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彼の思い
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彼は私の言葉を聞くと、辛そうにそれに悔しげにどこか遠くを見つめながら口を開いた。
「憎くないか⋯?それは憎く思ったに決まっておるだろう。
だが、人間とは弱きものだ、長くてもたった100年ほどしか生きられん。我をここに閉じ込めた人間共も、もう死んでおるだろう?
それにな、たしかに人間は愚かだ。愚かな者が多い。
しかし、しかしだな確かに良い奴もおったのだ。
とても人の良く面白い、我も気に入った、そんな奴もおったのだ。
最初は人間全てが憎かった。憎くて憎くてしょうがなかった。
ここから出たらどうしてくれようか。とずっと考えていた。
だが、200年も経てば我も良い奴もおったという事を思い出した。
そう思うと、全ての人間が我をこうした訳では無い。このことを知らぬものが多いのだ。と思ったのだ。
それならばわれが憎むべきは我にこんなことをした人間のみだ。
しかし、そやつらはもう死んだ。
我に残っておるのはそやつらへの憎しみと、人間に裏切られた悲しみ、だがそれでも人間を嫌いになりきれずまた、人間に頼らなければここからまだ出ることもできない自分への怒り、絶望、悔しさ、またこれら全てによる辛さのみだ。」
私は、何も言うことができなかった。
ただ、そう話す彼が大人なのにどこか一人ぼっちの寂しそうな子どもに見えた。
その姿は私の前世の年の離れた弟を彷彿とさせた。
だからつい私は、彼のそばに走りよりそのまま彼を抱きしめた。
どうしてもその姿を見て我慢できなかった。
放っておくことができなかった。
小さな子をあやすように、なだめるように、ぎゅっと抱きしめて背中をぽんぽんと軽くたたいた。
彼の顔は見えなかったが、驚いたように息を呑んだのが分かった。
「辛いなら、悲しいなら泣いていいんだよ?私の胸を貸してあげるから。
ここにはあなたと私しかいないんだから、我慢しないで。
今まで溜め込んでいた気持ちを少しでもいいから、楽になれるように吐き出していいよ。」
そしてしばらくすると、私を力強く抱きしめて頭を私の肩に埋め、声を押し殺しながら涙を流しだした。
「⋯っ、⋯⋯っく、ふっ⋯」
5分ほどだろうかそのまましていると、彼は少しずつ嗚咽を漏らしながら話しだした。
「⋯っく、あ、ありがどう⋯ぅぐ、わ、われは、かなしがったのだ。ぐすっ、さびしがったのだ⋯!
うら、ぎられたこと、ずっと1人、で⋯ふっ、とじごめられて、⋯信じでだのに、っ⋯ずっどずっど!ほんとにしんじてたのに⋯!!」
「うん、⋯うん。大好きだったんだね。
ずっとずっと悲しくて寂しくて、辛かったんだね。
ごめんなさい⋯ほんとうにごめんなさいっ。
私に言われてもなんにもならない、意味が無いだろうけど、私と、私と同じ人間があなたを騙し、傷つけ、閉じ込めてあなたにそんな思いをさせてごめんなさい。
待ってて、あなたをここから解放する方法を見つけるから。
私にできるかは分からないけれど、解放できるように頑張るから。
だから、だからお願い。好きなだけ泣いて泣いて泣いて泣いて泣いていつか、涙が枯れたら今度は笑って?
すぐでなくてもいい、何年かかってもいい、無理はしなくていいからいつかあなたが嬉しい、楽しい幸せだと思ったら笑って?
私もあなたを笑顔にできるようにがんばるから。」
私は心の底からそう思った。何故だか分からないけど彼を助けなければ!という気持ちが湧いてきた。
普通は初めてあった人にそんなこと思わないのに、自分でもおかしいなとは思う。
だけどそんなこと気にならないくらい助けたいとおもった。
私はそこまで言うと私の目からも涙が溢れてきてしまった。
「ぐすっ⋯ほんとうに、助けられるか分から、ない、っ、のに、偉そうなことを言って、ご、ごめんなさい。
でもさっき言った事は全部本気だから。」
彼から返事はなかったが、私を抱きしめる腕により力が入り、彼の嗚咽が大きくなった。
「憎くないか⋯?それは憎く思ったに決まっておるだろう。
だが、人間とは弱きものだ、長くてもたった100年ほどしか生きられん。我をここに閉じ込めた人間共も、もう死んでおるだろう?
