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「私、修道院では馴染めなくて……彼と一緒にずっといたんです。彼との未来を考えるほどには彼のことが大好きで……よくありがちな話ですけど、幼いころの恋ですね」
そしてその恋は、ずっと私の中に埋もれていて、また花開いた。無意識下で抑え込んでいたその恋心が、彼とまた出会ったことで燃え上がり、私の気持ちを乱す。
「お二人はその時からずっと……まさに運命ですね」
穏やかな笑みを浮かべて話を聞いてくれるオギさん。母を思い出させるようなそのまなざしに、胸が締め付けられる。
「オギは、ユーフェミア様が生きていてくださって本当に嬉しいです。オリヴァー様はあなた様のためだけにここまでのし上がったお方ですから。オギは、一番近くでその姿をずっと見てまいりました」
優しい表情のオギさんは、懐かしそうに話をしてくれた。私の知らない、オリヴァーが修道院を出た後の話。
「オギさん、もっと聞かせてください。私、知りたいです」
彼の話を聞きたくて、オギさんに話をねだる。だって、私は彼のことをほとんど知らないのだ。修道院で一緒にいた時間は、私と彼が別れてからの時間とは、比べるまでもなく少ない。本当にわずかな間しか一緒にはいられなかった。
そのわずかな時間で惹かれ合ったのだから、オギさんの運命という言葉も、あながち間違いではないと思う。
「オギは、オリヴァー様がクラーク侯爵家に引き取られたときから、ずっとお側におりました。その時からいつも、オリヴァー様はおっしゃっていたことがあります。それは……」
オギさんの言葉に、冷ましたはずの熱が再び頬に集まる。そんなまさか、離れていた間も私のことを考えていてくれたなんて。
———ユーフェミア以外を妻にするつもりはないし、ぼくは彼女のために力を手に入れる。
「オリヴァー……」
少しでもオリヴァーに近づけないと考えた自分が恥ずかしい。彼は、私のためにここまで努力していたのに。私は一体、何をすれば彼に相応しい人に慣れるのだろうか。
「オギさん、私も……私ももっと頑張ります」
私を忘れないで、ずっと思っていてくれた彼に相応しい人になる、頑張ると決めた。今度は、オリヴァーのために。
———ぼくにとって、彼女は全てなんだ。色のない、ぼくの世界に突然現れた、天使様。
そういった時のオリヴァーは一体、どんな思いだったのだろうか。悔しい思いをしたこともあっただろうし、苦しい思いをしたこともあっただろう。
貴族社会では、修道院や孤児院から引き取られたという事実は、不利になることが多い。ただでさえ、妾の子を引き取った、なんて話だけで醜聞なのに、血のつながりがない子どもを引き取ったとなると、もっと醜聞として扱われてしまう。
私は少しだけだったけれど、貴族の生活をしていた。家を出るまでは貴族社会のことを勉強し、必要な勉強を受けて、子どもながらに大人のように振舞うことを求められる。
「ユーフェミア様……」
「私にとって、オリヴァーは私の全てです。彼が与えてくれた今を大切にしたい……何より、彼のために在りたいんです」
家を出て、修道院に隠れて、逃げても逃げても……結局捕まって。
そしてその恋は、ずっと私の中に埋もれていて、また花開いた。無意識下で抑え込んでいたその恋心が、彼とまた出会ったことで燃え上がり、私の気持ちを乱す。
「お二人はその時からずっと……まさに運命ですね」
穏やかな笑みを浮かべて話を聞いてくれるオギさん。母を思い出させるようなそのまなざしに、胸が締め付けられる。
「オギは、ユーフェミア様が生きていてくださって本当に嬉しいです。オリヴァー様はあなた様のためだけにここまでのし上がったお方ですから。オギは、一番近くでその姿をずっと見てまいりました」
優しい表情のオギさんは、懐かしそうに話をしてくれた。私の知らない、オリヴァーが修道院を出た後の話。
「オギさん、もっと聞かせてください。私、知りたいです」
彼の話を聞きたくて、オギさんに話をねだる。だって、私は彼のことをほとんど知らないのだ。修道院で一緒にいた時間は、私と彼が別れてからの時間とは、比べるまでもなく少ない。本当にわずかな間しか一緒にはいられなかった。
そのわずかな時間で惹かれ合ったのだから、オギさんの運命という言葉も、あながち間違いではないと思う。
「オギは、オリヴァー様がクラーク侯爵家に引き取られたときから、ずっとお側におりました。その時からいつも、オリヴァー様はおっしゃっていたことがあります。それは……」
オギさんの言葉に、冷ましたはずの熱が再び頬に集まる。そんなまさか、離れていた間も私のことを考えていてくれたなんて。
———ユーフェミア以外を妻にするつもりはないし、ぼくは彼女のために力を手に入れる。
「オリヴァー……」
少しでもオリヴァーに近づけないと考えた自分が恥ずかしい。彼は、私のためにここまで努力していたのに。私は一体、何をすれば彼に相応しい人に慣れるのだろうか。
「オギさん、私も……私ももっと頑張ります」
私を忘れないで、ずっと思っていてくれた彼に相応しい人になる、頑張ると決めた。今度は、オリヴァーのために。
———ぼくにとって、彼女は全てなんだ。色のない、ぼくの世界に突然現れた、天使様。
そういった時のオリヴァーは一体、どんな思いだったのだろうか。悔しい思いをしたこともあっただろうし、苦しい思いをしたこともあっただろう。
貴族社会では、修道院や孤児院から引き取られたという事実は、不利になることが多い。ただでさえ、妾の子を引き取った、なんて話だけで醜聞なのに、血のつながりがない子どもを引き取ったとなると、もっと醜聞として扱われてしまう。
私は少しだけだったけれど、貴族の生活をしていた。家を出るまでは貴族社会のことを勉強し、必要な勉強を受けて、子どもながらに大人のように振舞うことを求められる。
「ユーフェミア様……」
「私にとって、オリヴァーは私の全てです。彼が与えてくれた今を大切にしたい……何より、彼のために在りたいんです」
家を出て、修道院に隠れて、逃げても逃げても……結局捕まって。
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