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第3章 次の犠牲者?
第32話 とある提案
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当たり前かもしれないが、俺がいた時と部屋の様子は変わらない。
俺のベッドだった部分から布団が無くなっているだけだ。
「ここは空いたままか」
ジョンが頷いた。
「多分このままだろ。講習から抜けることはあっても、途中から新たに入ってくる事は無いから」
俺は布団が無くなった二段ベッドの下段に座る。
この部屋にあるのは二段ベッド4つだけ。だから元俺のベッド以外に部外者が座れそうな場所がないから。
「しかし驚いたな。エイダンがまさかC級冒険者になっていたなんて。此処を出てからまだ2週間だろ。どうやったんだ」
どう説明しようかと考えて、ある程度は正直に言う事にした。
ジョンは信用してもいい奴だ。
なおかつ頭がそれなりに切れる。
下手に誤魔化さないほうがいいだろう。
「此処へ来た翌日に文字の読み書きや魔法が使えるようになった。神の恩寵と言う奴らしい。なので初心者講習は必要ないと言われていきなりD級になった。
依頼を幾つかうけて、あと教科書を一通り読んで、今朝C級試験を受けた。何とか受かってC級になった、という状態だ」
「神の恩寵か。話には聞いた事があるけれどさ、まさかエイダンに起こるとはな。羨ましい限りだ。こっちはやっと文字を何とか読めるかって程度なのに」
あっさり納得してくれてほっとする。
前世を思い出したとか、その前世は異世界だったとかまでについては、上手く短時間で説明出来るとは思えないから。
そしてジョンは現在、文字を何とか読める程度か。
大陸標準語は表音文字だから読み書きは難しくない。
でも1週間でそこまで出来るというのはそれなりに努力をしないと無理だろう。
俺も過去を思い出せなかったら1週間でそこまで出来ただろうか。
そこまで思って、ふと言葉と直接は関係ないことに気づいた。
ついでだからあわせて質問してみよう。
「そこまで文字を覚えた上、定期的に通える職場を確保したんだろ。講習生の中では順調な方じゃないのか?」
「まあそうなんだけれどさ。C級冒険者に言われるとちょっとな」
やはり順調な方らしい。
確かにジョンは真面目な上、頭の回転も早く、そこそこ要領がいい方でもある。
こういう場所だと一番伸びやすいタイプだろう。
さて、ついでだから更なる質問をしてみよう。
「それでどんな職場なんだ?」
「前と同じ、ゴミの回収さ。人力荷車を牽いて決められた場所のゴミを回収する仕事だ。ただ報酬は前より良くなった。午後2時から6時までで3千円だ」
3千円か。
「ここの掲示板に出ている額よりも大分高いな」
「此処に依頼を出して、問題無さそうなのを見繕って採用しているって感じだ。だからダッシュで掲示板を探して安い依頼を受ける、なんて必要は無くなったけれどさ」
確かにここの掲示板にあるE級依頼は半日千円くらいが相場。だから3千円は高めだ。
俺の今の収入を考えると安いけれど。
そう思って、そしてふと思いついた。
ジョンでも多分可能で、もっと稼げて、かつ楽しい事を。
「ところでジョン、今日はこのあと時間があるか?」
「ああ。今日はゴミ回収は休みだからさ。何かあるか?」
「実はそこそこ稼げる討伐がある。そうちょくちょくは行けないけれどさ」
この前やったカンディルー討伐だ。
相当な数を捕ったけれども、完全に捕りきったわけではない。
一週間経った今ならそれなりに以前の状態に近づいているだろう。
だから行けばそれなりに釣れる筈だ。
1匹500円だから6匹釣り上げればジョンの一日分の稼ぎになる。
実際はもっと釣れる筈だ。
「いいのか。ありがたいけれど、俺はまだ剣技も初歩だし魔法も使えないぞ」
「それは問題無い。討伐と言っても今回の相手は魚だ。カンディルーという魔魚になる。水の中に入らなければ問題はない。ジョンなら注意すればそう難しくない筈だ」
他の魚の為にも将来的な河川交通の為にも、カンディルーの数は減らしておきたい。
ならジョンに協力して貰おう。
2人なら2倍とまではいかないが、それなりに釣りの効率も良くなる筈だ。
「水の中に入らなくても討伐が出来るのか」
「ああ。ちょうどいい道具を持っている。2人でやれば効率がいい筈だ。勿論危ない事もない」
「なら頼んでいいか。やっぱり冒険者だし討伐はやってみたかったんだ」
「ああ。なら行くか」
餌はまだまだ魔法収納内にたっぷりと残っている。
仕掛けも予備があるし、竿は延べ竿の他、一昨日遠投用に作った4m25cmのものも使える。
「場所はどの辺なんだ? 遠いと言っていたけれど」
「ダグアル村だ。ドーソンから南に45km行った場所にある」
「って、それじゃ今日戻ってこれないだろ」
そういえばその説明も必要だなと気づく。
「使えるようになった魔法に高速移動があってさ。この程度の距離なら20分かからない。門の外に出てからの時間だけれど」
「そんな魔法が使えるのかよ。なら俺もその魔法で高速移動出来るのか」
「いや、そこは収納魔法を使う。普通の収納魔法は生物は入れられない。しかし俺の収納魔法は人間だろうとOKだ。実際に試したから問題無い」
エダグラで捕縛した2人に試している。
「そんな魔法まで使えるのか」
「ああ。しかも収納中は時間経過がない。だから実際には一瞬後に移動先って感じだな」
「わかった。準備するものはあるか?」
どうやらやる気になってくれたようだ。
そして準備するような事は何もない。
