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第14章 3人目の仲間と 

第114話 運動不足実感中

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 パスカラの南、廃道の先に停滞して今日で1週間。

 リディナとセレスは雨が降っている時は勉強と料理、雨が止んでいる時は狩りと釣り。

 私はリビング専用の小屋を出して中で作業。
 ゴーレム車の改造も予定通り2日目お昼で無事終了。
 バーボン君改造作業を少しやった後、今は神様から貰った大事典のスティヴァレ語訳なんて事を中心にやっている。

 この本、冒険初心者向けとして各方面の知識がバランスよく、かつ分かりやすく記載してある。
 以前、図書館で探したがここまでバランスよくかつわかりやすい本は見当たらなかった。

 だから訳しておけば今後役に立つかもしれない。ある程度何でも出来るようになってからでも、基本を見直したい時には便利だろう。

 しかしこの大事典、ぶ厚くて全部訳すのは辛い。だから今は魔法の部分を集中的に訳している。これだけでも結構役に立ちそうだと思うから。

「確かにそういうのがあると便利だよね。今は結局フミノに聞くか、分厚い専門書を読んで該当の場所を探すしかないから」

 リディナもそう言ってくれたし。

 バーボン君改造の方は現在壁にぶち当たっている。長い脚は出来たのだ。試した結果、確かに速くはなった。
 しかしその代わり、牽引力が落ちてしまったのだ。
 
 改造部品を装着した状態では小走りの人間程度の速度が出る。ただし平坦で整備された道ならだ。今いるような荒れた坂道ではパワー不足でゴーレム車を引っ張る事が出来ない。

 どうすれば力を増大させる事が出来るか。
 分厚い専門書本を読んで調べた結果、魔素受容体と呼ばれる装置の性能向上が必要と判明した。より多くの魔素を受け取る事が出来ればゴーレム全体の出力も増すらしい。
 
 バーボン君の魔素受容体は魔法銀ミスリルという高価な魔法金属で出来ている。他の材質でも似たようなものはつくれるが効率が悪くなってしまう模様だ。
 
 魔素や魔力に対する受容性は魔法銀ミスリル魔法銅オリハルコン>銀>銅>黄銅>鉄>鉛>木材その他という順になる。
 そして今、私の手元にある金属素材は銅、黄銅、鉄だけ。銀も少量あるけれど受容体を作るのには足りない。

 試しに銅で大型の魔素受容体を作ってゴーレム車の屋根に載せ、バーボン君と接続してみた。ほんの少しだけ力が上がった。あくまでほんの少しだけ。

 この程度では使い物にならない。銅より効率が悪い鉄や黄銅はもってのほか。せめて魔法銅オリハルコン程度の魔素受容性がある魔法金属を手に入れなければならないようだ。

 そんな訳でバーボン君の大幅な速度向上は休止中。新たなアイディアが浮かぶか新たな素材を入手するまではこのままの状態。

 さて、今朝は久しぶりに良く晴れている。最近あまり見なかった青空の部分が雲がかかっている場所より広い。

「今日は久しぶりにフミノも一緒に狩りと釣りをしない? 天気もいいしたまには外に出た方が気分もいいと思うよ」

 確かにそうかなとも思う。ここのところずっと閉じこもりっぱなしだったし。

「わかった」
 
 それならこの期間に作った新兵器も持って行こう。実は作業の傍ら作った釣りや狩りの道具が結構ある。

 バーボン君の改造は休止中。かといって翻訳ばかりでは飽きる。だから合間に今まで案として考えていて、かつ今の技術で作成可能なものをちまちまと作ってしまった訳だ。

 朝食後、久しぶりにお家を収納して歩き始める。

「行くの、どの辺?」

「昨日行った入り江でいいよね」

「私もあの場所がいいと思います」
 
 リディナの台詞にセレスが頷く。

「どんな場所?」

「半時間くらい海沿いの岩場を歩くんだけれどね。小さな川が海に注いでいてその部分両側が砂浜、周囲を広く平らな岩場が囲んでいるの。
 川沿い付近の草地には薬草や食べられる草も結構生えているしね」

