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第20章 ダンジョン攻略依頼

第161話 風は東へ

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 クロッカリを倒してからカレンさんの屋敷で私が目を覚ますまで1日半。その後両腕と両手を復活させ普通に動かせるようになるまで更に1日。

 その間、人駄目ソファーカバーの追加注文、更には魔法金属の再購入なんて事をセレスにお願いして。

 更に身体が治った後も念の為という事で1日外出禁止。この日は暇だったので大事典の翻訳の複写をしてカレンさんに渡したりなんて作業も実施。

 完全に復活した後、カレンさんによる再事情聴取、更に褒賞金計算その他なんて冒険者ギルド絡みの処理をして。

 出来上がった人駄目ソファーのカバーと在庫しているコルクを使って人駄目ソファー第2弾を作ったり、ゴーレム車のサスペンション調整なんて事もしたりして。

 結果的に王都ラツィオを出たのは私が目を覚まして合計一週間6日後だった。
 ただし行く先は南ではなく東。今までのルートからみると戻っている状態だ。

 何故そうなったか。それは私がクロッカリを倒した事が原因だったりする。

 ◇◇◇

「次は本格的な討伐依頼を受けてみようと思うの。私達もそれなりに力をつけないと」

「確かに今のままではこれ以上成長できない気がします。討伐でももう少し違う形の依頼に挑戦してみたいです」

 リディナとセレスからそんな意見が出た。

 個人的にはちょっと待って欲しいと思う。2人とももう充分強い筈だ。今回はむしろ例外中の例外。相手がそれこそ戦闘に長けた魔法使いでもない限り問題ない筈だ。

 そう思うのだけれどもクロッカリ事案の手前、私が異議を唱える訳にはいかない。

 そんな訳でラツィオの冒険者ギルドへ。
 ただ普通の場所の冒険者ギルドと異なり、掲示板に討伐系の依頼がない。王都ラツィオ近辺は魔物が出ないからだろう。

 南へ行ってからまた探せばいいのではないか。私はそう思った。しかしリディナの意見は違った。

「ここは直接お願いして探して貰った方がいいよね。窓口で頼めば掲示されていない広域依頼等も探して貰えるから」

「そんな事も出来るんですね」

 そんな訳でカウンターへ。結果…… 

「こんなのはどうでしょうか。このパーティなら適任だと思われます。攻撃力が大きい上に少人数編成ですので。フミノさんがB級ですのでランクも問題ありません」

 私はクロッカリ討伐の結果、B級にランクアップしてしまった。この辺の認定や褒賞金等についてはカレンさんが手続きしてくれて既に終了済みだ。

 ギルドの案内嬢が依頼カードと関連資料らしい紙束を出してくれた。どれどれ、真ん中に置いて3人で読む。
 
 まずカードの方はこんな感じ。

『B級依頼:探索・調査・討伐。
 ラツィオから70離140km東にある、ラクーラとテラーモという町の間で魔物が異常発生している。この原因であると思われる洞窟4本を調査、探索し原因究明を行う。また原因究明に至らないまでも内部を探査し構造を確認する。
 参考事項は別紙の通り』

 続いて別紙らしい紙束の方も読んでみる。

『〇 事案発覚は7月13日早朝、ラクーラ北東に50匹程のゴブリンが出現した事による。また翌日テラーモ南西にもほぼ同数のゴブリンが確認された。
 それぞれの領主であるデラーザ伯爵家およびアンジャ子爵家により冒険者ギルドに討伐および調査依頼が発出される。結果、これらゴブリンが発生したと思われる洞窟の存在が明らかになった。

 〇 ラクーラとテラーモの間にグランサ・デトリアという山塊があり、魔物発生源とみられる洞窟はその直下にあたる。
 ラクーラ側、テラーモ側どちらも南北それぞれに2本ずつ入口がある。

 〇 どの洞窟も入口は幅9腕18m程度。ラクーラ側、テラーモ側ともに北側の洞窟の方が魔物が多い事が確認されている。

 〇 どの洞窟も幅および高さはほぼ一定で、馬車道のように平坦なまま奥に続いている。ただしその地形上、騎士団による集団戦闘に適していない。

 〇 現在、内部はそれぞれ入口から半離1km程度までしか探査されていない。ラクーラ側、テラーモ側いずれも入口から400腕800mの部分に南北の洞窟をつなぐ細い通路が存在する。
 なおラクーラ側の洞窟とテラーモ側の洞窟も内部で接続していると思われるが未確認。接続されている場合、両端の長さは概ね5離10km程度となる。

 〇 出現する魔物は初期はゴブリンが主体であったが、現在は主にコボルトとなっている。1日の出現数は全洞窟あわせて1日に平均120匹前後。希にオーク、トロル等も出現。
 現在は洞窟の出口前に王国騎士団分駐隊が配置され、出てきた魔物を討伐している。

