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拾遺録3 仕入れ旅行の帰りに
12 強がりだとは自覚しているけれど
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ぐったりした盗賊は重い。その上臭い。
重い物を持つのには慣れているから何とか運べるけれど。
まずは倒れている位置から荷車直近まで。
3人ほど運んだところでセレスが荷車内から顔を出した。
「中は片付けました。あと床にオリーブオイルや葡萄酒の樽を置くときに敷くボロ布を敷いておきました」
確かにあの布を敷いて置いた方がいいだろう。この盗賊達を載せると汚れそうだから。
「あとごめんなさい。身体強化魔法をかけますね。そうすれば少しは楽になると思います。
あと私も手伝います」
ふっと身体が軽くなったように感じた。これが身体強化魔法だろうか。
「ありがとう。でもセレスはいいよ。手が汚れる」
「いえ、捕まえると決めたのは私ですから」
「大丈夫だから。重い物を持つのは慣れているしさ」
巻いてある布とか古着の束なんてのはかなり重いのだ。
10重なんて束も普通にある。
だから重い物を持ったり運んだりするのは普通の人より慣れている。
気絶した人間というのは重さ以上に持ちにくいけれど。
それでもセレスに魔法をかけて貰ったおかげで大分楽になった。
持ちにくいけれど力任せに持っても余裕という感じだ。
とりあえず10人、荷車の後ろの路上まで運び込んだ。あとは荷台に載せるだけ。
そこで俺はふとある事に気づいた。
「そういえばこの盗賊、他に残党とかはいないのだろうか」
これだけの人数がいる盗賊だと他にも仲間がいる可能性がある。
そして。
「多分います。あと10人程、山側の森の奥にいるようです。ただ少し遠くて私の魔法ではそれ以上わかりません」
何となくだが俺は気づいた。セレス、何か隠しているなと。
リディナさんに聞いた事を思い出す。となると、ひょっとして。
「そっちに誰か一般人が捕まっている、って事はないか?」
「わかりません。私の偵察魔法が届かないんです」
なるほど、理解した。セレスが気にしているのはその事だ。
なら……
「この辺には魔物や魔獣はいないんだよな」
「ええ。3離以内には」
「そして俺にかけてくれた身体強化はあとどれくらい持つんだ?」
「あと2時間くらい」
セレスはそこまで言って、そしてはっという顔をする。
「危険です。確かに今は魔物がいません。でもゴブリンやコボルト程度の魔物なら何もない場所から出現する事だってあるんです」
気づいたか。しかしだ。
「一応身体強化しておけばゴブリン2~3匹程度は何とかなるだろう。武器だって今はそこそこある。槍くらいは振り回せるさ」
盗賊が持っていた武器がそこここに落ちている。身体強化した状態の俺なら技術はともかく振り回す位は出来るだろう。
「でも……」
「気になるんだろ。行ってきた方がいい。セレスの事だからそんなに時間はかからないだろうしさ。この盗賊を荷台に積みながら待っているから」
ゴブリン1~2匹程度なら普通のD級冒険者1人でも何とかなる。身体強化した状態の俺なら問題ない筈だ。
かつて私塾に通っていた頃、剣の練習で『希に見るセンスの無さ』とか『力はあるけれど反応と速度が遅すぎる』と言われた過去は無視するとして。
「わかりました。すみません、こんな無茶をお願いして」
「大丈夫だって。それでどれくらいかかりそう?」
「往復で3半時間あれば大丈夫です」
覚悟していたよりずっと短い。思わずほっとしてしまいそうだけれど、それでもそんな様子は見せないようにする。
ほっとした様子が出てしまうという事は、つまり俺自身不安を感じているという事だ。そこをセレスに悟られる訳にはいかない。
「わかった。それじゃ待っているけれど、無理はするなよ」
「ええ。急いで行ってきます」
セレスが荷車から降りる。そしてその次の瞬間、姿を消した。どうやら高速移動する魔法、走るのが速いというのとは別次元の何かの模様だ。
周囲の森が急に暗くなった気がした。もちろん気のせいだ。
まだ時間的には昼3の鐘過ぎの筈。そんなに一気に暗くなるなんて事はない。
とりあえず盗賊を積み込んでしまおう。周囲に注意しながら、盗賊を荷台へと運ぶ。
10人全員を何とか荷台に載せて、盗賊が持っていた武器も拾い集めた後、改めて周囲を観察。
魔物の気配は特にないと思う。先程盗賊がいる事に気づけなかった俺の目だからあてにはならないけれど。
妙な音も特にしない。風が木々を揺らす音位だ。
ほかに馬車が通らないかと思うが気配はない。おそらく通る事はないだろう。
今この辺を通るようでは、街に着く時間が暗くなった後になる。
俺達が乗っているのは普通の馬車より速いゴーレム車。だからこそ、この時間にこの場所にいても街を目指せるのだ。
ガサッ、不自然な音がした。とっさに音の方、右側を見る。
森の中にかすかに違和感を覚えた。見えないけれど何かいる気がする。
盗賊の武器の中から槍を手に取る。選んだ理由は今使える中で一番長くて間合いをとれるから。
上手く戦おうなんて思ってはいない。そんな技量がない事は俺自身がよく知っている。
方針は簡単。間合いに入ったと判断した時点で横なぎにぶん殴る。それが一番当たりやすそうだから。
意識するのは敵をひきつける事。怖いとどうしても遠いうちに振り回してしまう。しかしそれでは当たらない。だから意識してひきつける。
さて、ゴブリンやコボルトが出てくるか。それとも小動物や虫のせいだったのか。何もいない、ただの気のせいだったのか。
