
「その二つはだいぶジャンルが異なるけれど、まあそういう認識で良いんじゃないかな」
かがみんは、こほんと咳払い。
話を戻す。
「僕の持っている魔法の力を君に授けよう。君も、そのアニメの中の女の子と同じように魔法少女になるんだよ」
「魔法、少女……? どうやって? あれって全部作り物でしょう?」
「逆さ。太古の昔から当たり前のように存在している力を、君たち人間は作り物として認識しているだけ」
「……よく分かんないけど。そうなんだ」
「君は大らかというより大雑把なんだね。まあ、悪いことじゃないよ」
まりあの無関心は軽く受け流して、かがみんは改めてまりあの心に問いかける。
「まりあ、僕と契約して魔法少女になってみないかい?」
蒼色の瞳が、まりあの思考を絡め取るように一瞬だけ煌めく。
「もちろん強制しているわけじゃあない。けれど、まりあ。話くらい聞いてみても―――」
「なります! ください魔法の力。ぜひ! 今すぐに、さあっ!」
「……ひとまず落ち着いてもらってもいいかな」
再び振り回され始めたかがみんは、早くも慣れた様子でまりあを窘めた。
無事に床に降ろしてもらい、少々不思議そうな面持ちでこちらを見上げる。
「随分と前のめりだけど、少しは困惑したりしないのかい?」
「んー? だって細かいこと聞いたってよく分かんないだろうし。お願い叶えてくれるのならそれでいいかなって」
「素敵な考え方だね。だけど、最後まで聞いてもらってもいいかな」
「まだ何かあるの?」
「何もかもが説明不足だよ」
言って、かがみんは説明を始めた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
全ての悩みを解決した先に
夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」
成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、
新しい形の自分探しストーリー。
ハッチョーボリ・シュレディンガーズ
近畿ブロードウェイ
SF
なぜか就寝中、布団の中にさまざまな昆虫が潜り込んでくる友人の話を聞き、
悪ふざけ100%で、お酒を飲みながらふわふわと話を膨らませていった結果。
「布団の上のセミの死骸×シュレディンガー方程式×何か地獄みたいになってる国」
という作品が書きたくなったので、話が思いついたときに更新していきます。
小説家になろう で書いている話ですが、
せっかく アルファポリス のアカウントも作ったのでこっちでも更新します。
https://ncode.syosetu.com/n5143io/
・この物語はフィクションです。
作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、
特定の事件・事象とも一切関係はありません
・特定の作品を馬鹿にするような意図もありません
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
人工子宮
木森木林(きもりきりん)
SF
この小説は、産婦人科専門医・生殖医療専門医でもある筆者が、人工知能マッチングや人工子宮という架空設定を持ち込んでいますが、現在の産婦人科医療や不妊治療をベースに書きました。
昨今、結婚されない人も増え、また男女とも結婚が遅くなり、挙児を希望しても妊娠しにくいカップルも5組に1組と増えています。
妊娠しにくい原因は色々と考えられますが、「女性加齢」も原因になり、35歳くらいから妊娠率は低下し、流産率が上昇します。これは卵子数の減少と質的低下によるものと考えられます。
体外受精など生殖補助医療による出生児は29216万9797人であり、国内総出生児に対する割合は8.6%(11.6人に1人)になっています。
もちろん「妊娠出産しなければならない」ことはないのですが、「妊娠出産しやすい」「子育てしやすい」環境に向け、私達はどうしたらよいのでしょう?まずは、妊娠出産、不妊治療のことを知っていただきたいと書きました。
挿し絵は医学生時代からの友人「kinZoさん」が描いてくれました。ありがとう!
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる