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 淋しい気持ちが突然やってくる。お父さまもお母さまも、弟も私は助けられなかった。私が関わらなければ助けられたであろうあの老夫婦もそうだ。私に愛を与えてくれた人たちがいない。それは本当に辛い。

 少し陰鬱とした気分を悟られないように、オリヴァーの話を笑顔で聞き、食事をする。もちろん食事はオリヴァーによって介助されている。彼は私の介助をしながら食べていた。

「それじゃあ、ユーフェミア。また明日」

 食事が終わってもしばらく部屋にいたオリヴァーは、そろそろ戻るよ、と言って部屋から出ていった。

「……」

 一人になった部屋で、よくわからない感情が渦巻くのを抱えて目を閉じる。まだオリヴァーとオギさん、お医者様の先生以外に他人に会っていないからわからないけれど、この国はおそらくこの忌み嫌われた髪や瞳の色は嫌われていないのだろう。

 隣り合っているのに、国が違うだけで扱いがこんなにも変わってしまうなんて。知っていたら、なんとしてもこの国へ来ただろう。そうすれば、私の家族もおじいさんとおばあさんも、生きていられたのに。

 無知というのは本当に罪だ。知らないから、では済まされない。それだけのことを、私はしてしまった。後悔しても、もう遅い。だって、命は戻らないから。

 鬱々とした気持ちを、どう解消すればいいのかわからない。抱えるには重すぎるほどの感情だ。悔しい、悲しい、やり場のない怒り、マイナスな思いばかりが心の内を支配する。

 身体を清めるための布とお湯を持ってきてくれたオギさんに、そんな汚い心を知られたくなくて、無理やりに笑みを浮かべていつもと同じ姿を見せ。この時ばかりは話せなくてよかったと、思いながら彼女を見送って夜を明かした。

「おはよう、ユーフェミア。今日はあまり顔色が良くないね。もしかして眠れなかった?」

「……」

「庭には、行けそう?」

 朝、オリヴァーが朝食を持って現れた。彼にはすぐに眠れていないことを知られたが、強引にそれを誤魔化して笑う。庭に行けるのか、という問いにも是の意味を込めて頷いて。

「無理だけはしないこと。約束ね」

 何も追及しなかった彼の優しさに甘え、無理をしない約束で、初めて庭へと私は移動した。移動は、残念ながらまだ歩けないので車いすを押してもらった。

「今は花がたくさん咲いている時期だからね、綺麗でしょ」

 車いすでも通れるほど整備された庭。色とりどりの花たちが咲いていて、とても美しい光景だ。心の内を浄化するかのようなその景色に、自然と笑みがこぼれる。

「ユーフェミア、君が望むなら、王国に復讐してもいい。それほどまでに、君が、ユーフェミアが受けたものは酷いものだ」

「……」

復讐など、何も生まない。復讐してみんなが帰ってくるのなら、喜んで私はしたかもしれない。だけど、戻ってくることはない。それこそ、悪魔と命を対価に契約したって無理な話だ。

「そう、君は強いね。俺なら、絶対復讐するのに……って話が逸れたね」

 帰してくれるなら、帰してほしい。でもそれが不可能なのだと私は理解しているから。だから、もうこれ以上犠牲を増やしたくない。関係のない人が巻き込まれるのを、見たくない。

「ユーフェミア、許したくないものは許す必要はないよ。君がすべてを許す必要も、受け入れる必要もない。怒ることは大切なことだから」

「……」
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