上 下
196 / 323
第29章 ちょっとだけ単独行

おまけ 今日は海の日(下)

しおりを挟む
「海だ!」

 レウス君が叫ぶ。

「それじゃまずは御飯にしようか。天気がいいし風も弱いしちょうどいいね」
 
 確かに天候的には最高だなと思う。気温も快適な程度だし。

 平らな岩、実は私がアイテムボックスで上部分を収納した跡だけれども、この上にテーブルと椅子を人数分出す。
 この場合エルマくんは人数に含まない。彼の指定席はテーブル下だ。

「今日のお昼御飯は、此処でこれから捕れるかなというものを中心にしてみたから」

 そう言ってリディナが出したのはこんなメニュー。
  ○ サバサンド
  ○ 二枚貝のバター焼き
  ○ ブイヤベース風魚介類のスープ
  ○ ツナ入りサラダ

 メインのサバサンドは長くてガチガチの、日本で言うバゲット風のパンに骨を取ってニンニク入りの油でしっかり焼いたサバ、レタス、タマネギ、トマトと野菜がたっぷり入ったもの。

 各人用に味付けが調節してあって、私用のものはバルサミコ酢のソースと粒マスタードが味の決め手だ。

 リディナ用は塩とバターとマスタード、セレス用はバターだけ薄味、サリアちゃんとレウス君用はトマトケチャップに酷似した甘めのソース。
 おまけの誰かさん用にサバの骨を取って焼いただけ味付け無し、なんてのもある。

「このサンドイッチの魚が捕れるの?」

「どんな魚が捕れるかはわからないけれどね。あとこの貝も、このスープに入っているお魚や貝も、このサラダのこれツナも捕れるかもしれないよ。もっと美味しいものも捕れるかもしれない」

「牡蠣がいるといいですね」

「牡蠣って何ですか?」

「岩みたいに見えるけれど美味しい貝です。形は少し気持ち悪いですけれど」

 美味しいお昼を食べたらいよいよ採取活動開始だ。

「まずは食べられる貝を探してみるよ。さっきのバター焼きにした貝と同じような二枚貝の捕り方。サリアもレウスもついてきて」

 全員で小さな砂浜へ。なおエルマくんは離して貰って、私達の周囲を走ったり臭いを嗅いだりしながらついてくる。

「海に足だけつかるからこの辺で靴を脱いでね。そして魔力探知で海水が被っている部分の砂浜を調べるの。そうするとごくごく小さい反応が砂の中に固まってあるのが見えるかな?」

 リディナがそう2人に問いかける。
 サリアちゃんとレウス君はかなり魔法が使えるようになってきた。だからそれくらいの魔力探査は出来る筈。

「見えます。同じくらいの深さに固まっています」

「僕も見える」

 どうやら2人ともわかるようだ。

「なら靴を脱いで、その反応の上に裸足で立つの。そうしたらこうやって足を動かして。そうすれば足が何か固い物に当たるから、それを手で拾う訳。そうすると」

 リディナが2枚貝を海の中から取りだしてみせる。

「こんな感じ。この貝はそのまま食べても美味しいし、後で釣りにも使えるから頑張って取ろうね」

「わかりました」

「わかった」

 2人の返事。私は貝を入れるためのバケツを出して海水を汲む。

 なお2人が海に入るのと一緒にエルマくんも一緒に海へ。しかし波をかぶって慌てて砂浜へと引き返す。

 何かブシュブシュやり始めたので魔法で真水を水飲み皿へ出してやる。エルマくん、飛びついて勢いよくぴちゃぴちゃ飲み始めた。どうやら海の水が塩辛かったようだ。

「いた!」

 レウス君の声に引き続き、サリアちゃんが頷いて足下に手をやる。
 平たい貝が手の中に入っていた。

「こうやって捕れるんですね」

 潮干狩りは順調だ。あっという間にバケツの中が貝で埋まった。

「それじゃ次は魚を釣りという方法で捕らえるよ。まずは……」

 私は釣り竿と仕掛け、更に魚を入れるバケツを出す。あとはリディナとセレスに任せればいいだろう。

「それじゃ私は貝を捕ってくる」

「御願いね」

 それでは私は私の作業、岩場の海面下にいる貝の採取を開始だ。

 まずは断崖絶壁の下にある岩場へと移動。この辺りがそこそこ良い感じかな。魔力探査と偵察魔法でそう目星をつける。

 海水の温度はまだ泳ぐには少し冷たい。それに私は泳ぎには自信がない。
 だから主役は私では無くゴーレムのシェリーちゃん。久しぶりのカキ装備で岩場の海面下部分を捜索開始。

 まずは岩にへばりついている岩牡蠣をガシガシと剥がす作業から。久しぶりの牡蠣だ。捕れるだけ捕っておきたい。

 おっと、ウニを発見。勿論回収だ。全員が食べられる分捕れればウニ丼なんてのもいいな。もっと捕れればウニバターなんて作ってもいい。

 サザエやアワビなんて高級な貝もしっかり確保。サザエの苦み、最近は美味しいと思えるようになってきた。これは私の舌が大人になったという事だろうか。あとアワビのソテー、美味しいんだよな。

 リディナ達4人は釣りを始めたようだ。見たところリディナとサリアちゃんが遠くへ飛ばすカゴ釣りの仕掛け。セレスとレウス君がサビキ仕掛け。

 サビキ仕掛けの方は早くも魚が釣れまくっている。ただカゴ釣りの方もしっかり魚がいる辺りに魔法で仕掛けを届かせている。だからそのうち大物も釣れるだろう。

 私は私の採取活動に専念。おっと、タコを発見。ならシェリーちゃん、モリ装備だ!

 ◇◇◇

「海ってこんなに楽しいんですね」

「僕も楽しかった!」

 帰りのゴーレム車の中、皆さんご満足の模様だ。エルマくんは遊びすぎて床でへたって寝ているけれど。

「収穫も結構あったしね。帰って山羊さん達を小屋に入れて、皆でお風呂に入った後、皆で今日捕ったもので御飯を作ろうか。きっと美味しいと思うよ」

「楽しみですね」

 確かに今日は大漁だ。サビキ組は鰯や小サバ、小アジを100匹以上釣り上げた。カゴ仕掛け組もソウダカツオやシイラを合計10匹は釣っている。

 私の方もしっかり捕った。岩牡蠣は30個以上剥がしたし、サザエもウニも、アワビすら10個以上確保している。
 更にタコ、黒鯛なんてのもシェリーちゃんのM装備で確保した。今から食べるのが楽しみで仕方ない。

「今日はご馳走だね」
 
「うん!」

 今日もいい日だったな、そんな風に感じる。まあこの後に山羊さん作業やお風呂、料理作業があるのだけれども。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。