それにな、たしかに人間は愚かだ。愚かな者が多い。
しかし、しかしだな確かに良い奴もおったのだ。
とても人の良く面白い、我も気に入った、そんな奴もおったのだ。
最初は人間全てが憎かった。憎くて憎くてしょうがなかった。
ここから出たらどうしてくれようか。とずっと考えていた。
だが、200年も経てば我も良い奴もおったという事を思い出した。
そう思うと、全ての人間が我をこうした訳では無い。このことを知らぬものが多いのだ。と思ったのだ。
それならばわれが憎むべきは我にこんなことをした人間のみだ。
しかし、そやつらはもう死んだ。
我に残っておるのはそやつらへの憎しみと、人間に裏切られた悲しみ、だがそれでも人間を嫌いになりきれずまた、人間に頼らなければここからまだ出ることもできない自分への怒り、絶望、悔しさ、またこれら全てによる辛さのみだ。」
私は、何も言うことができなかった。
ただ、そう話す彼が大人なのにどこか一人ぼっちの寂しそうな子どもに見えた。
その姿は私の前世の年の離れた弟を彷彿とさせた。
だからつい私は、彼のそばに走りよりそのまま彼を抱きしめた。
どうしてもその姿を見て我慢できなかった。
放っておくことができなかった。
小さな子をあやすように、なだめるように、ぎゅっと抱きしめて背中をぽんぽんと軽くたたいた。
彼の顔は見えなかったが、驚いたように息を呑んだのが分かった。
「辛いなら、悲しいなら泣いていいんだよ?私の胸を貸してあげるから。
ここにはあなたと私しかいないんだから、我慢しないで。
今まで溜め込んでいた気持ちを少しでもいいから、楽になれるように吐き出していいよ。」
そしてしばらくすると、私を力強く抱きしめて頭を私の肩に埋め、声を押し殺しながら涙を流しだした。
「⋯っ、⋯⋯っく、ふっ⋯」
5分ほどだろうかそのまましていると、彼は少しずつ嗚咽を漏らしながら話しだした。
「⋯っく、あ、ありがどう⋯ぅぐ、わ、われは、かなしがったのだ。ぐすっ、さびしがったのだ⋯!
うら、ぎられたこと、ずっと1人、で⋯ふっ、とじごめられて、⋯信じでだのに、っ⋯ずっどずっど!ほんとにしんじてたのに⋯!!」
「うん、⋯うん。大好きだったんだね。
ずっとずっと悲しくて寂しくて、辛かったんだね。
ごめんなさい⋯ほんとうにごめんなさいっ。
私に言われてもなんにもならない、意味が無いだろうけど、私と、私と同じ人間があなたを騙し、傷つけ、閉じ込めてあなたにそんな思いをさせてごめんなさい。
待ってて、あなたをここから解放する方法を見つけるから。
私にできるかは分からないけれど、解放できるように頑張るから。
だから、だからお願い。好きなだけ泣いて泣いて泣いて泣いて泣いていつか、涙が枯れたら今度は笑って?
すぐでなくてもいい、何年かかってもいい、無理はしなくていいからいつかあなたが嬉しい、楽しい幸せだと思ったら笑って?
私もあなたを笑顔にできるようにがんばるから。」
私は心の底からそう思った。何故だか分からないけど彼を助けなければ!という気持ちが湧いてきた。
普通は初めてあった人にそんなこと思わないのに、自分でもおかしいなとは思う。
だけどそんなこと気にならないくらい助けたいとおもった。
私はそこまで言うと私の目からも涙が溢れてきてしまった。
「ぐすっ⋯ほんとうに、助けられるか分から、ない、っ、のに、偉そうなことを言って、ご、ごめんなさい。
でもさっき言った事は全部本気だから。」
彼から返事はなかったが、私を抱きしめる腕により力が入り、彼の嗚咽が大きくなった。
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