ゆかりさんとわたし

謎の人

文字の大きさ
上 下
39 / 79
2話 ゆかりさんとわたしと、洋館にて

また三つ?

しおりを挟む
 
 
 ふう、とひと息ついたわたしへ、ゆかりさんがお茶を注いだ湯呑を差し出してくれました。


「ああ、ありがとう」


 程よい熱さのそれをわたしは一口啜り、ひと仕事終えた後の一杯を楽しみます。


「どう? ゆかりさん。質問はある?」


 ゆかりさんは少し考え、右手の指を三本立てます。
 質問が三つあるということでしょうか? 
 おや、また三つ?


「ゆかりさん、ひょっとして……。質問は三つまでだとか、そういう縛りルールを勝手に追加していない?」


 すると、ゆかりさんは悪戯っぽくにこっとします。


〝あら、ばれた?〟


 と言いたげです。


「んん。まあ、別に数を縛る必要はないと思うけれど……」


 ゆかりさんはスケッチブックにさらさらと。


〝答えが出るまで無限に質問を繰り返したらつまらないじゃない。むしろ三つのヒントなんて謎かけじゃ多い方よ〟


 ゆかりさんは普段は冷静ですが、ゲームとかだと負けるかもしれないリスクを楽しむタイプです。
 楽しんでいるのだから、わざわざ水を差すのは止めておきましょう。


「うん。ゆかりさんがいいのならそれで。じゃあ一つ目の質問はなあに?」


 わたしは頷いてから訊ねます。
 ゆかりさんはスケッチブックをくるり回して、裏面をわたしの方へ向けてきます。


〝登場人物の中に医者の人がいるということは、検死が行われたということね?〟
「そうね。そういう場面があったと思う」
〝二つの事件の死因は、それぞれなんだと書かれているかしら?〟
「死因? それはえっと……。普通に焼死と銃殺じゃないかな?」


 わたしはそれぞれその描写が書かれているページを捲りつつ、そこを読んだ時のことを思い返してみます。


「うん。やっぱりそう。まあ、二人とも読者にもはっきり分かるような亡くなり方だったから、それがそのままの死因になっているよ」


 そこまで言って、はたと気がつきます。


「あ、でも細かく言うなら、一人目の記者さんは焼死じゃなくてショック死で、二人目の双子のお母さんは出血死かな?」
〝良く知っているわね、みぃちゃん〟


 ゆかりさんが意外そうな顔で感心して、そう伝えてきます。わたしは変に嬉しくなって、えへへ、と緩んだ笑みを返します。
 最近、ミステリー小説を読む機会が多いお陰もあるのでしょう。
 確かに中にはそういう細かい死因の違いを利用したトリックもあって、わたしは大層驚いたものです。


「ゆかりさんが聞きたいのは、つまりそういうこと?」


 わたしがズバリ訊ねると、ゆかりさんはあっさりと首を横に振りました。
 

「うえっ」


 これは何とも恥ずかしい……。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小児科医、姪を引き取ることになりました。

sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。 慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...