異世界まではあと何日

於田縫紀

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第9章 宿題終了後の夏休み

第36話 魚醤はかなり私好み?

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 代わりにテーブルに出したのは今日の昼食、菓子パン三昧だ。
 こんな事はヒラリアに移住したら出来ない。
 だからやるなら今のうち。

 うちの近所、コンビニの前を通り交差点を散歩コースと反対側、南へ行く事少しの場所にそこそこいい感じのパン屋がある。
 そこに帰りに寄って買って来たのだ。

 家から徒歩5分以内、住宅街の中にある緑色の外装が特徴的な一軒家がそのパン屋。
 惣菜系からハード系まで多種類のパンを売っている。
 店によると一番人気はガーリックフランス。

 しかし個人的一押しはクリームパンだ。
 甘さ控えめの絶品クリームがいい。
 あとサクサクのカレーパンとねっとり系胡麻アンパンも良い。
 小倉餡&ホイップのフレンチトーストも悪くない。
 クリームホーンも最高。

 少し歩くとクリームサンドが売りのスーパーなんてのもある。
 しかしパンは此処の方が絶対美味しい。
 しかも凝り過ぎていないし値段も高くない。
 正しい街のパン屋さんなのだ。

 そんな訳でまずはクリームパンから。
 ここのクリームパンはスタンダードなグローブ型。
 上面中央にアーモンドスライスが乗っかっているタイプ。

 それではいただきます。

 ◇◇◇

 目が覚めると午後5時少し前。
 それでは本日の第2ターン開始だ。

 このターンの目的は『醤油と味噌の代用品が出来るか試す事』である。
 まずは難しそうな味噌から挑戦だ。

 今回用意したのはベジマイト、ひよこ豆、トマトピューレ、焼酎、砂糖。
 Webで調べたところ、ベジマイトは、
  ① 八丁味噌と味と香りが近い
  ② ひよこ豆を煮て潰して混ぜると赤味噌代用になる
らしい。
 オーストラリア在住日本人のBlogにそんな事が書いてあった。

 だからまずひよこ豆を潰してペースト状にして、ベジマイトと混ぜてみる。
 市販煮豆は潰すには少し硬いので、魔法で高熱を加えてと。

 混ぜたものを取り敢えず味見。
 うーむ、味噌とはこんな味だっただろうか。

 わからなくなったので冷蔵庫から本物の味噌を持って来る。
 食べ比べてみると確かに塩加減と旨味は酷似しているかも。
 名古屋は大須の奥まった路地にある店で密かに売られている特製味噌と言われれば納得できなくもない。

 ただ微妙に違和感のある匂い舌に残る何かの気配が気になる。
 決して悪い匂いや味ではない。
 慣れていないが故に気になるという類だろう。
 しかしどうしても気になる。

 少しトマトピューレを加えてみる。
 少しだけ馴染みやすい味になったが怪しい気配は消えない。

 更に砂糖を混ぜてみる。
 味は『つけ●みそか●てみそ』に似たものになった。
 大学時代愛知県岡崎出身の稲美がお土産で買って来たお土産だ。

 何かにつけて食べてみればそれなりに美味しそうな味だとは思う。
 途中で混ぜたトマトピューレのせいかビーフシチュー、デミグラスソースにも似た感じもある。
 しかし舌と鼻に微妙に怪しい気配が残ってしまう。

 よし、この試作は無かった事にしよう。
 錬成してしまった大匙2つ分の濃茶色の物体は何とか消費する事として。

 多分ベジマイトの風味に慣れれば大丈夫なのだと思う。
 しかしそれはヒラリアに移住してからでいいか。
 今の私が無理して慣れる必要は無い。

 それでは次、魚醤の研究だ。
 ナンプラーを小皿にごく少量出してと。

 出してみたところ、用心していたようなヤバい匂いはしない。
 鼻を近づけて息を吸うと知らない香りがするけれど。

 これはこのままでも大丈夫なのではないだろうか。
 試しになめてみる。

 あ、これ、出汁醤油だ。
 舌が魚系の旨味を感じる。
 そして確かに醤油と違う風味も感じる。
 しかし嫌な感じはない。
 塩分はかなりきついけれど。

 これはそのまま使っても問題ないな。
 少なくとも私なら。
 むしろ普通の醤油より積極的に使ってもいいかも。
 この魚由来とわかる旨味、私は好きだ。

 私、舌や鼻がおかしくなった訳ではないよな。
 そう思って念の為、ひよこ豆につけて食べてみる。
 問題なく美味しい。
 やはり塩分はきつめだけれど。

 念の為に加熱してみた。
 流石に独特の匂いがしてくる。
 しかし悪い匂いではない。
 少なくとも私にとっては。

 たまたま臭くない魚醤だったのかもしれない。
 発酵度が低めで雑味も少ないタイプなのかもしれない。
 しかし材料に植物由来のものは書いていない。
 アンチョビ、いわゆるイワシが主原料だ。

 よし、醤油については心配しなくていいだろう。
 既に18リットル缶1つ分買ってはあるけれど。
 あとこの魚醤、自作は出来るだろうか。
 一応作り方もWebで調べてファイリングしておこう。
 
 作り方そのものは簡単だった。
 魚に20%程度の塩を混ぜ混ぜして瓶につめ長期間放置。
 その中身を漉しとれば完成だ。
 更に残った物を煮出した後漉しとってあわせてもいい模様。

 あと魚醤干しなんて干物もあった。
 普通の干物より数段上のうま味を感じるとある。
 匂いもそれほど気にならない模様だ。
 ならこれで味醂干しも出来るだろうか。

 魚醤なら材料は塩と魚。
 私が現地で自分で調達可能な材料で作る事も出来る。
 更に……

 そうだ、面白い事を思いついた。
 治癒魔法は生物の活性や自己治癒能力を上げて怪我や病気を治す魔法。
 これを変形すれば発酵促進魔法を作れるかもしれない。
 うまくいけば魚醤もあっという間に魔法錬成出来るかも。

 なら挑戦だ。
 カツオをさばいて内蔵とサク1つを使用して作ってみよう。
 あ、でもこのカツオ、アイテムボックスに入れてしまったから微生物が死んでしまっている。
 なら発酵は無理かな。
 酵素による分解くらいは出来るだろうけれど。

 うーん、ならヒラリアでは魚醤用にアイテムボックスを使わずキープする魚が必要だ。
 冷却魔法を使えばそれほど問題はない。
 でもクーラーボックス位は用意しておくか。
 あとで通販で購入しておこう。
 
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