異世界まではあと何日

於田縫紀

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第5章 1週間後の現況は

第19話 運動ついでにお買い物

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 私の眠りは浅い。
 だからスマホの目覚ましがバイブだけ状態でも気付くことは出来る。
 ただ低血圧だから脳みそまでしっかり起きるのには時間が必要だ。
 最近血圧を測っていないけれど。

 そんな訳でスヌーズを繰り返し、ようやくスマホの目覚ましを解除できたのは午前4時だった。

 まずい。
 早く支度しないと日が昇る。
 日が昇ると人が出てくるだろう。
 それまでに終わらせた方が気分が楽だ。

 顔を洗って歯磨きして、髪を整える。
 下着は何か身体が締め付けられる気がして苦手。
 しかし外へ出るから仕方ない。

 Tシャツ、イージーパンツ、薄いパーカも着装。
 スヌーズを止めてからここまで30分。
 化粧しない分だけこれでもいつもより早い。

 さて、それでは行こう。
 靴を履いて、スマホのアプリを起動。
 スマートウォッチとペアリングしているのも確認。
 トレーニング開始にした後ウエストバッグに入れ、燃えるごみの袋を忘れずに持った後、玄関を出る。

 まだ日が出ていないけれど思った以上に明るい。
 明日以降はもっと早く起きた方がいいな。
 そう思いつつまずはアパート専用のごみ捨て場にゴミ袋を入れる。
 第一任務ミッション完了コンプリートだ。

 道に出て左へ。 
 昨日買い物をしたコンビニのある大通りに出て右折。
 次の交差点を左に渡って国分寺の門が見える通りへ。
 
 ここからまっすぐ行けば10分くらいで球場や陸上競技場、観覧車まである大きな運動公園に出る。
 この道は球場手前までは半ば公園のような歩道を歩けるから散歩にちょうどいいだろう。
 昨日そう思って計画したルートだ。

 朝の空気がなかなか良い。
 普段は部屋の窓すら開けない生活だから。
 ただ予想外なのはこんな時間なのに既にある程度人が居ること。
 犬の散歩、人間の散歩、ランニング等。

 ただマスクのおかげで顔の判別はつかないし挨拶する必要も無い。
 せいぜい時々会釈してくる人がいる程度だ。
 これも知り合いだからではなく、単に習慣でそうしているだけの模様。
 問題はない。

 運動公園の入口まで来たところでスマホを見る。
 歩き始めてから15分経過。
 距離は980m。

 まだ疲れていない。
 思ったより体力は落ちていないようだ。
 なんて思ったら下にメッセージが出ている。

『体力年齢は40代相当。本日あと45分以上歩くことを推奨。ただしランニングは禁止。徒歩か自転車で』

 体力年齢40代か。
 これでもまだ20代なのに。
 30代にリーチかかってはいるけれど。

 仕方ない。
 アプリの言うとおりあと45分歩くとしよう。

 ここから帰るのに15分かかる。
 だからこの公園内、陸上競技場の周囲やテニス場等の方を30分程度周回すればいい。

 そう思った時、ふと思いついた。
 この先少し歩いたところに24時間営業の安いスーパーがある。
 ついでだからそこで買い物もする事にしよう。

 この時間だから弁当はないだろう。
 しかし安いスパゲティや袋入り即席麺なんてのはある。
 食パンも当然ある筈だ。
 あと冷凍野菜も少し買いたい。

 そう言えば向こうの世界に行った後、しばらくは米も麺もパンも買う事が出来ない。
 その辺について考えてみるのもいいかもしれないな。
 どうせこの時間だ。
 スーパーで知り合いにあう事もあるまい。

 それにしても今日の私はなかなか行動的だ。
 勿論朝早いから知り合いに会わないというのもある。
 しかしそれだけではない。
 やはり病状がかなり良くなっているのだろう。
 家にいる分にはあまり実感はないけれど。
 
 よし、私、偉い!
 回復出来ていて偉い!
 そう自画自賛しつつ運動公園を通り抜け左折。
 このまま左側に球場を見ながら5~6分程度歩くとスーパーだ。

 そんな訳で気分よく歩いて無事到着。
 此処はスーパーとしては比較的小さい方だ。
 しかも中へ入ってみると野菜や肉等はかなり欠品中。

 これはまあ、時間が時間だから仕方ない。
 どうせ生ものは買う気が無いから問題ないけれど。
 今の状況だと使い切れる自信がないから。

 肉を見てふと気づいた。
 向こうへ行ったら動物の解体もする必要があるなと。

 知識や技術はおそらく大丈夫だろう。
 私は鶏を自分で絞めた事がある。

 大学1年の夏休みの1ヶ月程、大規模農家へバイト兼気分転換に行った。
 その時に廃鶏にするなんて作業があったので体験させて貰ったのだ。
 首落として吊るして血を抜いて、鍋のお湯につけて羽根をむしってバーナーで仕上げて。

 今でもあの程度の動物なら肉にする事は出来ると思う。
 そして恐竜と鳥類は進化過程が近いし形状も似ている筈だ。
 だからおそらく問題は無い。

 必要な道具は手斧とバケツ、大きめの寸胴鍋と適当なロープ、あとガスバーナーがあると楽かな。
 バーナーは魔法で代用できるかもしれないけれど。
 この辺のグッズも忘れず用意しないとな。

 思いついたグッズをスマホを出してメモしておく。
 病気のせいか薬のせいか最近の私は忘れっぽいから。
 思考力もかなり落ちている自覚がある。
 それを補う為、何事もメモが肝心。

 メモし終わったら買い物再開。
 肉類として安めのソーセージを賞味期限を確認した後、籠に放り込む。
 これくらいなら異世界に行くまでに使い切れるだろう。

 あとは袋麺とスパゲティ乾麺の安いのとパン。
 少しずつでも使いやすい冷凍野菜も。
 向こうへ持っていくのなら乾麺がいいかななんて思う。
 調理も保存も楽だから。

 ただ今日は調子に乗ってあまり買い過ぎないようにしよう。
 スーパーの袋に重いものを入れておくと手が痛くなる。
 どうせ明日も運動で早起き外出するのだ。
 何なら明日はディパックを背負って来よう。
 重いものはその時に買えばいい。
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