上 下
47 / 323
第14章 3人目の仲間と 

第105話 またもや3人暮らし

しおりを挟む
 生えている雑木や草、岩をある程度収納して平坦な場所を作る。排水用の穴をあけた後、3階建ての家を出す。

「えっ、何でこんなに大きいのが、いきなり……」

「雨だし話は後、中に入りましょ」

 リディナとセレスは3階建ての中へ。私もゴーレム車とバーボン君を収納して続く。
 本棚を平屋からこっちへアイテムボックス経由で移動。座椅子も1つ追加で出して3人分。

 さて今日は疲れた。取り敢えずひと眠りして回復しよう。

「ごめん。疲れたから寝る。セレスへの説明と魔法を教えるのはお願い」

「わかった。3階は使えるようになっている?」

 そう言えば海で遊んだ時はフリースペースにしていた。
 セレスが使えるように部屋状態にしておこう。アイテムボックスから壁、ベッド、布団、テーブル、椅子を出しておく。

「今出した」

「わかったわ」

 対人恐怖症的に今日は疲れた。時間的にはお昼の鐘が鳴る前だがもう駄目。ずるずると2階の自室へ向かう。
 ベッドに倒れ込んで、そのままダウンだ。意識さようなら……

 ◇◇◇

 料理のいい匂いで目が覚める。窓の外はまだ明るい。空気の感じから朝ではなく夕方近くだとわかる。
 さっと身なりを整えて、部屋を出て階段を降りる。リディナとセレスが夕食の支度をしていた。

「あ、フミノ。もう疲れはとれた?」

「万全」

「なら良かった。ちょうど夕食が出来ているから食べよう」

 本日のメインは羚羊肉の麦酒煮込みと白身魚の照り焼き。
 照り焼きは以前、すき焼きもどきを食べた時、甘いおかずを思い出した関係でリディナに教えた。ついでに西京味噌漬けとか酢飯とかきんぴらゴボウとか揚げ物用の甘辛タレなんて知識も。

 そんな訳でリディナのレパートリー、かなり和食側に広がっている。そして私は簡単にしか教えていないのにリディナ、本当に美味しい料理を作ってしまう。

 なお本日の他のメニューは豆とジャガイモとタコのサラダ、見た目はポタージュに似ているけれど少しざらっとしたジャガイモのスープだ。
 主食はいつも通りパンとご飯両方揃っている。

「リディナさんって本当に料理が上手なんですね。魔法を使えるから早い上に手際もいいですし」

 確かにリディナの料理は美味しい。昔の私ならお湯を沸かしてカップラーメンのソース焼きそばしか作れない時間で豪華な一品料理を量産してしまう。

「ただフミノ、ちょっとうまく行かなくてね。お願いがあるの」

 何だろう。

「実はセレスに魔法を教えようとしたんだけれど、フミノに魔法を教わったの結構前でしょ。だからどうもうまく要領を思い出せなくて。
 だから食べ終わったらでいいからセレスに魔法、教えてくれる?」

「リディナさんが悪いんじゃないんです。私が要領悪いからうまく出来ないだけで」

 いや、確かにリディナに教えたのは半年前だ。だからおぼえていないというのは事実だろう。
 魔法を教えるにもそれなりに要領がある。私も大事典が無いと教える自信はない。

「わかった。食べたらやる」

「そんなお手間とらせるの申し訳ないですから。それに教わっても私では魔法を使えないかもしれないですし」

「問題ない」

「私もフミノに教わったしね。心配しなくて大丈夫だよ」
 
 そうだ。ついでにセレスに言っておこう。少し自信を持たせるために。

「セレスは水属性の魔法により適性がある。魔力も魔法を使えない割には高い。だから水属性なら私より強い魔法を使えるようになる筈。
 水属性関係の魔法の本は3冊買ってある。文字が読めるようになったら読んでみればいい」

「そうそう私は最初、水属性は適性1しかなかったけれどね。セレスは最初から3の適性があるの。だから教わればすぐかなりのところまで使えるようになる筈だよ」

 リディナも私が何故そう言ったかわかったのだろう。そう付け加えてくれる。

「本当ですか。単になぐさめてくれるだけなら……」

「本当だよ。文字が読めればすぐにそれが本当だと証明できるんだけれどね。その辺は今後、私が教えるから。
 ただ魔法についてはすぐわかると思う。本当、フミノに教わればあっという間に出来るようになるから。
 だからまずは食べよう」

 文字が読めない場合ステータス表示はどうなるんだろう。食べながら試してみる。やはりうまくいかない。何となくわかるようなわからないような感覚が生じるだけだ。

 スティヴァレ語の表記は難しくない。大文字小文字のアルファベットと記号だけ。表記もほぼ音と一致している。だから文字と発音の表記さえ覚えればそれほど難しくはない筈だ。
 ステータスについてはセレスが文字をおぼえるまで待ってもらおう。

 それにしてもやっぱりご飯が美味しい。牛じゃなかった羚羊煮込みの汁、塩味と甘み、肉の旨味と程よい苦みがいい感じだ。このビール煮は蜜酒や水飴で軽い甘味がついているのがポイント。

 勿論魚も美味しい。ブリっぽい白身の照り焼き。分厚い身に茶色いタレが白いご飯に無茶苦茶あう。
 ああもうタレだけでも美味しい。たまらずご飯にかけてしまう。控えめに言っても最高!

 そして箸休めでタコ入りサラダも……。なんてやって本日も完食。
 これで太らないのは魔法を使いまくっているおかげだろうか。それとも体質だろうか。いずれにせよ神に感謝したい。

 さて、夕食が終わり卓上を片づけたらいよいよお勉強の時間だ。

 私は大事典をアイテムボックスから出す。この本も久しぶりだな。そう思いながらページをめくり魔法の部分へ。

「それでは魔法の勉強。わからない事、聞き逃した事があったら言って」

 セレスが頷いたのを確認。

「それではまず魔法を使う前提となる知識。この世界では『地』、『水』、『火』、『風』、『空』の五大元素が全ての基本。『地』とは地面のイメージ、『火』とは燃える火のイメージで、熱くなる事全般が含まれる……」

 魔法教育、開始だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

怠惰生活希望の第六王子~悪徳領主を目指してるのに、なぜか名君呼ばわりされているんですが~

服田 晃和
ファンタジー
 ブラック企業に勤めていた男──久岡達夫は、同僚の尻拭いによる三十連勤に体が耐え切れず、その短い人生を過労死という形で終えることとなった。  最悪な人生を送った彼に、神が与えてくれた二度目の人生。  今度は自由気ままな生活をしようと決意するも、彼が生まれ変わった先は一国の第六王子──アルス・ドステニアだった。当初は魔法と剣のファンタジー世界に転生した事に興奮し、何でも思い通りに出来る王子という立場も気に入っていた。 しかし年が経つにつれて、激化していく兄達の跡目争いに巻き込まれそうになる。 どうにか政戦から逃れようにも、王子という立場がそれを許さない。 また俺は辛い人生を送る羽目になるのかと頭を抱えた時、アルスの頭に一つの名案が思い浮かんだのだ。 『使えない存在になれば良いのだ。兄様達から邪魔者だと思われるようなそんな存在になろう!』 こうしてアルスは一つの存在を目指すことにした。兄達からだけではなく国民からも嫌われる存在。 『ちょい悪徳領主』になってやると。

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

【完結】人形と皇子

かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。 戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。   性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。 第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。