わからないまま俺は槍を斜め後ろに向けた姿勢で、全神経をもって周囲を警戒する。
重い物を持つのには慣れているから何とか運べるけれど。
まずは倒れている位置から荷車直近まで。
3人ほど運んだところでセレスが荷車内から顔を出した。
「中は片付けました。あと床にオリーブオイルや葡萄酒の樽を置くときに敷くボロ布を敷いておきました」
確かにあの布を敷いて置いた方がいいだろう。この盗賊達を載せると汚れそうだから。
「あとごめんなさい。身体強化魔法をかけますね。そうすれば少しは楽になると思います。
あと私も手伝います」
ふっと身体が軽くなったように感じた。これが身体強化魔法だろうか。
「ありがとう。でもセレスはいいよ。手が汚れる」
「いえ、捕まえると決めたのは私ですから」
「大丈夫だから。重い物を持つのは慣れているしさ」
巻いてある布とか古着の束なんてのはかなり重いのだ。
10重なんて束も普通にある。
だから重い物を持ったり運んだりするのは普通の人より慣れている。
気絶した人間というのは重さ以上に持ちにくいけれど。
それでもセレスに魔法をかけて貰ったおかげで大分楽になった。
持ちにくいけれど力任せに持っても余裕という感じだ。
とりあえず10人、荷車の後ろの路上まで運び込んだ。あとは荷台に載せるだけ。
そこで俺はふとある事に気づいた。
「そういえばこの盗賊、他に残党とかはいないのだろうか」
これだけの人数がいる盗賊だと他にも仲間がいる可能性がある。
そして。
「多分います。あと10人程、山側の森の奥にいるようです。ただ少し遠くて私の魔法ではそれ以上わかりません」
何となくだが俺は気づいた。セレス、何か隠しているなと。
リディナさんに聞いた事を思い出す。となると、ひょっとして。
「そっちに誰か一般人が捕まっている、って事はないか?」
「わかりません。私の偵察魔法が届かないんです」
なるほど、理解した。セレスが気にしているのはその事だ。
なら……
「この辺には魔物や魔獣はいないんだよな」
「ええ。3離以内には」
「そして俺にかけてくれた身体強化はあとどれくらい持つんだ?」
「あと2時間くらい」
セレスはそこまで言って、そしてはっという顔をする。
「危険です。確かに今は魔物がいません。でもゴブリンやコボルト程度の魔物なら何もない場所から出現する事だってあるんです」
気づいたか。しかしだ。
「一応身体強化しておけばゴブリン2~3匹程度は何とかなるだろう。武器だって今はそこそこある。槍くらいは振り回せるさ」
盗賊が持っていた武器がそこここに落ちている。身体強化した状態の俺なら技術はともかく振り回す位は出来るだろう。
「でも……」
「気になるんだろ。行ってきた方がいい。セレスの事だからそんなに時間はかからないだろうしさ。この盗賊を荷台に積みながら待っているから」
ゴブリン1~2匹程度なら普通のD級冒険者1人でも何とかなる。身体強化した状態の俺なら問題ない筈だ。
かつて私塾に通っていた頃、剣の練習で『希に見るセンスの無さ』とか『力はあるけれど反応と速度が遅すぎる』と言われた過去は無視するとして。
「わかりました。すみません、こんな無茶をお願いして」
「大丈夫だって。それでどれくらいかかりそう?」
「往復で3半時間あれば大丈夫です」
覚悟していたよりずっと短い。思わずほっとしてしまいそうだけれど、それでもそんな様子は見せないようにする。
ほっとした様子が出てしまうという事は、つまり俺自身不安を感じているという事だ。そこをセレスに悟られる訳にはいかない。
「わかった。それじゃ待っているけれど、無理はするなよ」
「ええ。急いで行ってきます」
セレスが荷車から降りる。そしてその次の瞬間、姿を消した。どうやら高速移動する魔法、走るのが速いというのとは別次元の何かの模様だ。
周囲の森が急に暗くなった気がした。もちろん気のせいだ。
まだ時間的には昼3の鐘過ぎの筈。そんなに一気に暗くなるなんて事はない。
とりあえず盗賊を積み込んでしまおう。周囲に注意しながら、盗賊を荷台へと運ぶ。
10人全員を何とか荷台に載せて、盗賊が持っていた武器も拾い集めた後、改めて周囲を観察。
魔物の気配は特にないと思う。先程盗賊がいる事に気づけなかった俺の目だからあてにはならないけれど。
妙な音も特にしない。風が木々を揺らす音位だ。
ほかに馬車が通らないかと思うが気配はない。おそらく通る事はないだろう。
今この辺を通るようでは、街に着く時間が暗くなった後になる。
俺達が乗っているのは普通の馬車より速いゴーレム車。だからこそ、この時間にこの場所にいても街を目指せるのだ。
ガサッ、不自然な音がした。とっさに音の方、右側を見る。
森の中にかすかに違和感を覚えた。見えないけれど何かいる気がする。
盗賊の武器の中から槍を手に取る。選んだ理由は今使える中で一番長くて間合いをとれるから。
上手く戦おうなんて思ってはいない。そんな技量がない事は俺自身がよく知っている。
方針は簡単。間合いに入ったと判断した時点で横なぎにぶん殴る。それが一番当たりやすそうだから。
意識するのは敵をひきつける事。怖いとどうしても遠いうちに振り回してしまう。しかしそれでは当たらない。だから意識してひきつける。
さて、ゴブリンやコボルトが出てくるか。それとも小動物や虫のせいだったのか。何もいない、ただの気のせいだったのか。
わからないまま俺は槍を斜め後ろに向けた姿勢で、全神経をもって周囲を警戒する。
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