「全部魔法収納に入っている。問題は無い。それじゃ門まで急ごう。南門が一番近い」
俺達は部屋を出て、急ぎ足で歩き出した。
俺のベッドだった部分から布団が無くなっているだけだ。
「ここは空いたままか」
ジョンが頷いた。
「多分このままだろ。講習から抜けることはあっても、途中から新たに入ってくる事は無いから」
俺は布団が無くなった二段ベッドの下段に座る。
この部屋にあるのは二段ベッド4つだけ。だから元俺のベッド以外に部外者が座れそうな場所がないから。
「しかし驚いたな。エイダンがまさかC級冒険者になっていたなんて。此処を出てからまだ2週間だろ。どうやったんだ」
どう説明しようかと考えて、ある程度は正直に言う事にした。
ジョンは信用してもいい奴だ。
なおかつ頭がそれなりに切れる。
下手に誤魔化さないほうがいいだろう。
「此処へ来た翌日に文字の読み書きや魔法が使えるようになった。神の恩寵と言う奴らしい。なので初心者講習は必要ないと言われていきなりD級になった。
依頼を幾つかうけて、あと教科書を一通り読んで、今朝C級試験を受けた。何とか受かってC級になった、という状態だ」
「神の恩寵か。話には聞いた事があるけれどさ、まさかエイダンに起こるとはな。羨ましい限りだ。こっちはやっと文字を何とか読めるかって程度なのに」
あっさり納得してくれてほっとする。
前世を思い出したとか、その前世は異世界だったとかまでについては、上手く短時間で説明出来るとは思えないから。
そしてジョンは現在、文字を何とか読める程度か。
大陸標準語は表音文字だから読み書きは難しくない。
でも1週間でそこまで出来るというのはそれなりに努力をしないと無理だろう。
俺も過去を思い出せなかったら1週間でそこまで出来ただろうか。
そこまで思って、ふと言葉と直接は関係ないことに気づいた。
ついでだからあわせて質問してみよう。
「そこまで文字を覚えた上、定期的に通える職場を確保したんだろ。講習生の中では順調な方じゃないのか?」
「まあそうなんだけれどさ。C級冒険者に言われるとちょっとな」
やはり順調な方らしい。
確かにジョンは真面目な上、頭の回転も早く、そこそこ要領がいい方でもある。
こういう場所だと一番伸びやすいタイプだろう。
さて、ついでだから更なる質問をしてみよう。
「それでどんな職場なんだ?」
「前と同じ、ゴミの回収さ。人力荷車を牽いて決められた場所のゴミを回収する仕事だ。ただ報酬は前より良くなった。午後2時から6時までで3千円だ」
3千円か。
「ここの掲示板に出ている額よりも大分高いな」
「此処に依頼を出して、問題無さそうなのを見繕って採用しているって感じだ。だからダッシュで掲示板を探して安い依頼を受ける、なんて必要は無くなったけれどさ」
確かにここの掲示板にあるE級依頼は半日千円くらいが相場。だから3千円は高めだ。
俺の今の収入を考えると安いけれど。
そう思って、そしてふと思いついた。
ジョンでも多分可能で、もっと稼げて、かつ楽しい事を。
「ところでジョン、今日はこのあと時間があるか?」
「ああ。今日はゴミ回収は休みだからさ。何かあるか?」
「実はそこそこ稼げる討伐がある。そうちょくちょくは行けないけれどさ」
この前やったカンディルー討伐だ。
相当な数を捕ったけれども、完全に捕りきったわけではない。
一週間経った今ならそれなりに以前の状態に近づいているだろう。
だから行けばそれなりに釣れる筈だ。
1匹500円だから6匹釣り上げればジョンの一日分の稼ぎになる。
実際はもっと釣れる筈だ。
「いいのか。ありがたいけれど、俺はまだ剣技も初歩だし魔法も使えないぞ」
「それは問題無い。討伐と言っても今回の相手は魚だ。カンディルーという魔魚になる。水の中に入らなければ問題はない。ジョンなら注意すればそう難しくない筈だ」
他の魚の為にも将来的な河川交通の為にも、カンディルーの数は減らしておきたい。
ならジョンに協力して貰おう。
2人なら2倍とまではいかないが、それなりに釣りの効率も良くなる筈だ。
「水の中に入らなくても討伐が出来るのか」
「ああ。ちょうどいい道具を持っている。2人でやれば効率がいい筈だ。勿論危ない事もない」
「なら頼んでいいか。やっぱり冒険者だし討伐はやってみたかったんだ」
「ああ。なら行くか」
餌はまだまだ魔法収納内にたっぷりと残っている。
仕掛けも予備があるし、竿は延べ竿の他、一昨日遠投用に作った4m25cmのものも使える。
「場所はどの辺なんだ? 遠いと言っていたけれど」
「ダグアル村だ。ドーソンから南に45km行った場所にある」
「って、それじゃ今日戻ってこれないだろ」
そういえばその説明も必要だなと気づく。
「使えるようになった魔法に高速移動があってさ。この程度の距離なら20分かからない。門の外に出てからの時間だけれど」
「そんな魔法が使えるのかよ。なら俺もその魔法で高速移動出来るのか」
「いや、そこは収納魔法を使う。普通の収納魔法は生物は入れられない。しかし俺の収納魔法は人間だろうとOKだ。実際に試したから問題無い」
エダグラで捕縛した2人に試している。
「そんな魔法まで使えるのか」
「ああ。しかも収納中は時間経過がない。だから実際には一瞬後に移動先って感じだな」
「わかった。準備するものはあるか?」
どうやらやる気になってくれたようだ。
そして準備するような事は何もない。
「全部魔法収納に入っている。問題は無い。それじゃ門まで急ごう。南門が一番近い」
俺達は部屋を出て、急ぎ足で歩き出した。
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