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第21章 優雅で感傷的な日本行事~冬の章・前編~

102 新役員は決定した

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 俺が渡すプレゼントは何にしようか。渡す相手がわからないから、誰の手に渡っても使えるものがいい。
 そして俺が他と差別化できるものが望ましいだろう。

 という事はやっぱり自作で、かつ俺でしか作れないものがいい。
 そして俺は実のところ、作ってみたい物があった。

 ヒントは秋に作ったアミュレットだ。
 今でもじわじわと売れていて、何気に結構な収入になっている。
 あれを更に小さくして、いつでも携帯できる杖代わりの物を作ろうと思ったのだ。

 普通の魔石を使うと予算オーバーするから、大魔法の時に使い捨てに使うようなクズ石を使う。
 魔力銀も魔法陣を描く分しか使わない。
 黒曜石の代わりにプレパラート用の安いガラス。
 でもガラスを積み重ねた積層構造の魔法陣にすれば効果はそれなりにある筈。

 形と大きさは紙粘土で色々試作してみた結果、ちょっと大きめの柿の種のような感じにした。
 せんべいではなく植物の種の方だ。
 手を握って親指と人差し指の間で挟んで持ってちょうどいい位。

 設計図をCADで描く。
 長さ2cm幅1cm厚み8mmに、積層魔法陣と魔石のかけらと魔力導線を押し込めたぎりぎりの設計。

 しかし俺は微細工作は得意中の得意だ。
 何せ工作魔法での加工技術は鍛えまくっている。

 トネリコの棒材のかけらをやすりと魔法で加工して外形を作り、魔法で真っ二つに割って中に筋を彫って魔法増幅関連を埋め込む。
 ある程度の重さにするためステンレス棒材を縦に埋め込み、壊れやすそうなガラスや魔法動線は樹脂でコーティングして、そして割ったトネリコをもとのように貼り合わせる。

 丁寧にニスがけをしてストラップを付けるまで、2週間ほどかかってしまった。
 無論他の作業もしていたし、バネ作業の手伝いもしたりしたのだが。

 魔法工学科の他2人も、順調に何か作っているようだ。
 香緒里ちゃんは何を作っているのかわからないが、何か小さい物らしい。

 逆に何を作っているのかバレバレなのが詩織ちゃんだ。
 刀で味をしめたのか、今度は短刀らしい。
 確かに材料費は5,000円以下かもしれない。
 しかし製品としての価値はとてもそんな物じゃないだろう。

 他の皆さんも、ネットでカタログ見たり何やら部屋に篭って作業していたり。

 ただプレゼントの方はいいのだが、今年も学生会役員募集、全然反応がない。
 既に応募期間延長のポスターも貼付しているのだけれども。

 というか、明日までに決まらないと教授会推薦になってしまう。
 毎年そうなるのだが、今年に限っては人身御供として1人は欲しい。

 来年4年になる学生会役員は俺ひとりだけ。
 そして当然、俺は会長職などやりたくない。

 何せ会長になると、学内集会での挨拶とか魔法特区懇談会への出席とか、色々と面倒が増える。
 そういうのは俺より、もっとルックスのいい万人受けする人間にやってほしい。
 俺は今の監査の仕事で十分だ。
 人前に出るような仕事はしたくない。

 ◇◇◇

 そして19日水曜日。
 今年は振替休日があるので冬休み前まであと2日。

 午後4時、やっぱり誰も応募はない。
 例年だと、そろそろ締切通知人がやってくる頃だが……

「筑紫野先生接近中。あと15秒れす」

 来てしまったか。
 俺が会長不適格と教授会が判断するという、万が一の事態を期待するしかないようだ。

 例によってノックの音の後、返事も聞かずに扉が開かれる。
 入ってきたのは筑紫野先生1人だけ。

「例年通り、応募者は無かったみたいね」

 俺達は頷く。

「なら引き継ぎ決定よ。副会長と会計と監査を決めてこの紙に書いて」

「という事は、会長は誰か教授会で推薦してくれると」

「逃げるのはやめようね、長津田君」

 会長決定、か。
 予想はしていたが、勘弁して欲しい。

「会長は弁が立って、もう少しルックスのいい奴がやるべきかなと」

 それでも俺は食い下がる。

「学園祭の例の刀の会の時、なかなか見事な態度と弁舌だったわよ。あれなら会長を任せても大丈夫かなって」

 その話については、俺としても文句を言いたい。

「誰がやらせたんですか、誰が」

「何の事かしら」

 わざとらしくとぼける毒女様(彼女パートナー?あり)。
 面の皮の厚さでは、俺に勝ち目はない。

 その間にも、何気に作業は進んでいる。
 香緒里ちゃんとジェニーが、それぞれ副会長と監査のところに名前を自分で書き入れるとか。

 実はもう、相談は済んでいるのだ。
 なお書記はソフィー、会計はルイス君。

 書き上がったものを筑紫野先生は確認して立ち上がる。

「ならこれで教授会には提出しておくわ。告知及び不承認申し出受付のポスター、はこっちで作って貼っておいて」

「わかりましたれす」

 ジェニーが印刷済みの紙を、手元から1枚先生に渡した。

「早いわね、往生際が悪いのは長津田君だけなのね」

 まあ想定済みだったからな。

「じゃあね」

 毒女様はドアを開けて帰っていった。
 そして残る俺のため息。

「じゃあ皆で手分けして掲示板に貼りに行こうか」

 奈津季さんの声。
 まあ決まってしまった事は仕方ない。
 俺もあきらめて、ポスター貼りに参加しよう。
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