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第14章 2年目夏のバカンス

第99話 夏らしい食事?

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 帰ってすぐにサラに宣言。

「今日の昼食は俺が作るよ」

 理由は簡単、日本の夏祭りっぽいものを作りたくなったからだ。

 まずは臭い少なめの魚醤を作るところから始める。魚醤にたっぷりのハーブやショウガ等を入れてひと煮立ち。
 このときにかなり強烈な臭いが出るのは仕方ない。風魔法でガンガン換気して耐えるべし。

 次はイカをさばくことにしよう。その前に一応参考文献を取り寄せておいてと。

「日本語書物召喚、イカの塩辛の作り方が載っている本、写真入りでわかりやすいもの1冊。起動!」

 これを見ながらイカをさばく。
 ゲソは後で使うことにしてまずはイカ焼き用の胴体作り。外した内臓のうち肝と墨袋は塩を振りまいて水分を抜いておこう。

 耳と胴体だけにして皮をむいたイカをさっきの魚醤につけたら塩辛作りだ。このヤリイカっぽいのは肝が小さいのでイカ焼き用のイカの肝も使ってちょうどいい位だな。

 とりあえずさばいて塩をして水分を抜くのが正解なのか。本を見ながらさばくというか措置するという感じで塩漬けのイカと肝が完成。

 これは本当なら1日ほど放置して水分を抜く必要があるようだ。しかしここは水魔法で時短させてもらおう。塩で浸透圧による脱水を行うところを水魔法による脱水でごまかし、更に塩を清拭魔法で除去した後にちょい堅くなった肝や身をざくざくと切る。
 ほんの少し蒸留酒を入れてガンガン混ぜて、これでまた放置だ。あとは食べる前にちょっとだけ魚醤を入れてかきまぜればいい。

 イカ焼きと焼きトウモロコシをやる前にちょっと時間がかかるものを先に作っておこう。焼きそばだ。
 これはもう何度も作って手慣れたもの。出来たてを収納袋にいれて、次はいよいよ焼きトウモロコシとイカ焼き。
 魔法があれば作るのは簡単。全体に熱を通した後、表面に先程の魚醤を塗ってある程度乾くまで熱を加え、また魚醤を塗って今度は高熱でさっと焦げる程度に焼けば完成だ。

 これでイカ焼き、焼きトウモロコシ、焼きそばが完成したぞ。
 あとゲソもついでに調理しておこう。焼いてもいいが今度は茹でてやるか。いやいっそのこと揚げてしまえ。

 そんな感じで俺の前世の記憶的な夏らしい昼食完成だ。なお塩辛だけはもう少し寝かせておく予定。冷蔵庫の代わりである氷冷庫に入れ、念のため中の氷を魔法で増量しておく。

「出来たぞ」

 呼ぶまでも無かった。臭いにつられて皆さんやってきている。

「何か茶色いものばっかりだね」

 確かに魚醤をつけて焼いたものと焼きそばだからな。おまけで作ったゲソ揚げも茶色いし。
 そうだイカ用にメルカソースマヨネーズも出しておこう。これで今度こそ完成だ。

「ところでこれ、どうやって食べるのでしょうか」

 テディはトウモロコシをそのまま食べる事を知らないようだ。

「これはこうやって手でつかんで、歯で表面をかじるんだ」

 甘さは少し足りないが魚醤の香ばしさで悪くない味に仕上がっている。

「この変な形のものは?」

 フィオナはイカを知らない模様。

「それはそのままかじれば大丈夫だぞ」

 そんな感じで昼食がはじまる。

 うん、イカは小さいながらも肉厚でなかなか美味しい。焼いた魚醤もいい味を出している。ちょっと味変にメルカソースマヨネーズをつけても悪くない。

「トウモロコシってこうやっても食べられるんですね」

「もう少し甘い品種なら熱を通すだけでも美味しいんだけれどさ」

 皆さん美味しそうに食べている。成功だ、そう思った時だ。

「こういう味だと飲み物が欲しくなりますね」

「この前聞いたあの飲み方を試してみるか」

「そうですね」

 ミランダとナディアさんがそんな会話をして、2人で部屋を出て行く。帰ってきた時には麦芽飲料の粉と蒸留酒、そして大きいマグカップを持っていた。

「まずは麦芽飲料を少量のお湯で濃く濃く作るんだよな」

「ええ。カップの半分くらいに作ったら、残り半分に蒸留酒をいれてかき混ぜ、全部均等に溶けたら魔法で冷やすと」

 何か微妙にどこかで聞いたような飲み方だな。

「麦芽飲料に水飴は混ぜないのでしょうか」

 テディが尋ねる。
 麦芽飲料はお湯で作ってお茶風に飲むか、それに水飴を混ぜてココア風に飲むのが普通だ。スティヴァレにココアは無いけれど。

「この飲み方の場合はそのままで、しかも冷やすんだ。一度飲んだ事があるけれど苦みがあってすっきりする夏らしい酒だぞ」

 その台詞で俺は気づいてしまった。ホ●ピーだ、これは。
 本物の●ッピーと違いホップが入っていないから香りも味も大分違う筈。でも目指すところはきっと同じだ。

 ナディアさんはトウモロコシをかじった後、できあがったホッピー風の怪しい飲料をごくりと飲む。

「間違いないですね。これはあいます」

「だろ」

「僕もやってみようかな」

 フィオナまで試し始めた。大丈夫だろうかこれ。
 
「苦いですね。少し私にはあわないようです」

 テディにはあわなかったと。でもだからと言って本日買ったレモン酒を出すのはやめてくれ。つまみにチーズ各種まで出さないでくれ。
 ほらサラがつられて飲み始めた。もうどうなっても知らないぞ俺は。

 気がつくとアルコールが入っていないのは俺とジュリアだけ。

「アシュさんは?」

「俺はアルコールがあまり得意じゃ無いんだ。ジュリアは?」

「同じく」

 そう返答した後、ジュリアはにやりと笑う。

「見る分には面白い」

 彼女の手元にはいつのまにか紙とインク壺。

 ◇◇◇

 結果として午後はもう、昼からぐだぐだ状態になった。しかもそのぐだぐだな様子、ジュリアが逐一写真のような精緻さで絵に残してしまったのだ。
 絵の枚数なんと20枚。酔っ払ってとんでもない格好で寝ているサラとか。肩を組んで高級学校の校歌を歌っているミランダとテディとか。何故か部屋の隅で筋トレをしているナディアさんとか。
 俺とジュリアを除く5人の様子が完全に記録に残されてしまった。

「後で飲み会の様子を描くときの参考」

 ジュリアはそのつもりだったようだが記録に残された方はたまったものじゃない。以降うちの面子が飲み過ぎる機会は極端に減った。めでたしめでたし?
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