異世界まではあと何日

於田縫紀

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プロローグまたはエピローグ

私の新天地

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 軽い浮遊感の後、地に足がついた感触。
 瞼の裏から光を感じる。

 もう目を開けていいかな。
 私の視界に飛び込んできたのは青い空、砂浜、海。
 背後は森で近くに川の河口部も見えている。
 現在気温も快適。
 まさに私好みの場所だ。

 地図や説明を見てこの場所を選んだのだが正解だった。
 まさにその希望通りの場所に無事到着した模様だ。
 正直今の今まで半信半疑だった。
 本当に異世界に行けるのかと。
 全ては詐欺で虚構だったのではないかと。

 しかしどう見てもここはさっきまで私がいた部屋じゃない。
 強い日差しがじりじり私の腕を焼いてこれが現実だと告げている。

 なら本当にここから私の異世界生活がはじまる訳だ。
 そう思うと楽しみで仕方ない。
 勿論現代日本よりも別の意味で危険が多いとは思う。
 ただその辺についても既にある程度予習はしているし対策済みだ。

 さて、それではまず住の確保。
 4坪の中古ユニットハウスを出せる場所探しだ。
 海に近い方が便利だし景色もいい。
 しかし天候が荒れた場合を考えれば森の中にした方がいい。
 何度かテント泊で酷い目にあった私の経験がそう告げている。

 アイテムボックスの中を確認。
 うんうん、予定通りのものがしっかり入っているのがわかる。
 中古ユニットハウスも、自立式バスタブも、斧も鉈もバールのようなものではなくバールそのものも。

 その中には事前の説明通り付近の詳細地図も入っていた。
 早速取り出して見てみる。
 等高線まで入った本格派だ。
 ご丁寧にも『到着位置◎』なんて赤字で書いてあったりする。 
 至れり尽くせりだな。

 さて、活動前に安全確認をしておこう。
 私は付近を探索魔法で確かめる。
 強い反応はない。
 猛獣や魔獣等は気にしなくていいみたい。
 なら作業を開始しよう。
 私は改めて周囲を見回す。

 まずはテン場、いや家を出す場所を探そう。
 条件は、
  〇 海からそこそこ近く
  〇 ある程度の標高があって台風並みの天気でも水をかぶらない
  〇 崖崩れ等の自然災害の恐れが少ない
場所だ。

 今回は水利はあまり気にしなくていい。
 事前学習で水を出す魔法は習得済みだから。
 でも念のため、水を出す魔法が使えるか試しておくか。
『給水!』
 水がどばっと出て足下の砂地に吸い込まれていった。
 どうやら問題はないようだ。

 地図と目に見える地形を見比べる。
 私の現在地は小さな砂浜の最上部。
 背後は割と平らな草原が50m程度続き、そして急傾斜になって森になる。
 森というか林だろうか。
 高さ5~6m程度の細い木が生い茂っている状態だ。

 海側は小さな入り江になっていて川が2本注いでいる。
 私が今いるのは中央の浜の奥側の川に近い部分だ。

 この川の上流側が平らで家を建てやすそうに見える。
 しかし高波だの津波が来たらかぶりそう。
 そっちは取り敢えずパスしておこう。

 さて、家に適した平らそうな場所は何処だ。
 確か台地上はそれなりに平坦だった筈だよな。
 上に登れそうな場所を岩場のこちら側に発見。
 それでは現地調査と行こう。

「この一歩は小さいが、私にとっては偉大な一歩である」

 つい気分でそんな事を呟いてしまう。
 勿論某船長の台詞のパクリ、いやインスパイアだ。

 しかし最初の一歩は到着した時に周囲を見回した時に既にやってしまったかな。
 でもいいか、そんな事はどうでも。

 そして私は前へ向けて大きく一歩、踏み出した。
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