 〇 以上から独立行動が可能な3~5名前後の魔道士部隊による強行偵察形態での討伐及び探査が有効と判断される。デラーザ伯爵家およびアンジャ子爵家により国家騎士団の魔道士小隊の派遣を要請中であるが、現在のところ派遣の見込みは立っていない。

 〇 故に魔道士小隊の派遣要請を続けるとともに、デラーザ伯爵家およびアンジャ子爵家によりB級依頼として9月13日付で冒険者ギルドに依頼が入る。その後1月経過し依頼が達成されない事から褒賞金を5割引き上げるとともに広域募集依頼案件として公告開始』

 更に参考事項が列挙されている。たとえばそれぞれの洞窟がある場所に関する地元の言い伝えとか。

 最後までしっかり読んだ後、リディナとセレスはそれぞれ頷いた。

「確かにうちのパーティには最適だよね。3人だから狭い場所でも問題無いし、補給なしで長期間戦えるし、魔法による攻撃力が大きいし」

「それに褒賞金額が大きいです。確認されていない範囲の探索と地図作成だけでも結構いい額になります。
 あと騎士団が常駐しているとしても農家なんかは大変だと思います。戦闘で使えない畑なんかも出てきているでしょうから」

 2人ともやる気満々だ。

「あとセレスさんは攻撃魔法を習得されたとお聞きしています。でしたら依頼を検討する間、こちらで昇級審査を受けていただけますでしょうか。限定的な攻撃魔法でも最低D級には認められますから。
 攻撃魔法を指示に従って発動していただくだけですので時間はかかりません」

「わかりました」

「カードは持ったままで結構です。それではこちらへどうぞ」

 3人で受付嬢さんの後を歩いて事務所裏の訓練場的な場所へ。

 テニスコートくらいの広さで魔法陣が描かれた壁で周囲を囲まれた場所へ到着。受付嬢さんは中心に6体の土人形を立てた後、セレスに指示する。

「この土人形はゴブリンを模した強度で作られています。これを出来るだけ早く確実に倒してください。方法は武器でも素手でも魔法でも構いません。また魔法の場合、属性や種類は何でも構いません。
 そこの線が開始位置となります。ただし私が開始を宣言した後、場所を移動しても構いません」

 どうやら私やリディナの時よりも試験方法が洗練されているようだ。認定方法が新しくなったのだろうか。それとも王都のギルドだから他より整備されているのだろうか。
 その辺は私にはわからない。でもまあ気にする必要はないだろう。どうせ今後、私達が受ける事は無い筈だから。

「それでは開始して下さい」

「わかりました。水の衝撃アクアエ・イパルサム

 土人形は胴の部分で上下が切断された。6体とも一撃で。
 今のセレスならこれくらいは出来る。わかっていたから私もリディナも驚かない。

「はい、確認出来ました。C級相当以上と認められます。それではカウンターに戻りましょう」

 セレス、あっさりC級にランクアップ。そして更に依頼を正式に引き受け冒険者ギルドを出る。

 クロッカリの褒賞金は既に入っているので資金は充分。

「行く前にもう少しお買い物をしていいかな。美味しい調理済み料理デーリシーや此処でしか買えないパンなんかもあるから。
 それに図書館でもう少し本も見ていきたいしね」

◇◇◇

 そんな感じで買い物等を済ませた後、お昼過ぎにラツィオを出発。
 
「やっぱりこのゴーレム車、速いよね。ずっと上り坂なのに」

「このペースだとどれくらいまで行けるでしょうか」

「出たのが遅いからラクーラは無理かな。それでもカールソルまでは行けると思う。ラクーラも明日のお昼までには余裕」

 ライ君が牽くこのゴーレム車は速い。バーボン君改ならせいぜい時速2離半5km/h程度しか出ないこの坂道を時速10離20km/h近い速度で飛ばす。

 本当はもっと出せるくらいに力の余裕がある。しかし鉄輪のゴーレム車ではこの辺が乗り心地の限界。これを超えると一気に揺れと振動が酷くなるのでこの辺までで。

「あとは久しぶりにあのお家ですよね、今日は。カレンさんの邸宅は立派でしたけれど、やっぱりあの3階建てのお家が落ち着きます。お風呂もあるし自分の部屋もありますから」

「あの人駄目ソファーもいいよね。ベッドでなくあれで寝るのもありかな」

 確かに私もあの3階建ての大きい家が一番落ち着く気がする。慣れているというのもあるけれども。

 なお人駄目ソファーシリーズは私が起きた後、無事完成させた。案の定リディナもセレスも、更にはカレンさんやミメイさんまではまってしまった。

 だから追加発注した分は完成させた後、カレンさん達用に屋敷へ置いてきた。
 材料も教えたから今後も問題無く使い続けてくれるだろうと思う。
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