「昨日の夕食でバター焼きにした花芋もそこで採ったんです」

 花芋とは夏の終わりにキバナコスモスと向日葵の中間っぽい花が咲く草に出来る芋だ。少し甘くて揚げ物やバター焼きにすると美味しい。
 なるほど良さそうな場所だなと思う。

 廃道の先の急傾斜をゆっくり下り、あとは岩場を歩いていく。偵察魔法で確認しているが魔物の気配はない。クラーケンでもいれば狩るのだけれどそれどころかゴブもスラもいない。

 そう言えばゴブリンもスライムも海のすぐ近くは出てこないような気がする。何故だろう。

 そんな事を考えながら岩を上ったり下りたり、たまには砂浜っぽくなっている部分を歩いたり。
 正直きつい。リディナもセレスも軽々と歩いているけれど。

 さては私、運動不足か。そう言えば盗賊とやりあって以来、あまり歩いていない気がする。距離がある移動はゴーレム車だったし、ここ一週間は出したお家の間を行き来した位だし。

 強化魔法と回復魔法を使って何とかリディナ達についていく。うん、明日からは少し身体を動かす事にしよう。そう思いながら。

 それにしてもリディナ、ほんとに軽々歩いて行くなあ。足の長さが違うからかな。私も足がもう少し長ければ……

 ん、今何か思いついた気がした。何だ、もう一度確認してみる。リディナの足の長さを見て、私の足の長さがもう少し長ければと思ったんだった。足の長さが長ければ、足の長さを変える……

 そうか。私は今、自分が何を思いついたのか理解した。今思いついた事はバーボン君改造に使える。だから忘れないようにしておこう。

 それにしてもかなり歩いたな。そう思った頃、やっとそれらしい場所が見えた。

「此処?」

「そう。まずはこの先端で釣りから。最初は内側で小物を釣って、それを餌にして外側遠くへ投げて大物を釣るの。餌は切り身の塩漬けを持ってきたからこれを使って」

 なるほど。
 しかし私は様子をみて気づく。今はリディナ、内側を狙っている場合じゃない。

「今は外側、それもあの小波が出ている辺りの方がいい。あの下に小物も大物も群れている」

「えっ、何故わかるの?」

 ふふふふふ、その辺は日本のWebで培った知識だ。

「あの鳥の群れの下には小魚が多い。小魚の群れが大きい魚の群れに追われて海面付近に出て、そこを鳥が狙うとああなる。だから今は何が何でもあの場所を狙うべき」

 鳥山という奴だ。

「なら早速狙うね」

 リディナもセレスもリール付きの仕掛けを取り出す。重いおもりと大きい浮きでそこそこ遠くへ飛ばせるタイプだ。

「確かにあの下に大きいのもいるみたいね。浮きの下は3腕6m取って。大物がその辺にいるから」

 リディナも監視魔法を使えば海の中まで見る事が出来る。

 リディナは餌の魚の身を針につけて思い切りよく投げた。途中風属性魔法も使って見事鳥山の中央へ。

 一方セレスは軽く投げて流す感じだ。流すと言っても波任せではない。水属性魔法で動かしている。
 なるほど、2人とも得意魔法でコントロールしている訳か。

 私も風属性よりは水属性の方が得意。だからセレスと同じように軽く投げて流す方法をとる。おっと、早くも小魚が餌をつついている。おし、かかった!

「フミノ待って。そのままその魚を釣り上げないで泳がした方がいいと思う。少し群れから外して目立つようにしながら……よし!」

 リディナが大物をかけたようだ。そうか、小魚を餌にしてそのまま大物を釣り上げる訳か。
 流石リディナ、前回どっぷり釣りにはまっただけある。私より実践的知識が豊富だ。

「私もきました」
 
 セレスの仕掛けにも大きいのがかかったようだ。かなり引っ張られている。偵察魔法で見ると確かに結構大きい。小さめの鰹サイズ。

 なら私も釣らないとな。さあ早くこい大きいの!
 
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