上 下
129 / 176
第16章 冬のリゾート

第123話 まずは物件確認から

しおりを挟む
 今回は別荘をまず確認してから。だから持ち物は普通の旅行程度だ。
 超小型ゴーレムのおかげで全員が移動魔法を使える。必要なものがあれば自分で取りに帰るまで。だから問題は何もない。

 さて、最初だけはという事で俺の移動魔法で全員一緒に移動する。まず別荘を外から見た感じは……

「普通だね」

「だな。でも悪くはなさそうだ」

「少しだけ大きいかな」

「手入れはそれなりにしてあるようですわ」

という感じ。

 外見はよくある焼土仕上げの3階建て。大きさ的にはうちの家とほぼ同じくらいかちょい大きめ程度だろう。
 馬車用の小屋と馬小屋もすぐ近くに別棟で建っている。この辺も車庫や倉庫に使えるかな。

「臭いがする」

「これは温泉の臭いだよね」

「そう言えばバルマンのリゾートでも似たような臭いがしましたわ」

 確かに少しゆで卵のような臭いがする。あまり強くはないけれど。

「海にもすぐ行けるみたいだね」

 3腕6mほど下が砂浜で、そこまで岩を削った歩道らしき道がついていた。

「夏でも遊べそうです」

「だな。牡蠣とかウニとかもとれそうだ。でもその辺はあとでという事で、まずは中を確認してみよう」

 俺達はミランダに続き中へと入る。
 事前に間取りは図面で確認済みだ。玄関入ってすぐの扉を開ければ広いリビングルーム。反対側の扉がこれも広い食堂で、その隣がキッチン。他に1階にはトイレと風呂があるだけ。
 2階より上は基本的に個室の寝室。1室だけ大きいベッドを備えた広い寝室があるのはまあお約束だ。

 中は今まで滞在した別荘のような高級感はない。木材に焼土の壁、つまり一般的な家のつくりと同じだ。しかしこの方がかえって俺は落ち着く。
 それにこの広いリビングもなかなかいい感じ。ゼノアの事務所より広い場所にソファーやテーブル、ラグなどがほどよく配置されている。

「この辺の家具類もそのままかな」

「ああ。現状のまま引き渡しと言っていた」

 ならそのまま使えるな。

「私用に寝れる長椅子が欲しいな」

「それはゼノアで買って持ち込めばいいよ」

「ロッキングチェアも置きたいですわ」

 広さがあるのでその辺を配置しても余裕だろう。

「それじゃ他を確認に行くぞ」

 食堂、キッチン、各個室、トイレと見て回るが問題はない。
 個室は広いのが1室、そこそこなのが12部屋。更に召し使い用らしいやや狭めの個室が8部屋と数多い。
 ただし風呂だけは……確かに普通よりは広いけれど……

「増築だな。これでは小さすぎる」

 全員がうんうんと頷く。
 小さすぎると言っても標準以上ではあるのだ。3人程度がゆっくり足を延ばせる程度の浴槽と洗い場があるから。
 しかしこの面子はバルマンのリゾートやこの前の夏のリゾートで広い風呂の快適さを知っている。

「お湯が温泉なのは評価しますわ」

 色そのものは透明だけれども臭いがただのお湯ではない。しかも外から流れてきている。
 浴槽はちょっと凝っていて溶岩らしい岩を加工した代物。ちょい滑りやすそうだが肌触りは良さそうだ。

「浴槽は広げられるよね。あとは増やせないから建て増しかな」

 フィオナは早くも増築計画を考えている模様。

「ところで露天風呂もあるのですよね」

「ああ、この先だ」

 ミランダが扉を開けるとそのまま外だった。赤い焼土の歩道が5腕10m程度続いていて、その先に一見岩のようなものがある。

「ずいぶんと野生的な浴槽だね」

 こちらも内風呂と同じく黒い溶岩を加工した浴槽にお湯がたまっていた。広さも内風呂と同じく3人分程度。
 少し上に源泉らしい場所があり、そこからお湯が岩肌を流れてそのまま入り、溢れると下へと流れるようになっている。

「これはこれで趣があっていいですわ」

「でもやっぱり狭いよね。もう少し広げたいな」

「いずれにせよ中の掃除をしてからだろ」

「そうだね」

 この露天風呂は手入れはされていなかったようで下に木の葉がたまっている。しかしお湯の成分のせいか腐った感じにはなっていない。

「風呂関係は増設しないとならないね。色々と」

「でも私は気に入りましたわ。早速お掃除でも」

 テディは水魔法で露天風呂内のお湯を全部外へ出し、更に清拭魔法をかけている。早速入る気満々という感じだ。

「ここならお風呂を整備すれば毎日でも入りに来れるよね。なら早速設計してみるよ。丸太を組むタイプで設計すれば増築も難しくないしね」

 でも基礎部分だけはどうにかして作る必要があるよな。それにだ。

「丸太を運ぶ手間はどうするんだ」

「いつもの木材店で加工してもらった後、店の前に出して貰うからアシュの魔法でここまで移動させてよ。木材店には集団で取寄魔法アポートをかけているって説明しておくから」

 なるほど。

「基礎はどうするんだ」

「その辺はミランダに手伝ってもらおうと思っているんだ。ここでならミランダに魔法を使ってもらっても問題はないよね」

「確かに問題はないと思いますわ」

 どういう意味だろう。俺はミランダが本気で魔法を使っているところを見たことはない。というか簡単な灯火魔法と清拭魔法以外は使っているのを見たことが無いな。
 でも今の台詞からすると何かとんでもない魔法を持っているようだ。

「ここを平らにすればいいのか」

「うん。それ以上細かい事はミランダの魔法には求めないよ。基礎用の石なんかは加工済みのものをゼノアで購入するつもりだしさ」

「ならとにかく平らに削ればいいんだな」

「溶岩なら問題ないでしょ」

「多分な」

 何か知らないけれど大丈夫なようだ。

「その辺の計画はまた後にして、次は海方面を見に行こう。テディもいいか」

「浴槽の掃除は終わりましたから大丈夫ですわ。これでいつでも入れます」

 テディは露天風呂第一主義のようだ。

 どっちにしろ皆様の反応をみるに購入決定だな、これは。ただ横が火山だし地面は溶岩質だし大丈夫だろうか。
 未来視で先を見てみる。取り敢えず俺が生きている間は大丈夫そうだ。ならいいか、ここを購入しても。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

俺と彼女は入れ替わり

三毛猫
恋愛
俺は一度でいいから女子高校生になってモテたかった。そんな願いは叶った。ある日起きたら女子高校生になった俺は彼女になりきり、変身生活を満喫するはずだった…… ※下品なシーンがあるため、お食事中に読むのはお控えください。 ※下品なシーンが含まれる為R15 ※ファンタジー要素あり

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...